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交通事故の後遺障害とは?等級別の慰謝料金額などを弁護士が解説
「交通事故で骨盤と腕を骨折しました。半年くらい通院していますが骨盤が変形したままで、上腕骨がうまくくっつかずに曲がっている状態です。後遺障害認定を受けるとすれば何級を取れますか?」
「後遺障害申請を弁護士に頼むと、保険会社に任せるのに比べて受けられる等級が上がることはありますか?」
など、交通事故に遭って後遺障害認定を考える方から、後遺障害の等級認定や申請手続きに関する質問を頂くことが多くあります。
本記事では、交通事故の後遺障害慰謝料について交通事故に強い弁護士が解説します。
目次
1. 交通事故の後遺障害等級とは
交通事故の後遺障害等級とは、事故で負った怪我を治療しても後遺症が残ってしまった場合に、その症状の程度に応じて割り当てられる等級です。
後遺障害等級は、最も重い1級から14級まであります。
後遺症がどの後遺障害等級に該当するかによって、受け取れる後遺障害慰謝料の額が異なるので、等級認定は重要な意味を持ちます。
1-1. 後遺障害等級の認定要件
後遺障害等級認定申請を行う上で、次の条件をすべて満たしている必要があります。
- 交通事故が原因で症状が生じたこと
- 症状が後遺障害等級認定の基準を満たしていること
- 症状の存在を医学的に証明できること
- 症状が一貫して継続していること
以下、順にご説明します。
(1) 交通事故が原因で症状が生じたこと
まず、後遺症が「交通事故が原因で生じた」といえることが必要です。
事故から時間が経ってから病院を受診すると、この要件を満たさない、つまり症状が事故が原因で生じたものと認められない可能性があるので注意が必要です。
交通事故が原因で症状が生じたことを証明するためにも、事故後できるだけ早く治療を開始しましょう。
(2)症状が後遺障害等級認定の基準を満たしていること
後遺障害等級には第1級~第14級の等級があります。また、それぞれの級に該当する症状が細かく分かれていて、合計で140になります。
後遺障害が認められるためには、後遺症がこの140種類のいずれかに該当していなければなりません。
また、後遺障害診断書には、残存する後遺症が140種類の症状のいずれかに当てはまることを念頭に、症状を正確・詳細に記載する必要があります。
(3)症状の存在を医学的に証明できること
これは、「身体のどの部分にどのような症状が残存しているか」を医学的に証明できることを意味します。
レントゲンやCT、MRIなどの画像検査で他覚的所見が確認できることが望ましいのですが、むちうちのように、残存する症状を画像検査で証明することが難しいケースもあります。
このような場合は、神経学検査などの適切な検査を行い、症状の存在を医学的に証明可能にする必要があります。
なお、検査結果などの他覚所見によって証明できない場合でも、治療の経過などから医学的に説明可能な症状であれば、14級の認定が受けられるケースもあります。
(4)症状が一貫して継続していること
後遺障害認定されるためには、事故の当初から一貫して同じ症状が継続して現れていることも条件になります。
たとえば、以下のような状況であるとすれば、「症状に一貫性がある」とはいえません。
- 時間の経過とともに症状がなくなった
- 日によって、あるいは時間帯によって症状が出たり出なかったりしている
1-2. 後遺障害等級表
後遺障害の等級別の種類については、自賠責施行令別表1・2で定められています。
同表の右欄の、等級ごとの「保険金額」は、その等級の後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を合計した額の上限を示します。
参照:後遺障害等級表
2. 後遺障害等級認定の申請方法と流れ
後遺障害等級認定の申請は、以下の流れで行います。
2-1.「症状固定」の診断を受ける
担当医から症状固定の診断を受けたら、治療やリハビリは終了します。
このタイミングで、後遺障害等級認定の申請手続きを行います。
2-2.医師に後遺障害診断書の作成を依頼する
まず、担当医の先生に、後遺障害診断書の作成を依頼してください。
通常は、診察時に、診断書作成について承諾を得た上で、病院の受付を通して診断書作成依頼の手続きを行い、受取時に作成料を支払います。
