残業代請求

15分単位の残業代計算は違法?正しい計算方法を弁護士が解説!

15分単位の残業代計算は違法?正しい計算方法を弁護士が解説!
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1.そもそも残業時間とは

残業時間とは、一般的には、会社が雇用契約や就業規則で定めた所定労働時間を超えて労働する時間をいいますが、法定内残業と法定外残業に大別できます。

法定内残業とは、会社が規定する所定労働時間は超えているものの、1日8時間、1週間40時間の法定労働時間を超えない残業をいいます。

法定外残業とは、労働基準法で定められている1日8時間、1週間40時間を超えて働いた残業をいいます(労働基準法第32条)。

労働基準法では、この法定労働時間を超えた労働を残業とは言わずに、時間外労働と呼びますが、一般的には、この時間外労働を残業と呼んでいます。

会社が労働者に時間外労働をさせる場合、労使間で時間外・休日労働に関する協定届、いわゆる36協定(サブロク協定)を締結し、労働基準監督局に届け出なければなりません。

また、会社が時間外労働をさせた場合には、会社は労働基準法に基づいた割増賃金を支払う必要があります(労働基準法第37条)。

会社は1分単位の勤怠管理が義務付けられているため、残業時間についても同じように1分単位で計算して、残業代を支払わなければなりません。

しかし、現実には15分や30分の労働時間を切り捨てて残業代が支払われていないケースも少なくありません。

そこで本記事では、残業時間の切り捨ては違法なのか、問題になった事例や正しい残業代の計算方法について、労働問題に強い弁護士が解説します。

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2.15分単位での残業時間切り捨ては違法なのか

会社が15分単位で残業時間を切り捨てることは、原則として違法になります。

しかし、実際に給与計算を行う場合には、残業代の計算を簡略化するために、特定の条件においては端数の切り捨てが認められる場合があります。

ここでは、残業時間の端数の取り扱いについて見ていきます。

2-1.違法になる場合

先にも述べたように、会社が労働者に残業させたとき、残業時間は1分単位で計算して割増賃金を支払わなければなりません。

会社は、労働者に対して働いた賃金の全額を支払わなければならないと規定しており(労働基準法第24条)、残業についても、この賃金全額支払いの原則が適用されるからです。

また、残業時間の端数を切り捨てることは、割増賃金の支給義務にも違反することになります(労働基準法第37条)。

したがって、会社が15分単位で残業時間を切り捨てることは、労働者の不利益となるため、原則的には違法になります。

違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります(労働基準法第109条、第120条)。

2-2.認められる場合

これに対して、1分単位での残業時間の計算は現実問題として事務処理が煩雑になります。

1か月あたりの時間外労働、休日労働、深夜労働の合計に対しては、30分未満の端数の切り捨て、30分以上の端数は1時間に切り上げることは認められており、違法になりません。

例えば、1か月の残業時間の合計が40時間29分であった場合、端数を切り捨てて合計を40時間とすることは違法ではありません。

また、1か月の残業時間の合計が40時間35分であった場合、端数を切り上げて41時間とすることは、労働者の利益にもなるため、違法になりません。

この場合に注意しなければならないのは、必ず1か月あたりの合計に対しての端数処理を行うことです。日ごとの残業時間に対して、端数処理をすることは違法になります。

例えば、1か月に20日出勤して毎日24分残業した場合は、残業時間は0時間ではなく8時間になるため(残業24分×20日÷60分)注意が必要です。

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3.残業時間の切り捨てが問題となった事例

では、実際にどのような場合に残業時間の切り捨てが問題になったのでしょうか?

ここでは、これまでに残業時間の切り捨てが問題となった事例を紹介します。

3-1.5分未満の切り捨てが認められなかった事例

残業時間の切り捨てが問題となった1つめの事例に、5分未満の切り捨てが認められず、切り捨てられた時間分の未払い賃金が全労働者に支給されたケースがあります。

全国にチェーン店舗を持つ大手飲食店では、労働時間の5分未満を切り捨てにしていましたが、労働組合に加入した労働者が切り捨てを違法として未払い賃金の支払いを求めました。

