慰謝料請求された
不倫慰謝料が払えない場合の対処法やよくある質問を弁護士が解説
配偶者のある人と不倫をしてしまうと、その配偶者から慰謝料を請求されるリスクがあります。
ケースによっては数百万の請求をされることもあり、その支払いが難しいことも珍しくありません。
そこでこのページでは、不倫によって慰謝料請求をされた場合の対処法についてお伝えします。
目次
1.不倫の慰謝料の請求をされて払えないときの対処法
不倫の慰謝料を請求されて払えないときにはどう対処すれば良いのでしょうか。
1-1.慰謝料の支払い方法についての原則
慰謝料の支払いについて法律はどのような規定をしているかについて確認しましょう。
慰謝料は不法行為によって精神的苦痛を被った人が、加害者に請求することができるもので、民法709条に規定されている不法行為に基づく損害賠償請求権が法律上の根拠です。
たとえば契約によってお金を支払う義務を負う場合には、お金を支払う方法は当事者で決めた方法によるので、分割で支払うと当事者で決めた場合には、分割で支払うことになります。
しかし、不法行為という契約に基づかずに発生する債務について、特に支払い方法について定められておらず、他の債務と同様に一括で支払う義務があることになります。
ただし、支払い方法について当事者で任意に決めることは可能なので、支払えるような交渉を行うことになります。
1-2.減額をお願いする
一括での支払いが難しい場合には、慰謝料の減額をお願いするのが一つの方法です。
慰謝料の額については、当事者の合意できるのであれば、合意によって決めることが可能です。
そこで、請求されている金額が多く、支払いができない場合には、減額をお願いすることを検討しましょう。
減額をお願いする方法としては、
- 慰謝料の相場からすると高い額を請求している場合には、請求額が高いことを主張する。
- 慰謝料全額を不倫相手である自分に全額請求してきている場合には、自分の負担部分についてのみの支払いにしてもらうよう主張する。
- 適切な相場での請求で、不倫相手としての負担部分の請求をしてきている場合には、正直にお金がないので減額して欲しいと依頼する。
ということが挙げられます。
1-3.分割払いをお願いする
一括で全額の支払いが難しい場合の対応方法として、慰謝料を分割払いとしてもらえるようにお願いをしてみましょう。
慰謝料の金額と同様に、慰謝料の支払い方法についても、当事者の合意で決めることが可能です。
慰謝料を分割払いとしてもらうことをお願いする場合には、次のような条件をつけられることがあります。
- 公正証書で作成すること
- 強制執行をする場合に備えた財産の開示
- 連帯保証人をつけること
- 支払いが遅れた場合の一括請求・遅延損害金
ただし、これらの条件は必ず応じなければならないものではありませんので、応じられる内容かどうかをよく検討して決めましょう。
1-3.親族・友人などにお願いをして一旦立て替えてもらう
交渉が難しい場合には一旦立て替えてもらうことも検討しましょう。
不倫をしたことには間違いなく、支払い義務を負うことが確実である場合に、支払えないと延々と交渉をしていると、裁判を起こされ、強制執行をされるリスクがあります。
後述しますが、最悪のケースでは給与を差し押さえられ、会社に知られてしまうなど、生活に大きな影響をあたえる可能性があります。
減額・分割払いでも厳しい場合には、親族や友人に相談して、一旦立て替えてもらうことも検討しましょう。
1-4.交渉がうまくいかない場合には弁護士に依頼する
以上のような交渉がうまくいかない場合には弁護士に依頼して交渉してもらうことを検討してみてください。
不倫の慰謝料請求に関するトラブルは、会社間の債権の請求のように淡々と行われるものではなく、不倫という事実に基づくのでどうしても当事者が感情的になってしまうことがあります。
その結果、適正な慰謝料の相場よりもはるかに高い金額で請求してくる、減額・分割には一切応じない、中には土下座を要求するといった不適切な要求をしてくることも珍しくありません。
交渉ができないような場合には弁護士に依頼してみましょう。
弁護士に依頼することで、適正な慰謝料の額に基づいた交渉をすることができ、相手としても直接面と向かって交渉するわけではないので、多少は冷静に交渉できることが期待できます。
