ハラスメント

仕事を与えないのはパワハラ?された際の対処法を弁護士が解説!

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労働者に対して行われる嫌がらせの一つにパワーハラスメント(以下パワハラと略します)があります。

パワハラと一口に言っても様々な方法があるのですが、その中の一つに「仕事を与えない」という方法があります。

そもそも仕事を与えないことはパワハラなのでしょうか。また、パワハラである場合、どのような法的問題があるのでしょうか。

この記事では、仕事を与えないパワハラについて労働問題に強い弁護士が解説します。

1.そもそもパワハラとは

そもそもパワハラとはどのようなものなのでしょうか。

1-1.パワハラとは

パワハラとは、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものをいいます。

パワーハラスメントという和製英語を省略したもので、2001年にコンサルティング会社がの代表者が提唱しはじめたことをきっかけに世の中に広まったもので、現在では「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「パワハラ防止法」とします)30条の2以下で厳しく禁止されています。

1-2.パワハラの要件

パワハラに該当するといえるためには、次の3つの要件を満たすことが必要です。

  • 職場の地位・優位性を利用する行為である
  • 業務の適正な範囲を超えた指示・命令である
  • 職場環境を害する言動である

順に確認しましょう。

1-2-1.職場の地位・優位性を利用する行為である

職場の地位・優位性を利用する行為であることがパワハラの要件です。

最も典型的な例としては上司と部下といった関係で、上司が部下の行動や評価について優位性をもっており、上司の言うことを聞かなければ業務内容や評価において不利益となるような事例であることが必要です。

上司と部下という関係が典型的な事例なので、同じ立場の同僚であるような場合には職場における地位・優位性を利用しての言動ではないので該当しないのが原則です。

具体的なケースで、同僚であっても職場における地位・優位性を利用できるような状況なのであれば、パワハラとして認定されることもあります。

1-2-2.業務の適正な範囲を超えた指示・命令である

業務の適正な範囲を超えた指示・命令であることが必要です。

たとえば、営業職で、全員に平等に与えられているノルマの達成ができない社員がいるような場合に、威圧的に接してしまったり、大きな声で指示を出したりすることもあります。

指示・命令が業務の適正な範囲内におさまっている限りはある程度は仕方ないことであるといえます。

しかし、業務に関することであっても例えば達成が現実的に困難な営業目標を与えたり、業務に関係のないことをさせたり(例:お金を貸すように迫る)、注意にあたって暴力を振るう・土下座をさせるなどの不適切な方法を行わせるような場合には、パワハラと認定されます。

1-2-3.職場環境を害する言動である

職場環境を害する言動である必要があります。

職場においてはある程度厳しい言動になることは避けられません。

そのような言動を超えて、職場環境を害するような言動となる場合がパワハラであるといえます。

例えば、「死ね!」「殺すぞ」「早く辞めてしまえ」などという言葉で罵るような場合が考えられます。

1-3.パワハラの被害にあった場合にはどのような主張ができるのか

パワハラの被害にあった場合にはどのような主張ができるのでしょうか

1-3-1.不法行為損害賠償請求権

不法行為に基づく損害賠償請求権を主張することができます。

パワハラ行為は民法上の不法行為(民法709条)に該当します。

そのため被害者は加害者に対して、損害賠償請求をすることができます。

そして、民法715条では、会社の従業員が他人に損害を与えた場合に、使用者である会社に対しても損害賠償請求をすることができる旨が規定されています。

そのため、個人が行ったパワハラでも、会社に対して損害賠償請求することができます。

1-3-2.安全配慮義務違反

労働契約法5条は、会社は労働者に対して、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする、いわゆる安全配慮義務を課しています。

