個人再生
個人再生とは?条件やメリット・デメリットなどを弁護士が解説!
「ギャンブルなどで借金が300万円以上になってしまい、返済に困っています。借金返済がなければ普通に生活できる程度の収入はあります。家族がいて、仕事でも車を使うので自宅や車は手放したくありません。債務整理の方法としてはどれが一番適しているでしょうか?」
このような状況にある方が債務整理を行う場合、個人再生手続が最も適しています。
本記事では、個人再生について、以下の点を中心に借金問題・債務整理に強い弁護士が解説します。
- 個人再生をするための条件
- 個人再生のメリット・デメリット
- 個人再生手続きの流れや期間
- 個人再生にかかる費用と内訳
- 個人再生の注意点や個人再生に失敗するケース
目次
1. 個人再生とは
個人再生とは、債務者が一定の金額を債権者に3年~5年かけて返済することにより、在債務の免除を受けることができるという債務整理手続きです(民事再生法第221条~)。
借金の返済が難しくなった人が裁判所に個人再生の申立てを行うと、裁判所が選任した再生委員が、債務者と債権者から意見を聞いた上で、再生計画を立てます。
債務者は再生計画に基づいて、借金を原則3年間(特別な事情がある場合は5年間)で分割して返済します。
ここでは、個人再生の種類及び、混同されやすい民事再生との違いについて解説します。
1-1. 個人再生の種類
個人再生の種類には、小規模個人再生と、給与所得者個人再生の2種類があります。
(1)小規模個人再生
個人再生の基本的な手続きにあたります。
自営業者、年金生活者に加えて、給与所得者も要件を満たせば小規模個人再生の利用が可能です。
(2)給与所得者個人再生
給与所得者個人再生とは、会社の正社員など、将来の収入を確実かつ容易に把握できる人を対象にしている手続きです。
1-2. 個人再生と民事再生の違い
個人再生は、民事再生法で定められた「民事再生手続」の中の1つという位置づけです。
民事再生は法人も個人も利用できますが、もともと法人が利用することを前提として作られた制度であるため、手続きが複雑であり、裁判所に納める費用も弁護士費用も高額になっています。
そのため、民事再生の手続きを個人が利用しやすくするために、個人再生の制度が作られました。
2. 個人再生をするための条件
個人再生をするための条件は、小規模個人再生と給与所得者個人再生とで異なります。
2-1. 小規模個人再生の条件
小規模個人再生をするための条件は以下の3つです。
- 住宅ローンを除く借金総額が5,000万円未満であること
- 将来、継続的に、または反復して収入を得る見込みがあること
- 再生計画に対して、債権者の数及び債権額の2分の1以上の不同意がないこと
2-2. 給与所得者個人再生の条件
給与所得者個人再生の条件は以下の4つです。
- 住宅ローンを除く借金総額が5,000万円未満であること
- 将来、継続的に、または反復して収入を得る見込みがあること
- 給与などの定期所得があり、所得変動の幅が年間20%以下であること
- 可処分所得の2年分以上の支払いを条件とすること
3. 個人再生のメリット・デメリット
個人再生が最も適しているケースとしては以下が挙げられます。
3-1. 個人再生のメリット
個人再生には、以下のようなメリットがあります。
(1)借金の元本を大幅に減額できる
個人再生では、借金の総額に対して最低限返済しなくてはならない額が決まっています。
この額を「最低弁済額」といい、借金の元本を5分の1~10分の1まで減額できます。
ただし、100万円以下にまで減らすことはできません。
【最低基準弁済額】
借金総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 全額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1,500万円未満 | 借金総額の5分の1 |
1,500万円以上3,000万円未満 | 300万円 |
3,000万円以上5,000万円未満 | 借金総額の10分の1 |
たとえば、総額900万円の借金がある場合、最低弁済額は5分の1の180万円まで減額されます。これを3年(36か月)かけて返済するとすれば、ひと月あたりの返済額は5万円となります。
(2)住宅ローン支払い中の自宅を手放さずにすむ
