慰謝料請求された
不倫相手に妊娠が発覚!すぐにすべきことや選択肢を弁護士が解説
不倫相手に妊娠が発覚!すぐにすべきことや選択肢を弁護士が解説
不倫相手から妊娠検査薬を見せられて「陽性だった」といわれたら・・。
予期しない事態に、何をどうすればよいのかわからず困ってしまうのも仕方ありません。
しかし現実的には、法律で人工妊娠中絶が認められている期間にできるだけ早く、「子供を産むか産まないか」の選択をしなければなりません。それに加えて、配偶者からの慰謝料請求や離婚請求にも対応する必要もあります。
本記事では、既婚男性の不倫相手の女性の妊娠がわかった場合に、既婚男性側がすぐにすべきことは何か、どのような選択肢があるか等について弁護士が解説します。
目次
1.不倫相手に妊娠が発覚した際の対処法
本章では、不倫相手に妊娠していると言われたときに、まずやるべきことについて解説します。
(1)妊娠が事実かどうかを確認する
不倫相手の女性から妊娠を告げられた場合、それが予期しないものであれば気が動転してしまうのも仕方ありません。
妊娠が事実であった場合にとることができる選択肢については後述しますが、一番初めにすべきことは「本当に妊娠している状態であるか」を確認することです。
月経がおおむね順調な女性の場合、市販の妊娠検査薬を使用して陽性反応が出るのは最後に月経が始まった日から早くて5週間後となります。これは月経周期が30日の場合で5日程度遅れている状態です。現在は市販の妊娠検査薬で陽性反応が出た場合はほぼ妊娠していることが確実ですが、より確実になるのはやはり産婦人科で検査を行い医師が妊娠を認めた場合です。
生理が数日遅れているというだけで、まだ妊娠検査薬を使っていない場合はまず市販のスティック型の検査薬で確認してもらうようにしてください。生理不順でないのに1週間以上遅れているという場合、あるいは妊娠検査薬では陰性であったが気になる場合は、直接産婦人科クリニックを受診すれば妊娠の有無が判明します。また、その時点での妊娠週数・日数や週数の数え方についても教えてもらうことができます。
なお、妊娠・出産に関わる産婦人科の診療には原則として保険が適用されないため、初診の妊娠検査については費用が7,000円~1万円程度かかります。
(2)妊娠偽装の疑いがある場合
相手の女性が以前から「奥さんと別れて私と一緒になってほしい」と要求していたというような場合、離婚させるために妊娠を偽装している可能性もあります。まだ妊娠検査薬を使っていなかったり、あるいは既に産婦人科を受診していたという場合はその可能性は低いのですが、妊娠検査薬やエコー写真だけを見せたような場合はその疑いがないとはいえません。妊娠検査薬を見せてきた場合でも、男性側が妊娠検査薬を用意して、すり替えを防ぐために印をつけた上で一緒にいる間に使用してもらうようにしてください。
2.不倫相手に妊娠が発覚した際にしてはいけないNG行動
不倫相手の女性の妊娠が事実であった場合、直後にとるべきではない行動は「受診した医療機関及び弁護士以外の他者に妊娠の事実を知らせること」と「相手の女性に対して妊娠中絶を強要すること」です。
妊娠の事実が他者に知られることによって不倫の事実も明らかになります。特に、男性側の結婚生活が概ね円満であった状況では、妊娠の事実が配偶者に知られることにより結婚生活の破綻を招き、妻から不倫相手や男性に対して慰謝料請求される可能性が高いです。また、勤務先等の第三者に知られることによって、不倫当事者双方が社会的な不利益を受ける可能性があります。
また、不倫相手の女性が妊娠すること自体は(不同意性交の場合を除き)犯罪には該当しません。社会的に不利益を受ける可能性の問題とは別に、出産することも適法な選択肢として存在します。
この点、男女問題を専門とする弁護士に相談することにより、妊娠の事実について責められることもなく、とるべき対処法について法律的な観点を踏まえた助言を受けることができます。また、弁護士には守秘義務があるため、相談した内容が第三者に知られる心配はありません。
3.不倫相手が妊娠した場合に考えられる選択肢
不倫相手が妊娠した場合にとりうる選択肢として、相手女性との間では中絶または出産の二択となります。本章ではそれぞれを選択した場合に知っておくべきことについて解説します。なお、男性の配偶者との間での選択肢としては、中絶する場合は通常男性が妻と離婚しないことを想定しています。他方、出産を選択する場合は離婚する・離婚しないのどちらもありうることを想定しています。
