過払い金請求のデメリットは?注意点やリスクなどを弁護士が解説
テレビや新聞、インターネットなどで「過払い金請求」の広告を目にしたことがある方は多いと思います。
過払い金請求は、貸金業者に対して、利息制限法の上限金利を超えて支払った利息分の金額を返すことを求めることです。
過払い金返還請求権は、民法の不当利得返還請求権(第704条)に基づいて認められています。
過払い金請求には、「払いすぎたお金が戻ってくる」という明確なメリットがある一方、デメリットもあるので注意が必要です。
本記事では、過払い金請求のデメリットや、過払い金請求が失敗したときのリスク、過払い金請求する際の注意点などについて、債務整理・借金問題に強い弁護士が解説します。
過払い金請求が失敗しやすいケースや、過払い金請求手続きの流れについてもあわせて解説しますので、過払い金請求を検討されている方は是非参考にしてください。
目次
1. 過払い金請求とは
過払い金請求とは、貸金業者に対して、利息制限法の上限金利を超えて支払っていた金額(過払い利息分)の返還を請求することです。
ここではまず、「過払い金請求」の概要をご説明します。
1-1. 過払い金請求の対象
過払い金請求できるのは、かつての「グレーゾーン金利」、つまり旧出資法の上限金利(29.2%)と、利息制限法の上限金利(15%~20%)との差額分です。
2010年6月18日に改正出資法が施行される以前、旧出資法の上限金利と利息制限法の上限金利には上記の差がありました。
【旧出資法と利息制限法の上限金利(2010年6月17日以前)】
旧出資法 | 利息制限法 | |
29.2%(一律) | 100万円以上 | 15% |
10万円~100万円 | 18% | |
10万円未満 | 20% |
多くの消費者金融ローンでは、利息制限法の上限金利よりも高いが、旧出資法の上限金利の範囲内の「グレーゾーン金利」での貸付けを行っていました。
出資法改正以後は、新規の貸付の金利は利息制限法と同じ20%以下となっています。
しかし、それ以前に借入を行い、その分を完済してから現在まで10年が経過していない場合は、過払い利息分の返還請求が可能です。
過払い金請求の対象、つまり実際に過払い金が発生しうる債務は、以下に限られます。
- 2010年6月17日以前に借入れを行った消費者金融ローン
- 同・クレジットカードのキャッシングサービス
住宅ローン、奨学金などは15%以下で貸付けを行っているため、基本的には過払い金返還請求の対象外です。
また、クレジットカードのショッピングのリボ払いの利息分も法定金利の範囲内であるため、対象外となります。
2. 過払い金請求のデメリット
過払い金請求のデメリットとして、以下が挙げられます。
2-1.ブラックリストに載る
過払い金請求の最大のデメリットは、債務残高が過払い金を上回っている場合、信用情報機関に事故情報が登録される(いわゆる「ブラックリストに載る」ことです。
なお、「ブラックリスト」という名簿のようなものは存在しません。
「信用情報機関に、事故情報が登録されている状態」を、一般的に「ブラックリストに載っている状態」または、俗に「ブラック」と表しているといえます。
(1)完済後であれば事故情報登録はされない
債務を完済した後に過払い金返還請求を行う場合には、事故情報が登録されることはありません。
ただし、完済した後であっても、過払い金返還請求した貸金業者から再び借入れをすることはできなくなると考えたほうがよいでしょう。
(2)事故情報登録された場合のデメリット
事故情報登録されることにより、最低5年間は以下のような制限を受けることになります。
クレジットカードの利用や新規作成ができない
事故情報登録されている間は、クレジットカードの利用や新規作成ができなくなります。
公共料金の支払いをクレジットカードで行っている場合は、他の方法に切り替えたり、家族名義のクレジットカードに支払い方法を変更する必要があります。
新たな借り入れ(住宅ローン、教育ローン含む)は原則としてできない
事故情報登録されている間は、キャッシングやローンなどの借入れが原則としてできなくなります。
端末代金10万円を超えるスマホの分割払いができない
事故情報登録されている間は、端末代金が10万円を超えるスマートフォンの分割購入契約はできません。
これは、割賦販売法で、代金が10万円を超える商品の分割払い契約については、売主が買主の信用情報を照会することを義務づけているためです。
端末代金10万円超のスマホの分割払い審査に通らないケースはブラックリストの場合のほか、電話料金滞納、過去の滞納履歴、クレジットカードやローンの滞納などが原因の場合もあります。