個人再生手続では、原則としてすべての債務が対象となります。
しかし、住宅ローンを支払い中の自宅不動産がある場合、「住宅資金特別条項」(住宅ローン特則)の適用を受けることで、自宅不動産を残すことができます。
住宅ローン特則を利用した場合、住宅ローンを除く借金を減額してもらい、住宅ローンについては支払いを継続することになります。
(3)代金支払いが完了している財産は手放す必要がない
住宅や車を始め、代金の支払いが完了している財産については、その価値の程度を問わず、売却する必要はありません。
(4)借金の理由が問われない
財産を手元に残せることと並んで、個人再生の大きなメリットとなるのが、手続き要件の中で借金の原因を問題にされないことです。
たとえば、ギャンブルで数百万円の借金を抱えてしまった場合、自己破産の場合は免責不許可事由にあたるので、原則として免責が認められません。
一方、個人再生の場合は、それが原因で申立てが認められなかったり、手続きに失敗するということはありません。
(5)手続き中に資格・職業の制限を受けない
自己破産の場合、申立てから手続き終了までの間の数か月間、士業や銀行員など、一定の職業に就くことができなくなります。
個人再生の場合は、手続き中に資格・職業の制限を受けることはありません。
3-2. 個人再生のデメリット
一方、個人再生には、以下のようなデメリットがあります。
(1)手続きが複雑で費用も掛かる
個人再生は、債務整理の中で最も難しいと言われ、手続きがかなり複雑です。
裁判所に提出する書類が多岐にわたるほか、必要条件となる再生計画を立案するにあたっては多くの計算作業が必要です。
そのため、債務者が単独で手続きを行うのは困難であり、弁護士や司法書士など専門家への依頼が必要です。
弁護士(司法書士)に支払う報酬は数十万単位になりますが、圧縮できる借金の額に比べれば数分の1であることが多いです。
(2)保証人付きの債務は保証人に一括請求される
個人再生手続きによって借金減額の効果が得られるのは、債務者本人のみで、保証人の保証債務には影響がありません。
債務者本人が個人再生を申し立てた時点で、保証債務の履行義務が発生し、債務を一括返済する必要が生じます。
すなわち、債務者本人が個人再生の申立てを行うと、保証人に多大な不利益を与えることになります。
保証人がいる場合に個人再生を行う際には、事前に保証人に事情を説明して保証人の同意を得るようにしてください。
(3)官報に掲載される
官報は、政府が発行している機関紙(新聞のような刊行物)で、法律や政令、法令に基づく公告などを掲載しています。
個人再生を行うと、開始決定時・書面決議時・認可決定時の3回、申立人の住所氏名等が掲載されます。債務額や債権者名などは掲載されません。
官報の存在を知っている人は少なく、定期購読して毎日目を通すような方は非常に少ないといえます。
そのため、官報に掲載されたからといって、知人や仕事の関係者などに知られる可能性は低いと言えるでしょう。
(4)信用情報機関に事故情報として登録される
個人再生を行うと、信用情報機関に事故情報として登録されます(いわゆる「ブラックリストに載る」状態)。
これにより、手続き終了から5年~10年の間は、クレジットカードの利用・新規作成ができなくなる、住宅ローンなどのローン契約ができなくなるなどの一定の不利益を受けることになります。
一方、配偶者・子ども・両親などの家族の信用情報には影響がありません。
4. 個人再生手続の流れや期間について
ここでは、個人再生手続の代理を弁護士に依頼する前提で、手続きの流れや期間についてご説明します。
以下の手続きは、東京地方裁判所の個人再生手続きの流れをもとにしています。裁判所によっては、個人再生委員を選任しないこともあります。
個人再生委員の選任を行わない場合、個人再生委員との選任・再生委員との面接の手続きは省略されます。
4-1. 弁護士と契約する
まず弁護士に相談し、個人再生手続を行うことを決めたら、委任契約を締結します※。
弁護士と契約すると、弁護士が債権者に受任通知を送付するので、債権者からの督促が止まります。
差押えのおそれがある場合には、委任契約手続は急いだほうがよいでしょう。
弁護士と契約したら、着手金を支払い、1~2か月の間、申立ての準備を行います。
個人再生や自己破産の場合、着手金などの弁護士費用や申立て時の裁判所納付費用を、契約から数か月かけて一定額ずつ積み立てることが多いです。