3-1. 中絶する
母体保護法上、人工妊娠中絶が認められているのは、胎児が母体外で生存できないとされている妊娠22週未満(21週6日まで)となります。
この「週数」の数え方は、最後に月経が始まった日をゼロ日として7日を1週、その1週間後を2週・・とします。また、日数はゼロ日から6日までです。週数・日数の数え方は年齢と同じく「満」概念であるのに対して、一般的によくいわれる「妊娠〇か月」という言い方は数え概念(〇か月目)であることに違いがあります。ただし医療機関や、法律用語が使われる状況では妊娠期間は専ら週数で表します。
人工妊娠中絶が可能な21週6日は、妊娠6か月の前半ということになります。このうち、11週6日(妊娠3か月の終わり)までに行う中絶を「初期中絶」、12週0日(妊娠4か月の始め)から21週6日までに行う中絶を「中期中絶」と呼びます。初期中絶と中期中絶では手術の方法が違うほか、これによる母体への負担や手術費用、法律的な取扱いも異なります。なお、中絶手術は母体保護法認定医のみが行うことができます。
①初期中絶
妊娠11週6日までに行う初期中絶の場合、原則として掻爬(そうは)法または吸引法という方法で手術を行います。手術は静脈麻酔により10~15分程度で終了し、体調等に問題がなければ当日帰宅することができます。費用はクリニックにより異なりますが10万円~20万円程度です。原則として保険適用はなく自己負担となりますが、術前の検査で異常がみつかった場合には保険適用となります。
②中期中絶
妊娠21週6日までに行う中期中絶の場合、子宮収縮剤を使用して人工的に陣痛を起こさせて流産させる方法で手術を行います。麻酔は使用する場合と使用しない場合があります。費用については、手術料に加えて入院費用がかかるため30万円~50万円程度かかります。初期中絶の場合と同様、原則として保険は適用されませんが、中期中絶の場合は加入している健康保険により出産育児一時金(50万円)の支給を受けることができます。しかし中期中絶手術は母体に危険を伴うため、中絶を選択する場合は極力11週6日までに行うことが推奨されています。
3-2. 出産する
(1)生まれた子を認知する場合
相手の女性と話し合った上で出産を選択した場合には、出産の事実によって母親と子供の間は法律上の親子関係が認められます。しかし男性と子供の間では、男性が子供を認知した場合のみ法律上の親子関係が生じます(民法第779条)。
そこで、男性が生まれた子供を認知するか否かの選択が必要となります。認知は出産前・出産後いずれも可能ですが、胎児を認知する場合には法律上、相手の女性の承諾を得る必要があります(民法第783条1項)。子供が生まれた後の認知には期限はありません。ただし、その子供が18歳に達した後に認知する場合は子供の承諾を得る必要があります(民法第782条)。
認知は、届出対象者(認知される子供)の本籍地または届出を行う人(当該男性他、代理人による届出も可能です)の所在地の役所に届け出ることによって効力を生じます。
男性が子供を認知した場合、親子関係が生じることに伴い、扶養義務が生じます(民法第877条)。従って、子供が成年に達するまでの間、あるいは経済的に自立するまでの間は、母親となる女性と合意した上で養育費を支払わなければなりません。
また、男性が死亡した場合には子供は法定相続人となります。配偶者との間に子供がいる場合も、相続分については平等となります。もし男性が配偶者と離婚または死別した後に不倫相手の女性と婚姻した場合、認知された子供は法律上、男性の嫡出子となります(民法第789条1項)。
(2)生まれた子供を認知しなかった場合
結婚していない女性との間に生まれた子供を認知することは、法律上の義務ではありません。従って、認知しないという選択をすることもできます。ただし、生まれた子供(未成年の間は原則として法定代理人となる母親)は、生物的な父親である男性の住所地を管轄する家庭裁判所に「認知の訴え」を提起することができます(民法第787条)。この認知の訴えは、子供の両親の生存中及び、子供の父親または母親が死亡した日から3年経過するまでの間提起することができます(同条但書)。従って、父母のいずれかが死亡した日から3年後が認知の訴え提起の期限となります。
4.不倫に関する慰謝料の相場