労働者に対してパワハラをおこなったような場合、安全配慮義務に違反する行為であるといえます。

そのため、労働契約法5条に違反するものとして、損害賠償請求をすることができます。

1-4.パワハラの行為類型

パワハラには次のような行為類型があります。

1-4-1.身体的な侵害行為

身体的な侵害行為はパワハラに該当します。

殴る・蹴る・掴む・突き飛ばすなどの行為が典型的な例です。

1-4-2.精神的な侵害行為

精神的な侵害行為もパワハラに該当します。

同僚がいる前で罵倒する、必要以上長時間に渡って叱責を続けるなどが典型的な例です。

1-4-3.他の人間関係から切り離す

会社の中の他の人間関係から切り離すこともパワハラに該当します。

同じ部署でも一人だけ離れたところに机を置かれる、必要なミーティングに参加させてもらえない、歓送迎会などに呼んでもらえない、などがこれに当たります。

1-4-4.過大な要求をする

業務について過大な要求をする行為が挙げられます。

絶対に達成できない営業目標を与えられる、絶対に完遂できない量の事務作業をさせられるなどがあります。

達成できなかった場合には、身体的・精神的暴力といったパワハラを誘発するケースもあります。

1-4-5.過小な要求しかしない

過大な要求だけではなく、不当に過小な要求をすることもパワハラにあたります。

与えられる仕事の量が少なく、手持ちぶさたになってしまうような場合がこれに該当します。

他の人から離れたところでこのような行為を行うように指示されたり、他の人に無視されたりする他の人間関係からの切り離しが同時に行われます。

1-4-6.個人の人格を否定する行為を行う

個人の人格を否定する行為を行うこともパワハラにあたります。

人格を否定するとは、個人の尊厳を傷つけるような行為のことをいい、例えば、出身大学をけなす・交際相手や配偶者をけなすなどの行為がこれにあたります。

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2.会社が仕事を与えないのはパワハラにあたるのか

会社が仕事を与えない、という行為はパワハラにあたるのでしょうか。

2-1.会社が仕事を与えないパワハラの具体例

会社が仕事を与えないというパワハラにはどのような具体例があるのでしょうか。

2-1-1.仕事の割り振りをしない・極めて少ない・関係ないことをやらせる

仕事の割り振りをしない、あるいはされていたとしても極めて少ないような場合が挙げられます。

同じ部署に同じような役割の同僚がたくさん居て、他の同僚には仕事を与えても、特定の労働者には仕事の割り振りをしない、しても極めて少ないということがあります。

また、本来の仕事とは関係のないことをやらせるようなケースもあります。

例えば、現場労働者で国鉄労働組合の組合員であった者に対して、勤務中にバックル部分に国労マークの入っているベルトを外すように指示してもこれに従わなかったために、本来の仕事を与えないで、就業規則の書き写しという作業をさせた事案があります。(JR東日本本荘保線区事件:最高裁判所平成8年2月23日判決)

2-1-2.仕事が無いような部署や場所での勤務を命じられる

仕事が無いような部署や場所での勤務を命じられる場合が挙げられます。

仕事がなく、会社の中に居ながら、パソコンや電話などの無い部屋で朝から夜まで待機をさせられることが考えられます。

例えば、学級担任であった女性教員について学級担任の仕事から外し、職員室内や別の部屋で隔離したり、自宅研修を命じた事案があります(東京高等裁判所平成5年11月12日判決)。

2-2.会社が仕事を与えないことはパワハラになるのか

会社が仕事を与えないことはパワハラになるのでしょうか。

例えば、多人数ある部署で一人だけ仕事を全く与えないこと、あまりにも仕事を与えなさすぎることは、上記のパワハラの6つの類型のうち、過小な要求しかない類型のパワハラに当たり得ます。

しかし、例えば当該職種についたばかりで、他の同僚と同じような量の仕事をすることが期待できない場合に、他の同僚よりも少ない仕事であることをもってパワハラということはできません。

同じように、外回りの営業職の人が怪我をしていて外回りができない場合に、部署にとどまって電話番をするようなことは、合理的な理由がありパワハラと評価することはできません。

仕事がなくパソコンなども無いような部屋で待機のみを命じられる形で仕事を与えないような場合には、他の人間関係から切り離すという類型のパワハラに該当します。

仕事を与えないことが、スキルや能力と関係の無い理由であるような場合には、どのような方法でもパワハラに該当するといえるでしょう。

2-3.会社が仕事を与えないよくある理由

そもそも会社が仕事を与えないのは、どのような理由で行われるのでしょうか。

2-3-1.当該労働者に対する事実上の懲罰措置

会社が特定の労働者に仕事を与えないよくある理由の一つとして、当該労働者に対する懲罰を与えることが挙げられます。

会社は企業の秩序維持のために、労働者の企業秩序違反行為に対して、懲戒処分を下すことができます。

しかし懲戒処分には、労働者に一定の企業秩序違反行為がなければならず、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合でなければなりません(労働契約法15条)。

