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労働基準監督署はすぐ動くのか?相談後の流れやポイントを解説!

労働基準監督署はすぐ動くのか?相談後の流れやポイントを解説!
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会社が労働基準法等の法令に違反したことをしている場合、労働者としては労働基準監督署に申告をすることを検討するかもしれません。

では、労働基準監督署に申告をした場合、労働基準監督署はすぐに動いてくれるのでしょうか?

この記事では、労働基準監督署が、労働問題が起きたときにすぐに動いてくれるのかについて解説します。

1.労働基準監督署はすぐに動いてくれるのか

労働基準監督署はすぐに動いてくれるのでしょうか。

1-1.そもそも労働基準監督署とは

そもそも労働基準監督署とは、厚生労働省設置法第22条で、都道府県労働局の所掌事務の一部を分掌させるための組織で、労働に関する法規の遵守や労災保険についての事務を行っています。

1-2.労働基準局との関係

厚生労働省の内部部局の一つに労働基準局というものがあります。

厚生労働省内で労働関係についての法令の施行や、法令に関する行政通達、下部組織である都道府県労働局や労働基準監督署の監督を行います。

都道府県労働局は厚生労働省のうち労働基準局の指導を受ける立場にあり、労働基準監督署からすると上位組織である都道府県労働局のさらに上部の組織であるといえるでしょう。

(1)都道府県労働局との関係

労働基準監督署は、都道府県労働局の所掌事務を分掌させるための組織です。

都道府県労働局とは、厚生労働省の地方支分部局として置かれている組織で、労働に関する各種事務を取り扱っています。

労働基準監督は、都道府県労働局の指揮監督を受ける関係にあります。

(2)公共職業安定所との関係

転職を経験したことがある人ならば、公共職業安定所(いわゆる「職安」)という労働に関する機関のことをご存知ではないでしょうか。

公共職業安定所は、労働基準監督署と同じく、都道府県労働局の所掌事務を分掌させるための組織で、職業の安定・雇用保険に関する事務を中心に行ってます。

労働基準監督署とは、都道府県労働局の指揮監督を受ける関係にある点で同様で、担当する事務が異なります。

1-3.労働基準監督署は何をしてくれるのか

労働基準監督署の概要をお伝えしたところで、労働基準監督署は、労働問題が発生したときに、具体的に何をしてくれるのかを確認しましょう。

(1)労働者からの申告を受け付ける

労働基準法104条1項は、労働基準法違反がある場合に、労働者が労働基準監督署に申告を行うことができる旨を規定しています。

これに応じるために、労働基準監督署では、労働者からの申告を受け付けています。

なお、労働基準監督署への申告をしたことを原因として、会社が当該労働者を解雇をすることは許されません(労働基準法104条2項)。

(2)臨検

労働基準法101条1項は、労働基準監督官が臨検監督をすることができる旨を規定しています。

臨検監督とは、事業所等に立ち入って、労働基準法等の法令が守られているかを調査するものです。

労働法違反の実態は事業所に立ち入り検査をしてみなければわかりません。

そのため、労働基準監督官に、事業所・寄宿舎その他の附属建設物に臨検することを認めています。

(3)帳簿及び書類の提出を求める

同じく労働基準法101条1項で、労働基準監督官は会社に帳簿及び書類の提出を求めることができる旨が規定されています。

労働基準法の違反がないかどうかを調べるためには、会社の帳簿や書類などを詳しく調査する必要があるためです。

(4)使用者・労働者に対して尋問を行うことができる

同じく労働基準法101条1項で 、労働基準監督官は使用者もしくは労働者に対して尋問を行うことができる旨が規定されています。

臨検や提出された帳簿・書類の内容などについて、事情を聞くために、尋問を行うことが認められています。

(5)報告・出頭を命じることができる

労働基準法104条の2は、使用者や労働者に対して、報告や出頭を命じることができる旨を規定しています。

労働基準監督官が臨検して尋問しようと思っても、その場に居なかった場合に、報告や出頭を命じることができます。

(6)司法警察員としての職務

労働基準法に違反すると、中には刑事罰が課されるものがあります。

例えば、労働基準法第5条は、強制労働の禁止を規定していますが、これに違反して強制労働をさせた場合は、1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処せられます(労働基準法117条)。