不倫は法律的に見れば、既婚男性が妻に対して不法行為にあたる行為を行ったことになるので、妻から男性に対して慰謝料(民法第709条、710条)を請求することができます。また、相手の女性が男性を既婚者と知りながら性的関係を持った場合には、女性は不貞行為につき共同不法行為者(民法第719条1項)となるので、同一の慰謝料債務を連帯して負うことになります。従って、その場合は妻から不倫相手の女性に対しても慰謝料請求することができます。離婚せずに配偶者かつ・または不倫相手の女性に対して慰謝料請求する場合、不貞行為によって離婚に至ったという事情がないため、離婚を求める場合に比べて慰謝料の相場は少なくなり、おおよそ50~100万円、多くて150万円程度とされています。
5.離婚に関する慰謝料の相場
配偶者が離婚を求める場合、慰謝料の計算は離婚慰謝料(不貞行為が原因で離婚に至ったことによる精神的苦痛)に、不貞行為慰謝料(不貞行為によって受けた精神的苦痛)を加算する形となります。
裁判で不貞による離婚請求が認められる場合の慰謝料の相場は100万円~300万円です。ただし、不倫相手の女性が妊娠している場合や、その子供が出生した場合には配偶者が多大な苦痛を受けることになるので、一般的に慰謝料額は高くなります。従って、訴訟に発展した場合には相場以上の慰謝料支払いを命じられる可能性もあります。
6.不倫相手が妊娠したことを弁護士に相談するメリット
不倫相手が妊娠した場合、不倫に対する慰謝料請求や離婚請求の問題に加えて、子供を産むか産まないか、産む場合はどの病院で出産するか、生まれた子供を認知するか否か、その子供の養育費をどうするか等、妊娠・出産に関わる問題にも対処しなければなりません。これらの問題に対して男性と不倫相手の女性だけで対応することは非常に困難なので、男女問題を専門とする弁護士に相談することをお勧めします。本章では、不倫相手が妊娠したことを弁護士に相談するメリットについてご説明します。
6-1.中絶・出産の選択肢とその後の対処について助言を受けられる
女性が妊娠した場合、人工妊娠中絶が法律上認められるのは21週6日(6ヶ月目の前半)までです。12週以降の中期中絶になると心身・金銭面ともに負担が大きくなるので、産むか産まないかの選択は妊娠が判明してからできるだけ早く行わなければなりません。妊娠が判明した直後に弁護士に相談することにより、それぞれの選択肢をとった場合に法律的に起こりうる問題やそれに対する対応方法について詳細なアドバイスを受けることができます。
6-2.慰謝料請求の示談交渉・訴訟手続を任せられる
慰謝料請求された場合、不倫相手が妊娠したことに憤っている配偶者から過剰な請求を受け入れさせられたり、慰謝料請求された方も感情的になって収拾がつかなくなり、より高額の慰謝料を請求されるといった不利益を受けることになりえます。
弁護士に相談することで、経験に照らして適正な慰謝料額を提示してもらうことができます。また、慰謝料の減額交渉・示談書への適切な内容記載・内容証明による請求への対応・訴訟対応等、一人では困難な法的手続をすべて任せることができます。
慰謝料請求は請求する側にとっても困難を伴うため、請求者側も弁護士に依頼することが多いです。そのような場合も、弁護士に依頼することで対等な立場で対応することができます。
6-3. 離婚する場合の手続を任せられる
配偶者から不倫相手の女性の妊娠を原因として離婚を求められた場合、離婚協議では慰謝料以外に財産分与、未成熟の子がいる場合の養育費、別居した場合の別居期間中の婚姻費用等、さまざまな事項について取り決めることになります。関係が破綻した配偶者との間ですべての協議事項について円滑に協議が進むことはあまりなく、訴訟まで進む可能性もあります。
この点、男女問題を専門とする弁護士に相談すれば、婚姻生活の状況・双方の財産状況・不倫の経緯等を聴き取った上で、経験に照らして妥当な財産分与額や慰謝料・養育費などを提示することができます。また、代理人として相手方と交渉することもできます。合意が成立せずに調停や訴訟に進んだ場合も、手続をすべて任せることができます。弁護士には守秘義務があるので、裁判所で当事者の代理人として陳述する場合を除いて、相談を受けて聴き取りした内容が第三者に知られる心配はありません。
7.不倫相手の妊娠に関するよくあるQ&A
本章では、不倫相手の女性が妊娠したケースで相談者様から頂くことの多い質問と、それに対する回答を御紹介します。
7-1. 不倫相手の既婚女性が妊娠した場合に出産するという選択肢はありますか?