2-3.加害者側の保険会社に必要書類を提出する
診断書を受け取ったら、加害者側の保険会社に必要書類を提出します。厳密には、この段階が後遺障害認定の「申請手続き」になります。
申請方法には被害者請求と事前認定の2種類があります。
被害者請求の場合は自賠責保険会社に、事前認定の場合は任意保険会社に必要書類を提出してください。
2-4.損害保険料率算出機構で審査が行われる
申請を受けた認定機関(損害保険料算出機構・自賠責保険調査センター調査事務所)で審査が行われます。
3. 後遺障害に対する慰謝料の支払基準
後遺障害等級認定を受けると、その等級に応じた慰謝料の支払いを受けられます。
後遺障害に対する慰謝料の支払基準には、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判所基準)の3つがあります。
ここでは、それぞれの支払基準についてご説明します。
3-1. 自賠責保険基準
自賠責保険基準は、自動車損害賠償保障法第13条に基づいて定められた最低限の補償基準です。
なお、自賠責保険は人身事故にのみ適用されるため、物損事故では自賠責保険による支払いは受けられません。
3-2. 任意保険基準
任意保険基準は、各保険会社が独自に定めた非公開の基準です。
任意保険基準による慰謝料額は、自賠責基準と同等か、多少上乗せした程度であることが多く、次項の弁護士基準によって算定した場合に比べて慰謝料額が大幅に少なくなることに注意が必要です。
3-3. 弁護士基準(裁判所基準)
弁護士基準は、実際の裁判例で用いられている基準で、裁判所基準とも呼ばれています。
弁護士基準に基づく後遺障害等級別の慰謝料額は、日弁連交通事故センター刊行の「 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称「赤本」)」で公表されています。
示談交渉や裁判で弁護士基準に基づく慰謝料額の主張ができるのは、事実上弁護士が介入した場合に限られます。
4. 後遺障害等級別の慰謝料の金額
後遺障害等級別の慰謝料の金額について、任意保険基準に近い基準である自賠責基準に基づく慰謝料額と弁護士基準に基づく慰謝料額を比較すると、以下のようになります。
等級 | 自賠責基準慰謝料額※ | 弁護士基準慰謝料額 |
---|---|---|
1級 | 1,150万円 (1,350万円) | 2,800万円 |
2級 | 998万円 (1,168万円) | 2,370万円 |
3級 | 861万円 (1,005万円) | 1,990万円 |
4級 | 737万円 | 1,670万円 |
5級 | 618万円 | 1,400万円 |
6級 | 512万円 | 1,180万円 |
7級 | 419万円 | 1,000万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
なお、自賠責基準慰謝料額の1級と2級については「介護が必要な場合」の基準が別に設けられています(自賠責法施行令別表1)。
【自賠責基準 1級・2級 介護が必要な場合の慰謝料額】
等級 | 被扶養者の有無 | 慰謝料額 |
---|---|---|
1級 | あり | 1,850万円 +初期費用等500万円 |
1級 | なし | 1,650万円 +初期費用等500万円 |
2級 | あり | 1,373万円 +初期費用等205万円 |
2級 | なし | 1,203万円 +初期費用等205万円 |
5. あなたの後遺障害等級は何級なのかを症状別に解説
後遺障害認定申請を検討されている方にとって、自身の症状が後遺障害何級にあたるかが気になると思います。
ここで、部位や症状別に、該当する後遺障害等級について解説します。
5-1. 足・足指のケガの後遺障害等級
足(下肢)・足指のケガの後遺障害等級は以下の通りです。
(1)足のケガの後遺障害等級
足のケガの後遺障害等級は、等級表中の「下肢」の等級及び号棒(1号、2号・・)に該当します。
たとえば、交通事故で左脚を骨折し、折れた部分が完全に回復せずに関節のように曲がった状態になったまま症状が固定した場合、該当する等級は7級10号です。
以下の表では、法令上の「両下肢」を「両脚」、「一下肢」を「片脚」、「用を廃した」を「機能を失う」と表記しています。
後遺障害の種類 | 後遺障害等級 |
---|---|
