ハラスメント

上司からモラハラされた!モラハラの特徴や対処法を弁護士が解説

上司からモラハラされた!モラハラの特徴や対処法を弁護士が解説
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昨今、職場内でのハラスメント行為が問題化しており、年々さまざまなハラスメントの類型が新しく定義されています。

「モラルハラスメント」いわゆる「モラハラ」もその問題の1つであり、とくに上司からのモラハラは大きな問題に発展するケースが多いです。

そこで本記事では、職場での上司からのモラハラへの対処法について労働問題に強い弁護士が解説します。

1.そもそもモラハラとは

「モラルハラスメント(モラハラ)」とは、モラル、つまり倫理観や道徳観に反して行われる嫌がらせなどの行為です。

職場でのモラハラ行為は、対象者の人格や人権、尊厳を傷つけて心身の健康を害し、職場の空気を悪くしたり対象者を退職に追い込むなどの問題があります。

また、モラハラにより心身の健康を害されると仕事内容にも差し支えるケースも多く、最悪の場合は自ら命を絶つ選択をさせるなどの重大な事件に発展するケースも珍しくありません。

1-1.モラハラの具体例

職場でのモラハラの具体例としては、以下のような行為が挙げられます。

  • 相手の容姿や人間性、能力や尊厳を否定する
  • 相手の家族に対する悪口を言う
  • 周囲に人がいる状態で叱責を繰り返す
  • 必要以上の長時間にわたって叱責する
  • 本人に聞こえていると分かっている状態で悪口や陰口を言う
  • 理由のない職場の人間関係からの切り離しや無視をする
  • 職場外での無意味な行動の監視を行う
  • 無意味なプライベートへの立ち入りを行う
  • 長期にわたる業務外の作業や私的な雑用の命令をする
  • 舌打ちやわざとらしいため息をする

モラハラの多くはその行為を対象者に繰り返すので、悪意あるものとして認識されますが、人によっては意識せずにモラハラを繰り返すもっと悪質なパターンもあります。

こうした従業員は他人が指摘しても「自分は悪くない」と思い込んで考えを改めることが少ないため、仮に上司がモラハラしている従業員へ指摘してもモラハラを止めないケースも少なくありません。

ですが、モラハラは社内風紀を悪化させる原因として解雇の合理的理由になる可能性があります。

社内通報制度があれば、モラハラをしている従業員を告発することもできるので、大きな問題に発展する前に社内調査をしてもらい、モラハラをしている従業員を止めましょう。

必要な場合は弁護士など外部の専門家に相談するなどすることも検討してください。

1-2.モラハラとパワハラの違い

職場でのハラスメントというと「パワーハラスメント(パワハラ)」を強くイメージする方も多いのではないでしょうか。

パワハラとは、職場での上下関係を利用して上司が部下に対して物理的暴力や精神的暴力を繰り返すハラスメント行為です。

モラハラも、上司が部下に対して行われる暴力である場合はパワハラと似ている点がありますが、モラハラとパワハラでは具体的な定義が異なります。

まず、パワハラは一般的には上司から部下へのハラスメントであるのに対して、モラハラは同僚や部下からのハラスメント行為も含まれる点で異なります。

次に、パワーハラスメントは殴るなどの物理的な暴力や精神的な暴力も含まれますが、モラハラの場合は精神的な暴力のみを対象とします。

場合によっては、どちらのハラスメントに該当するのか分類が難しい場合がありますが、いずれにしても、人として許される行為ではなく、場合によっては犯罪行為として刑事罰の対象となるケースもあるため、周囲でモラハラやパワハラが確認されたら早めに対処しましょう。

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2.モラハラと指導の違い

モラハラ行為をした従業員は、ときに自身がモラハラをしていると自覚していないケースもあります。

多くの場合は「指導のつもりだった」と弁明することになるでしょう。

実際のところ、「モラハラなのか」「指導として認められる程度なのか」の判断は、対象者の処遇を決めるにあたって重要なことです。

2-1.指導と判断されるケース

上司からの行為があくまでも指導と判断されるケースは、上司からの叱責などの行為が「対象者の成長を促すため」「行為の目的があくまでも業務内容に直結すること」に当たるかが判断基準です。