労働基準監督官は労働基準法違反などで刑事事件となる場合に、司法警察員としての職務を行うとされています。

司法警察員は一般的には警察の役割なので、労働基準監督官は労働基準法違反については警察官の役割をすると考えて良いでしょう。

(7)金銭を支払わせる・差し押さえるなどはできない

一方で、会社の預金や動産・不動産を差し押さえて、金銭を支払わせるなどの権限はありません。

例えば、残業代の支払いをしない場合、これは給与の支払いをしていないこととして取り扱われるので、労働基準法第24条違反となります。

この場合、労働基準監督官は上記の権限をもって支払いを促すことはできても、会社の財産を差し押さえて労働者に配分するということはできません。

あくまで労働基準監督署は労働基準法等、労働基準監督署が管轄している法律の遵守を促すのみで、これによって会社が自ら対応をするという、間接的な形での問題解決しかできません。

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1-4.労働基準監督署に相談・通報をする方法

労働基準監督署に相談・通報をするためにはどのようにすればいいのでしょうか。

(1)労働基準監督署に訪問して相談・通報をする方法

労働基準監督署に相談・通報をするためには、労働基準監督署に赴き、労働基準法違反を伝えることで行います。

特に予約等は必要ありませんので、直接労働基準監督署に向かいましょう。

労働基準監督署は、どこに相談しても良いのですが、住んでいる地域を管轄している労働基準監督署や、会社が所在している労働基準監督署に相談するのが一般的です。

(2)厚生労働省のホームページから情報提供をする

厚生労働省のホームページで、

  • 労働基準法
  • 最低賃金法
  • 労働安全衛生法
  • 作業環境測定法
  • じん肺法
  • 賃金の支払の確保等に関する法律
  • 家内労働法

に違反する事例について、情報提供をするためのメール窓口が解説されています。

労働基準関係情報メール窓口|厚生労働省

こちらに情報提供をすることも可能です。

(3)総合労働相談コーナーに相談をする

労働基準監督署には、総合労働相談コーナーという相談窓口があります。

これは、都道府県労働局が開設している相談窓口で、労働問題全般を取り扱っており、必要に応じて労働基準監督署に紹介をしてくれます。

パワハラ・セクハラについては労働基準監督署ではなく、都道府県労働局が担当になっています。

これらの問題について相談したい場合や、どこに相談すれば良いかわからないときには、総合労働相談コーナーに相談してみても良いでしょう。

1-5.労働基準監督署に相談・通報した後の流れ

労働基準監督署に相談・通報した後の流れとして、

  • 証拠が不十分であればさらに証拠を集める
  • 労働基準監督署が各種指導を行う
  • 会社がこれを受けて改善をする
  • 会社が改善をしない場合には民事訴訟・労働審判を行う