両脚の膝関節以上(膝から下)を失う | 1級5号 |
両脚の機能をすべて失う | 1級6号 |
両脚の足首関節以上を失う | 2級4号 |
片脚の膝関節以上を失う | 4級5号 |
両足をリスフラン関節※1以上で失う | 4級7号 |
片脚の機能を全て失う | 5級7号 |
片脚の三大関節(股関節・膝関節・足首関節)のうち二つの関節の機能を失う | 6級7号 |
片脚の偽関節※2が残り、著しい運動障害を残す | 7級10号 |
片足のリスフラン関節以上を失う | 7級8号 |
片脚の長さが5cm以上短縮する | 8級5号 |
片脚に偽関節が残る | 8級9号 |
片脚の長さが3cm以上短縮する | 10級8号 |
両脚または片足の長管骨※3 が変形する | 12級8号 |
※1 リスフラン関節:足の甲にある、内側楔状骨と第2中足骨をつなぐ関節
※2 偽関節:骨折した骨が再生する過程で再生が止まってしまい、骨がうまく癒合せずに関節のようになってしまう状態(癒合不全とも呼ばれる)
※3 長管骨:上肢・下肢の骨のうち、長く伸びた管状の骨を指す(長骨とも呼ばれる)
下肢の場合は大腿骨、脛骨、腓骨が該当する
(2)足指のケガの後遺障害等級
足指のケガの後遺障害等級は、等級表中の「両足の足指・一足の足指」の等級・号棒に該当します。
たとえば、交通事故で右足の親指を動かせない状態の麻痺が残った場合、該当する等級は12級12号です。
以下の表では、「一足」を「片足」、「第一の足指」を「親指」、「第二の足指」を「人差し指」、「第三の足指」を「中指」と表記しています。
後遺障害の態様 | 後遺障害等級 |
---|---|
両足の足指を全て失う | 5級8号 |
両足の足指の機能を全て失う | 7級11号 |
片足の足指を全て失う | 8級10号 |
片足の親指を含む2本以上の足指を失う | 9級14号 |
片足の親指または他の4本の足指を失う | 10級9号 |
片足の親指を含む2本以上の足指の機能を失う | 11級9号 |
以下のいずれかを失う ・片足の人差し指 ・人差し指を含む2本の足指 ・中指以下の3本の足指 | 12級11号 |
片足の親指または他の4本の足指の機能を失う | 12級12号 |
片足の中指、薬指、小指のうち1本または2本を失う | 13級9号 |
以下のいずれかに該当する ・片足の人差し指の機能を失う ・人差し指を含む足指2本の機能を失う ・中指・薬指・小指の足指3本の機能を失う | 13級10号 |
片足の中指・薬指・小指のうち1本または2本の機能を失う | 14級8号 |
5-2. 腕・手指のケガの後遺障害等級
腕(上肢)・手指のケガの後遺障害等級は以下の通りです。
(1)腕のケガの後遺障害等級
腕のケガの後遺障害等級は、等級表中の「上肢」の等級・号棒に該当します。
たとえば、交通事故で右腕の肘から下を切断する傷害を負った場合に該当する等級は4級4号です。
後遺障害の態様 | 後遺障害等級 |
---|---|
両腕の肘関節以上(肘関節~手指)を失う | 1級3号 |
両腕の機能をすべて失う | 1級4号 |
両腕を手関節以上(手首関節~手指)で失う | 2級3号 |
片腕の肘関節以上を失う | 4級4号 |
片腕を手関節以上で失う | 5級4号 |
片腕の三大関節(肩関節・肘関節・手関節)のうち2関節の機能を失う | 6級6号 |
片腕に偽関節が残り、著しい運動障害が残る | 7級9号 |
片腕の三大関節中の一関節の機能を失う | 8級6号 |
片腕に偽関節が残る | 8級8号 |
片腕の三大関節中の一関節の機能に著しい障害が残る | 10級10号 |
片腕の三大関節中の一関節の機能に障害が残る | 12級6号 |
両腕または片腕の長管骨※1 が変形する | 12級8号 |
腕の露出面に手のひら大の醜い跡が残る | 14級4号 |
※1 上肢の場合は上腕骨、橈骨、尺骨
(2)手指のケガの後遺障害等級
手指のケガの後遺障害等級は、等級表中の「手」に関する等級・号棒に該当します。
たとえば、交通事故で左手の親指を切断する傷害を負った場合に該当する等級は9級12号です。
後遺障害の種類 | 後遺障害等級 |
---|---|
両手の指の全部を失う | 3級5号 |
両手の指の全部の機能を失う | 4級6号 |
片手の指5本または親指を含む指4本を失う | 6級8号 |
片手の親指を含む指3本または親指以外の指4本を失う | 7級6号 |