債権者からの督促が止まることで、これまで借金返済のために債権者に支払っていた金額を支払う必要がなくなるためです。
※東京地裁の個人再生手続は、弁護士に依頼することが前提になっています。
4-2. 個人再生申立ての書類を準備・収集する
弁護士が債権者に対して取引履歴の開示請求を行い、債権額を確定したら、申立て書類の準備を行います。
申立書を作成する上で、資産調査が必要となります。
資産調査を行うために、通帳・車検証・不動産登記簿謄本などの財産関係の資料を弁護士に提出することになります。
また、調査結果によって、小規模個人再生と給与所得者再生のどちらを申し立てるかを決めます。
住宅ローンを返済中の場合は、住宅ローン特則が利用できるかについても検討します。
申立書以外に、準備書類として以下の書類を作成・収集する必要があります。
- 債権者一覧表
- 家計簿
- 財産目録
- 収入証明(課税証明書など)
- 住宅ローン関連資料
4-3. 裁判所に個人再生の申立てを行う
申立て書類の準備が完了したら、債務者が居住する地域を管轄する地方裁判所に個人再生の申立書を提出します。
申立ての際に、申立て手数料・予納郵便切手代、官報公告費その他の実費合わせて25,000円程度の裁判所予納金が必要となるので、準備しておきましょう。
個人再生委員が選任される場合には、予納金に加えて、後から個人再生委員の報酬(東京地裁の場合は15万円)を支払うことになります。
4-4. 個人再生委員が選任される
申立書の審査が完了したら、個人再生委員が選任されます。
個人再生委員は、裁判所から選任され、債務者の再生計画作成に必要なサポートを行います。通常は弁護士資格を持つ人が選ばれます。
個人再生委員が選任され、裁判所から通知を受けたら連絡を取って、申立人・弁護士・個人再生委員との打ち合わせの期日を決めます。
打ち合わせ期日は、原則として選任から1週間以内に設定します。
4-5. 個人再生委員と面接する
個人再生委員との面接(打ち合わせ)の場所は、個人再生委員が所属する弁護士事務所になるのが通常です。
打ち合わせでは、申立て内容の確認と、法律上の手続き開始条件を満たすかどうかの質問などが行われます。
これは、個人再生委員が、開始決定を行うべきか否かの意見を裁判所に報告するためです。
質問は、「再生計画通りに返済を続けられるかどうか」という観点から行われるので、収入や支出に関係することが中心になるでしょう。
4-6. 履行可能性テストの実施
個人再生委員との面談が終わったら、「履行可能性テスト」を実施します。
履行可能性テストとは、再生計画に基づいて弁済を続けられるかを判断するためのテストです。
テスト内容は、再生計画が認可された場合に毎月支払うこととなる金額を、個人再生委員の指定口座に振り込むというものです。毎月1回ずつ、6か月程度にわたって続けます。
履行可能性テストで支払った金額は、個人再生委員の報酬分を差し引いてから返還されます。
履行可能性テストの初回の振込みを予定通りに行わないと、再生手続の開始決定が行われない可能性があります。
また、2回目以降に振込みをやめてしまうと、再生計画の認可が降りない可能性があります。履行可能性テスト期間中は、必ず支払い続けるようにしましょう。
4-7. 個人再生手続開始決定
履行可能性テストの初回の振込みを完了すると、個人再生開始決定の段階になります。
開始決定は申立てから1か月程度で行われることが多いので、この1か月の間に並行して、履行可能性テストの初回の振込みが行われるかチェックされることになります。
4-8. 債権届出期間を経て債権額が確定する
開始決定が出ると、裁判所は債権者に対して、開始決定書を送付するとともに、債権の届出を行うよう通知します。
債権の届出期限は、開始決定から1か月半後に設定されるので、この期限までに債権者が債権届出を行います。
債権届出書は、債務者の弁護士にも送付されます。
提出期限に債権届出書が揃ったら、「債権者一覧表」を作成します。
債権者一覧表には、債権届出書に記載された金額を基に、再生債権額と認めるかどうかの意思表示を記載します。
債権者が認めた場合は、再生計画による弁済を受けることが可能になります。
債権者一覧表に加えて、債務者が作成した「民事再生法第125条の報告書」(再生手続き開始に至った事情や、財産状況など)も提出することになります。