営業成績に達していないなどの明確な理由があるならばまだしも、上司・経営陣に反抗的であるなどといった理由では懲戒処分をすることはできないため、事実上の懲罰措置として仕事を与えないことがあります。

2-3-2.労働者に自主的な退職をさせるため

会社が特定の労働者に仕事を与えないよくある理由のもうひとつは、労働者に自主的な退職をさせるためです。

会社が労働者を解雇するためには、非常に厳格な要件・手続きによります。

労働者に相当悪質な秩序違反行為があり懲戒解雇ができる、整理解雇・普通解雇の要件を満たしているということはめったになく、会社が解雇をすることができる場合は限られます。

また、解雇をするわけではなく、退職勧奨をするような場合でも、一定の要件のもとに認められます。

解雇や退職勧奨が違法であるとされた場合、解雇無効などを争われると多額の賠償金の支払いを求められたり、その労働者が職場に戻ることになります。

このような法規制を逃れるために、精神的に追い詰めて自主的に退職させるために、仕事を与えない、という方法をとることがあります。

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3.会社が仕事を与えてくれない際の対処法

会社が仕事を与えてくれない際の対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。

3-1.会社が仕事を与えないの法的問題

そもそも会社が仕事を与えないことにはどのような法的問題があるのでしょうか。

会社が仕事を与えない場合、スキル・能力不足などを理由として仕事を与えないような場合以外は、パワハラと認定されることになります。

パワハラは民法709条の不法行為に該当する行為であり、被害者は加害者に対して慰謝料請求をすることが可能です。

通常仕事を与えないのは直属の上司ですが、民法715条では使用者である会社に対しても請求することができる旨が規定されており、会社に対して慰謝料の請求を求めることができます。

また、会社と労働者は、労働契約を結んでいます。

労働契約について労働契約法5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするもの」としています(安全配慮義務)。