片手の指5本または親指を含む指4本の機能を失う | 7級7号 |
片手の親指を含む指2本、または親指以外の指3本を失う | 8級3号 |
片手の親指を含む指3本、または親指以外の指4本の機能を失う | 8級4号 |
片手の親指または親指以外の指2本を失う | 9級12号 |
片手の親指を含む指2本、または親指以外の指3本の機能を失う | 9級13号 |
片手の親指または親指以外の指2本の機能を失う | 10級7号 |
片手の人差し指、中指または薬指を失う | 11級8号 |
片手の小指を失う | 12級9号 |
片手の人差し指、中指または薬指の機能を失う | 12級10号 |
片手の小指の機能を失う | 13級6号 |
片手の親指の指骨の一部を失う | 13級7号 |
片手の親指以外の手指の指骨の一部を失う | 14級6号 |
片手の親指以外の指の遠位指節間関節※1 を屈伸できなくなる | 14級7号 |
※遠位指節間関節:親指以外の指の途中にある2つの関節のうち指先に近い方の関節(一般的に「第一関節」と呼ばれる)
5-3. 目・耳・鼻・歯/口・皮膚(外貌)の傷害の後遺障害等級
目・耳・鼻・鼻・歯/口・皮膚(外貌)に傷害を負った場合の後遺障害等級は以下の通りです。
(1)目の傷害の後遺障害等級
目(まぶたを含む)の傷害の後遺障害等級は、等級表中の「眼」に関する等級及び号棒に該当します。
たとえば、交通事故が原因で両目の視力が0.1以下になったまま視力の改善が望めなくなった場合、該当する後遺障害等級は6級1号です。
後遺障害等級の「視力」とは矯正視力をいいます。1日8時間以上コンタクトレンズの使用が可能であれば、コンタクトレンズを使用して視力を計測します。
後遺障害の種類 | 後遺障害等級 |
---|---|
両眼を失明する | 1級1号 |
片眼を失明し、もう片方の眼の視力が0.02以下になる | 2級1号 |
両眼の視力が0.02以下になる | 2級2号 |
片眼を失明し、もう片方の眼の視力が0.06以下になる | 3級1号 |
両眼の視力が0.06以下になる | 4級1号 |
片眼を失明し、もう片方の眼の視力が0.1以下になる | 5級1号 |
両眼の視力が0.1以下になる | 6級1号 |
片眼を失明し、もう片方の眼の視力が0.6以下になる | 7級1号 |
以下のいずれかに該当する場合 ・片眼を失明する ・片方の眼の視力が0.02以下になる | 8級1号 |
両眼の視力が0.6以下になる | 9級1号 |
片眼の視力が0.06以下になる | 9級2号 |
両眼に半盲症、視野狭窄または視野変状が残る | 9級3号 |
両眼のまぶたに著しい欠損が残る | 9級4号 |
片眼の視力が0.1以下になる | 10級1号 |
正面を見た場合に複視※1 の症状が残る | 10級2号 |
両眼の眼球に著しい調節機能障害※2 または運動障害が残る | 11級1号 |
両眼のまぶたに著しい運動障害が残る | 11級2号 |
片眼のまぶたに著しい欠損が残る | 11級3号 |
片眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害が残る | 12級1号 |
片眼のまぶたに著しい運動障害※3 が残る | 12級2号 |
片眼の視力が0.6以下になる | 13級1号 |
正面以外を見た場合に複視の症状が残る | 13級2号 |
片眼に半盲症、視野狭窄または視野変状が残る | 13級3号 |
両眼のまぶたの一部に欠損またはまつげはげ※4 が残る | 13級4号 |
片眼のまぶたの一部に欠損またはまつげはげが残る | 14級1号 |
※1 複視:左右の眼の網膜の対応点に、外界の像が結像せずにずれているため物が二重に見える状態
※2 著しい調節機能障害:調整力が通常の2分の1以下に減少すること。調整力の算定は、両眼の場合は年齢別の調整力一覧表の数値と比較して行い、片眼の場合は健常な方の眼の調節機能と比較して行う
ただし、55歳以上の場合は眼球の調節機能に関する後遺障害認定はなされない
※3 まぶたに著しい運動障害が残る(等級表では「著しい運動障害を残す」):下記のいずれかの状態をいう
- まぶたを開いたときに瞳孔が完全に覆われる
- まぶたを閉じたときに角膜を完全に覆うことができない
※4 まつげはげが残る(等級表上では「まつげはげを残す」):まつ毛の生えている部分の2分の1以上にわたってまつ毛が生えなくなること
