不当解雇

解雇通告(解雇予告)とは?された際の対処法を弁護士が解説!

解雇通告(解雇予告)とは?された際の対処法を弁護士が解説!
この記事をSNSでシェア!

「会社から解雇通告を受けてしまった。失業手当をもらって再就職をめざしたほうがよいと思うが、解雇理由が能力不足だというし、再就職先が見つかるだろうか・・。」

「会社でパワハラされた挙句解雇通告を受けた。明らかに不当だが、解雇を争うと失業手当をもらえなくなりそうだし、仮に慰謝料請求が認められる可能性があるとしても直近の生活が苦しい。でもこのまま引き下がりたくない」

など、会社から解雇通告を受けた方は、どのように対処すべきかで非常に悩むのではないでしょうか。

本記事では、会社から解雇通告された際の対処法や、解雇通告が不当な場合にできることなどを労働問題に強い弁護士が解説します。

目次

1. 解雇通告とは

本章では、解雇通告とは何か、解雇通告に関して会社側に義務づけられていることや、解雇通告なしに解雇できる場合などについて解説します。

1-1. 会社側の解雇通告義務

解雇通告とは、会社が労働者を解雇しようとする場合に義務づけられている「解雇予告」をいいます(労働基準法第20条1項)。

解雇通告は、解雇の日付の30日前までに行う必要があります。または、解雇予告を行わない(即日解雇する)場合は、当該労働者の平均賃金の30日分を解雇予告手当として支払わなければなりません。

また、解雇通告を30日前よりも後に行う場合は、30日前から経過した日数分の賃金を解雇予告として支払うことになります。

たとえば、解雇通告を解雇の14日前に行う場合には、平均賃金の16日分を解雇予告として支払う必要があります。

1-2. 解雇通告が不要の場合

このように、労働者を解雇する場合には解雇通告が義務づけられています。

ただし、例外的に、①天変地異などにより会社の事業の継続が不可能になった場合、または②労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合は、解雇通告や解雇予告手当支払いなしに解雇することが認められます(労働基準法第20条1項但書)。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

2. 解雇通告のよくある理由

解雇通告の理由としてよくあるものは以下の通りです。

2-1. 能力不足・勤務成績不良

労働者は労働契約に基づき、適正な労働を提供する義務を負っています。従って、労働者の能力不足や勤務成績不良は労働契約に基づく義務の不完全履行となるので、契約解除すなわち解雇の理由として認められます。

多くの会社では就業規則で、普通解雇理由の1つとして「労働能率が低く、改善の見込みがないこと」などと規定されています。

ただし、判例上、能力不足や勤務成績不良を理由とする解雇が認められるためには、その合理的理由として、職務遂行能力が「雇用の継続を期待しがたいほど重大な程度に達している」必要があります。また、会社側が当該労働者の能力を改善するための措置を取り、雇用を継続する努力も求められます。

このように、能力不足や勤務成績不良による解雇が正当化されるためには、会社側に厳しい基準が設けられていますので、労働者としては直ちに受け入れる必要はありません。

2-2. 勤務態度不良

遅刻や欠勤を繰り返す・上司の指示に従わない・人間関係のトラブルが多いなどの勤務態度不良も、解雇の理由となります。

ただし、いずれの場合も、会社側が労働者に対して改善を求める注意・指導を行い、それでも改善されなかったといえることが必要です。

2-3. パワハラ行為

労働者が部下や同僚に対してパワハラ行為を行っていた事実が認められた場合も、解雇の理由となりえます。

パワハラ行為を行った労働者に対しては、懲戒処分が課されることが多く、悪質性が高い場合に懲戒解雇が行われます。

ただし、パワハラ行為を行った労働者の懲戒解雇が認められるのは、被害者・加害者・目撃者などの関係者から十分な事情聴取を行った上で、重大なパワハラがあったこと、さらに加害者が過去に指導を受けていたにもかかわらずパワハラ行為を繰り返していたなどの事情が認められることが必要です。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