といった流れで、労働問題は解決に向かいます。

まず、相談を受けた労働基準監督署が、違法状態を立証するのに証拠が不十分であるような場合には、証拠についてのアドバイスを貰えることがあります。

これらをしっかり集めて、労働基準監督署が上記の会社に対する働きかけをおこないます。

どのような働きかけを行うかは、担当をする労働基準監督官が、事情を踏まえて決めます。

会社が労働基準監督官からの各種指導に対して、自主的に対応をすれば、労働問題は解決することになります。

一方、会社が自主的に対応しない場合には、労働基準監督署では対応ができず、個人で民事訴訟や労働審判を行うことになります。

1-6.労働基準監督署に相談・通報する際の注意点

労働基準監督署に相談・通報する際には次のような注意点があります。

(1)労働基準監督署は慢性的に人手不足

まず、労働基準監督署は慢性的に人手不足であるということを知っておきましょう。

労働基準監督署は非常に多くの案件を取り扱っており、取り扱う案件に比して労働基準監督官の数が十分ではないことが知られています。

(2)悪質性等に鑑みて優先順位がつけられる

労働基準監督署が慢性的な人手不足であるため、好ましくないのですが、どうしても案件の悪質性等に鑑みた優先順位がつけられる傾向になります。

一時的な残業代未払いよりも、過労死が出るような違法な長時間残業のほうが、早く改善させなければならないといえます。

悪質性のほかにも、

  • 緊急性
  • 匿名を希望するか
  • 証拠の有無
  • 本人が真剣に請求をしようとしているかどうか

などによって、優先度合いが異なります。

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2.労働基準監督署にすぐに動いてもらうためのポイント

労働基準監督署はすべての案件ですぐに動いてくれるわけではありません

そのため、労働基準監督署にすぐに動いてもらうためのポイントを確認しましょう。

2-1.証拠をしっかり集める

労働基準監督署にすぐに動いてもらうためのポイントの一つは、事前に証拠をしっかり集めることです。

本来は労働に関する法令に違反している会社が悪く、その取締をするのが労働基準監督署なので、違反に関する証拠を集めるのも、臨検や資料の提出要求といった権限を有する労働基準監督官の役目ではあります。

しかし、上述したとおり、慢性的な人手不足の労働基準監督署は、優先順位をつけて案件に対応しており、証拠がないものについては、動いたとしても徒労に終わる可能性も高く、どうしても優先して動くわけないはいかなくなります。

本気で労働問題解決を希望していることを示す意味でも、証拠はしっかりあつめるようにしましょう。

2-2.事実関係を整理する

証拠の収集と併せて、事実関係の整理も丁寧に行いましょう

一定の主張をするにあたっては、基礎となる事実関係が存在します。

例えば整理解雇であるような場合には、希望退職者の募集、整理解雇に関する説明などが事前にあることがほとんどです。

どのような事実関係があったのか、どの事実についてどのような証拠の収集をすでにしているか、ということをきちんと整理できていると、相談がスムーズにすすみ、悪質な事案なのであれば悪質性がより伝わりやすいといえます。

2-3.対応をしてほしいということをきちんと伝える

会社への対応をしてほしい旨をきちんと伝えましょう

たとえば不当解雇であると主張したい場合でも、相談で「どうすればいいものですかねぇ……。」と困っていることだけを伝えた場合、労働基準監督署としても解決のために動いた方が良いのか、悩みを聞いてあげれば解決するのかわからず、対応への優先度を下げることになりかねません。

断固対応をお願いしたい旨をきちんと伝えましょう。

2-4.急いで対応をする必要がある場合には直接行動する

急いで対応をする必要がある場合には、直接行動することも検討しましょう。

労働基準監督署が行えるのは、行政指導や捜査を通じて、会社の対応に働きかけるという間接的な手段にしかすぎません。

例えば、残業代請求をする場合、残業代請求権は給与支払日から3年で消滅時効にかかります。

時間がかかる間に毎月どんどん時効にかかってしまうことになるので、どうしても急いでいるようなケースでは、労働基準監督署に対応をしてもらうよりも、裁判・労働審判という直接行動を起こすようにしましょう。

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3.労働基準監督署以外の相談先とは

労働基準監督署以外の相談先については次のようなものがあります。

3-1.労働局・総合労働相談コーナー

上述したのですが、都道府県労働局が、総合労働相談コーナーを設けて、労働問題全般の相談を受けています。

必要に応じて労働基準監督署などに対応を依頼することになる上に、労働基準監督署の中に入っているのがほとんどなので、まずはこちらで相談してみることも検討しましょう。

電話・訪問で利用をすることが可能です。

3-2.公共職業安定所

公共職業安定所は、労働者との関係では、再就職や職業訓練、雇用保険(失業手当)についての相談を受けています。

労働トラブルについて相談する場所ではないのですが、会社から離職票が送られてこない場合や、離職票の解雇事由が異なる(例:解雇をしたのに自己都合退職扱いになっている)ような場合には、公共職安定所(ハローワーク)に相談してみましょう。