また、相手も弁護士に相談する、依頼するような場合には、支払いについて現実的な方法を模索することが期待できるので、当事者での交渉がうまくいかない場合でも、交渉がうまくいくことが期待できます。
また、他にも借金があるなどで、根本的に支払いが難しい場合には、自己破産などの債務整理をすることになりますが、この場合でも弁護士に依頼したほうがスムーズに進められます。
2.不倫の慰謝料請求をされた際にまず確認すべきこと
不倫の慰謝料請求をされた際にまず確認すべきこととして、次のことを確認しましょう。
2-1.本当に慰謝料請求に応じなければならないケースなのか
本当に慰謝料請求に応じなければならないケースなのかを確認しましょう。
不倫における慰謝料請求は、不倫が民法709条所定の不法行為にあたり、他方の配偶者に対して精神的苦痛を与えるため発生するものです。
民法709条では故意・過失が必要とされており、もし客観的には不倫であることは間違いないケースでも、相手が結婚していることを隠して交際を迫ってきて、結婚していることを知らずにこれに応じた場合や、強制性交であるような場合には、故意・過失がなく、そもそも不法行為が成立しません。
また、夫婦関係がすでに破綻しているような場合には、不倫をしたとしても精神的苦痛を受けることがありません。
そのため、夫婦関係が破綻している場合にも、不倫であるとして慰謝料を支払う必要はありません。
また、不法行為に基づく損害賠償請求権は、加害者・損害を知ったときから3年、不法行為時から20年で時効になるとされています。
慰謝料請求をされている場合でも、すでに時効にかかっているという主張が可能である場合には、時効の援用をすれば慰謝料の支払いをする必要はありません。
このように、相手が慰謝料請求の主張をしていても、そもそも後から不倫だと初めて知った場合や、夫婦関係が実質的にはすでに破綻したといえる場合、時効期間を過ぎている場合には、慰謝料請求に応じる必要がないので、本当に自分が慰謝料請求に応じなければならないのかを確認しましょう。
2-2.慰謝料として提示してきている金額が相場の範囲内なのか
相手が慰謝料として提示してきている金額が、慰謝料の相場の範囲なのかをよく調べるようにしましょう。
不倫をした場合の慰謝料の相場は50万円~300万円程度となっており、不倫の内容によって金額が大幅に異なります。
そのため、例えば大きな精神的苦痛を受けたと主張して1,000万円を超えるような慰謝料を請求してきている場合には、明らかに相場を超える支払いを求めてきているといえます。
また、上限の300万円程度の支払いを求めてきている場合でも、相手が離婚をしていないような場合や、不倫が例えば一度限りであるような場合には、やはり相場よりかは高額であるといえます。
そのため、不倫の慰謝料として提示してきた額が相場の範囲内なのか、相手がどのような背景があってこの金額なのか、ということまで併せて確認するようにしましょう。
なお、次のような事情がある場合には、慰謝料は増額する傾向にあります。
- 自分から積極的に不倫に誘った
- 不倫によって離婚するに至った
- 夫婦の婚姻期間が長い
- 夫婦に未成熟の子どもがいる
一方で、次のような事情がある場合には、慰謝料が少なくなる傾向にあります
- 自分から不倫に誘ったわけではない
- 不倫期間が短い
- 不倫の頻度が少ない
- 夫婦が離婚したわけではない
2-3.相手が証拠を持っているか
相手が証拠を持っているかをきちんと確認するようにしましょう。
不倫の慰謝料請求について、当事者で合意できない場合、不倫をしたかどうか・慰謝料の額はいくらなのか、いずれも裁判で確定することになります。
裁判においては、自分が主張する事実について、証拠を提出して証明する必要があります。
そして、証拠の提出ができず、裁判所が主張する事実について確かであるという心証を持てない場合には、その事実は認定されません。
相手が証拠を持っているかは、慰謝料請求ができるかどうかに影響するので、きちんと確認し、相手が証拠を持っていないような場合には、慰謝料請求を拒むことも検討すべきです。