なお、一括払いでの購入や、10万円以下の端末代金の分割払いは可能です。
同様に、通販での買い物などで、分割払いが認められる場合があります。
賃貸住宅の契約ができない場合がある
家を借りる場合、家賃を滞納したときに代わりに支払ってくれる保証人や保証会社を用意する必要があります。
ここで、信販系・クレジットカード会社系の保証会社に保証を申し込むと、審査で信用情報を確認するため、事故情報登録期間中は審査を通過できない可能性があります。
もっともこの場合は、信販系やクレジットカード系でない保証会社または連帯保証人を用意することで解決できるでしょう。
借金の保証人になることができない
事故情報登録期間中は、他人の債務の保証人になることができなくなります。
このデメリットが影響しやすいのは、子どもの奨学金の保証人になれないことです。
ただし、奨学金の多くは、親の信用状況にかかわらず「機関保証」を利用できます。
なお、債務者本人がブラックリストに載っていても、配偶者・子ども・両親などの家族の信用情報に影響することはありません。
たとえば、本人名義のクレジットカードが使えない期間でも、家族の承諾を得て、家族名義のクレジットカードで買い物や各種料金の支払いを行うことは問題なくできます。
スマホの端末の分割購入や、賃貸住宅契約、奨学金などの借金の保証人になることについても、同様に支障はありません。
2-2.家族に知られる可能性がある
過払い金請求を弁護士や司法書士に依頼した場合も、契約書類などが自宅に送られてくることが1回はあります。
封筒の差出人を個人名にしてもらうことも可能ですが、郵便受けに郵便を取りに行ったのが本人以外だった場合、封筒の体裁と個人名のギャップを不審に思われる可能性はあります。
また、本人の携帯電話に法律事務所や司法書士事務所から電話がかかってきた時に家族が居合わせると、やはり不審に思われるかもしれません。
これらのことが心配であれば、契約書類を手渡しで受け取る、電話できる曜日・時間帯を事前に伝えるなどの方法により、家族に知られる可能性は低くなるでしょう。
3. 過払い金請求が失敗したときのリスク
過払い金請求が失敗した場合、つまり過払い金の返還が認められなかった場合には、以下のようなリスクがあります。
3-1.過払い金が時効消滅していた
後章でも述べるように、過払い金返還請求権は、債務を完済してから10年で消滅時効にかかります。
2014年の現在では、完済時期が2014年以前の場合は過払い金が時効消滅していることになります。
ただし、債務を完済している場合は、請求によって事故情報登録されることはありません。
過払い金が時効消滅していた場合、弁護士や司法書士に着手金等を支払っていれば、それが無駄になってしまうリスクがあります。
現在では、時効消滅の可能性も少なくないので、弁護士や司法書士に依頼する場合には、時効の場合の報酬支払いについても確認することをおすすめします。
3-2.過払い金よりも弁護士費用のほうが高額になった
過払い金の事前調査を綿密に行っていなかった場合、過払い金よりも弁護士費用の方が高額になってしまう可能性があります。
この点、債務整理に精通する弁護士に依頼する場合は、過払い金の見積もりを可能な限り厳密に行うので、費用倒れになるリスクは小さいといえます。
4. 過払い金請求をする際の注意点
過払い金請求をする際に注意すべき点として、以下が挙げられます。
4-1.倒産している貸金業者も多い
最高裁が、2006年1月13日付判決で過払い金返還請求を認めてから、弁護士への過払い金請求の依頼者が急激に増加しました。
これにより、過払い金の支払いに追われて倒産した貸金業者や、合併などにより会社名が変わった貸金業者も多くあります。
最初に、借入れをしていた貸金業者が現在も存在しているかを確認しましょう。
4-2.過払い金返還請求権は10年で消滅時効にかかる
過払い金返還請求権は、最終取引(最後の借入れまたは完済日)から10年で消滅時効にかかります(2017年改正前の民法第167条1項)。
出資法の改正後、多くの貸金業者は金利の改定(引下げ)を行っています。そのため、金利の改定以降の借入については過払い金が発生していない可能性が高いです。
完済している場合は、いつ頃完済したかを覚えていることが多いでしょう。一方、債務が残っている場合は、最後の借入れを行った時期について明確に記憶している方は少ないかもしれません。ATMの明細やメモなどの記録が残っているか、確認が必要です。
5. 過払い金請求が失敗しやすいケース
過払い金請求が失敗しやすいのは、以下のようなケースです。
5-1.債務者自身が請求する