3. 解雇通告が不当な場合にできること

解雇通告が不当な場合にできることとして、解雇自体を争う場合と争わない場合でそれぞれ以下のことがあります。

3-1. 解雇自体を争う場合

解雇の効力を争う場合、つまり解雇無効を主張して復職を求める場合は、以下の3つの請求を主張できます。

(1)雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認

まず、雇用契約の権利を有する地位にあること、つまり従業員の地位の確認を請求できます。

(2)解雇後の賃金請求

2つ目は、解雇された日以降の賃金請求です。

解雇された場合であっても、その解雇が不当な時は、解雇された日以降の賃金を請求できます。これは、解雇によって出勤できなくなった原因が会社にあるため、解雇された日から問題が解決する(交渉成立・裁判所手続の決着)までの賃金相当額を請求できるからです。

(3)慰謝料請求

3つ目は慰謝料請求(民法第710条)です。

慰謝料とは、不法行為(この場合は解雇)により受けた精神的苦痛に対する賠償金をいいます。

理不尽な懲戒解雇等、特に解雇の違法性が大きい場合には慰謝料請求も認められる場合があります。

3-2. 解雇自体は争わない場合

解雇自体は争わない場合、解雇予告手当・解雇から再就職までの賃金相当額の損害賠償請求・慰謝料請求を行うことが考えられます。

(1)解雇予告手当の請求

解雇予告が、解雇(労働契約解除)の30日前より後に行われた場合は、30日前から予告日までの日数分の解雇予告手当の支払いを請求できます。

たとえば、解雇予告が解雇の10日前に行われた場合は、その労働者の基礎賃金(給与月額から、給与に含まれる手当を差し引いた額を1か月の所定労働時間数で割った額)の20日分の解雇予告手当を請求できることになります。

(2)再就職までの賃金相当額の損害賠償請求

不当に解雇された場合、労働者は解雇されてから再就職するまでに必要な期間、賃金の支払いを受けられないことになるので、その期間の賃金相当額の損害を受けることになります。

従って、解雇されてから再就職するまでに得ることができたはずの賃金(逸失賃金)を、会社に対して請求できます。

(3)慰謝料請求

慰謝料請求については、解雇を争う場合と同様です。なお、損害賠償と慰謝料を合わせて「解決金」ないし「和解金」と呼ぶ場合もあります。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

4. 解雇通告された際の対処法

本章では、解雇通告された際にどのように対処すべきかを解説します。

4-1. 弁護士に相談する

解雇の無効を主張するとともに未払い残業代や慰謝料を請求したいという場合には、会社との交渉を弁護士に依頼することをお勧めします。

弁護士に交渉の代理を依頼すると費用がかかりますが、後述のように多くの法律事務所では初回相談や初回相談の一定の時間を無料にしているので、無料相談を利用して費用の見積もりや交渉の見通し等を詳しく聞くことができます。

4-2.労働組合に加入して団体交渉権を行使する

労働者が解雇の撤回を求めると会社側が顧問弁護士を立ててくることも多く、労働者単独で会社と対等に交渉することは困難です。

その場合、労働組合に相談するという方法があります。労働組合は労働組合法で認められた団体交渉権を持つので、不当解雇を争う場合も組合として会社と交渉することができます。

また、会社側が交渉を拒否したり放置したりすることは、労働組合法で禁止された不当労働行為(不誠実団体交渉:労働組合法第7条2号)にあたります。

団体交渉権行使によって解雇の撤回等を求めるにあたっては、労働組合に加入することが必要となります。

勤めていた会社に労働組合があれば、自社の労働組合に相談することができます。また自社の労働組合がない場合も、合同労組(ユニオン)に加入するという方法があります。

合同労組は労働問題の交渉に豊富な実績を持ち、勤務する会社を解雇された場合でも労働者個人で加入することができます。

労働組合に加入して団体交渉する場合には一定の費用がかかりますが、弁護士費用に比べるとかなり安くなります。ただし、労働組合が団体交渉する場合は、特に会社側が対応を弁護士に依頼することが多いです。

また、労働組合は訴訟手続の代理を行うことができません(弁護士法第72条により、訴訟手続代理を行うことができるのは弁護士に限られます)。

そのため、交渉が成立しなかった場合に訴訟で解雇無効主張や解決金の請求を行うには、改めて弁護士に依頼する必要があります。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

