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グレーゾーン金利とは?過払い金請求との関係性を弁護士が解説!

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長期間借金をしていた人に発生するかもしれないとされる過払い金請求について調べていると「グレーゾーン金利」という言葉が出てきます。

契約通り支払っていると払いすぎている利息があることから発生するという過払い金の意味と併せて非常に難解であり、そもそも過払い金やグレーゾーン金利というもの自体に疑問を持つ人も少なくありません。

そこで本記事では、グレーゾーン金利について、過払い金請求との関係もあわせて、借金問題・債務整理に強い弁護士が解説します。

1.グレーゾーン金利とは

グレーゾーン金利とは、かつて出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」とします)の上限利率が現在よりも高かった時代に存在した、利息制限法以上出資法以内の金利のことをいいます。

詳しくは後述しますが、グレーゾーン金利の部分については払いすぎていたものと法的に評価され、元金に充当される・返還請求ができる、というものになります。

グレー・グレーゾーンと呼ばれるのは、適法を意味する白・ホワイトと、違法を意味する黒・ブラックが混ざった色について適法とも違法とも言い難い状態を灰色・グレーと呼ぶことに起因します。

2.グレーゾーン金利が存在した背景

このようなグレーゾーン金利が存在したのはどのような背景に基づくものでしょうか。

2-1.利息の上限を定める法律が2つ存在する

利息の上限を定める法律には次の2つの法律が存在します。

  • 利息制限法
  • 出資法

(1)利息制限法

利息制限法は、金銭を目的とする消費貸借契約(金銭消費貸借契約)についての民事上の効力を定める法律で、利息の上限について1条で次のように定めています。

(利息の制限)

第一条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。

一 元本の額が十万円未満の場合年二割

二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合年一割八分

三 元本の額が百万円以上の場合年一割五分

引用:利息制限法|e-Gov法令検索

利息については元本額に応じて利率を決めて上限を設けています。

例えば、50万円の借り入れをした場合には、1条2号が適用されるので利率の上限は1割8分(=18%)ということになります。

この利率に基づく利息を超える超過部分については無効とする旨が規定されています。

(2)出資法

貸金業者の高利貸し・預り金の禁止、銀行などの役職員の浮貸し等の禁止などを禁止するための法律が出資法です。

出資法5条2項は次のように定めています。

(高金利の処罰)

第五条 (省略)

2前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

引用:出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律|e-Gov法令検索

年20%以上の貸付を禁止している点では利息制限法と同様ですが、出資法は利息制限法と異なり、同条の違反について刑事罰を科しています。

この2つの規定によって、高利貸しは民事・刑事ともに禁止されていることになります。

2-2.出資法の改正前に存在したグレーゾーン金利

今回のメインテーマであるグレーゾーン金利は、出資法の改正と関係があります。

現在の出資法の上限は、2010年6月18日に施行されました。

それ以前は、刑事罰を定める出資法の上限は、利息制限法よりも高い状態でした。

出資法はかつては上限109.5%もの高金利でした。

そのため、利息制限法に基づく利率を超えても、出資法の上限である109.5%を超える利息の受け取りをしていなければ、民事上は無効であっても、刑事罰は科されませんでした。

一方、民事上は無効であるという利息制限法1条の規定があっても、当事者間で争いにならない限りは問題にはなりません。

そのため、多くの貸金業者が、出資法の上限利率は守るものの、利息制限法の利率を越える利息で貸付を行っていました。

この利息制限法を超える利率で受け取っていた利息こそがグレーゾーン金利といいます。

出資法の上限利率はあまりにも高すぎて利用者の生活を極めて圧迫するものであったことから、かつてサラリーマン金融(サラ金)と呼ばれていたころには「サラ金地獄」と表現されるほどのものでした。

そのため、出資法の利率は次のように段階的に引き下げられるに至っています。

期間利率
昭和29年8月1日から昭和58年10月31日109.5%
昭和58年11月1日から昭和61年10月31日まで73%
昭和61年11月1日から平成3年10月31日まで54.75%
平成3年11月1日から平成12年5月31日まで40.004%
平成12年6月1日から平成22年6月17日29.2%

たとえば、最後の改正前の平成12年6月1日から平成22年6月17日までは、上限利率が29.2%となっているので、10万円を超える借り入れをしていた場合に18%が利息制限法の上限なので、11.2%分はグレーゾーン金利となる可能性があります。

3.グレーゾーン金利はいつまで存在していたのか

グレーゾーン金利はいつまで存在したのでしょうか。

上述したように、現在の出資法の上限利率は2010年(平成22年)6月18日に現在の利率に改正されて施行されています。

そのため、グレーゾーン金利が存在したのは、2010年(平成22年)6月17日までとなります。

もっとも、この時期より前から利息制限法の上限金利以内で貸付を行っている場合もあるので、常にグレーゾーン金利の返済を行っていたとは限らないことに注意が必要です。

4.グレーゾーン金利で借り入れていたらどうなるのか

グレーゾーン金利で借り入れていた場合、法的にはどうなるのでしょうか。

グレーゾーン金利での借り入れについて争われた一連の裁判で、裁判所は次のような判断を下しています。

  • 利息制限法を超える利息の受け取りは無効
  • 無効とされる利息(過払い)は元本に充当される
  • 元本に充当してもまだ余っている場合には貸金業者に返還を求めることができる