教育機関においても、生徒が悪いことをすれば、時には先生に強く叱られることもありますが、多くの場合は「これは悪いことであるから、もうしないように」と指導するためでしょう。

職場での指導もこれに類するものであり、叱責などの行為があくまでもその従業員の成長を促したり、ミスを再発させないための目的であれば、「業務上の指導の範囲である」と判断される可能性が高いです。

たとえば、ある従業員が業務上でミスを発生させ、上司がこれを叱責し、それ以降その従業員の進捗状況などを上司が今まで以上に確認したとします。

この「叱責」や「進捗の確認」などは、行き過ぎた行為であれば「モラハラである」と判断される可能性が高くなります。

しかし、モラハラは本来「相手の人格を貶める」など倫理観や道徳観に反する行為であることから、「業務上必要な範囲である」と判断できる叱責や監督については「モラハラである」とは判断しにくいです。

人格否定などの悪質な目的がなく、厳しい指導でも適切なフォローを行っている場合は、それはあくまでも従業員の成長を期待してのことだと判断できるので、この場合は「指導である」と判断できるでしょう。

2-2.モラハラと判断されるケース

一方で、上司からの行為が「モラハラである」と判断される場合は、上司からの叱責などの行為が「対象者の人格否定や退職を促すために行われた」「業務とは直接の関係がない」ということが判断基準となります。

たとえば、業務上ミスをした部下に対して上司が叱責することは、普通に考えれば至極当然のことだと判断できるでしょう。

しかし、その叱責の内容が従業員の人格や尊厳を否定するものであったり、過度に長時間の叱責が続く場合は、「指導の範囲を超えたモラハラである」と判断される可能性が高くなります。

もう1つ例を挙げるとすれば、「終業時間までに終わらないことが明らかである」と判断できる量の仕事を上司が部下に押し付けたとしましょう。

たしかに、仕事量をこなすことは業務上の経験と成長を促す方法としては間違っていないかもしれません。

しかし、残業しなければ確実に終わらせることのできない仕事量を押し付けることは、「成長を促す」という目的の範疇というよりは、仕事量により疲弊させて心身ともに疲労させて退職を促す、あるいは単なる嫌がらせといった目的が強いように思われます。

さらに、上司からの叱責などの行為が周囲の雰囲気も悪くするようであれば、「かなり陰湿な行為が繰り返されているものである」と思われます。

こうした問題は早期に解決するべきであり、モラハラをしている上司のさらに上司にあたる従業員に相談したり、社内通報制度を利用したり、あるいは弁護士に相談して解決しましょう。

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3.モラハラされた際の対処法

会社内でモラハラを受けた場合は、それが続かないように適切に対処する必要があります。

3-1.モラハラの証拠を集める

まず重要なことは、自身が「モラハラを受けている」という確たる証拠をできるだけ多く集めることです。

たとえば、実際に加害者がモラハラ発言をしている際の音声データを録音したり、メールや書面でモラハラ行為をしてきた場合はその文書を集めて保存しておきましょう。

このようなモラハラの証拠は、「今後どのような方針で行動するか」においても、自身の利益を確保するための重要な証拠になります。

もし、今後その会社を離れる決断をする場合は、退職するまでの短い間に「どれだけ多くの証拠を集められるか」が重要なポイントです。

証拠集めが加害者に露呈したり、周囲に露呈して密告されると面倒な問題になる可能性があるので、他人にバレることなく慎重に証拠集めをすることも重要です。

3-2.専用窓口に相談する

必要な証拠を集め終わったら、まずは社内の相談窓口に相談したり社内通報制度を利用するなどして、社内の専門部署に対応してもらいましょう。

昨今、職場でのハラスメント問題が社会問題化している中、先進的な企業の多くは社内に専門部署を設けてハラスメント問題を解決する姿勢を見せています。

ハラスメント問題を「重大問題である」と認識している企業ほどその姿勢は顕著に表れているので、モラハラ問題が重大化する前に証拠を集め終わり、これをもって相談窓口に相談しましょう。