4-9. 再生計画案を提出する
債権額(債務総額)が確定したら、弁護士と相談しながら借金減額後の返済計画をたてて、再生計画案を裁判所に提出します。
再生計画案には提出期限があり、1日でも遅れると提出が認められず、再生手続廃止決定を出されてしまいます。
それまでの労力が無駄になってしまうため、必ず期限までに提出しましょう。
個人再生委員が選任されている場合は、再生計画案に対して助言やチェックを行います。
4-10. (小規模個人再生の場合)債権者による書面決議
小規模個人再生の場合、再生計画案が各債権者に送付され、再生計画案に対する賛否が書面決議の形で行われます。書面決議の回答期間は4週間です。
債権者が回答しなかった場合は、再生計画案に賛成したものとみなされます。
一方、半数以上の債権者が反対した場合、または債権額の過半数を持つ債権者が反対の意思表示をした場合は、再生計画が認可できなくなります。
4-11. 再生計画認可決定
再生計画が裁判所と債権者に認められると、再生計画認可決定が出ます。
再生計画認可決定は官報に公告され、公告掲載から2週間経過すると確定します。
再生計画認可決定が確定すると、個人再生手続は終了します。
4-12. 再生計画に従った弁済を行う
個人再生手続終了後は、再生計画に従って、各債権者に対して分割払いで(減額後の)債務を弁済します。
返済期間は原則として3年ですが、特別の事情がある場合は、最長で5年の分割払いが認められる可能性があります。
5. 個人再生にかかる費用と内訳
本章では、個人再生にかかる費用と内訳をご説明します。
個人再生を行う場合、弁護士に支払う弁護士費用と、裁判所に支払う裁判所費用がかかります。
両者を合計すると、60万円~80万円が相場と言われています。
多くの法律事務所で費用の後払い、分割払い、積立金制度などにより無理なく支払えるように対応しているので、すぐに支払えない場合は支払い方法について相談しましょう。
5-1. 弁護士費用の内訳
弁護士費用の内訳及び相場は、以下の表の通りです。
内訳 | 内容 | 相場 |
---|---|---|
相談料 | 依頼前に弁護士に相談したときに係る費用 | 30分5,000円 初回相談無料対応の法律事務所が多い |
着手金 | ・弁護士の業務開始時に発生する費用 ・返金不可 ・交渉から訴訟に移行する場合再度発生することが多い | 20万円~50万円 |
報酬金 (成功報酬) | ・事件を解決できたときに発生する費用 ・通常は被害者が得られた経済的利益の一定割合に設定 | 経済的利益の10% 着手金不要の場合は最大20% |
日当 | 弁護士が遠方に出張した時に拘束される時間の対価 | 3万円程度 (交通費は含まない) |
手数料 | 事務的な手続きの際に発生する費用 | 所定の手数料額 |
実費 | ・依頼案件を進める中で実際にかかる費用 ・郵便代・収入印紙代・コピー代・交通費など | 3万円~5万円程度 |
5-2. 裁判所費用の内訳
裁判所費用の内訳と相場は以下の表の通りです。
個人再生委員が選任されない場合は、委員報酬は不要になります。
内訳 | 内容 | 相場 |
---|---|---|
予納金 | 申立て手数料・予納郵便切手代、官報公告費その他の実費 | 2万5,000円程度 |
個人再生委員報酬 | 個人再生委員が選任された場合に支払う報酬 履行可能性テストの支払い額に含まれる | 15万円~20万円 |
6. 個人再生の注意点や失敗するケース
個人再生手続はかなり複雑で、申立人(債務者)自身にもさまざまなタスクが課せられます。
弁護士に依頼していれば手続きに失敗する可能性は低いのですが、以下のような点に十分注意してください。
6-1. 書類の提出期限や履行可能性テストの支払義務を守る
個人再生手続きの中で、申立人に課せられる「期限つきの義務」として以下が挙げられます。
- 再生計画案の作成
- 履行可能性テスト期間中の毎月の支払い
- 民事再生法第125条の報告書作成
これらは、義務を怠るとそれ以降の手続きが進められなくなったり、最悪の場合は手続廃止決定がなされてしまいます。つまり、個人再生手続きに失敗することになります。
必ず、決められた義務を守るようにしてください。
6-2.特定の債権者に返済しないようにする