(2)耳の傷害の後遺障害等級
耳の傷害の後遺障害等級は、等級表中の「耳」に関する等級・号棒に該当します。
たとえば、交通事故で片耳が全く聞こえなくなった場合(等級表では「片耳の聴力を該当する等級は12級12号です。
後遺障害の種類 | 後遺障害等級 |
---|---|
両耳が全く聞こえなくなる | 4級3号 |
両耳の聴力が、耳に接しなければ大声で話しても聞こえない程度に低下する | 6級3号 |
片耳が全く聞こえなくなり、もう片方の耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声が聞こえない程度に低下する | 6級4号 |
両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声が聞こえない程度に低下する | 7級2号 |
片耳が全く聞こえなくなり、もう片方の耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声が聞こえない程度に低下する | 7級3号 |
両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声が聞こえない程度に低下する | 9級7号 |
片方の耳の聴力が耳に接しなければ大声で話しても聞こえない程度に低下し、もう片方の耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声が聞こえない程度に低下する | 9級8号 |
片耳が全く聞こえなくなる | 9級9号 |
両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声が聞こえない程度に低下する | 10級5号 |
片方の耳の聴力が耳に接しなければ大声で話しても聞こえない程度に低下する | 10級6号 |
両耳の聴力が1m以上の距離では小声が聞こえない程度に低下する | 11級5号 |
片耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声が聞こえない程度に低下する | 11級6号 |
片耳の耳殻の大部分を欠損する | 12級4号 |
片耳の聴力が1m以上の距離では小声が聞こえない程度に低下する | 14級3号 |
(3)鼻の傷害の後遺障害等級
鼻の傷害の後遺障害等級は9級5号のみです。
後遺障害の種類 | 後遺障害等級 |
---|---|
鼻を欠損し、機能に著しい障害が残る | 9級5号 |
「鼻の欠損」とは、鼻の軟骨部分の全部または大部分の欠損を言います。
鼻軟骨部の大部分の欠損は、同時に外貌の醜状損害(7級12号)にも該当します。この場合、複数の後遺障害がある場合の等級認定ルール(併合ルール)の1つ「13級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を1級繰り上げる」に従い、6級が認定されます。
(4)歯・口(咀嚼機能・言語機能)の傷害の後遺障害等級
歯・口(咀嚼機能・言語機能)の傷害の後遺障害等級は、等級表中の「歯科補綴」及び「咀嚼機能及び/または言語機能」に関する等級・号棒に該当します。
たとえば、交通事故で前歯4本を欠損し、差し歯や詰め物などの治療を行った場合、該当する等級は14級2号です。
後遺障害の種類 | 後遺障害等級 |
---|---|
14本以上の歯に対して歯科補綴(詰め物・歯冠等)を行った | 10級4号 |
10本以上の歯に対して歯科補綴を行った | 11級4号 |
7本以上の歯に対して歯科補綴を行った | 12級3号 |
5本以上の歯に対して歯科補綴を行った | 13級5号 |
3本以上の歯に対して歯科補綴を行った | 14級2号 |
咀嚼機能及び言語機能に障害が残る | 9級6号 |
咀嚼機能または言語機能に障害が残る | 10級3号 |
(5)皮膚の傷害の後遺障害等級
皮膚の傷害の後遺障害等級は、外貌に醜状が残った場合に関する等級号棒に該当します。
等級表の「外貌」とは、頭部・顔面部・頸部など、上肢・下肢以外の部位で、日常露出することが多い部分を指します。
後遺障害の種類 | 後遺障害等級 |
---|---|
外貌に著しい醜状が残る | 7級12号 |
外貌に相当程度の醜状が残る | 9級16号 |
