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交通事故の症状固定とは?納得できない際の対処法を弁護士が解説

交通事故の症状固定とは?納得できない際の対処法を弁護士が解説
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「交通事故でむち打ちになったので通院治療しているのですが、週2回、4か月くらい通院したタイミングで保険会社から症状固定なので治療費を打ち切るといってきました。まだ痛みも残っているし、通院している整形外科でも症状固定とは言われていません。保険会社から治療費を打ち切られたら、治療をやめないといけないのでしょうか?」

このように、交通事故でケガをして通院治療している途中で保険会社から「症状固定」と言われることがあります。また、医師から言われることがあるかもしれません。

症状固定と言われた場合、そのまま治療をやめてしまうと、十分な慰謝料や損害賠償を受けられなくなるので注意が必要です。

本記事では、交通事故の症状固定をめぐってトラブルになった場合の対処法について、症状固定後に行うべき後遺障害認定申請や示談の手続きなどとあわせて交通事故に強い弁護士が解説します。

1. 医師の症状固定に納得できない場合どうするべきか

担当医から「症状固定になった」と言われた時点で、まだ症状が改善している実感があり納得がいかない場合は、その旨を伝えて治療継続をお願いしてみましょう。

ここで注意すべきなのは、担当医が治療継続について承諾したとして、それ以降の治療が①「未だ症状固定に至っていない」前提で行うものなのか、②症状固定になった前提で任意で行うものなのかで、保険会社に請求できる治療費や慰謝料の額が違ってくることです。

担当医が症状固定を先延ばしにすることに承諾した場合は、それ以後の治療費や入通院慰謝料についても請求できます。

しかし、担当医が「症状固定」の診断を変更しないという意思であれば、それ以後の治療費や入通院慰謝料は請求できなくなってしまいます。

後者の場合は、他の病院にセカンドオピニオンを求めることも検討しましょう。

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2. そもそも症状固定とは

症状固定とは、交通事故で負った怪我が、治療を続けてもそれ以上症状が改善する見込みがなくなった状態をいいます。

2-1. 症状固定の重要性

「症状固定」が重要な意味を持つのは、交通事故の被害者が請求できる項目を分ける区切りとなるためです。

損害賠償の区分では、症状固定前は「傷害分」、固定後は「後遺障害分」と定められています。

傷害分と後遺障害分では、それぞれ請求できる費目が異なります。

傷害分(症状固定前)後遺障害分(症状固定後)
請求できる損害賠償費目・治療費
・交通費
・付添看護費入院雑費
・休業損害入通院慰謝料 など
・後遺障害慰謝料
・後遺障害逸失利益 など

症状固定前後で請求できる権利について、詳しくは次章でご説明します。

2-2. 症状固定は誰が決めるのか

症状固定については、医学的な観点から判断する必要があるので、原則として医師が決定します。

ただし、医師から症状固定を告げられた時点でまだ痛みなどの自覚症状が残っている場合は、治療を継続できるか医師に相談しましょう。

2-3. 症状固定の時期

症状固定の時期については、ケガの種類や個別の受傷状況によって異なります。

症状別の症状固定のタイミングは、おおむね以下の通りです。

怪我・症状症状固定までの期間の目安備考
打撲1か月~3か月重症の場合は3か月程度かかる場合がある
むちうち(頸椎捻挫)3か月~6か月最大1年半程度かかる場合がある
骨折6か月~1年骨折箇所や手術の有無などにより1年以上かかる場合がある
醜状障害6か月~レーザー治療などにより痕跡を改善する場合は2年以上かかる場合がある
高次脳機能障害1年~リハビリによる症状改善が見込めなくなった段階で症状固定となる
遷延性意識障害1年半多くの場合救急病院から転院後半年~1年間様子を見る
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3. 症状固定になったら何がどう変わるのか