債務整理手続では、「債権者平等の原則」が存在します。特に、裁判所を介した手続きである自己破産と個人再生では、すべての債権者が平等に扱われます。
個人再生の場合、住宅ローンについては例外的に「支払いを継続する」という措置が認められる場合がありますが、それ以外の債権者に対しては、申立て前や申立て後に弁済することは「偏頗(へんぱ)弁済」として法律で禁止されています。
この債権者には、貸金業者や代金債権者のほか、個人も含まれます。たとえ家族であっても、先に借金を返すことはできないので注意してください。
偏頗弁済が発覚した場合、行った弁済の金額分を再生計画に上乗せされます。また、他の債権者の不利益が著しく大きいと判断された場合、個人再生の申立てが棄却される可能性があります。
特に注意したいのが、クレジットカードなどの自動引き落としです。
7. 個人再生以外の債務整理について
債務整理の手段には、個人再生以外に自己破産と任意整理があります。
ここでは、個人再生以外の債務整理手続きについて解説します。
7-1.自己破産
自己破産とは、裁判所に債務の返済不能を申し立てて、借金の支払い免除を認めてもらうための手続です(破産法第15条1項)。
自己破産手続は、債務者の財産状況や、免責不許可事由(破産法第252条1項)の疑いの有無などによって、同時廃止事件と管財事件(または少額管財事件)に分けられます。どちらを行うかについては、裁判所が決定します。
同時廃止事件に振り分けられるのは、債務者に主だった財産がなく、免責不許可事由の疑いがない場合です。
債務者に一定の財産がある場合や、免責不許可事由の疑いがある場合は管財事件/少額管財事件となります。
管財事件/少額管財事件では、裁判所に選任された破産管財人が一定の財産を換価処分して債権者に配分します。
司法統計によると、近年の自己破産手続の申立て件数は年間約7万件となっています。
参照:司法統計 令和4年版
7-2. 任意整理
任意整理とは、弁護士などの専門家(以下、便宜上「弁護士」と表記)が、債権者との間で将来利息の削減や返済期間などについて交渉して和解契約を成立させ、契約で定めた返済計画に沿って債務者が分割返済を行うという方法です。
「返済計画に沿って分割返済を行う」点では個人再生と共通しますが、任意整理の場合は裁判外の和解交渉によって手続きを進めるところが異なります。
任意整理の手続利用者については、自己破産や個人再生のように公的な統計が存在しないのですが、1年間で200万件以上あるといわれています。
7-3.各手続の比較
自己破産・個人再生・任意整理の各手続きについて、重要点を比較すると以下の表のようになります。
自己破産 | 個人再生 | 任意整理 | |
---|---|---|---|
最大のメリット | 借金がゼロになる | マイホームや自家用車などを手放さずに借金の大幅減額が可能 | ・費用が安い ・過払い金がある場合は相殺を受けられる |
借金の減額幅 | 原則として全額 | 遅延利息及び元本の一定割合 | 遅延利息及び将来利息のカット |
手続要件 | 借金が返済不能であること | ・債務総額5,000万円以下 ・安定した収入がある | 設定した期間内に返済できる収入がある |
不動産・車などの重要財産の処分の必要性 | 20万円以上の価値のある財産は原則として換価処分が必要 | 不要 | 不要 |
債権者の同意 | 不要 | 必要な場合がある | 必要 |
手続中の職業・資格制限の有無 | あり | なし | なし |
金融事故情報(ブラックリスト)登録の有無 | あり (手続終了から5年~10年) | あり (手続終了から5年~10年) | あり (債務完済から5年~10年) |
官報への住所・氏名掲載 | あり | あり | なし |
手続費用の目安 (裁判所費用+弁護士費用) | 同時廃止:30万円~40万円 管財事件:70万円~110万円 少額管財事件:50万円~80万円 | 60万円~80万円 | 債権者数×5万円~10万円 |
手続に要する期間 (準備期間含む) | 4か月~12か月 | 6か月~12か月 | 3か月~6か月 |
8. 個人再生をはじめ借金に悩んだら弁護士に相談、依頼するメリット
借金問題について弁護士に相談、依頼することには以下のようなメリットがあります。
8-1. 個別の事情に合わせた最適な解決策を提案してもらえる