外貌に醜状が残る | 12級14号 |
腕の露出面に手のひら大の醜い跡が残る | 14級4号 |
脚の露出面に手のひら大の醜い跡が残る | 14級5号 |
等級表中の「著しい醜状」「相当程度の醜状」「醜状」の内容は以下の通りです。
7級12号「著しい醜状」 | 以下のうち、人目につく程度以上のものを指す ・頭部:手のひら大(指は含まない)以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損 ・顔面:鶏卵大面以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没 ・頸部:手のひら大以上の瘢痕 |
9級16号「相当程度の醜状」 | 顔面部の、長さ5cm以上の人目につく程度の線状痕 |
12級14号「醜状」 | 以下のうち、人目につく程度以上のものを指す ・頭部:鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損 ・顔面:10円硬貨大以上の瘢痕または長さ3cm以上の線状痕 ・頸部:鶏卵大面以上の瘢痕 |
5-4. 臓器・生殖器・胴体の傷害の後遺障害等級
臓器・生殖器・胴体の傷害に該当する後遺障害等級は以下の通りです。
(1)臓器の傷害の後遺障害等級
臓器に傷害を負った場合の後遺障害等級は、等級表の「胸腹部臓器」に関する号棒に該当します。
たとえば、交通事故が原因で心疾患を発症し、心臓にペースメーカーを植えこむ手術を行った場合、該当する等級は9級11号です。
後遺障害の種類 | 後遺障害等級 |
---|---|
胸腹部臓器の機能に著しい障害が残り、常時介護を必要とする状態になっている | 要介護1級2号 |
胸腹部臓器の機能に著しい傷害が残り、随時介護を必要とする状態になっている | 要介護2級2号 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害が残り、生涯に渡って就労不可能になる | 3級4号 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害が残り、特に軽易な作業以外の労務が不可能になる | 5級3号 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害が残り、軽易な作業以外の労務が不可能になる | 7級5号 |
胸腹部臓器の機能に障害が残り、服することができる労務が相当程度制限される | 9級11号 |
胸腹部臓器の機能に障害が残り、労務の遂行に相当程度の支障がある | 11級10号 |
胸腹部臓器の機能に障害が残る | 13級11号 |
(2)生殖器の傷害の後遺障害等級
生殖器の障害に対する後遺障害等級は、7級13号及び9級17号です。
後遺障害の種類 | 後遺障害等級 |
---|---|
両側の睾丸を失う | 7級13号 |
生殖器に著しい障害が残る | 9級17号 |
(3)胴体の傷害の後遺障害等級
胴体の傷害の場合、脊柱の変形に関する6級5号、8級2号及び12級5号が該当します。
たとえば、交通事故で骨盤を骨折して、骨盤骨が外見でわかる程度に変形した場合、該当する等級は12級5号です。
後遺障害の種類 | 後遺障害等級 |
---|---|
脊柱に著しい変形または運動障害が残る | 6級5号 |
脊柱に運動障害が残る | 8級2号 |
脊柱に変形が残る | 11級7号 |
鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨に著しい変形が残る | 12級5号 |
5-5. 神経系・精神的な疾患・その他の後遺障害等級
神経系・精神的な疾患・その他の後遺障害等級は以下の通りです。
(1)神経系・精神的な疾患の後遺障害等級
神経系・精神的な疾患の後遺障害等級は、等級表中の「神経系統の機能または精神」に関する号棒(1号、2号・・)に該当します。
たとえば、交通事故で外傷性てんかんを発症して、てんかん薬を服用しているが数か月に1回程度、30秒程度の転倒に至らない発作が起こるという場合、該当する等級は9級10号です。
後遺障害の種類 | 後遺障害等級 |
---|---|
神経系統の機能または精神に著しい障害が残り、常に介護を要する状態になる | 要介護1級1号 |
