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超過勤務や超過勤務手当とは?計算方法などを弁護士が解説!
目次
1.超過勤務とは
超過勤務とは、仕事のため臨時または緊急の必要がある場合に、社長や上司から、正規の勤務時間以外の時間に勤務することを命じて行われる勤務のこと。
また、日本で決められた法定労働時間である「1日8時間、週40時間」を超えて働くことです。
同じ意味の言葉で以下のように呼ばれることもあります。
- 残業
- 時間外勤務
- 超勤
さらに、超過勤務を命ずる場合は、会社としては以下のことを行う必要があります。
- 職員(社員)の仕事状況の把握
- 超過勤務時間の管理
- 健康状態の把握
このように、超過勤務をさせる場合には労働基準法に反してしまうこともあるため、注意が必要です。
1-1.超過勤務の上限
超過勤務の上限は3つあります。
- 月45時間以下
- 年360時間以下
- 1日の残業は2時間程度
法律によって決められています。
大企業では、2019年4月から、中小企業は2020年4月から上限規制が施行されました。
臨時的で、かつ特別な事情がなければ超えることはできません。
しかし、臨時的で特別な事情があり、企業が「特別条項付き36(サブロク)協定」を結んでいる場合は、もう少し長く勤務することが認められています。
そのうえで、労使協定が合意する場合でも、以下を超えることは禁止されています。
- 年720時間以内
- 2~6ヶ月平均で80時間以内
- 月100時間未満
- 月45時間を超えるは年6ヶ月まで
たとえば、4月に60時間、5月に90時間、6月に70時間の超過勤務があったあった場合、3ヶ月トータルで220時間。平均すると、73時間あまりとなり、違反ではありません。
もし、4月が90時間となった場合は、3ヶ月トータルで250時間、平均だと、83時間あまりとなるため、違反になる可能性があります。
もし、違反した場合は、罰則が課せられる場合があるため、特別条項付き36協定がある会社であっても超過勤務の時間管理には注意が必要です。
1-2.超過勤務のリスクについて
超過勤務に上限が設けられましたが、業種によっては、長時間勤務しているところも少なくありません。
超過勤務をつづけてしまうと、健康面だけでなく、精神的にも追い込まれてしまうなどリスクが伴います。
以下では、従業員が負うリスクである、過労死ライン、うつ症状発生のリスクを紹介します。また、会社自身が負うリスクも合わせて紹介するため、参考にしてください。
(1)過労死ライン
従業員が過労死して、遺族が会社を訴えるというニュースも目にしたことがあるでしょう。
過労死とは、働きすぎが原因で死亡することをいいます。
過労死ラインとは、長時間働かされたことによって、心身への負担がかかり、病気や死に至ってしまう恐れのあるラインです。また、労働災害認定で、労働と過労死、過労自殺との因果関係判定に用いられる言葉でもあります。
過労死のラインの目安になる時間は、月80時間と言われています。
1日8時間の労働に加え、4時間の超過勤務を行うトータル12時間を超えると身体に危険がともないます。
しかし、月に80時間を超えたからといって、それだけで労災認定されるわけではありません。長時間の勤務によって身体が酷使され、死に至ってしまったという因果関係が認められやすくなるということです。
(2)うつ病など精神疾患の発生リスク
超過勤務により、ストレスが溜まって、うつ病など精神疾患を発症する労働者が増えています。
過労死ラインと同じく、80時間を超える時間外労働は、健康障害を発生するリスクが高まると医学的な知見から証明されています。
特に、新型コロナウイルスの影響もあり、医療従事者や福祉の分野で多くなってきている現状です。
また、超過労働によって寝る時間が減り、疲れが取れず、精神疾患のリスクが高まる原因です。時間外労働が50時間を超えると、睡眠時間が6時間を確保できなくなる傾向があります。
また、100時間を超えるようになると、睡眠時間の短縮が強くなることが分かりました。
出典:過重労働とメンタルヘルス
超過勤務は、労働者の心と身体にとても悪い影響があることが分かったのではないでしょうか。
(3)会社自身が負うリスク
労働者の超過勤務のリスクについて解説してきましたが、会社自身が負うリスクもあります。