借金問題を抱える方の多くは「借金をなんとかしたいが、どのような手段をとればよいかわからない」あるいは、「自己破産したほうがよいのか、他の方法をとったほうがよいかわからず迷っている」という状況ではないでしょうか。
借金問題について弁護士に相談することで、その方の状況に照らして、どの手続きを行えばよいかについて提案を受けられます。
また、住宅ローンが残っている場合は、家を手放すのはやむをえないか、手放したくないかの意向に合わせた最善の方策についてアドバイスが受けられます。
8-2.債権者の取り立てがストップする
借金問題を抱える方の多くは、債権者からの頻繁な督促の通知や電話に悩まされているのではないでしょうか。
弁護士に借金問題の解決を依頼すると、弁護士が速やかに債権者に対して受任通知を送付します。
弁護士から受任通知を受け取った場合、貸金業者は以後、債務者に対する取立て行為が禁止されます(貸金業法第21条1項9号)。
ひとまず、貸金業者からの取立てが止まるだけでも、本人や同居の親族の方のストレスが軽減されるでしょう。
8-3.裁判所での手続や債権者との交渉を任せられる
自己破産及び個人再生を行う場合、裁判所での手続が必要になります。
また、任意整理を行う場合は、整理対象の債権者と交渉して和解を成立させなければなりません。
いずれの場合も、債務者本人が行うことは困難です。
弁護士に依頼することで、借金問題解決のための手続をすべて任せることができます。
9. 個人再生に関するよくあるQ&A
本章では、個人再生に関して頂くことが多い質問と、それに対する回答をご紹介します。
9-1.個人再生委員は必ず選任されるのですか?
個人再生委員が選任されるかどうかは、申立てを行った裁判所が、事件に応じて判断します。
東京地裁の場合は、すべての申立人に個人再生委員が選任される運用になっています。
それ以外の裁判所では、「債務者が、再生計画どおりに支払いを続けることが可能であるか疑わしい」と判断された場合に、個人再生委員が選任される傾向があるといえます。
9-2.個人再生を行う人はどのくらいいますか?
司法統計によると、個人再生の申立て件数については、2020年は12,841件、2021年は11,249件、2022年は9,764件となっています。
自己破産(年間約7万人)、任意整理(推計で年間200万人以上)と比べると利用者が少ないのは、手続きの複雑さにより費用が高くなりやすいこと、申立人に安定した収入が求められること、保証人に負担がかかることなどの影響のほか、自己破産・任意整理と比べると認知度が低いことなども考えられます。
10. まとめ
個人再生手続きは、自己破産や任意整理と比べると手続きが複雑で時間もかかります。
また、申立て後のスケジュールも緻密に定められていて、申立人自身が義務を課せられ、守らなければ手続きが進まない、最悪の場合手続きが失敗に終わってしまうことになります。
しかしながら、債務整理を得意とする弁護士に依頼すれば、無事に手続きを進められるようサポートを受けられるので、失敗を心配する必要はありません。
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- 債権者からの督促が止まる
- 弁護士に依頼することで、債権者からの厳しい督促や取り立てがストップします。これにより、精神的な負担が軽減され、問題解決に向けて冷静な行動を取れるようになります。
- 状況に合せた最適な解決法の提案
- 弁護士は、任意整理、個人再生、自己破産などの手続きの中から、状況に合わせた最適な解決方法を選択し、手続きを進めます。これにより、スムーズな解決が期待できます。
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- 弁護士に依頼することで、債務整理の手続きの手間を大幅に減らすことができます。弁護士が代理人として交渉や手続きを行うため、あなたは日常生活や仕事に集中できます。
- 家族に知られずに手続きが可能
- 弁護士が債権者との連絡窓口となるため、家族に知られることなく手続きを進めることができます。これにより、家族に心配をかけずに問題を解決することができます。
担当者
-
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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