症状固定になった場合、具体的にどのようなことが起き、あるいはどのような行動を取る必要があるでしょうか。

3-1. 治療費・入通院慰謝料の対象期間が終了する

前章で述べたように、事故発生から症状固定までは、加害者側の保険会社に対して治療費(及び交通費などの治療関連費用)、入通院慰謝料などを請求できます。

症状固定によって治療費・入通院慰謝料の対象期間が終了するので、症状固定以後は、それらの費目の請求ができなくなります。

3-2. 症状固定後は後遺障害に対する賠償金が生じる

症状固定後は「治療で改善できなかった症状(後遺症)が残る」ことになるので、後遺障害に対する賠償請求権(慰謝料請求権、逸失利益支払請求権)が発生します。

ただし、症状固定前の治療費や入通院慰謝料と異なり、被害者が後遺障害に対する賠償請求権を行使する上で、後遺障害等級認定を受けていることが条件となります。

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4. 症状固定に関するトラブルとその対処法

症状固定に関するトラブルは、主に被害者本人の意向に反して、医師または保険会社、あるいはその両方から症状固定といわれてしまった場合に起こりえます。

ここでは、症状固定に関して起こりえるトラブルと、その対処法を解説します。

4-1.保険会社から症状固定を打診された場合

症状固定に関わるトラブルで一番起こりやすいのが、保険会社からの症状固定(治療費打ち切り)の打診があった場合です。

保険会社としては、自社の支払額の負担を減らすために、早期に症状固定に持ち込み、さらに後遺障害認定を受けさせないようにしようと考えます。

たとえば、むちうちで後遺障害認定を受けるためには、約6か月間、適切な頻度で通院治療することが必要といわれています。

一方、保険会社には「DMK136」という指標があります。これは交通事故のケガ・症状として代表的な「打撲・むちうち・骨折」の頭文字と、それぞれの症状固定までの期間の目安(1か月・3か月・6か月)を表したものです。

そして、むちうちの治療期間が3か月を経過した時点で、この指標に従って症状固定を打診してくる可能性が高いでしょう。

むちうちの症状が軽度であれば、3か月程度で完治することも多いです。しかし、3か月たった時点で完治していないが、症状が改善している感覚があるとすれば、治療を継続すべきと言えます。

その時点で症状固定といわれても承諾せず、治療を続けたい旨を伝えてください。

保険会社の担当者の態度が強硬で、交渉が難しいと感じられた場合は、弁護士にご相談ください。

4-2.医師から症状固定の先延ばしを拒否された場合

症状固定の判断は医師が行うので、医師から症状固定といわれた場合は、基本的には受け入れなければならないでしょう。

ただ、まだ治療によって症状が改善している実感があるとすれば、その旨とあわせて治療の継続をお願いしてみましょう。

医師が症状固定の先延ばしに同意してくれた場合は、保険会社に対しても「担当医はまだ症状固定に至っていないと判断した」と主張できます。

しかし、症状によっては先延ばしできないといわれる可能性があります。

この場合は、以下のように2通りの対処の仕方があります。

  1. 症状固定の判断を受け入れるが、治療は健康保険を使うなどして継続する
  2. 症状固定の判断を受け入れた上で、その病院での治療を終了し、別の病院の医師の診察を受けて、症状固定の判断が妥当であるか意見(セカンドオピニオン)を求める

症状固定に至っていないと診断された場合は、転院して治療を継続する

ただし、2番目の方法による場合は、通常保険会社は治療費の支払いを打ち切り、その後の治療の必要性を争ってきます。

「保険会社と争ってでも、転院先の医師に症状固定と言われるまで治療を続ける」だけの根拠が求められるでしょう。

4-3. 医師が症状固定を認めてくれない場合

逆に、被害者本人は後遺障害申請をしたいので医師に症状固定の診断を受けたいが、医師が症状固定を認めてくれない場合もあります。

医師として、少しでも患者の症状を改善させたい気持ちから、症状固定と判断するのに抵抗を感じるということもあるでしょう。

しかし、症状が改善しなくなっているのに治療を続けていると、以下のような問題が起こるおそれがあります。

  • 損害額が確定しないため、示談交渉を開始できない
  • 加害者側の保険会社から「治療が不当に長引いた」として慰謝料を減額される

被害者本人として、症状が改善していないと思われる場合は「症状固定はいつ頃になりそうでしょうか」あるいは「いつぐらいまで治療を続ける必要があるでしょうか」などと担当医に聞いてみることをおすすめします。

