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名義貸しは違法?ケース別の罪の重さや対処法などを弁護士が解説

名義貸しは違法?ケース別の罪の重さや対処法などを弁護士が解説
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「親しい友人に、起業するので融資受けるのに名前を貸してほしいといわれました。これまで色々助けてもらったので承諾したのですが、もし返済ができなくなったら私が責任を負うことになるのでしょうか?」

「息子が、自動車ローンを組みたいけど自分はブラックでできないから契約者になってくれないかといってきました。どうしても車が必要だというので承諾したのですが、年金暮らしなので、もし息子が払えなくなった場合のことを考えると不安です」

このように、家族や親しい人から「名義貸し」を頼まれた場合、断れずに応じてしまう方も多いのではないでしょうか。

名義貸しは基本的に違法です。また、名義を貸した側にもさまざまなリスクがあるので、行うべきではありません。

それでは、相手から懇願されて名義貸しをしてしまったという場合は、どのように対処すればよいでしょうか。

本記事では、名義貸しについて、以下の点を中心に弁護士が解説します。

  • 名義貸しが行われる場合とその名義貸しの違法性
  • 名義貸しを行った場合のリスク
  • 名義貸しを頼まれた場合の対処法
  • 名義貸しをして借金の返済義務を負った際の対処法

目次

1. 名義貸しとは

名義貸しとは、契約や役所への許認可申請などで、実際の当事者が他人であるにもかかわらず、自身の名の使用を許諾することをいいます。

本来は、契約や申請を行う当事者が本人の名義でそれを行うべきところ、何らかの事情でそれができないときに、自分の名義を使わせてあげるということです。

ここでは、名義貸しが行われる理由や、特に借金の名義貸しで名義を貸した側が負うリスクについて解説します。

1-1. 名義貸しが行われるのはなぜか

名義貸しが行われる理由として、具体的には以下のようなものがあります。

  • 本人がブラックリストに載っている(信用情報機関に事故情報が登録されてクレジットカード作成・利用・ローン契約などができない状態になっている)
  • リスクのある会社を経営することになったが本人が自分名義で取引したくない
  • 犯罪行為に利用する口座や携帯電話番号を必要としている

これらのように、おおむね「本人が自分の名義を使えない」あるいは「本人が自身の名義を使うことのリスクが大きいため、自身の名義を使うのを避けたい」場合に、名義貸しが行われるといえます。

1-2. 借金での名義貸しはリスクが大きい

名義貸しが行われやすいのは、ブラック状態の人にカードローン契約者名義を貸してほしいと頼まれる場合です。

しかし、カードローンの名義を貸すことそのものが違法である上、法律上はカードローンの返済義務や、延滞した場合の延滞損害金の支払い義務を負うのはあくまでも名義人、つまり名義を貸した側です。

「名義を貸しただけだ」という主張をしても、これらの義務がなくなるわけではありません。

特に、延滞した場合に支払いをしないでいると、信用情報機関に「異動情報」が登録され、クレジットカードの利用やローン契約ができなくなってしまいます。

借金の名義貸しは、頼まれても応じないようにしてください。

2. 名義貸しは違法なの?ケース別の罪の重さ

名義貸し行為が行われた場合、名義を借りた人(または会社)は、契約者名義(名義を貸した人の名義)を装って取引を行うことになります。

言い換えれば、取引の相手方に対して、嘘の情報(契約者名義)を伝え、その情報に基づいて取引を行っているため、名義を借りた人の行為は詐欺罪(刑法第246条1項)に該当する可能性があります。

また、名義を貸した人には、詐欺罪の共犯(共同正犯:刑法第60条または幇助犯(同第62条1項)が成立するケースがあります。

ここでは、ケース別に、名義を借りる行為・貸す行為それぞれの違法性や、詐欺罪などの犯罪に該当するか否かを解説します。

2-1. ブラックリスト状態の人に名義を貸す場合

ブラックリスト状態の人に契約者名義を貸した場合、名義を借りた人が契約の相手方(カード会社、貸金業者など)に対して「事故情報登録がない人が契約者である」と騙して金銭消費貸借契約を締結することを意味します。