しかし、ハラスメント対策のための部署が形骸化しているなど、相談しても根本的な解決にならないケースも少なくありません。

そんな場合は社外の相談窓口に相談するという選択肢も視野に入れてください。

総合労働相談コーナー

労働組合相談センター

みんなの人権110番

ただし、これらの相談窓口は今後の行動をアドバイスすることが主な目的なので、会社側との交渉の代行などはしてくれるわけではありません。

交渉など具体的なサポートを必要とする場合は、労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

3-3.会社を辞める

どれだけ手を尽くしてもモラハラ問題が解決しない場合は、その会社を退職する選択肢もあります。

モラハラ問題が続いている会社では居心地が良くないはずなので、周囲との関係も悪くなっているケースも珍しくありません。

そうした会社でモラハラされながら働いていると、心身の健康を害して精神病などの病気の原因になる可能性があります。

入社した目的によっては「その会社に居続けたい」と思うかもしれませんが、このままでは健康を害するリスクが増えて社内の評価にも悪影響が及ぶ可能性もあるでしょう。

被害者の中には、「モラハラされる原因が自分自身にある」と思い込んでいる方も少なくありませんが、ハラスメントは加害者が圧倒的に悪く、被害者に非はありません。

将来のことを考えれば、転職して新しい環境でやり直したほうが将来性を見込める可能性もあるでしょう。

「逃げる」と考える方もいるかもしれませんが、「モラハラ問題の解決に前向きではない会社から新天地に挑戦する」と考えて、ポジティブな気持ちで退職することも検討してみてください。

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4.モラハラ上司を訴える方法

上記の対処法のほかに、モラハラ行為をしてきた上司に対して「訴える」という選択肢もあります。

モラハラの証拠をしっかりと集めて、「モラハラ上司に対して社会的な制裁を与えたい」と考えるのであれば、弁護士に相談のうえでモラハラ上司を訴えることも検討してください。

4-1.民事訴訟

モラハラ上司に対して、民事訴訟により損害賠償請求をすることが可能です。

内容としては、モラハラ行為により受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求でき、退職に追い込まれた場合は逸失利益の請求、モラハラによって精神疾患を発症した場合はその治療費などを請求できます。

ただし、モラハラに対する損害賠償請求の金額はケースバイケースであり、数十万円しか認められない場合もあれば、100万円以上の損害賠償請求が認められるケースもあります。