この解釈から、会社は労働者に対してパワハラをしてはならないという義務が導かれ、安全配慮義務違反に基づいて慰謝料請求をすることもできます。

以上より、会社に対して、不法行為・安全配慮義務違反のいずれかの法的構成によって、損害賠償を求めることになります。

3-2.仕事を与えてくれない原因を考える

仕事を与えてくれないことがパワハラと認定される場合には、慰謝料請求をすることができるので、その請求の準備を行うことになります。

まず、仕事を与えてくれない原因を考え、パワハラにあたるのかを考えてみましょう。

上述したように、仕事に対してスキル・能力が足りないと判断されるような場合には、仕事を与えてもらえず、パワハラに該当するとはいえません。

仕事を与えてくれない原因として、これらの事情がないかどうかを考え、パワハラといえる場合には実際に行動を起こすことになります。

3-3.パワハラと認定される証拠を集める

仕事を与えないことがパワハラであると認定されるための証拠を収集しましょう。

パワハラが原因で慰謝料請求をする場合、最終的には裁判を起こして勝訴判決を得て、強制執行をすることで慰謝料を回収します。

裁判では、自分の請求を認めてもらうために、請求に関する事実を主張して、これを証拠で裏付けることになります。

そのため、仕事を与えないことが、パワハラであると認定されるためには、証拠が必要となります。

パワハラを会社と争い始めると、会社がパワハラに関する証拠を隠匿することが予想されるので、争いはじめる前から証拠を収集する必要があります。

主な証拠としては、実際に与えられた仕事がある場合、その仕事の指示に関するメールなどの証拠を収集します。

仕事を与えてもらえない理由について会社に問い合わせをして、その回答をもらっている場合には、その回答も証拠となります。

もし、仕事を与えてもらっていないことが原因で、精神的に不調を来すなどした場合には、医師の診断書も取得します。

3-4.会社と交渉をする

会社と交渉をします。

仕事を与えない行為がパワハラであることを主張して、仕事を与えない措置の撤回と、慰謝料請求をします。

3-5.法的手続き

会社と交渉しても応じてもらえない場合には、法的手続きを行います。

法的手続きといえば裁判を起こし、勝訴してもなお慰謝料の支払いをしない場合には強制執行をすることになります。

なお、労働問題については労働審判という紛争解決方法もあります。

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4.仕事を与えてくれない問題から発展する労働問題とは

仕事を与えてくれない問題から発展する労働問題には次のようなものがあります。

4-1.残業代請求

未払い残業代請求が関係することがあります。

仕事を与えないようなパワハラをするような会社は、残業代の支払いを適切に行っていない場合も多々あります。

会社が残業代を払ってない場合に、残業代の支払いを求めた結果、仕事を与えてくれなくなったというようなケースもあります。

このような場合には残業代請求も併せて行うことになります。

4-2.違法な退職勧奨

違法な退職勧奨が問題になることがあります。

仕事を与えないという措置をする前後で、当該労働者が退職するように退職勧奨が行われることがあります。

退職勧奨が行き過ぎるような場合には、退職勧奨が違法で、慰謝料請求の対象となることがあります。

4-3.違法な懲戒処分・懲戒解雇

違法な懲戒処分・懲戒解雇という問題が生じることがあります。

上述したように懲戒処分をするには、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合でなければなりません。

仕事を与えないようなパワハラを行う会社は、到底合理性・相当性が認められないような理由で懲戒処分・懲戒解雇を行うこともあり、これに対する対処が必要となることもあります。

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5.パワハラや労働問題を弁護士に相談、依頼するメリット

パワハラや労働問題については弁護士に相談・依頼することについて次のようなメリットがあります。

5-1.法的なサポート

法的なサポートを受けることができます。

パワハラ・労働問題については、労働関係の法律が関係しており、非常に細かく難解です。

弁護士に相談・依頼することで、どのような問題があり、どのような解決方法を利用するのが良いか、などの法的なサポートを受けることができます。

5-2.精神的な支えになる

精神的な支えになります。

仕事を与えてもらえないようなパワハラにあっていることは、なかなか知っている人には相談しづらいものです。

弁護士に相談することで、話を聞いてもらうことによる精神的負担の軽減をすることができ、依頼をすればトラブルが解決するまで伴走してくれることになります。

5-3.交渉・手続きを任せてしまえる

弁護士に依頼すれば交渉・手続きを任せてしまえます

パワハラをするような会社との交渉をすることは精神的負担になるでしょう。

また訴訟などの法的手続きを行うことは、知識が必要でかつ、平日日中に行う必要があり、非常に負担が大きいです。

弁護士に依頼してしまえば、交渉・手続きを任せてしまうことができ、精神的負担などを軽減することができます。

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6.仕事を与えてくれないパワハラに関するよくあるQ&A

仕事を与えてくれないパワハラに関するよくあるQ&Aについては次のものがあります。

6-1.仕事を与えてくれないのがパワハラに当たらない場合の対応

仕事を与えてくれないのがパワハラに当たらない場合にはどのような対応が必要でしょうか。

この場合、仕事を与えてもらえない理由として能力・スキルが足りないということが考えられる場合には、その仕事をできるような能力・スキルを獲得することが欠かせません。

上司に相談して、どのような能力・スキルがあれば、その仕事ができるかなどを考えてもらうようにしましょう。

6-2.弁護士への相談を無料でできないか

弁護士への相談を無料でできないのでしょうか。

弁護士に相談すると、30分5,000円程度の弁護士費用の支払いが必要となることがあります。

しかし、市区町村の無料の弁護士への相談を利用したり、法テラスを利用すれば、無料で相談が可能です。

また、一部の弁護士によっては、相談を無料としていることがあります。

法律事務所リーガルスマートでも、初回60分無料の法律相談が可能なので、お気軽にご利用ください。

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7.まとめ

本記事では、仕事を与えないことがパワハラになるのか、およびその対処法について解説しました。

仕事を与えないことはパワハラになり、慰謝料請求の対象となりえます。

弁護士に相談して、適切に対応することを検討しましょう。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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