36協定を結んでいない状態で超過勤務をさせた場合は、労働基準法違反です。6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課せられるため、注意が必要です。
また、現代では、インターネットやSNSも普及しているため、悪い噂などがすぐ広まります。
たとえば、超過労働をさせる会社である、罰則を受けた、労働基準監督署から是正勧告を受けたという情報も広がるでしょう。
その結果、「ブラック企業だ」と認知され、従業員が辞めてしまったり、人を採用しようにも、集まらなかったりすることも考えられます。
このように、超過労働によって、働く人が減り、会社が回らなくなっては、倒産するリスクも高まるでしょう。最大の財産である人材をどう守るかが課題となります。
2.超過勤務手当とは
会社が決めている勤務時間を超えて働いた時間に対して支払われる手当のこと。割増賃金または時間外手当、超勤手当とも言われます。
たとえば、8時間労働の場合、所定労働時間である8時間を超えた分は手当として支払わなければなりません。
しかし、フレックスタイム制には注意しなければなりません。フレックスタイム制は、企業が決めた一定期間の総労働時間内で、労働者が出勤時間や勤務時間を決められる制度です。
そのため、所定労働時間である、「1日8時間、週に40時間」働いたとしても、すぐには残業とならないため、超過勤務手当を受け取れない場合があります。
3.残業の様々な種類
残業には、法定内残業と法定外残業の2種類があります。
一般的に、フルタイム勤務で、8時間働いた後も勤務した時間を残業と呼んでいるでしょう。この場合の残業は法定外残業に該当します。
以下に法定内、法定外残業の具体例も合わせて解説します。
3-1.法定内残業
法定内残業とは、就業規則で決められている労働時間は超えるが、労働基準法が定めている法定労働時間は超えてはいない時間外労働のことです。
たとえば、会社の労働契約で6時間と決められている場合、9時始業であれば、60分の休憩を挟み、16時には終業となります。(所定労働時間は6時間)
しかし、仕事が16時までに終わらず、18時まで働いた場合は2時間の法定内残業となります。
国が労働基準法で1日8時間と決めているため、8時間の労働のうち、6時間は定められた勤務時間であり、2時間は残業したということになります。
もし、会社が決めた労働時間が8時間であった場合、法定労働時間との差はないため、法定内残業は発生しません。
3-2.法定外残業
フルタイムで働く会社員は、8時間勤務した後に働いたら残業代をもらっているという方がほとんどでしょう。その場合は、法定外残業をもらっているということになります。
法律で定められた1日8時間、週に40時間労働を超えて働くことが法定外残業です。
たとえば、週に43時間働いた場合、40時間を超えている3時間分は法定外残業という扱いになります。
法定内と法定外の残業では、賃金の支払いの際に、割増率が変わることにも違いがあるため、それぞれ間違えないように注意が必要です。
4.残業の種類で超過勤務手当に該当しないものについて
超過勤務手当を計算する際の基礎となる賃金から除外できるものは、以下の5つが挙げられます。
- 扶養手当
- 通勤手当
- 住宅手当
- 別居手当
- 臨時に支払われた賃金
これらは、労働基準法によって基礎賃金から除外できる手当として規定されています。
出典:厚生労働省
また、それぞれ細かく規定があります。
たとえば、扶養手当の場合、別の名称で生活支援手当などと会社が決めていても、実際に家族を養うために支払った手当と認識されるため、基礎賃金から除外されるのです。
別居手当は、転勤など、会社都合により、家族と離れて暮らすことになった場合に支払われる手当のことです。労働の内容や量とは関係なく、個人的な事情により発生するもののため、除外できます。
5.勤務形態による超過勤務手当の違い
勤務形態により、超過勤務手当に違いが出てきます。
たとえば、以下の3つの形態があります。
- 固定時間制
- 変形労働時間制
- フレックスタイム制
自身の勤務形態に合わせた手当の計算方法を押さえておくことが重要です。
ここでは、変形労働時間制と、フレックスタイム制の手当の違いについて解説します。
5-1.変形労働時間制の場合
変形労働時間制とは、年、月単位で労働時間の差が異なったり、調整されている働き方です。たとえば、閑散期、繁忙期で働く時間が変わることがあります。