「弁護士費用がもったいないから」と、自身で引き直し計算をする方がいます。
過払い金請求の手続き自体は、債務者本人で行うことも可能です。しかし、利息計算は複雑で難しく、正確な引き直し計算を行うことは困難です。
また、引き直し計算ができたとしても、貸金業者と交渉して請求通りの金額を認めさせることは容易ではありません。
引き直し計算と交渉に費やす時間と労力、得られる成果を考えると、引き直し計算の段階から弁護士に依頼するのが得策です。
5-2.無料調査を通して大手に依頼する
最近では過払い金請求のTVCMは見かけなくなりましたが、CMを流している大手法律事務所・司法書士事務所が行っている過払い金無料調査を依頼する方も多いと思います。
しかし、無料調査を依頼したところ過払い金の調査・計算に半年以上かかったり、事務所の報酬の説明が不十分で、結果的に費用倒れになってしまったりするケースが多くあります。
債務整理に精通する弁護士が在籍する法律事務所では、調査期間も通常1~2か月と短く、報酬についての説明は初回の相談時に書面で明確に行っています。
過払い金返還請求を依頼する場合は、各事務所のHPで実績や信用度を比較検討されることをおすすめします。
6. 過払い金請求の流れ
過払い金請求は、以下のような流れで行います。
6-1.貸金業者から取引履歴を取り寄せる
まず、貸金業者に取引履歴の開示を請求します。
貸金業者から送られてきた取引履歴に疑問がある場合には、残存しているATM伝票や契約書を提示して、開示された履歴以外の履歴があるはずだと主張してください。
「古い取引履歴は破棄した」と主張された場合には、手持ちの資料に基づいて推定計算をして過払い金を算出することもできます。
6-2.適正な利息に引き直して計算する
取引履歴に問題がなければ、履歴に基づいて過払い金額を計算します。
利息制限法の上限利率を超える支払いが行われていた部分を、適正利率で支払っていた場合に計算し直して、過払い分がいくらあるのかを算出します(引き直し計算)。
返済期間が長期にわたる場合や、借入れの頻度が高い場合には計算が複雑になるため、ミスを防ぐためにも弁護士への依頼をご検討ください。
なお、回収可能な過払い金がある場合には正式依頼するという条件で、引き直し計算を無料で行っている法律事務所も多くあります。
6-3.貸金業者に過払い金を請求する
引き直し計算の結果、過払い金が発生していた場合には、過払い金返還請求書を内容証明郵便で送付します。
この際、証拠となる引き直し計算書は内容証明郵便では送れないため、別途郵送またはFAXで送るなどしてください。
過払い金返還請求書には、以下の事項を明記します。
- 貸金業者の会社名及び代表者氏名
- 借主の氏名・住所・電話番号・過払い金振込先口座
- 請求書送信日付
- 過払い金の金額(元本+利息)
- 「過払い金を請求する」旨の記載
6-4. 貸金業者と交渉する
過払い金返還請求通知書を送付すると、貸金業者から電話がかかってくるなどの反応があるはずです。
そこで貸金業者と交渉して、納得できる金額を提示されれば和解が成立し、合意書を作成することになります。
しかし、実際には、過払い金の元本でさえも、希望通りの金額を提示されることはほぼないと思った方がよいでしょう。
6-5. 訴訟を提起する
貸金業者との交渉が成立しなかった場合は、過払い金返還請求訴訟を提起します。
貸金業者側は、訴訟になると弁護士に依頼することが多いので、訴訟手続きについては弁護士に依頼することをおすすめします。
実際には判決手続に至るケースは少なく、途中で裁判上の和解が成立する可能性の方が高いです。
6-6. 過払い金の返還を受ける
裁判外の交渉または裁判で、過払い金返還に関する合意が成立すれば、合意書に記載された返済期日までに過払い金が振り込まれることになります。
返済期日の設定については、貸金業者側の都合で合意から数か月後、場合によっては半年ほど後になることがあります。
手続きを弁護士に依頼している場合は、一旦法律事務所の預かり金口座に振り込まれ、弁護士報酬を差し引いた金額が借主に送金される流れになることが多いです。
7. 過払い金請求を弁護士に相談、依頼するメリット
過払い金請求について弁護士に相談、依頼することには、以下のようなメリットがあります。
7-1. 過払い金額の上限なしに手続きを依頼できる
過払い金請求の手続きは、認定司法書士※も行うことができます。
ただし、認定司法書士が扱えるのは、過払い金の金額が140万円以下の場合です。
過払い金の金額は、厳密な引き直し計算をしなければ算出できません。