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5. 症状固定後の流れについて

ここで、症状固定後に行うべき手続きの流れを解説します。

5-1. 症状固定から示談まで

症状固定から示談までは、後遺障害等級認定申請の手続きを行います。

(1)後遺障害診断書作成

医師に後遺障害診断書作成を依頼します。また、その他の必要書類を準備します。

(2)後遺障害等級認定申請

申請方法には、加害者側の任意保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者自身で書類を収集・作成する「被害者請求」の2通りがあります。

事前認定の場合は任意保険会社に、被害者請求の場合は自賠責保険会社に必要書類を提出します。

(3)後遺障害等級認定の審査結果通知受領と保険会社への連絡

申請から1~2か月ほどで、後遺障害等級認定の審査結果通知が届きます。

認定を受けた場合は、他の必要書類とともに保険会社に郵送してください。

認定を受けられなかった場合、または希望する等級よりも低い等級の認定を受けた場合は、異議申立てを行うかどうかを決めます。

異議申立てを行う場合は、必要な手続きを行ってください。

異議申し立てを行わない場合は、示談交渉の必要書類を保険会社に郵送します。

5-2. 示談から示談金獲得まで

後遺障害認定申請の審査結果受領後、示談から示談金獲得までは以下の流れで行われます。

(1)加害者側の保険会社から示談書案送付

加害者側の保険会社に必要書類を送ると、2週間~1か月程度で保険会社から示談書案が送られてきます。

示談書案の内容に納得した場合は、署名・捺印して保険会社に返送します。

(2)保険会社と示談交渉

示談書案に訂正すべき点がある場合は、自身の希望する示談金額などの条件に付いて書面で送付した上で、電話やFAXなどにより示談交渉を行います。

(3)示談成立・示談金獲得

保険会社と交渉の上、修正された示談案に合意できれば、署名・捺印してください。

示談書案に署名・捺印すると示談が成立します。

示談成立後、2週間程度で被害者が指定した口座に示談金が振り込まれます。

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6. 症状固定のトラブルで困ったら弁護士に相談、依頼するメリット

症状固定をめぐるトラブルで困ったときに弁護士に相談、依頼することには、以下のようなメリットがあります。

6-1.保険会社との交渉を依頼できる

治療の途中で加害者側の保険会社から「症状固定」といわれた場合、担当者の口調に気おされて同意してしまう方も少なくありません。

また、症状固定について書面を送付された場合も、異議を述べられないかもしれません。

しかし、保険会社に言われるままに治療をやめてしまうと、それ以後の治療費や入通院慰謝料を請求できなくなるだけでなく、後遺障害認定が認められなくなる可能性が高くなってしまいます。

保険会社との交渉を弁護士に依頼することで、医師から症状固定の診断を受けていないことや、被害者本人が治療継続を希望していることなどを適切に伝え、治療継続に同意してもらえるように説得できます。

6-2.慰謝料額を増額できる可能性が高い

症状固定のトラブルを弁護士に相談することで、加害者側の保険会社との示談交渉で慰謝料額を増額できる可能性も高くなります。

まず、症状固定の時期を先延ばしにできたことで、延長した期間分の入通院慰謝料の増額を見込めます。

また、示談交渉を弁護士に依頼することにより、保険会社が用いる基準よりも大幅に高額の基準である弁護士(裁判所)基準に基づいた慰謝料額の主張が可能になります。

たとえば、むちうちで3か月通院した時点で症状固定の打診に応じて示談した場合、保険会社から受け取れる入通院慰謝料は、自賠責基準の25万8,000円に多少上乗せした程度です。

これに対して、症状固定を6か月まで延ばした上、弁護士基準によって受け取れる入通院慰謝料は89万~116万円程度となります。

また、症状固定時期を先延ばしにできることで、後遺障害認定を受けられる可能性も高くなります。

むちうちで後遺障害等級14級9号の認定を受けた場合、弁護士基準による後遺障害慰謝料110万円に加えて、労働能力に支障が出た場合は後遺障害逸失利益も請求可能になります。

実際には過失相殺や個別の事情による調整が入るので、弁護士基準の慰謝料額をそのまま受け取れるわけではありません。

しかし、保険会社の申し入れをそのまま受け入れた場合に比べて、慰謝料額を大幅に増額できることをご理解いただけると思います。

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7. 症状固定に関するよくあるQ&A

本章では、症状固定に関して頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

7-1.症状固定後もリハビリや治療が必要であれば、通院を続けることはできますか?