5. 解雇通告された方によくある悩み

解雇通告された方によくある悩みとしては以下のようなものが挙げられます。

5-1. 再就職までの生活費をどうすればよいか

解雇通告された方の悩みとして一番多いのは、当面の生活費の問題ではないでしょうか。

解雇は「会社都合退職」にあたるので、要件を満たしていれば雇用保険の基本手当(失業手当)を早期に受給できます。

解雇通告された後、解雇を争わず再就職を希望する場合は、失業手当(プラス解雇予告手当)を受けることで当面の最低限の生活費は確保できます。

また、解雇の効力自体を争わない場合でも、未払いの給料や残業代があれば労働基準法第37条に基づいて会社に請求できます。そして、解雇された会社に対する慰謝料請求も可能です。これらの請求は、失業手当の受給とは関係なく行うことができます。

5-2.解雇を争うと失業手当がもらえなくなるのではないか

前項とは逆に、解雇の撤回と復職を求めたい方の悩みとして、「解雇を争うと失業手当がもらえなくなるのではないか」というものがあると思います。

この点については、厚生労働省の運用により、雇用保険の仮給付という形で解雇を争っている間の失業手当の受給が認められています。

失業手当を申請する際に会社から離職票の交付を受ける必要がありますが、その際に解雇を認めたものと判断されないために、離職票交付の請求時に「雇用保険の仮給付を受けるために交付を求める」旨の書面を提出することをお勧めします。

なお、解雇が無効と判断され、未払賃金を受け取った場合には、給付金を返還することになります。

5-3. 解雇通告と同時に退職勧奨された場合どちらを受け入れるべきか

解雇通告とともに退職届に署名させようとすることもよくあります。

解雇に対しては労働基準法第16条の解雇権濫用の法理をはじめ、法的に厳しい規制がかけられています。

そこで、辞めさせたい従業員に対しては解雇をちらつかせながら、不当解雇で訴えられないように「退職勧奨」を行い、自主的に退職させるという方法がとられるわけです。

労働者からみると、解雇よりも自主退職のほうが再就職で不利にならないのではないかとも思えます。

しかし、言われるままに退職届に署名してしまうと、自己都合退職したものとみなされます。これにより、会社都合退職である解雇の場合に比べて、再就職を希望する場合の失業手当の支給開始時期が遅くなります。

また、事後に退職の効力を争うことも難しくなります。

解雇通告と同時に退職届への署名を求められても署名せず、解雇理由証明書を請求して、解雇の効力自体を争うか争わないかを判断してください。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

6. 解雇通告されたら弁護士に相談、依頼するメリット

解雇通告に対して「不当だ」と思ったら、会社に対して解雇の撤回請求や未払い賃金請求など、目的に合わせた権利行使をすることになります。これらの請求を認めてもらうためには、労働問題を専門とする弁護士に相談することをお勧めします。

本章では、解雇通告された場合に弁護士に相談、依頼するメリットを解説します。

6-1.会社との交渉を任せることができる

会社から解雇予告を受けた労働者が、一人で会社に対して解雇の撤回を求めたり解決金の請求を行うことは非常に困難です。

不当解雇に対しては、総合労働相談センターなどの相談機関を利用することも可能です。しかし、相談機関は従業員個人の代理人となることはできないので、会社との交渉や法的手続等は全て本人が行う必要があります。

しかし、労働者が内容証明で請求通知を送っても無視される可能性があります。あるいは、顧問弁護士を立ててきて労働者側が不利な立場になることが多くあります。

しかし、交渉を弁護士に依頼することにより、会社側としても無視できなくなり交渉に応じてくれるようになります。

また、会社側が弁護士に依頼している場合も対等に交渉を行うことができます。

6-2. 証拠収集法のアドバイスを受けられる

さらに、解雇を争う場合・争わずに慰謝料請求等を行う場合にそれぞれ必要な証拠収集の方法についてアドバイスを受けたり、証拠収集にあたって会社に対する請求や公的機関に対する申請が必要な場合はその手続を代行してもらうことも可能です。

前述のように、多くの法律事務所では初回相談や初回相談の一部の時間を無料としています。そこで、無料相談を利用して費用見積もりや支払方法、弁護士側の労力を抑えるために依頼者側ができること等を相談することもできます。

6-3. 労働審判・訴訟等の法的手続もすべて任せられる

証拠収集、会社との交渉と並んで労働者個人にとって困難なのは、労働審判・訴訟等の裁判所が関わる手続です。

労働審判は手続が比較的簡潔で、審理は3回までと決められているため短期間で終了します。しかし、会社側が弁護士に依頼していることが多い中で労働者が審判手続を一人で行うことは容易ではありません。

また、明らかな不当解雇の場合でも、早期に解決するために譲歩を強いられる可能性があります。

そして、訴訟手続は裁判官と相手方弁護士に対して法廷で主張立証を行うので、労働者が個人でこれを行うことはさらに難しくなります。

弁護士に依頼していれば、労働審判・訴訟等の法的手続を全て任せることができます。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

7. 解雇通告に関するよくあるQ&A

本章では、解雇通告に関して頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

7-1. 懲戒解雇の場合は解雇通告や予告手当なしでも適法ですか?