3.不倫の慰謝料請求された際にやってはいけないこと
不倫の慰謝料請求をされた際に、やってはいけないこととしては次のことが挙げられます。
3-1慰謝料の請求を無視する
慰謝料の請求を無視することは、不倫の慰謝料請求において絶対にやってはいけないといえます。
慰謝料請求を無視しても、裁判を起こされれば最終的には強制執行をされることになり、支払う必要があります。
また、請求を無視することは、精神的苦痛を大きくする要因として、慰謝料が増額される事情となりえます。
さらには、相手を感情的にして、交渉を難しくする原因となります。
これらから、慰謝料の請求を無視してはいけないといえます。
3-2.消費者金融などの借金で慰謝料を支払うこと
慰謝料の支払いができないからといって、消費者金融などで借金をして慰謝料を支払うことはしてはいけません。
消費者金融や信販会社は、比較的安易にお金を借りることが可能ですが、その分利息の支払いが必要となります。
不倫の慰謝料の支払いのために消費者金融を利用すると、その後返済ができなくなってしまい、債務整理をしなければならない事態につながりかねません。
3-3.不倫の関係を続けること
慰謝料請求をされた場合に、不倫の関係を続けることは絶対にやめましょう。
相手方の感情を刺激することになり、減額や分割支払いに応じてもらえなくなります。
また、不倫が発覚してからも不倫の関係を続けることは、慰謝料をさらに増額させる事情になります。
相手から慰謝料請求されているにもかかわらず不倫の関係を続けることは絶対にしてはいけません。
3-4.相手の感情を逆なでする言動
相手の感情を逆なでする言動をしてはいけません。
慰謝料を請求されたときに「あなたにも責任がある」などの言動をしてしまうことがあります。
これによって相手の感情を刺激することになり、減額・分割支払いの交渉がますます難しくなります。
また、反省がないことの証拠になってしまい、精神的苦痛が大きいとして慰謝料を増額する事情になりかねません。
3-5.相手の主張を鵜呑みにして支払いの約束をしてしまう
相手が非常に感情的になってしまっている場合に、とりあえず言われるがままに支払う旨を約束してしまうことがあります。
一度支払う旨を約束してしまうと、後からこれを覆すことが難しくなり、減額や分割支払いを認めてもらえない可能性が高まります。
相手の主張を鵜呑みにするように支払いの約束はしてはいけません。
4.不倫の慰謝料請求されたときに弁護士に相談するメリット
不倫の慰謝料請求をされたときに、弁護士に相談をするメリットには次のようなものがあります。
4-1.不倫の慰謝料請求に対する法的なサポート
不倫の慰謝料請求に対する法的なサポートをしてもらえます。
不倫の慰謝料請求については、前述したように、慰謝料請求権が発生するか、慰謝料として適切な相場はいくらなのかといった法的問題に熟知している必要があり、また裁判になった際の手続きをしっかり知っておく必要があります。
弁護士はこれらの手続きのプロなので、相談・依頼すればサポートを受けることができます。
4-2.精神的に楽になる
弁護士に相談することで精神的に楽になれます。
不倫をしたために慰謝料の請求をされている、という事実は、なかなか人に話しにくいものです。
また、慰謝料の請求をされている局面では。いくら支払わなければならないかなど、不安をかかえることになります。
弁護士に相談することで、精神的に楽になることができますし、依頼をすれば交渉をまかせてしまえるので、精神的にかなり楽になります。
4-3.トラブルがスムーズに解決する可能性
慰謝料に関するトラブルがスムーズに解決する可能性があります。
不倫の慰謝料の問題について、相手方配偶者と不倫相手で交渉をする場合、感情的になりすぎる結果、なかなか合意ができないことがあります。
このような場合に弁護士に相談すれば、冷静に話し合うためのポイントをアドバイスしてもらえます。
また弁護士に依頼すれば、相手と交渉をしてもらえるので、相手も冷静に話し合うことができ、トラブルがスムーズに解決する可能性があります。
5.不倫の慰謝料請求に関するよくあるQ&A
不倫の慰謝料請求に関してよくあるQ&Aを確認しましょう。
5-1.払えない慰謝料が免除されることはありますか?