具体的に裁判内容について見てみましょう。

最高裁判所昭和39年11月18日判決は次のように判示しています。

債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金を任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は、民法第四九一条により、残存元本に充当されるものと解すべきである。

最高裁判所判例|裁判所ホームページ

この判決によって、利息制限法を超えるグレーゾーン金利について、その受け取りについては無効であり、その分については元本に充当されるということが確定しました。

つまり、30万円の元金がある場合で、20万円の過払い金がある場合には、元本に充当されて残った債務は10万円であるといえます。

次に、最高裁判所昭和43年11月13日判決は次のように判示しています。

利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払つた債務者は、制限超過部分の充当により計算上元本が完済となつたときは、その後に債務の存在しないことを知らないで支払つた金額の返還を請求することができる

最高裁判所判例|裁判所ホームページ

この判決によって、グレーゾーン金利について充当される元本額以上の支払いをしている場合には、法的には返還を求められることが確定しました。

つまり、30万円の元本がある場合で50万円のグレーゾーン金利の支払いをして過払いとなっている場合には、差し引きした20万円を過払い金として請求できるといえます。

5.グレーゾーン金利と過払い金請求の関係性

グレーゾーン金利と過払い金請求の関係性を整理しましょう。

上述した利息制限法・最高裁判例などによると、グレーゾーン金利は無効であり、契約通りグレーゾーン金利を任意に支払った場合でも法律上は利息制限法までの返済のみ有効で、グレーゾーン金利部分は過払いとして元本に充当され、元本が無くなっていると評価できる場合には返還してもらえます。

この返還してもらえるお金のことを過払い金といい、過払い金請求はこの過払い金の返還を求める請求です。

つまり、グレーゾーン金利は過払い金請求をする根拠となる関係にあるといえるでしょう。

6.過払い金請求する方法

過払い金がある場合にそのお金を請求する方法は次の通りです。

6-1.過払い金請求は貸金業者に対してする民事上の請求権である

まず、過払い金請求がどのような根拠をもとに認められる請求権なのかを確認しましょう。

過払い金請求は、本来は無効とされるグレーゾーン金利について、法律上の根拠なく受け取っているものなので、受けとったグレーゾーン金利分の金銭については民法703条の不当利得返還請求権として認められるものです。

そのため、過払い金請求は、債権者であった貸金業者に対して行うことになります。

6-2.貸金業者に取引履歴を請求する

貸金業者に取引履歴を請求します。

過払い金についてはまずいくら請求できるかを計算する必要があります。

この計算をするために、過去に実際にいついくらの借り入れをして、いくらの返済をしたのかを知る必要があります。

これらについて正確に確認するための資料となるのが、貸金業者が保有している取引履歴となります。

取引履歴については、貸金業者が契約者に対して開示する義務があることが、最高裁判例でも明らかになっています。

貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業の規制等に関する法律の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上,その業務に関する帳簿に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負う。

最高裁判所判例|裁判所ホームページ

そのため、請求をすれば基本的には貸金業者は開示に応じます。

取引履歴の開示については2週間~2か月程度の期間がかかります。

取引期間長短は大きな会社がどうか、取引の期間の長短によって異なります。

6-3.取引履歴をもとに引き直し計算を行う

取引履歴をもとに引き直し計算を行います。

取引履歴には契約に基づく借入・返済の内容が記載されているので、これを利息制限法に基づく取引をしていたらいくらの元金になっているか、過払い金請求が可能かを計算します。

この計算のことを引き直し計算といいます。

計算には、パソコンの表計算ソフトExcelのシートに計算式があらかじめ入力されていて、借入・返済の日時と金額を入力すれば、グレーゾーン金利の計算ができる「引き直し計算シート」を利用するのが良いでしょう。

インターネットで検索すれば取得することができます。

昔からよく利用されているものとして、名古屋消費者信用問題研究会の利息計算ソフトが挙げられます。

6-4.貸金業者に対して請求を行う

貸金業者に対して請求をします。

請求方法について法定されているものはないので、電話・郵送・FAX・Eメールなど任意の方法で行います。

なお、後述する時効が迫っているような場合には、時効の完成猶予をするために、内容証明郵便で催告(民法150条1項)を行います。

6-5.貸金業者に裁判を起こす

任意の請求で支払いを受けられない場合には、貸金業者に対して裁判を起こします。

なお、裁判を起こすことで、貸金業者がより多くの額の支払いに応じることがあるので、任意での交渉で金額が増えなくなった場合には、早めに貸金業者に裁判を起こしてみましょう。