懲戒解雇の場合も、原則として労働基準法第20条1項本文に従い解雇通告や解雇予告手当の支払いを行わなければなりません。

同条但書が、解雇予告の除外理由として「労働者の責めに帰すべき事由による解雇」を挙げているため、懲戒解雇の場合はすべて「労働者の責めに帰すべき事由による解雇」にあたると解釈されがちです。

しかし、この「労働者の責めに帰すべき事由」の解釈については判例上、「使用者に、解雇にあたっての予告または予告手当の支給を要求する必要のない程度に重大な背信的行為」があった場合をいうとされています(山口地方裁判所下関支部1964[S39]年5月8日付判決)。

従って、懲戒解雇が適法と認められる場合でも、常に「労働者の責めに帰すべき事由」があるとはいえません。上記の「重大な背信的行為」があったか否かを、懲戒解雇事由の有無とは別に判断する必要があります。

7-2. 即日解雇され、不当解雇を争うつもりでいたところ30日分の解雇予告手当が勝手に振り込まれました。この場合でも解雇の効力を争うことはできますか?

解雇予告手当は、解雇したことを前提として支払われる手当です。これを受け取ってしまうと、解雇無効を主張できなくなります。

そこで、会社に連絡して、解雇は不当であるから予告手当を返還する旨を伝えてください。訴訟で争うことを見越して、返還の意思表示をしたことを証明するために、内容証明郵便による書面で通知することもできます。

会社が「返還を受け付けない」旨の返信をしてきた場合には、予告手当分の金額を保管しておいて、会社との交渉で未払い賃金の支払いが認められた場合にそれを充当する旨申し出てください。

7-3. アルバイトの従業員も解雇予告手当をもらうことができますか?

解雇予告及び解雇予告手当について定めた労働基準法第20条1項は、雇用形態を問わずすべての労働者に適用されます。

従って、アルバイトの従業員に対しても、解雇する場合は30日以上前に解雇予告を行うか、それより後に解雇予告する場合は30日から解雇までの日数を差し引いた日数分の解雇予告手当を支払う必要があります。

なお、解雇理由証明書に関する労働基準法第22条もすべての労働者に適用されるため、アルバイトの従業員も、解雇予告を受けた場合は会社に対して解雇理由証明書を請求できます。

7-4. 解雇通告の書面の受け取りを拒否した場合も、解雇通告は有効ですか?

解雇通告が書面で交付された場合、会社が当該労働者に対して書面を交付した事実をもって、労働基準法第20条1項の「解雇予告」の効力が発生します。

従って、労働者が解雇通告の通知書面の受け取りを拒否した場合でも、当該労働者がそれを受け取れる状況にあったといえれば、交付した事実が認められます。従って、このような場合も解雇通告は有効です。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

8. まとめ

解雇通告を受けた場合、解雇理由証明書の交付を受けて解雇理由を検討し、不当である場合には会社に対して解雇の撤回や慰謝料などを請求できます。しかし、労働者が個人で会社に対して解雇無効の主張や、解決金の請求を行うことは容易ではありません。

この点、不当解雇等の労働問題に強い弁護士に依頼することにより、解雇無効の主張や、解決金請求に向けて必要な会社との交渉、さらに労働審判・訴訟等の法的手続を全て任せることができます。

解雇通告されて、どうすればよいかお困りの方は、是非弁護士にご相談ください。

私たち法律事務所リーガルスマートは、解雇通告に関するトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

この記事をSNSでシェア!

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
ホーム お役立ちコラム 労働問題 不当解雇 解雇通告(解雇予告)とは?された際の対処法を弁護士が解説!

電話受付時間 10:00〜17:30 (土日祝・年末年始を除く)