神経系統の機能または精神に著しい障害が残り、随時介護を要する状態になる | 要介護2級1号 |
神経系統の機能または精神に著しい障害が残り、生涯にわたり労務作業が不可能になる | 3級3号 |
神経系統の機能または精神に著しい障害が残り、特に軽易な仕事以外の労務作業が不可能になる | 5級2号 |
神経系統の機能または精神に障害が残り、軽易な仕事以外の労務作業が不可能になる | 7級4号 |
神経系統の機能または精神に障害が残り、服することができる労務作業が相当程度に制限される | 9級10号 |
局部に頑固な神経症状が残る | 12級13号 |
局部に神経症状が残る | 14級9号 |
6. 交通事故の後遺障害慰謝料の請求を弁護士に相談、依頼するメリット
交通事故の後遺障害慰謝料の請求を弁護士に相談、依頼することには、以下のような大きなメリットがあります。
6-1.加害者側の保険会社と対等に交渉できる
交通事故の被害者にとって、加害者側の任意保険会社とのやり取りが精神的な負担になることが多くあります。
保険会社によっては、被害者本人の主張がほとんど通らないこともあります。また、あえて被害者にわかりにくい専門用語を多用して交渉の主導権を握ろうとすることも少なくありません。
また、後遺症そうな場合であっても、後遺障害認定申請に最低限必要な治療期間である6か月にさしかかるあたりで示談交渉を申し入れたり、治療費打ち切りを打診してくるなど、後遺障害認定を受けさせないような動きをとることも少なくありません。
法律の専門家である弁護士に交渉を依頼することで、加害者側の保険会社と対等に交渉できるようになります。
症状が完治する前に保険会社から示談交渉や治療費打ち切りを切り出された場合も、弁護士に相談することで、保険会社に対して治療を継続することや、後遺障害認定申請を行うことなどの正当な主張ができます。
6-2. 適正な後遺障害慰謝料・逸失利益の主張ができる
交通事故の示談交渉では、加害者側から提示される慰謝料額は、「自賠責基準(国が定めた最低限の基準)」や「任意保険基準」に沿ったもので、相場よりも低額になっていることが通常です。
後遺障害認定を受けた場合も、任意保険会社は任意保険基準に沿った後遺障害慰謝料を提示してきます。
この点、示談交渉を弁護士に依頼することで、過去の判例に基づいて実際に裁判で使用される「弁護士基準(裁判所基準)」に基づいた、相場に近い慰謝料額を主張できます。
後遺障害慰謝料についても、弁護士基準と任意保険基準では大きな隔たりがあり、等級が上がるほどその差は大きくなります。
6-3. 後遺障害診断書の内容の適否を相談できる
後遺障害診断書を作成することができるのは医師のみです。
しかし、後遺障害診断書作成に慣れていて、適切な診断書を作成できる医師は多くありません。
この点、交通事故の被害者対応の実績が豊富な弁護士であれば、依頼者の症状に対して適正な後遺障害等級認定を受けるのに必要な「記載のしかた」を熟知しています。
このような弁護士に相談することで、医師に対して診断書に記載すべき内容を直接説明することや、作成してもらった診断書の内容をチェックすることが可能になります。
後遺障害等級認定を申請する場合は、交通事故に精通する弁護士への依頼をおすすめします。
6-4. 後遺障害等級認定の手続きも依頼できる
後遺障害認定申請には、加害者側の保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者自身が申請手続きを行う「被害者請求」の2通りの方法があります。
事前認定方式は被害者の手間が省ける一方で、被害者と利益が相反する保険会社に手続きを任せるため、必要十分な種類・内容の書類を準備してもらえない可能性があります。
後遺障害認定を受ける可能性を高めるためには、被害者請求方式での申請をおすすめします。
ただし、被害者請求の場合、後遺障害診断書に加えて保険金支払い請求書、交通事故証明書など、複数の書類を作成・取得しなければなりません。
交通事故で負傷して後遺症が残っている状態で、被害者自身がこれらを行うのは心身ともに大きな負担がかかります。
弁護士に依頼すれば、被害者請求方式での申請に必要な書類の準備も全て任せられます。
7. 後遺障害等級に関するよくあるQ&A
本章では、後遺障害等級に関して頂くことが多い質問と、それに対する回答をご紹介します。
7-1.後遺障害が複数認められた場合の等級はどうなりますか?