6-6.強制執行まで行くことは稀である

裁判で勝訴判決を得ても納得いく回答が得られないのであれば、強制執行をするのが法律の建前です。

しかし、現実には強制執行をするための貸金業者の財産の特定が難しいことも多く、その多くのケースで裁判上で和解をすることがほとんどで、強制執行まで行くことは弁護士に依頼をしても非常に稀なケースであるといえます。

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7.過払い金請求を弁護士に相談、依頼するメリット

過払い金請求を弁護士に相談・依頼するメリットには次のものがあります。

7-1.過払い金請求の見通しを聞くことができる

過払い金請求の見通しを聞くことができます。

過払い金請求についてはいくらの過払い金が発生しているかだけではなく、貸金業者がどの程度支払えるのかについての知識も欠かせません。

弁護士に相談すれば、どの程度の過払い金が生じていて、対象となる貸金業者がどの程度の返還に応じるか、過払い金請求に関する見通しを立てることができます。

7-2.難しい手続きをまかせっきりにできる

過払い金請求を弁護士に依頼すれば、難しい手続きを任せることができます。

過払い金請求には、上述した通り取引履歴の取り寄せ・引き直し計算などの正確な過払い金の計算と、相手との交渉・民事訴訟などの難しい対応が必要となります。

弁護士に依頼すれば、これらをすべてまかせっきりにできます。

7-3.司法書士とは異なり権限に制限がない

司法書士とは異なり権限に制限がありません。

過払い金請求については弁護士のみならず司法書士にも権限が認められています。

しかし司法書士に過払い金請求で認められている権限は次の通りです。

  • 140万円以内の過払い金について代理での交渉
  • 140万円以内の過払い金について第一審の裁判の代理

そのため、140万円を超えるような過払い金が出ている場合や、裁判で相手に控訴された場合には対応できなくなります。

弁護士であればこのような制限なく、過払い金請求についての代理ができます。

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8.グレーゾーン金利に関するよくあるQ&A

グレーゾーン金利に関するよくあるQ&Aについては次のものがあります。

8-1.2010年6月17日以前にお金を借りていれば常にグレーゾーン金利ですか?

2010年6月17日以前にお金を借りていれば常にグレーゾーン金利というわけであはありません

銀行などのローンについては利息制限法を超えない貸付になるのでグレーゾーン金利は発生しませんし、消費者金融・信販会社からの借り入れでも利息制限法を超えない場合もあります。

ですので、常にグレーゾーン金利であるというわけではありません。

8-2.グレーゾーン金利の部分は全額返してもらえますか?

グレーゾーン金利で払っていた場合、その部分については法定利息を付して払ってもらう権利があります。

もっとも、貸金業者はその請求にあたって妥協を求めてくることがほとんどで、法律上発生している過払い金を全額取り戻すことは非常に難しいです。

どの程度の妥協を求めてくるのかは会社によって異なります。

大手の消費者金融で銀行のグループであれば、過払い金の70%~90%程度の金額を返還してもらえることがあります。

小規模の消費者金融や、銀行の傘下に属していない会社だと、このような高い水準での返還を求めるのは難しく、ケースによっては10%程度になってしまうこともあります。

また、貸金業者によっては既に倒産・廃業してしまっており、過払い金の回収ができないケースもあります。

8-3.借入をしていた会社がもうありませんが過払い金は取り戻せますか?

借入をしていた会社が無くなってしまっている場合でも過払い金は取り戻せるのでしょうか。

実は過払い金請求は一時期ブームと呼ばれる程度になり、多数の貸金業者がその返還に窮した結果、倒産を余儀なくされています。

会社が破産や特別清算によって法人格から無くなってしまっている場合、過払い金請求はできません。

ケースによっては民事再生や会社更生といった手続きによって倒産している場合には、他の会社に吸収されていて、数パーセントとなるものの支払いに応じていることがあります。

まずは弁護士に相談することをお勧めします。

8-4.過払い金請求権の時効

過払い金請求権利は、上述した通り不当利得返還請求として行うものです。

不当利得返還請求も他の債権と同様に、消滅時効にかかることになっています。

2020年3月31日までは、時効期間は10年とされており、2010年からすでに14年が経過しているため、多くの請求が時効になっていることが想定されます。

もっとも、取引がずっと続いているような場合には時効とはならないので、まずは弁護士に相談してみてください。

9.まとめ

本記事では、グレーゾーン金利や過払い金との関係についてお伝えしました。

利息の上限に関する2つの法律について、出資法が改正されて現在の利率になる前の高い利率であったときに発生するのがグレーゾーン金利で、過払い金請求の根拠となるものであるのは本文でお伝えした通りです。

その請求を行う場合にはまず、弁護士に相談してみてください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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