いわゆるダブル不倫で相手の女性が妊娠した場合、相手の女性は自分の配偶者から慰謝料や離婚を請求されたり、男性の妻からも慰謝料請求されるという立場になります。他方、不倫自体は犯罪にはあたらず、出産することも適法な選択肢として認められます。
ただし、女性が出産した子供は女性が婚姻中に懐胎していることから女性の配偶者との間の嫡出子であると推定されます(嫡出推定:民法第772条)。従って、戸籍上も女性の配偶者を筆頭者とする戸籍に入ることになります。
このため、法律的にも以下のような問題が起こる可能性が高くなります。
①配偶者側がDNA鑑定を行い、女性に対して鑑定費用を要求する
②DNA鑑定の結果親子関係が否定された場合は、配偶者側が嫡出否認の訴え(民法第775条)を提起する可能性が高い
③心身の負担の大きい時期に離婚せざるをえなくなる
④離婚にあたって財産分与をどの程度受けられるか、裁判で子供の嫡出性が否定された後に父親が認知するか否か、養育費を支払うことができるか等の問題に対応しなければならない
7-2.不倫相手の女性が中期妊娠中絶を行った状況で妻が女性に慰謝料請求すると言っている。不倫による妊娠とはいえ酷ではないでしょうか?
中期妊娠中絶は費用が50万円程度かかるだけでなく、死亡事例が報告されているほど心身に大きな負担をかける手術です。費用自体は、出産育児一時金の対象となるので50万円まで充当することができますが、手術関連費用に限らず女性側が精神的にも大きなダメージを受けることは避けられません。既婚者であることを知りながら性的関係を持った場合は配偶者から女性に対する慰謝料請求が認められますが、その場合、性的関係は配偶者に対する共同不法行為にあたるとはいえ、女性側も妊娠中絶によって精神・身体・経済的に損害を受けているといえます。示談交渉にあたっては双方の事情を考慮して相互に一定程度譲歩する必要があるかと思います。
7-3.配偶者と離婚しないで不倫相手の女性との間に生まれた子供を認知することはできますか?
法律上は可能です。認知する場合は、これによって法律上の親子関係が生じるために子供が未成熟の間は養育費を負担する義務が生じます。また、父親が死亡したときの法定相続人資格も取得します。
父母が婚姻関係にないため子供は非嫡出子となりますが、法定相続分については民法改正により嫡出子との間の差別がなくなり平等となっています。ただし、嫡出子がいる場合は相続が開始するまでに、認知した非嫡出子が存在することを知らせなければならないため、相続に関わるトラブルが生じるおそれもあります。認知する場合に配偶者の承諾を得る義務はありませんが、認知した子供の養育費用や相続をめぐる争いが起きないよう、それらへの対処も含めて事前に配偶者の了承を得ることをお勧めします。
8.まとめ
不倫相手の女性の妊娠が発覚した場合、第三者に相談しにくい状況にありながら短期間で色々な対応を行わなければなりません。慰謝料等の交渉を行う場合双方とも感情的になるおそれがありますが、不倫関係による妊娠であったとしても、相手の女性側の心身に多大な負担がかかることも考慮しなければなりません。
不倫相手の女性が妊娠していることがわかった場合には、女性と話し合った上でできるだけ早く法律事務所の無料相談を利用して、男女問題を専門とする弁護士にご相談ください。
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担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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