この場合、名義を借りて契約する行為に対して詐欺罪が成立する可能性があります。

また、名義を貸す行為に対しても、関与の度合いによって詐欺罪の共同正犯(共同して犯罪を実行すること)または幇助罪(実行犯の手助けをする行為)が成立します。

つまり、ブラックリスト状態の人に対して名義を貸してローン契約や借り入れを行った場合は、名義を借りる行為も貸す行為も犯罪になりうるということです。

2-2. 犯罪目的の人に銀行預金などの名義を貸す場合

銀行口座開設のために名義を貸すことは、名義を借りる側の意図を問わず、犯罪収益移転防止法に違反する違法な行為です。

同法は、犯罪で得た収益を、資金の出所をわからなくするために架空または他人名義の金融機関口座等を利用して移動させる「マネーロンダリング」を防止するための法律です。

同法は、銀行口座の譲渡等が罰則をもって規制されています。

口座の名義を貸すことは、自分名義の口座を他人に利用させているといえます。これは、法的には口座を他人に譲渡したものとみなされる可能性があります。

この場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑に処せられます(犯罪収益移転防止法第28条1項)。

2-3. リスクのある会社の代表名義を自分に押し付けられた場合

親しい友人等が、会社を設立する際に「名前だけでも代表取締役になってほしい」と頼んできたので、それまでの関係などから断り切れず応じてしまうというケースがあります。

この場合、名義を貸した側は「表見代表取締役」となります。

この行為自体は違法ではありません。しかし、法的には、代表取締役としての責任を負う点に注意が必要です。

たとえば、代表取締役は会社の業務執行を監督する義務が生じるため、会社が第三者に損害を与えた場合などに、責任を逃れることはできません(会社法第354条)。

2-4. 個人・法人名義の許認可や資格を利用する場合

たとえば、ある会社が建設業の許可を受けるためには、建設業法上、経営業務管理責任者や専任技術者を確保する必要があります(建設業法第7条2号ロ・ハ)。

経営業務管理責任者や専任技術者には誰でもなれるわけではなく、それぞれ一定の資格や要件を備えていなければなりません。

そこで、会社が人材を確保するために、経営業務管理責任者や専任技術者の有資格者に「名前だけ貸してほしい」と依頼する、ということが起こりえます。

しかし、実際に営業に関与しない人物の名前で建設業許可申請を行うのは、建設業法で禁止された「虚偽の申請」にあたり、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(建設業法第50条1項1号)。

このように、個人や法人の名義の許認可や資格を利用する行為は、それぞれの業法に違反し、罰則を科せられるので行ってはいけません。

3. 名義貸しを行った際のリスク

名義貸しを行った際には、以下のようなリスクがあります。

3-1.自分名義の口座や電話番号が犯罪行為に利用される

自分名義の銀行口座や携帯電話番号を貸した場合、振り込め詐欺などの犯罪行為に利用され

また、自分名義で契約した携帯電話を、携帯電話会社に無断で第三者に譲渡することは「携帯電話不正利用防止法」に違反します。

3-3.契約違反として損害賠償請求される

契約取引では、当事者本人が取引を行うことが前提になっています。

契約締結後に名義貸しの事実を知られた場合、当事者間の信頼関係を破壊する行為として、契約の解除事由に該当する可能性があります。

契約を解除された場合、相手方から損害賠償請求される可能性があります(民法第545条4項)。この場合、名義を使用した人と連帯して、名義を貸した人(会社)が損害賠償義務を負うことになります。

3-4. 本人の契約責任を連帯して負担することになる

貸した名義が株式会社など、商法上の「商人」にあたる場合は、名義を信頼して取引を行った相手方に対して、その取引によって生じた債務を、名義を貸した相手と連帯して弁済する責任を負います(商法第14条)。

また、貸した名義が個人名などで「商人」に該当しない場合であっても、権利外観法理(民法第94条2項類推適用)※によって、名義を貸した相手と連帯して責任を負うことになる可能性があります。

名義貸しを行った人が全く取引に関与していなかったとしても、名義という「虚偽の外観」を作ることに加担した以上、その外観を信頼した相手方に対しては責任を逃れられないので、注意が必要です。

※虚偽の外観があり、その虚偽の外観を作出したことについて、意思表示をした者に帰責性があり、その虚偽の外観を第三者が信頼したときは第三者の利益を保護するという法理です。名義貸しの場合、取引を行う法人・個人の名義が「虚偽の外観」にあたります。