この金額の増減については、モラハラ行為の悪質さや精神疾患の程度などにより変動しますが、それを認めてもらうためのモラハラ行為の証拠集めは重要なポイントになります。

たとえば、モラハラ行為の期間の長さも損害賠償請求額に関わるので、「いつからモラハラ行為があったのか」をはっきりと証明できる証拠があれば強みになるでしょう。

証拠集めなどで不安がある場合は、労働問題に強い弁護士に相談すると、適切なアドバイスを受けられます。

4-2.刑事告訴

モラハラ行為が悪質であり、「犯罪行為である」と認められるレベルであれば、刑事告訴することも十分に可能です。

たとえば「次にミスしたら殴るからな」という発言は、これは刑法における脅迫罪に該当します。

ほかにも、モラハラ行為によっては「強要罪」「侮辱罪」「名誉棄損罪」などの犯罪行為に該当する可能性もあります。

ただし、モラハラ行為がこれらの犯罪行為として裁判所に認められるためには、高いハードルをクリアする必要があります。

また、刑事告訴は二審以降も裁判が続くケースも多く、裁判期間中は相当な心理的プレッシャーに押しつぶされる可能性もあるでしょう。

裁判手続きをスムーズに進めてモラハラ上司にしっかりと社会的制裁を与えるためには、弁護士に相談して手続きの代行や和解交渉などを進めてもらうことが重要です。

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5.上司のモラハラの裁判例

それでは実際に、上司から受けたモラハラを理由として裁判をした事例を2つ見ていきましょう。

5-1.上司からのモラハラが認められた裁判例

この事例では、被害者は「上司である加害者から職務内容について侮辱された」として、訴えを起こしました。

判決では「メールの内容が明らかに退職勧告や侮辱的意図がある」と判断されて損害賠償が認められました。

一審では損害賠償が認められませんでしたが、二審でこれが覆った事例です。

この事例では、上司は被害者の同僚にも同様のメールを送信したことが確認されており、これが名誉棄損行為に該当するとして損害賠償を認められました。

参考:A保険会社上司(損害賠償)事件

5-2.上司からのモラハラが認められなかった裁判例

こちらの事例は、上司からのモラハラが認められなかったパターンです。

この事例では、被害者は直属の上司ではない加害者から退職強要や脅迫的表現をされたり、別部署への異動を命じられてPTSDを発症したことを理由に訴えを起こしています。

判決では、被害者と加害者が通常よりも親しくしていた事実が認められ、発言にハラスメントと認められる意図が認められなかったことによって訴えが却下されました。

また、異動に関しても、その合理性が裁判で認められています。

このように、一見すると「モラハラである」と受け取れるような事案でも、被害者や加害者の人間関係から読み取れる発言の意図が考慮されて訴えが退けられるケースもあります。

参考:損保ジャパン調査サービス事件

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6.上司のモラハラを弁護士に相談、依頼するメリット

上司からモラハラを受けている場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

社内に居ながらモラハラ問題と向き合う場合も、会社を辞める場合も、上司を訴える場合も、多くの証拠を集めて交渉したり、裁判手続きに時間をかけなければなりません。

その苦労は心身の疲労につながり、事態が解決するまでに体を壊すことになりかねません。

しかし、モラハラは被害者に何の責任もなく、ただ叱責等すれば良いだけのところを人格否定や退職要求などをすることは、社会的にも認められていません。

モラハラによって受けた心身への苦痛は、しっかりと加害者に対して責任を負わせることが職場のためでもあります。

ハラスメント行為に対する対処には並々ならぬ苦労が伴いますが、その苦労を軽減するための解決策が弁護士への相談です。

弁護士は当事者間の交渉を代行してくれるなど、裁判手続きにおいても強い味方となります。

モラハラ問題を円満かつ納得する形で解決へと進めるためには、交渉と法律の専門家である弁護士に相談することが一番です。

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7.上司のモラハラに関するよくあるQ&A

最後に、職場でのモラハラ問題に関するよくある質問をまとめてみました。

7-1.モラハラの証拠になるものに何がありますか?

モラハラの有力な証拠として以下のものが挙げられます。

  • モラハラされている際の録音データや録画データ
  • モラハラの内容が含まれているメールや書類
  • モラハラされているところを見たという証言
  • モラハラされた内容を書き留めた日記メモ
  • モラハラによって受けた怪我や病気の診断書

少しでも多く集めておくと、モラハラされた証拠として有力なものになります。

7-2.モラハラは犯罪になり得ますか?

なりえます。たとえば以下のような犯罪が成立する場合があります。

  • 脅迫罪
  • 強要罪
  • 侮辱罪
  • 名誉棄損罪

また、パワハラが同時に行われた場合には以下の犯罪が成立する場合があります。

  • 傷害罪
  • 暴行罪

7-3.モラハラが犯罪になれば訴えることもできるってこと?

モラハラに対して民事訴訟での損害賠償請求や刑事告訴での有罪が認められるケースは十分に考えられます。

ただし、「モラハラが存在したこと」「それが犯罪行為に相当すること」が認められることは決して簡単ではありません。

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8.まとめ

モラハラは、心身の健康を害し自身の将来を妨げる行為として、決して認められることではありません。

上司からのモラハラを含め、社内でモラハラ問題に悩んでいる方は、早めに弁護士に相談して、納得できる形での解決を目指しましょう。

私たち法律事務所リーガルスマートは、ハラスメントのトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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