1つの事故で後遺障害が複数認められた場合、原則として以下の4つのルールに従って等級認定が行われます。
- 5級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を3つ繰り上げる
- 8級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を2つ繰り上げる
- 13級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を1つ繰り上げる
- 14級の後遺障害が2つ以上ある場合は、個数に関わらず14級
この4つのルールから導かれることとして注意したいのは、「14級は等級繰上げに関与しない」つまり、「14級の後遺障害があると、他に13級以上の後遺障害が認められても、重い方の級の繰上げが行われない」ことです。
たとえば、1つの事故の被害者に後遺障害8級と14級が認められた場合、重い方の8級がそのまま認定されます。
これに対して、8級と13級の場合は、ルール3に従って重い方の8級が1級繰り上げられて7級が認定されます。
7-2.交通事故に遭って後遺障害認定を受けた人が、再び交通事故に遭って後遺症が残るようなケガをした場合、改めて後遺障害認定を受けることはできますか?
後遺障害認定を受けた人が、再度交通事故に遭って後遺症が残る怪我をした場合に改めて後遺障害認定を受けられるかについては、2度目の交通事故による後遺症の部位や症状によって異なります。
2度目の交通事故による後遺症の部位や症状について、次のようなケースが考えられます。
(1)1回目の後遺障害認定部位とは別の部位の場合
2回目の交通事故による後遺症の部位が、1回目の後遺障害認定部位とは異なる場合は、初回申請の場合と同様に後遺障害申請を行います。
(2)1回目の後遺障害認定部位と同一の部位の症状が悪化した場合
2回目の交通事故による後遺症の部位が1回目の事故で後遺障害認定を受けた部位と同じで、2回目の事故によって症状が悪化した場合は、自賠責施行令第2条に基づき、以下のように扱われます。
- 等級認定は、現実に生じている後遺症に基づいて行われる
- 自賠責保険の賠償金の金額については、2回目の事故による後遺障害認定に基づいて受けられる賠償金額から、1回目の事故による後遺障害認定により受け取った後遺障害関連の賠償金を差し引いた金額とする
ただし、1回目の事故で受けた認定等級よりも重い級の認定を受けない限り、2回目の事故による後遺障害認定は受けられない可能性があります。
(3)1回目の後遺障害認定部位と同一の部位に、1回目とは別の後遺症が残った場合
この場合、2回目の事故による後遺症の症状が、「2回目の事故後に初めて生じた」ことを証明できれば、等級が1回目の認定等級より重度でなくても、後遺障害認定を受けられる可能性があります。
8. まとめ
交通事故の後遺障害認定申請について、多くの被害者の方は保険会社に手続きを任せる「事前認定方式」によって申請しています。
事前認定方式は、被害者自身が手続きを行う「被害者請求方式」に比べて被害者の負担が少ない反面、手続きの透明性に問題があり、提出書類の収集・作成を十分に行ってもらえる保証がありません。
また、加害者の保険会社に申請手続きを任せた場合、後遺障害等級認定を受けられたとしても、示談交渉で加害者側の保険会社の提示する示談金額に対して異議を出しづらくなるかもしれません。
後遺障害認定を受ける可能性を高めつつ、認定後の示談交渉で十分な慰謝料額を請求するためには、被害者請求方式によって、弁護士のサポートを受けながら申請することをおすすめします。
私たち法律事務所リーガルスマートは、交通事故被害の専門チームがございます。初回無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
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- 弁護士による正確な算定と適切な請求により、被害者の経済的損失を最小限に抑えることができます。
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担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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