変形労働時間制が採用されている会社では、就業規則によって、労働時間や対象期間などが定められています。
閑散期のときに長時間働いても、やることがなく、人件費などの費用がかさむだけです。それを防ぐために導入している企業も多いでしょう。
たとえば、月の勤務スケジュールで、1.2週目は37時間、3.4週目は43時間と決めている場合、週の平均で40時間となり、残業代は発生しません。
ただし、平均して週40時間を超える場合は、超過勤務手当を支払わなければなりません。
もし、1.2週目が38時間、3.4週目が45時間で合った場合は、週平均41.5時間となり、1.5時間が残業扱いとなります。
5-2.フレックスタイム制の場合
フレックスタイム制とは、月や年単位など一定期間について定められた労働時間内で、労働者自ら始業、終業の時間を決めて働ける制度のことです。
たとえば、週の初めは集中しやすいから朝6時に出社して、1日8時間働いたり、週末は9時に出勤して5時間だけ働いたりするなど、柔軟に働くことができます。
フレックスタイム制は、清算期間と総労働時間があります。
清算期間は、働く時間を定めた期間のことで、1ヶ月、また最長3ヶ月まで調整が可能となります。総労働時間とは、清算期間において、労働すべき時間(所定労働時間)のことです。
フレックスタイム制では、総労働時間を超えて働くと超過勤務という扱いになります。
しかし、清算期間が1ヶ月を超える場合は、総労働時間と実務労働時間の過不足は、月を跨いで計算できる決まりです。
清算期間が1月から3月の3ヶ月の場合の超過勤務のケースを見ます。
- 清算期間である1月から3月の労働時間が週平均40時間を超えたとき
- 1ヶ月ごとの労働時間が、週平均50時間を超えたとき
たとえば、1月は週平均43時間、2月は週平均38時間、3月は週平均46時間だった場合、3ヶ月平均が42時間で、40時間を超えるため、2時間は超過勤務扱いです。
このように、フレックスタイム制の超過勤務については、変形労働時間制とはまた異なるため、注意が必要です。
6.超過勤務手当の計算方法
超過勤務手当の計算方法として、以下の3つがあります。
- 通常の時給(基礎賃金)に1.25倍して、残業した時間に乗じる
- 休日出勤した場合、通常の時給に1.35倍して、残業した時間に乗じる
- 深夜労働(22時~5時)した場合は、1.25倍の割り増し
所定労働時間が1日8時間勤務、週40時間と決まっている定時制の場合の計算方法を具体的な数字を用いて解説します。
6-1.超過勤務手当の計算例
9月の勤務時間は8時~17時(1時間の休憩あり)の8時間が会社が決めた所定労働時間。
勤務日数は20日で、月給25万円の場合の計算例を見てみましょう。
9月10日を、8時から19時まで働いたと仮定します。
まずは、1時間あたりの賃金(時給)を月給から割り出します。
25万÷20日=1万2,500円/1日
12,500÷8時間=1,562.5円のため、1,563円と計算。
定時は17時ですが、この日は19時まで働いたため、2時間の超過勤務。
法定労働時間を超えたため、25%割り増しの賃金です。
1,563円×2時間×1.25=3,907.5円。端数を切り上げると、3,908円が超過勤務手当の金額になります。
休日出勤した場合の例を見てみましょう。
法定休日に、8時〜17時(1時間の休憩含む)働いた場合は、35%割り増しと定められています。休日出勤した全部の時間が超過勤務手当の対象です。
1,563円×8時間×1.35=1万6,880円
平日の賃金だと12,500円のところ、休日出勤した場合は4,380円割り増しした賃金が支払われる計算となります。
このように、超過勤務手当は残業した時間・時刻、出勤日などにより割増率が変わるため、計算間違いには注意が必要です。
7.超過勤務から発展する労働問題を弁護士に相談、依頼するメリット
超過勤務をしたことで、以下のような問題が起こります。
- うつ病になって働けなくなった
- 健康維持ができずに、病気になって障害が残った
- 超過勤務をしたが、手当が支払われなかった
- 超過勤務を拒否したら、パワハラにあった
これらの労働問題に対して、弁護士に相談するのが望ましいでしょう。超過勤務から発展する労働問題を弁護士に相談、依頼するメリットを3つ紹介します。
- 過労死の医学的な証明など立証活動をしてくれる
- 勤務先へ損害賠償請求や刑事告訴まで任せられる
- 超過勤務した分の賃金未払いの証拠を集め、請求を行ってくれる