この訴えにより、裁判所はアルバイトを含む数万人の全労働者に対して、過去2年分の未払い賃金の支払いを大手飲食店に命じました。

3-2.15分未満の切り捨てが認められなかった事例

残業時間の切り捨てが問題となった2つめの事例は、15分未満の切り捨てが認められず、切り捨てられた時間分の未払い賃金が全労働者に支給された事例です。

全国に薬局チェーンを持つ大手薬局では、店舗のタイムカードを15分単位で労働者に打刻させていましたが、労働者が労働基準法違反であると労働基準監督署に申告しました。

残業時間は1分単位で計算されなければなりませんが、15分単位で労働時間の切り捨てを行い、実際の労働時間を少なく処理していました。

この切り捨ては労働基準法に違反するため、チェーン店全体に数億円分の未払い賃金が発生しました。

また、15分未満の時間を切り捨てて給与計算を行っていたとして、医師が未払い残業代の請求を行ったケースもあります(名古屋地裁平成31年2月14日判決)。

これに対して裁判所は、労働時間の一定未満の端数の切り捨て処理は、労働基準法に反して認められず、未払い残業代の支払を命じました。

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4.残業代の正しい計算方法

残業代を請求するには、正しい計算方法により残業代を算出することが重要です。

残業代の計算が間違っていれば、会社も残業代の支払を拒否するため、せっかく請求できるはずの未払い残業代も請求できなくなってしまいます。

残業代の計算式は、以下のとおりです。

残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 残業時間 × 割増率1.25

残業代を正しく計算するためにも、以下の手順で計算することが必要です。

それぞれについて、見ていきましょう。

4-1.1時間当たりの基礎賃金を求める

残業代を計算するにあたり、まずは、1時間当たりの基礎賃金を算出することが必要です。

基礎賃金は、時間外労働手当、深夜手当、休日手当て、家族手当、住宅手当、子女教育手当、別居手当、臨時に支給された賃金、などの手当を除外して算出します。

1時間当たりの基礎賃金を求める計算式は、会社が時給制をとっているか、月給制をとっているかにより、以下のようになります。

時給制の場合の計算式は、上記の計算式に時給をそのままあてはめて計算します。

残業代 = 時給 × 残業時間 × 割増率1.25

月給制の場合は、以下の計算式のより月給制の場合の1時間あたりの基礎賃金を求めてから、上記の式にあてはめます。

基礎賃金 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間(年間所定労働時間÷12か月)

例えば、2023年12月の基礎賃金が32万円、月平均所定労働時間が160時間であれば、1時間当たりの基礎賃金は2000円になります。

4-2.残業時間を集計する

残業時間は、残業の種類ごとに区分して集計しなければなりません。

残業の種類は、以下のとおりです。

(1)法定内残業

会社の所定労働時間を超えるものの、1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えない部分の残業時間の集計です。

(2)法定外残業(時間外労働)

1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超える部分の残業時間の集計です。

(3)深夜労働

午後10時から午前5時までの労働時間を超える部分の残業時間の集計です。法定内残業、法定外残業、休日労働と重複することもあるため、注意が必要です。

(4)休日労働

法定休日における労働時間です。法定休日ではない休日に労働した場合は、法定内残業または時間外労働になるため、注意が必要です。

4-3.割増率を適用して残業代を計算する

割増率も、以下のように残業の種類により異なります。

残業の種類割増率
法定内残業割増なし
時間外労働25%以上
深夜労働25%以上
休日労働35%以上
時間外労働と深夜労働(深夜残業)50%以上ただし月60時間を超える場合は70%以上
休日労働と深夜労働60%以上

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5.22時以降の残業の割増率について

22時以降から翌朝5時までに残業を行うことを深夜残業と言い、その日すでに8時間を超えて働いている場合の労働をいいます。

深夜残業と通常の残業の違いは、割増率が異なることです。通常の残業である時間外労働の割増率は25%以上ですが、深夜残業の割増率は50%以上になります。

深夜残業は、深夜労働の割増率25%に時間外労働の割増率25%が加算されるため、合わせて50%以上の割増率になるからです。

深夜労働については、原則として、満18才以上であれば深夜労働が可能ですが、下記の条件に該当する場合は、18才未満でも深夜労働が認められています。

  • 交替制で労働する16才以上の男性
  • 交替制の事業で労働基準監督署の許可がある場合(ただし22時30分まで)
  • 災害その他の非常事態時で時間外労働や休日労働の必要がある場合、かつ、労働基準監督 署の許可を受けている場合
  • 農林水産業、保健衛生事業、電話交換業務に従事する場合