4. 名義貸しを頼まれた場合の対処法

名義貸しを頼まれた場合の対処法として、以下が挙げられます。

4-1. リスクを説明して断る

最善の方法は、名義貸しによるリスクを丁寧に説明した上で明確に断ることです。

リスクを説明する場合は、名義を借りる側のリスクについても具体的に説明するようにしましょう。

4-2. 現金のみを貸す

借金の契約者名義貸しを頼まれた場合で、家族から懇願されたなどのやむを得ない場合は、

「貸せる範囲の現金のみを貸す」ようにしましょう。

名義貸しによって被る可能性のある重大な不利益と比較すれば、現金を貸すことによるリスクは相対的に小さいといえるでしょう。

5. 名義貸しをして借金の返済義務を負った際の対処法

名義貸しをした相手が借金をした場合、返済義務を負うのは債務者、つまり名義を貸した人です。

この場合、名義を貸した人がとりうる方法としては、以下の3つがあります。

自分で返済してから名義を貸した相手に求償する

求償権とは、他人の債務を弁済した人が、本来の債務者に対して弁済額の返還を請求する権利をいいます。

求償権を行使できるのは、債務を弁済している場合に限られます。

また、求償権を行使しても、相手から支払ってもらえるとは限りません。

法律的には、求償権を行使して相手から支払いを受けられなかった場合は、訴訟提起して請求が認められれば相手の財産を差し押さえることができます。

しかし、訴訟で勝訴判決を得ても、相手方に弁済額分の財産がなければ差押えもできません。

名義を借りて借金する人に十分な財産があるとは考えにくいので、求償によって弁済額を回収できる可能性は低いといえるでしょう。

5-2.債権者と交渉して分割払いを認めてもらう

名義を貸しただけのつもりであっても、債権者に対しては返済義務を負うことになります。

従って、名義を借りた人が支払えない場合に、債権者に対して「支払いたくない」あるいは「名義を借りた人に請求してほしい」などと申し入れても、債権者が承諾してくれることはないでしょう。

請求額を一括で支払えない場合は、債権者と交渉して分割払いを認めてもらうようにしましょう。

その上で、1回あたりの支払額について、名義を借りた人に一部を負担できないか話し合う

ようにしてください。

5-3. 債務整理を検討する

負担する借金の額が大きすぎて、一括はもちろん分割払いでも返済が難しい場合は、債務整理を検討しましょう。

債務整理とは、借金問題を解決するための各種の制度を指します。債務整理の手続きには、主に任意整理、自己破産、個人再生の3種類があります。

任意整理は、債権者と裁判外で和解交渉を行い、主に将来利息を削減して、元本を3年~5年かけて分割返済する手続きです。

個人再生は、裁判所で申立てを行い、作成した再生計画が認められれば債務額を最大で100万円まで削減した上で、3年~5年かけて分割返済する手続きです。

自己破産は、裁判所で申立てを行い、処分可能な財産がある場合は換金して債権者に分配する手続きです。免責が認められれば借金がゼロになります。

それぞれ、メリットとデメリットがあるので、どの手続きを行うのが適切であるかを弁護士に相談しましょう。

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6. 借金問題や債務整理を弁護士に相談、依頼するメリット

借金問題や債務整理について、弁護士に相談、依頼することには以下のようなメリットがあります。

6-1. 個別の事情に合わせた最適な解決策を提案してもらえる

借金問題を抱える方の多くは「借金をなんとかしたいが、どのような手段をとればよいかわからない」あるいは、「自己破産したほうがよいのか、他の方法をとったほうがよいかわからず迷っている」という状況ではないでしょうか。

借金問題について弁護士に相談することで、その方の状況に照らして自己破産したほうがよいか、他の手段をとるほうがよいかについて提案を受けられます。

また、住宅ローンが残っている場合は、家を手放すのはやむをえないか、手放したくないかの移行に合わせた最善の方策についてアドバイスが受けられます。

6-2. 債権者の取り立てがストップする

借金問題を抱える方の多くは、債権者からの頻繁な督促の通知や電話に悩まされているのではないでしょうか。

弁護士に借金問題の解決を依頼すると、弁護士が速やかに債権者に対して受任通知を送付します。

弁護士から受任通知を受け取った場合、貸金業者は以後、債務者に対する取立て行為が禁止されます(貸金業法第21条1項9号)。

ひとまず、貸金業者からの取立てが止まるだけでもストレスが軽減されるでしょう。

6-3.裁判所での手続や債権者との交渉を任せられる

債務整理の手段として自己破産及び個人再生を行う場合、裁判所での手続が必要になります。

また、任意整理を行う場合は、整理対象の債権者と交渉して和解を成立させなければなりません。

いずれの場合も、債務者本人が行うことは困難です。

弁護士に依頼することで、借金問題解決のための手続をすべて任せることができます。

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7. 名義貸しに関するよくあるQ&A

本章では、名義貸しに関して頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

7-1. 家族への名義貸しも違法になりますか?