7-1.過労死の医学的な証明など立証活動をしてくれる
家族が働き過ぎで、精神的、身体的ストレスにより病気になったときは、労災請求を検討します。
労災請求は、自分でもできますが、労災の認定をもらうためにはハードルが高く、難しいものです。
しかし、労災や過労死に詳しい弁護士に相談することで、労災の根拠となる証拠集めなど立証の活動を行ってくれます。
たとえば、弁護士には以下のことができます。
- 労働基準監督署への提出書類作成する
- 会社側が証拠隠滅を図らないようにするために、裁判所へ証拠保全の申し立てをする
- 審査請求、再審査請求の手続きの代理人になれる
このように、家族が超過勤務によって、病気や自殺してしまった場合は、過労死を検討し、弁護士にいち早く相談することをおすすめします。
弊社では、超過勤務によって起こりうる労働問題に詳しい弁護士が在籍しています。ただいま60分無料相談も行っているため、お困りの方はお問い合わせ下さい。
7-2.勤務先へ損害賠償請求や刑事告訴まで任せられる
超過勤務によって、労災だけでなく、会社に損害賠償請求も行いたい場合もあるでしょう。
弁護士は労災の手続きだけでなく、損害賠償請求や刑事告訴なども行ってくれます。
たとえば、損害賠償請求をする際は、賠償金の計算や、示談交渉、訴訟など行う場合があります。到底1人でできるものではなく、法律のプロである弁護士に依頼したほうが、確実にスムーズに進められるでしょう。
刑事告訴する場合には、警察への対応もしなければならず、素人では相手にされない可能性も出てきます。そのため、弁護士に任せてやり取りを行ってもらうのが最善です。
7-3.超過勤務した分の賃金未払いの証拠を集め、請求を行ってくれる
超過勤務したが、賃金が支払われていなかった時は、弁護士に相談しましょう。
未払い分の超過勤務手当を請求するための時効は2年という決まりがあります。
そのため、なるべく早めに証拠集めや残業代の計算などを行わなければなりません。しかし、自分ひとりでやるとなると、時間も取られ、計算も複雑で諦めてしまうことも少なくないでしょう。
しかし、弁護士に相談、依頼することで、会社へ未払い分の請求や計算、裁判まで行ってくれます。
未払い分ついて弁護士に相談していますと伝えるだけでも、会社側の対応が変わることがあるため、メリットでしょう。
もし、会社側が手当の支払いを拒否した場合は、訴訟を起こすこともできます。1人で抱え込まず、弁護士に相談して解決へ向けて動きましょう。
8.超過勤務や超過勤務手当に関するよくあるQ&A
8-1.超過勤務は違法ですか?
定められた時間を過ぎてしまった場合は違法です。労働者と会社が36協定を結んでいない状態で1日8時間、週40時間以上働くと取り締まりの対象となります。労働基準法によって定められているため、守らなければなりません。
8-2.超過勤務手当は残業手当とは異なりますか?
同じ意味で使われていることが多いです。法的には、公務員の賃金に対して使われる言葉が超過勤務手当、民間の会社に勤めている人に対しては残業手当などと呼ばれます。
時間外手当、割増賃金とも言われます。
8-3.超過勤務の上限はありますか?
上限は原則として、月45時間、年360時間です。臨時的であり、特別な事情がなければ超えることは許されません。
9.まとめ
本記事では、超過勤務や超過勤務手当について解説しました。
超過勤務とは、会社によって決められた勤務時間を超えて働くことを言います。上限は月45時間、年360時間と決まりがあります。
超過勤務させたい場合は、労働者と会社側で労使協定を結んでいる必要があり、また、36協定を結んでいなければならないなど決まりがあると分かったのではないでしょうか。
もし、超過勤務によって、精神的ストレスでうつ病になったり、病気になったりした場合は、労災認定を取ることもできます。
また、睡眠時間が短くなり、身体が十分休めていない状況で仕事をし続けると、過労死を招くことも少なくありません。
このように、長時間勤務を余儀なくされた場合や、労災にあたるのではと思った場合は速やかに弁護士に相談、依頼しましょう。
私たち法律事務所リーガルスマートは、超過勤務のトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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