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6.フレックスタイム制や変形労働時間制の残業時間の考え方について

フレックスタイム制や変形労働時間制についても残業時間の扱いが異なります。

それぞれについて、見ていきましょう。

6-1.変形労働時間制

変形労働時間制とは、業務に合わせて労働者の労働時間を変えることができる制度です。柔軟な働き方が可能になり、時間外労働つまり残業を減らす効果が期待できます。

変形労働時間制をとっている場合でも、時間外労働つまり残業した場合には、会社は割増賃金を支払わなければなりません。

残業時間については、1年単位の変形労働時間制、1か月単位の変形労働時間制、1週間単位の変形労働時間制のいずれの場合も、1週間あたり40時間を超えた残業時間となります。

6-2.フレックスタイム制

フレックスタイム制は、労働者が始業と就業を自由に決めることができる制度です。変形労働時間制の一種であり、労働者が柔軟な働き方ができる点は変形労働時間制と同じです。

フレックスタイム制では、総労働時間の枠内で弾力的に働くことから、1日8時間、1週40時間を超えても直ちに残業とはならないこともあるため、注意が必要です。

フレックスタイム制で残業時間にあたるのは、法定労働時間の総枠を超えた時間です。法定労働時間を超えた時間は、法定内残業と法定外残業に分けられます。

法定内残業は割増のない通常の賃金が支払われるのに対し、法定外残業は割増のある賃金が支払われます。

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7.会社に未払い残業代を請求する方法

会社に未払い残業代を請求する方法は、以下の4つです。

それぞれについて、見ていきます。

7-1.残業時間を証明する証拠の収集

会社に未払い残業代を請求するためには、まずは、残業時間を証明する証拠を収集する必要があります。

残業時間を証明する証拠には、タイムカード、タイムシート、勤怠管理データ、雇用契約書、就業規則、給与明細などがあげられます。

これらの証拠は、通常は会社が保管していることが多いため、入手が困難な場合もありますが、弁護士に依頼することで、会社に対して証拠の開示請求を行うことも可能です。

7-2.会社と交渉

会社に未払い残業代を請求するためには、証拠を収集した後に会社と交渉します。

証拠を基に、会社に未払い残業代を請求し、勤務を継続する場合には残業代の支給された後の改善要求を申立てることも可能です。

会社に残業代を請求しても、直ちに会社がこれに応じるケースは少ないため、労働組合に相談してみるのもよいでしょう。

残業代請求は3年で消滅時効にかかります。これを阻止するためにも、会社に残業代請求書を内容証明郵便で郵送することをおすすめします。

7-3.労働基準監督署に相談

会社が請求に応じない場合には、労働基準監督署に相談することもできます。

残業代の未払いは、労働基準法にも反するため、会社の未払いの事実が認められれば、労働基準監督署から会社に是正勧告が出される場合もあります。

ただし、労働基準監督署の是正勧告には強制力がないため、未払い残業代の回収を望むのであれば、訴訟などの法的手続きを検討するべきでしょう。

7-4.弁護士に相談

残業代を請求するには、弁護士に相談・依頼することがおすすめです。

弁護士であれば、会社から未払い残業代を回収するために、事案に応じた対策をとることができるからです。

以下では、未払い残業代の請求を弁護士に相談・依頼するメリットを紹介します。

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8.未払い残業代の請求を弁護士に相談、依頼するメリット

未払い残業代の請求を弁護士に相談・依頼するメリットは、以下の5つです。

それぞれについて、見ていきましょう。

8-1.会社との直接交渉を回避できる

未払い残業代の請求を弁護士に相談・依頼する1つめのメリットは、労働者が会社との直接交渉を回避できることです。

労働者が個人で残業代の請求をしても、証拠がない、残業の指示をしていない、労働者の能力が十分でない、など様々な理由を基に請求を拒否するケースが少なくありません。

特に、在職中に未払い残業代の請求をすることは、その後の勤務状況に影響を与えることにもなるため、残業代請求に大きなストレスを感じることになります。

また、退職後に未払い残業代を請求する場合は、会社が保管しているタイムカードなどの証拠の入手が困難になり、会社も退職者に対して真摯に対応しなくなるケースもあります。