名義貸しは、相手が家族であっても違法です。

ただし、次のようなケースでは、契約の名義人と実質的な契約者が異なっていても違法ではない場合があります。

  • アパートなどの賃貸借契約において、実際の賃借人が未成年者で、未成年者の親が名義人になっている場合
  • 自動車ローンなどを配偶者名義で組んでいる

もっとも、このような場合でも、契約の相手方が「契約の名義人と実質的な契約者の不一致」について知らなかった場合、相手方に損害を与える可能性があります。名義人が異なれば、契約の条件も変わってくる場合があるからです。

そこで、契約の相手方に対しては、必ず家族名義での契約が可能かどうかを確認してください。

7-2. 借金の名義貸しをした相手が返済できなくなり、返済義務を負わされてしまいました。支払えないので自己破産を考えていますが、認められるでしょうか?

名義貸しをした場合も、自己破産の申立ては可能です。

しかし、名義貸しをしたことが、免責不許可事由の1つである「詐術による信用取引」(破産法第252条1項5号)に該当し、免責が認められない可能性があります。

また、名義を貸した相手が、多額の借金をする可能性があることをわかっていながら名義を貸した場合、その金額や借金の原因によっては、「浪費によって過大な債務を負担したこと」(同条1項4号)に該当するとみなされる可能性もあります。

免責不許可事由があっても、必ず免責不許可になるわけではなく、裁判所が裁量免責により免責許可決定を行う可能性があります(破産法第252条2項)。

ただし、名義貸しを行っていた場合は、免責が認められても、管財事件となるため裁判所・弁護士に支払う費用が多くなり、また時間もかかってしまう可能性があります。

なぜなら、名義貸しを行っていた場合は、名義を貸した人が債務を全く弁済せずに自己破産を申し立てることは少なく、債務の一部を弁済したが残りの支払いが困難になったというケースが多いからです。

名義を貸した人が債務の一部を弁済した場合、名義を貸した人は、名義を貸した相手に対してその弁済額の返還を請求する権利があります。

これが「回収可能な財産」となるため、財産を回収しなければ破産手続きを終了できなくなります。

そのため、財産を回収する「管財人」が選任される「管財事件」になることが多くなります。

管財事件になった場合、裁判所に対して支払う費用と弁護士費用を合わせると、通常50万円~110万円ほどかかります。

また、管財人との打ち合わせや債権者集会などの手続きが必要になるため、弁護士に相談してから手続き終了まで1年以上かかる可能性があります。

ただし、回収可能な財産があれば必ず管財事件になるとは限りません。名義を貸した相手が逃亡していて請求が困難だったり、逃亡していなくても財産が全くないため返済できないという可能性もあります。

財産を回収できるかどうかについては、自己破産申立ての前に、弁護士が調査を行って判断します。回収不可能であると判断すれば、費用も期間も少なく済む「同時廃止事件」の決定を受けられる可能性があります。

このように、名義貸しを行っていた場合は、免責が認められない、あるいは免責が認められるが管財事件となって手続き費用が100万円を超える可能性がある、などのリスクがあることは否定できません。

手続きを弁護士に依頼することで、裁量免責が認められる可能性があるか、同時廃止事件にできる可能性があるかなどを調査・判断した上で自己破産の申立てを行うので、リスクを抑えることができます。

8. まとめ

名義貸しを行うことは、詐欺罪(共同正犯・幇助犯)に該当する場合があるほか、違法ではないケースでも名義人としての責任を負うことになります。また、社会的信用を失うおそれもあります。

たとえば借金の名義貸しをした場合は、多額の債務を負うリスクがあります。

名義貸しを頼まれて迷っているという状況であれば、名義を貸した側・借りた側双方のリスクを説明して断るのがベストです。

すでに名義貸しを行った方は、責任を負うことは致し方ないのですが、弁護士に相談することで、名義貸しをした方の個別の状況に沿った問題解決方法の提案と、手続きのサポートを受けられます。

私たち法律事務所リーガルスマートは、借金問題・債務整理の専門チームがございます。初回無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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