誹謗中傷・名誉毀損

発信者情報開示請求は拒否できる?拒否した場合はどうなるの?

発信者情報開示請求は拒否できる?拒否した場合はどうなるの?
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この記事をご覧の方の中には、「プロバイダから住所や氏名の開示請求についての意見照会書が届いたが、どうすればいいのか?」、「開示は拒否していいのか?」とお悩みの方もおられるのではないでしょうか。

今回は、このような書面が届いた場合に開示を拒否できるのか、拒否した場合どのようなことになるのか、意見照会書にはどのように回答すべきなのかを説明します。

1.意見照会書とは

お手元に届いた書面は、おそらく「発信者情報開示に係る意見照会書」というようなタイトルのものだと思います。

これは、携帯キャリアやビッグローブ、ニフティ等の「アクセスプロバイダ」が、発信者情報開示請求を受けた段階で契約者に送付することが多い書面です。

ここで発信者情報開示について簡単にご説明しますと、インターネット上で名誉毀損等があり、書き込んだ人を特定したいと考えた方は、まず5ちゃんねるやInstagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)等、その書き込みがなされた「コンテンツプロバイダ」に対して、書き込みに関するIPアドレス等の開示を求めます(1段階目)

そして、IPアドレス等の開示を受けた後に、アクセスプロバイダを特定して、そのアクセスプロバイダに対して、書き込みをした人の住所や氏名などの発信者情報の開示を求めます(2段階目)。

※発信者情報開示の手続きについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

発信者情報開示請求とは?手続きの流れと新制度を弁護士が解説!

※また、発信者情報開示における新制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。

プロバイダ責任制限法の改正とは?新制度をわかりやすく解説!

したがって、アクセスプロバイダから意見照会書が届いているということは、多くの場合すでに案件が2段階目まで来ているということになります。

アクセスプロバイダは、意見照会書の回答内容を参考に発信者情報を開示するか否かを決定します。

なお、意見照会書はプロバイダとの契約者宛に届きますので、ご自身に心当たりがなくとも、ご家族等の同居人やご自宅を訪れた知人の方、従業員の方が書き込みを行っている可能性があります。

2.開示を拒否するとどうなる?

上記のとおり、アクセスプロバイダは意見照会書における契約者の回答を参考に発信者情報を任意に開示するか否かを決定しますが、契約者が開示に同意しない限りは、アクセスプロバイダが任意に発信者情報を開示するというケースは通常ありません。

したがって、開示を拒否する旨を回答すれば、アクセスプロバイダが発信者情報を任意で開示することはまずないでしょう。

また、意見照会書を無視した場合でもアクセスプロバイダが任意で発信者情報を開示することは通常ありません。

もっとも、アクセスプロバイダが任意に発信者情報を開示しないとしても、名誉毀損等の権利侵害がある場合には裁判にて発信者情報の開示が認められることがあります。

発信者情報の開示がなされた後は、通常、慰謝料請求等がなされることになります。

以上のとおり、意見照会書にて開示を拒否した場合には、「アクセスプロバイダから任意に発信者情報が開示されることは通常ないが、裁判の結果によっては結局発信者情報が開示される可能性があり、その場合はその後に慰謝料請求がなされることが多い」ということになります。

3.開示を拒否したものの裁判で開示された場合には…

意見照会書への回答にかかわらず結局開示がされるのであれば、「とりあえず開示は拒否しておけばいいのでは?」とも思えます。

しかしながら、開示を拒否したけれども結局裁判で発信者情報が開示されてしまったという場合には、以下のような不利益が生じることが考えられます。

⑴民事上の問題ー賠償金が高額になる可能性

上記のとおり、発信者情報の開示があった後、開示請求者は通常であれば慰謝料請求を行うことになります。

任意での開示を拒否したことにより、開示請求者の被害感情を増大させ、慰謝料額が高額になる可能性があります。

また、開示請求者は慰謝料請求とともに、発信者情報開示の手続きにかかった弁護士費用なども請求してくることが多いです。

任意に発信者情報が開示された場合に比べて裁判を行った場合は弁護士費用も高額になるケースが多いでしょう。

したがって、任意での開示を拒否したことにより、支払わなければならない開示請求者の弁護士費用が高額化する可能性があります。

任意での開示に応じて示談を進めることで、以上のリスクを避けることができる可能性があります。

⑵刑事上の問題ー告訴等のおそれ

任意での開示を拒否することで開示請求者の被害感情が増大すると、開示請求者としては被害届提出や告訴等によって刑事事件化しようと考えるかも知れません。

任意での開示に応じ、示談を進めることで、刑事事件化のリスクを避けることができる可能性があります。

4.開示を拒否するべきかの判断基準

以上のとおり、任意の開示を拒否したものの結局裁判で開示がなされた、という場合には、開示を拒否したことで不利益が生じることがあります。

他方で、裁判でも発信者情報が開示されないだろうというケースでは、わざわざ開示に応じる必要はありません。

そのため、開示を拒否するか否かは、拒否した後の裁判で発信者情報が開示されないか、という観点から検討すべきです。

裁判で発信者情報が開示される書き込みとは、基本的にだれのことについての書き込みかが明らかで、書き込み内容が名誉毀損等に該当し違法である(権利侵害)ものです。

したがって、問題の書き込みについて権利侵害が認められるかを検討することになります。

※それぞれ権利についての権利侵害については、こちらの記事で詳しく解説しています。

どんな「誹謗中傷」が裁判の対象となるの?

5.まとめ

今回は、発信者情報開示の意見照会書について拒否してよいかについて解説しました。

結論としては、裁判となった場合に権利侵害が認められるか否かを基準に判断することになります。

ただ、権利侵害の有無の判断は裁判例や実務の取り扱いを踏まえる必要があり、専門性が求められます。

弊所ではインターネットトラブル専門チームを設置しております。意見照会書に対する回答でお困りの際は、ぜひともお気軽にお問合せいただければと思います。

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担当者

栗田 道匡
栗田 道匡弁護士法人PRESIDENT協力弁護士
■経歴
2008年3月 上智大学法学部 卒業
2010年3月 上智大学法科大学院 修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所にて勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画

■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)
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