医師から「症状固定」の診断を受けた後でも、通院を続けることは可能です。

ただし、症状固定後は、治療費を含めた損害について加害者側に賠償請求することはできないため、自費で支払わなければなりません。

交通事故による怪我の治療であっても健康保険は利用できるので、症状固定後も通院を続けたい場合は健康保険で支払いましょう。

なお、症状固定後であっても、治療やリハビリを続けないと症状が悪化するおそれがある場合は、症状固定後の治療費も請求できる可能性があります。

この場合は、「症状悪化を防ぐために治療やリハビリの継続が必要である」旨の診断書を担当医に作成してもらいましょう。

7-2.症状固定から後遺障害申請を経て示談成立まではどのくらい時間がかかりますか?

一概にはいえないのですが、症状固定から示談成立までの各プロセスでかかる期間はおおむね以下の通りです。

  1. 後遺障害診断書作成:1か月程度
  2. 後遺障害認定申請の審査期間:1~2か月
  3. 後遺障害認定の審査結果通知から示談書案送付まで:1~2か月
  4. 示談書案送付から示談成立まで:数日~2週間程度

4は、加害者側の保険会社の提示する賠償金額に争いがない場合です。

ただし、保険会社の提示する賠償金額をそのまま受け入れることはおすすめできません。

後遺障害認定を受けた場合でも、特に弁護士に交渉を依頼していない場合は、保険会社の提示する後遺障害慰謝料額が自賠責基準に近い額であることが少なくありません。

示談成立までに時間がかかってしまうことは否定できないのですが、本来受け取れるべき後遺障害慰謝料額を認めてもらうためにも、示談交渉にあたっては弁護士への相談をおすすめします。

また、示談交渉の最初から弁護士に依頼している場合でも、弁護士基準による後遺障害慰謝料を主張するため、保険会社に認めてもらうまでに時間がかかる可能性があります。

しかし、論点を明確にした上での交渉が可能なので、保険会社が弁護士の主張をすぐに受け入れなかった場合でも、1~2か月程度で解決できると思われます。

なお、後遺障害慰謝料については、後遺障害認定申請を被害者請求方式で行うことにより、(認定を受けた場合)認定と同時に自賠責保険分の支払いを受けられます。

7-3. 保険会社に電話で症状固定と言われたら、その場ではどう返答すればよいですか?

保険会社は、いきなり「症状固定にします」と切り出すことはあまりありません。多くの場合、被害者に治療の経過を聞いた上で「そろそろ症状固定にしましょう」などと申し入れてきます。

そこで、最初に治療の経過を聞かれたときに、「症状固定」の結論を出させないための答えとして「週〇回通院して治療し続けて、〇〇(怪我をした部位)の痛みがおさまってきている」など、治療によって改善している点を具体的に伝えるようにしてください。

ここで気を付けたいのは、治療継続の意思を伝えようとして「良くなっているように感じられない」などと答えてしまわないことです。

「症状改善が感じられない」趣旨の発言をすると、現状が症状固定の時期であると判断されてしまうおそれがあるからです。

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8. まとめ

症状固定の時期は、受け取れる賠償金の金額に大きく影響します。

「DMK136」という言葉が示すように、加害者側の保険会社は、被害者個人の状況を注意深く見ているわけではなく、一般的な目安に沿って症状固定を促してくることが多いです。

しかし、被害者にとって不適切なタイミングで症状固定に応じてしまうと、本来受け取れるはずの賠償金額よりも少ない額の賠償金しか受け取れなくなってしまいます。

弁護士に相談、依頼することにより、症状固定の時期について保険会社と交渉したり、適切な治療期間や後遺障害等級に基づいた賠償金額を算定・請求することが可能になります。

医師や保険会社から症状固定といわれてお困りの方や、怪我が完治しなかった場合にどう対処すべきか不安をお持ちの方は、交通事故に精通する弁護士へのご相談をおすすめします。

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南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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