3-3.労働組合

労働者が会社と交渉するために団結した組織のことを労働組合といいます。

比較的従業員の数がある会社であれば、会社に労働組合があるのですが、中には会社と癒着してしまっており、会社と交渉をするには役に立たないことがあります。

このような場合には、地域や職域で結成された労働組合があるので、そこに相談してみましょう。

3-4.市区町村役場

市区町村役場では、住民の困りごとに対して相談を受け付けています。

もっとも労働問題については、通常は労働基準監督署や労働局、弁護士への相談を促されることがほとんどです。

なお、市区町村役場で、無料で弁護士に相談できるようになっている場合が多いので、積極的に利用してみてください。

3-5.弁護士

労働問題は弁護士に相談するのがお勧めです。

まず、労働基準監督署や労働局は所掌事務によって行う業務が分かれているので、複数の問題を抱えているような場合には、あっちにいったりこっちにいったり、協力してもらったりと、スムーズに連携できないことがあります。

また、上述したように臨検などを行って間接的に影響力を行使するのが基本となるので、会社がこれに応じない場合には限界があります。

このような場合には、最終的には民事裁判や労働審判などを用いて司法の場で解決する必要があるので、弁護士に相談するのが労働問題を解決するには最もスムーズで効率的と言えるでしょう。

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4.労働問題を弁護士に相談するメリット

労働問題を弁護士に相談するメリットには次のようなものが挙げられます。

4-1.法的なサポートを受けることができる

当然ですが法律のプロである弁護士に相談をすれば、法的な面でのサポートを受けることができます。

労働問題は条文が非常に細かい上に、関連する裁判例もたくさんあることから、その解決には広範な法的知識が要求されます。

会社は、交渉の中で裁判では通用しないような主張を行うことも多く、その主張の当否をいちいち調べて精査するのは大変です。

弁護士に相談すれば、これらの法的な問題のサポートを受けることができます。

4-2.代理して会社と交渉をしてくれるので精神的に楽である

弁護士に依頼すれば、会社との交渉を代理してくれます。

労働問題でトラブルになるときは、当事者が感情的になってぶつかり合うことが珍しくありません。

その結果、労働問題の解決に向けて一人で会社と交渉をするのは、精神的に多大な負担となります。

弁護士は代理人となれるので、相手との交渉を任せてしまうことができ、精神的な負担が少なくなります。

4-3.制限なくサポートをすることができる

労働問題については、様々な専門家が取り扱っています。

例えば、内容証明を作成する権限を有する行政書士・140万円以内の金銭請求であれば代理が可能な司法書士(特定司法書士)、会社の労務手続きなどの代行をしている社会保険労務士が挙げられます。

しかし、行政書士ができるのは内容証明の作成及び送付のみで、特定司法書士ができるのは140万円以内の金銭請求までであり、特定社会保険労務士は裁判外紛争解決手続(ADR)の代理をできるにとどまり、それぞれ行えることに制限があります。

弁護士は、特に制限なく労働問題全般に対応が可能です。

4-4.労働者が気づいていない問題を指摘してくれる

例えば、不当解雇について争いたいと考えている場合でも、よく事案を検討すると、残業代の支払いが適切でなかったり、違法な長時間労働をさせていたという場合があります。

弁護士に相談すれば、労働者が気づいていなかった問題を指摘してくれる可能性があります。

4-5.弁護士に無料で相談できるシステムがある

弁護士に相談するとなると、気になるのが弁護士費用です。

多くのケースで、30分5,000円~の相談料がかかるため、相談をためらうことも珍しくありません。

しかし、上述したように市区町村では弁護士に法律相談を無料でできます。

その他にも、弁護士会の無料相談会や収入によっては法テラスを利用すれば同じく無料で法律相談を行うことができます。

また、労働問題に強い弁護士の中には、労働者からの相談を気軽にしてもらいたいという観点から、相談を無料で行っているケースがありますので、これらを上手に利用しましょう。

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5.まとめ

このページでは、労働基準監督署に相談すれば、労働問題解決のためにすぐ動いてくれるのかについてお伝えしました。

労働基準監督署は慢性的な人手不足に悩んでおり、優先順位をつけながら活動せざるを得ないのが現状です。

そのため、少しでも優先事項であるという認識をもたせるようにして行動すべきです。

それでも労働基準監督署への相談を通じての問題解決は間接的な手段によりますので、よりスムーズに直接的に解決したい場合には、弁護士に相談するようにしましょう。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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