慰謝料の支払いができないことが理由で免除してもらえることはないのでしょうか。
この点について、慰謝料の支払い義務は、自己破産をすれば免除される可能性があります。
なお、自己破産をする場合に、基本的には債務は免責されるのですが、一部の債務は免責されません(非免責債権:破産法253条1項)。
慰謝料については、破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権である場合には免責されないことになります(破産法253条1項2号)。
悪意というのは法律用語ではある事実について知っていることを言うのですが、この条文においては違う意味で捉えられており、積極的な害意と捉えられています。
そのため、配偶者に嫌がらせをする目的で不倫をしたような極めて限られた場合を除いて、基本的には慰謝料は免責されます。
また、上述したように、慰謝料が時効にかかっている場合には、支払義務を負わないということになります。ただし、時効の援用という行為が必要です。具体的には時効によって支払義務が消滅した旨を主張する文書を内容証明郵便で相手に送ることが一般的です。
5-2.不倫が原因で退職して無職になりました。慰謝料を払えない理由になりますか?
会社内で不倫をしたような場合、会社内の風紀を乱す行為として何らかの処分を受ける可能性があります。
解雇や事実上解雇、退職を余儀なくされることもあるでしょう。
これらの処分を受けたことによって無職になった場合には、慰謝料の支払いを免除されることはないのでしょうか。
たしかに、会社の処分によって制裁を受けているので、慰謝料請求されるのは酷であるようにも思えます。
しかし、会社からの処分はあくまで従業員と会社の間のものであって、不倫をされた当事者の精神的苦痛に関係するものではありません。
そのため、慰謝料請求を免責してくれるものではありません。
無職となったとしても、支払い義務はあり、最終的には強制執行を受けるリスクがあります。
5-3.請求方法があまりにも過酷である場合の対応方法
不倫をしたことは事実で慰謝料請求に応じなければいけない場合でも、その請求方法があまりに過酷ということがあります。
たとえば、勤務先に訪問してきて他の従業員に聞こえるような大声で「慰謝料を払え!」と請求してくるような場合や、自宅のドアや近辺にビラを撒くといった行為を行うことがあります。
このような場合、逆に相手に慰謝料請求ができたり、刑事事件となるようなこともあります。
早めに相手と交渉をはじめて、まずはこれらの過酷な請求行為をやめさせる必要があり、早めに弁護士に依頼するようにしましょう。
5-4.弁護士費用を節約する方法
弁護士に相談・依頼するにも、どうしてもお金がかかります。
弁護士費用を節約する方法としては、
- 無料の法律相談を利用する
- 法テラスを利用する
- 分割払いでも良い事務所に依頼する
という方法があります。
弁護士への相談については、市区町村や地域の弁護士会で無料相談会を開催しています。
また、一定の収入以下である場合には、法テラスで無料で弁護士に相談できます。
これらの相談は30分程度であることが多いので、相談にいく場合には事前に事実関係を整理して、スムーズに相談できるようにしましょう。
また、弁護士の中には無料で相談できる場合もあるので、ホームページなどで確認してみましょう。
弁護士法人PRESIDENは初回60分無料の法律相談を実施しているので、お気軽にご相談ください。
収入が乏しく、着手金の支払いが難しい場合には、法テラスの民事扶助を利用して着手金を立て替えてもらうことができます。
法テラスの民事扶助の利用ができない場合には、弁護士費用を分割での支払いでも良い事務所に依頼しましょう。
5-5.行政書士が請求してきた場合の注意点
慰謝料請求をしてくる場合、相手本人が請求してくる場合・弁護士が代理人として請求してくる場合のほかに、行政書士が請求してくることがあります。
行政書士は、権利義務に関する書類を作成する権限を有しており、その権限に基づいて内容証明の作成を請け負っているケースがあります。
しかし、行政書士は代理人として活動することができないので、行政書士を窓口として交渉しようとしている場合には、注意が必要です。
このような場合には早めに弁護士に依頼して、交渉を任せるようにしましょう。
6.まとめ
このページでは、不倫慰謝料が払えない場合の対処法を中心にお伝えしました。
減額や分割払いの交渉をすることになるのですが、相手にお願いをすることになり、精神的にも難しい交渉を強いられます。
弁護士に相談しながら適切な交渉をする、あるいは弁護士に依頼して交渉を任せることを検討してみてください。
担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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