この点、弁護士に請求を依頼することで、会社と直接交渉をせずに、未払い残業代の回収に必要な手続きを一任することが可能です。

8-2.残業代や遅延損害金の計算ができる

未払い残業代の請求を弁護士に相談・依頼する2つめのメリットは、残業代や遅延損害金の計算ができることです。

未払い残業代を請求する際に、まずやらなければならないことは、残業代や遅延損害金を正確に計算して金額を算出することです。

しかし、残業代の計算は、業務形態や残業の種類により割増率が異なるなど、事案に応じて複雑になります。

残業代の計算が正しくなければ、これを理由に会社が残業代の支給を拒むことになり、残業代が回収できなくなる可能性が高くなります。

この点、労働問題に精通している弁護士であれば、残業代の正確な計算も可能であり、計算書の作成もしてくれるため、安心して会社に請求することができるようになります。

8-3.会社に証拠の提出を請求できる

未払い残業代の請求を弁護士に相談・依頼する3つめのメリットは、会社に証拠の提出を請求できることです。

残業代の請求をする場合には、残業代が発生したことを証明する証拠が必要になりますが、どのような証拠が必要になるのか、また、どのように証拠を収集できるのかわからない人も少なくありません。

弁護士に依頼することで、会社に対して内容証明郵便による残業代請求を会社に送付して、証拠の開示請求をすることも可能になります。

8-4.時間短縮やストレス軽減できる

未払い残業代の請求を弁護士に相談・依頼する4つめのメリットは、時間短縮やストレスの軽減ができることです。

残業代の請求には、残業代や遅延損害金の計算、請求書の送付、会社との交渉など様々な手続きが必要になり、時間的にも、また精神的にも負担が大きくなります。

弁護士に依頼すると、弁護士費用がかかるようになりますが、時間や労力、特に、精神的なストレスを考えると、決して無駄な費用とはならないでしょう。

時間短縮やストレスの軽減は、弁護士に依頼する際の大きなメリットと言えます。

8-5.会社が対応するようになる

未払い残業代の請求を弁護士に相談・依頼する5つめのメリットは、会社が対応するようになることです。

ブラック企業の横行の影響から、近年は残業代を支払わない会社が多くなりました。悪質な会社に、未払い残業代の請求をしても、対応しないケースが少なくありません。

弁護士名義で残業代を請求すると、会社の対応いかんによっては、訴訟に発展する可能性もあるため、会社としても真摯に対応するようになります。

残業代の請求権は、消滅時効にかかることもあるため、できるだけ早い段階で、弁護士に相談することをおすすめします。

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9.残業代に関するよくあるQ&A

9-1.朝礼・準備・片付けなども労働時間に当たりますか?

はい、労働時間にあたります。朝礼や就業前の準備、片づけなども労働時間に含まれるため、これらの時間にも残業代が適切に支払われているのか、確認することが必要です。

労働時間とは、労働者が会社の指揮命令下におかれている時間をいいます。したがって、実際の業務時間に加え、朝礼や準備、待機時間、片づけ、接待なども労働時間に含まれます。

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10.まとめ

本記事では、残業時間の切り捨ては違法なのか、問題になった事例や正しい残業代の計算方法について、労働問題に強い弁護士が解説しました。

会社は、残業代の計算を行うにあたり、1分単位で残業時間を集計しなければなりません。5分や15分単位で残業代を切り捨てることは、原則的には違法となります。

未払い残業代がある場合は、早い段階から弁護士に相談して、会社に対して未払い残業代の請求を行うことをおすすめします。

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担当者

福永 臣吾
福永 臣吾法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2005年3月 慶應義塾大学経済学部 卒業
2011年3月 一橋大学法科大学院 修了
2014年12月 最高裁判所 司法研修所(鹿児島地方裁判所配属) 修了
2015年1月 弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
2015年4月 弁護士法人アディーレ法律事務所鹿児島支店支店長 就任
2023年9月 法律事務所リーガルスマート入所
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