司法書士に依頼した結果、過払い金額が140万円を超えていて受任できず、法律事務所に引き継がれるケースも多くあります。
弁護士に依頼した場合は、過払い金の上限なしで和解交渉や訴訟代理が可能です。
※簡易裁判所での訴訟代理人業務・裁判外の和解の各手続の代理業務などを行うことが認められた司法書士
7-2.貸金業者からの督促が止まる
過払い金請求は、借金減額手段として行われるケースが多いです。
借金を抱える方の多くは、債権者からの頻繁な督促の通知や電話に悩まされているのではないでしょうか。
弁護士に過払い金請求手続きの代理を依頼すると、弁護士が速やかに債権者に対して受任通知を送付します。
弁護士から受任通知を受け取った場合、貸金業者は以後、債務者に対する取立て行為が禁止されます(出資法第21条1項9号)。
ひとまず、貸金業者からの取立てが止まるだけでもストレスが軽減されるでしょう。
7-3.債権者との交渉を任せられる
過払い金請求を行う場合は、債権者と交渉して和解を成立させなければなりません。
和解交渉を債務者が自力で行おうとすると、債権者は実際の過払い金よりも低い金額を提示してくることが多いです。
弁護士に依頼することで、債権者と対等に交渉し、適正な過払い金額の請求が可能になります。
8. 過払い金請求に関するよくあるQ&A
本章では、過払い金請求に関して頂くことが多い質問と、それに対する回答をご紹介します。
8-1.手元にカード番号などの情報が残っていないのですが、過払い金請求は可能ですか?
クレジットカードやローンカードの番号がわからなくなっていても、以下の情報があれば、弁護士の方で調査の上、過払い金請求が可能です。
- 貸金業者の会社名
- ローンの名称
- 借入れをしていた時期(「20〇〇年頃~20XX年頃」などでも可)
- 債務者名義(住所、生年月日など)
8-2.ショッピングのリボ払いや分割払い手数料は過払い金の対象になりますか?
ショッピングのリボ払いや分割払い手数料は、過払い金の対象になりません。
これらを取り扱っているクレジットカード会社のショッピングの利息は、法定利息の範囲内であるためです。
なお、クレジットカード会社のカードキャッシングのリボ返済を長期間行っている場合は、過払い金が生じている可能性があります。
8-3.過払い金請求して費用倒れになることはありますか?
事務所の報酬の設定によっては、過払い金額が少額の場合に、弁護士費用が過払い金額を上回る可能性があります。
報酬設定や、過払い金のおおよそ見積額については、初回の無料相談で説明を受けられます。
9. まとめ
出資法が改正されてから14年経過した現在、完済や最後の借入れから10年近く経過している場合は、速やかに過払い金請求をする必要があります。
過払い金請求を自身で行うには、引き直し計算・貸金業者との交渉が壁になってしまいます。
特に現在は、過払い金の計算に時間をかけていると時効消滅してしまう可能性が高いです。弁護士に相談することで、スピーディに引き直し計算や請求手続きを進めることができます。
過払い金請求をお考えの方は、是非債務整理に精通する弁護士にご相談ください。
私たち法律事務所リーガルスマートは、借金問題・債務整理の専門チームがございます。初回無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
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借金問題を弁護士に相談する4つのメリット
- 債権者からの督促が止まる
- 弁護士に依頼することで、債権者からの厳しい督促や取り立てがストップします。これにより、精神的な負担が軽減され、問題解決に向けて冷静な行動を取れるようになります。
- 状況に合せた最適な解決法の提案
- 弁護士は、任意整理、個人再生、自己破産などの手続きの中から、状況に合わせた最適な解決方法を選択し、手続きを進めます。これにより、スムーズな解決が期待できます。
- 時間と手間の節約
- 弁護士に依頼することで、債務整理の手続きの手間を大幅に減らすことができます。弁護士が代理人として交渉や手続きを行うため、あなたは日常生活や仕事に集中できます。
- 家族に知られずに手続きが可能
- 弁護士が債権者との連絡窓口となるため、家族に知られることなく手続きを進めることができます。これにより、家族に心配をかけずに問題を解決することができます。
担当者
-
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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