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奨学金の保証人になるリスクやトラブル対処法を弁護士が解説!

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1.そもそも奨学金の保証人とは

奨学金の保証人とは、奨学金を借りた学生(=主債務者)が卒業後に返済をしない場合、代わりに返済をする責任を負う人のことを指します。保証人は主債務者が奨学金の貸与契約をするのと同時に、奨学金の運営団体と保証契約を結ぶことになります。

一般的に、主債務者が大学などの教育機関を卒業した後から返済義務が発生します。主債務者がしっかりと返済を行えば、保証人が奨学金の返済を肩代わりする必要はありません。

問題となるのは、主債務者が契約通りに支払いをしなかった場合です。奨学金の未返済分はもちろん、利息や遅延損害金なども支払う必要があります。

ここでは、奨学金の保証人の基礎知識を解説します。

1-1.保証人の要件

保証人は誰でもなれるわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。これは、奨学金の返済義務を負う可能性があるためです。

民法によると、保証人の要件として「行為能力者」かつ「弁済する資力を有する」ことが定められています(民法450条第1項)。

保証人の要件意味
行為能力者であること法律行為を単独でできること
※未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人などの制限行為能力者に該当しない人
弁済する資力を有すること債務(ここでは奨学金)を返済するだけの財産・収入を確保できること

いずれも法律用語のため難しく感じるかもしれませんが、簡単にいうと、

  • 行為能力について裁判所の審判を受けていない18歳以上の人
  • 一定の財産・収入がある人

の両方に当てはまる人が保証人になることができるとされています。

ただし、保証人の要件は奨学金団体によって異なります。例えば、「日本学生支援機構(JASSO)」では、保証人の要件を次のように定めています。

  • 主債務者の父母以外(原則としておじ・おば・兄弟姉妹など4親等以内)
  • 主債務者・連帯保証人と別生計
  • 未成年者・学生でなく、65歳未満である
  • 主債務者や連帯保証人の配偶者でない
  • 債務整理中でない

参考:日本学生支援機構HP

上記から分かるように、日本学生支援機構では保証人に「資力」を要求していません。ただし、65歳以上の方や親族ではない方など、要件を満たさない人を保証人として申請するためには、収入・財産を証明する書類を提出することとしています。

1-2.奨学金の保証人と連帯保証人の違い

保証人は、単なる「保証人」と「連帯保証人」に大別されます。

自分が結んでいる保証契約がどちらかわからない場合には、契約書を見てみましょう。連帯保証人の場合には、契約書に「連帯して保証する」という文言が含まれています。単に「保証する」となっていれば「保証人」です。

保証人と連帯保証人の違いは次の通りです。

保証人主債務者が奨学金を返済しない場合に限り、返済責任を負う者。
あくまで主債務者を補完する立場にある。

※奨学金団体に対して次の権利を主張ができる。
・分別の利益
・催告の抗弁権
・検索の抗弁権
連帯保証人主債務者とともに奨学金返済の責任を負う者。
奨学金団体はいつでも連帯保証人に返済の請求ができる。
主債務者と同等の立場にある。

※奨学金団体に対して権利主張ができない。

どちらの保証人になるにせよ、奨学金団体と保証契約を結び、奨学金の返済義務を負う可能性がある点では同じです。

しかし、責任の重さや主張できる権利には大きな違いがあります。連帯保証人は保証人よりも責任が重く、主債務者と同等の立場で借金を返済する義務を負います。

ここでは、保証人と連帯保証人の最も大きな違いである3つの権利について解説します。

(1)分別の利益

分別の利益とは、保証人が複数名いる場合に、その人数で頭割りした金額のみを支払う旨を主張できる権利です(民法456条)。保証人には分別の利益がありますが、連帯保証人には分別の利益はありません。

例えば、100万円の奨学金について、保証人1人と連帯保証人1人が返済を求められたとします。このとき、保証人は100万円を2人で平等に分担した金額である50万円を支払えば足ります。一方、連帯保証人はほかの保証人の有無に関わらず、100万円全額を支払う義務を負います。

連帯保証人が複数人いる場合でも、その全員が100万円全額の支払い義務を負うことになります。このため、奨学金団体は返済をしてくれそうな連帯保証人に絞って、ピンポイントに全額請求をすることができます。

(2)催告の抗弁権

催告の抗弁権とは、奨学金団体から返済を請求された場合に、先に債務者に請求するよう主張できる権利のことです(民法452条)。保証人には催告の抗弁権がありますが、連帯保証人は請求を受けたらすぐに返済をしなければなりません。

ただし、催告の抗弁権を主張しても、奨学金団体は主債務者に一度でも催告すれば足りるため、事実上ほとんど問題になりません。保証人にはより強い権利として検索の抗弁権が認められています。

(3)検索の抗弁権

検索の抗弁権とは、奨学金団体から返済を請求されたとしても、主債務者が奨学金を返済できるだけの財産を持っていれば、主債務者の財産を取り立てるよう主張できる権利のことです(民法453条)。検索の抗弁権を主張できるのは保証人に限られ、連帯保証人には認められていません。

保証人が検索の抗弁権を主張するには、次の内容を証明する必要があります。

  • 主債務者が奨学金を返済できるだけの財産を持っていること
  • 銀行預金の差押えなどの強制執行が容易であること

例えば、主債務者が100万円の預金を持っていることを保証人が証明できる場合、奨学金団体から請求がきても、「先に主債務者の預金から100万円を取り立ててくれ」と求めることができます。一方、連帯保証人は主債務者に財産があることを知っていても、奨学金団体の請求を拒むことはできません。

なお、奨学金団体がすぐに動かなかったために、主債務者の100万円の預金が減ってしまった場合、その責任は奨学金団体が負うことになります。保証人は減った額について返済をする必要はありません。

1-3.人的保証と機関保証の違い

奨学金の返済を保証する方法には、人的保証と機関保証の2つがあります。

・人的保証:親族や第三者などから連帯保証人・保証人を選んで保証してもらう方法

・機関保証:奨学金団体が指定する保証機関に保証料を支払って保証してもらう方法

それぞれの方法にはメリットとデメリットが存在します。

人的保証機関保証
メリット・保証料がかからないため、奨学金をまるまる受け取れる・連帯保証人・保証人に負担をかけずに済む
・連帯保証人・保証人がいなくても契約できる
デメリット・主債務者が返済しないと、連帯保証人・保証人が返済責任を負う
・返済滞納により連帯保証人・保証人との関係が悪化する可能性がある
・奨学金から保証料が天引きされる
・保証機関が代理返済をすると、主債務者は保証機関から一括請求を受ける

日本学生支援機構によると、2020年9月末時点で機関保証を選択する学生は55.2%と半数を超えています。どちらを選択しても、原則として主債務者が返済義務を負うことには変わりないため、保証人・連帯保証人になる人とよく相談して決めるようにしましょう。

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2.保証人のリスクについて

家族や親族から「子どもの奨学金の保証人になってほしい」と頼まれた場合、安易に引き受ける前に一度立ち止まって考えてみるべきです。

「絶対に迷惑をかけないから」と言われても先のことは分かりません。急に主債務者や連帯保証人の事情が変わり、すべての返済を肩代わりさせられることも考えられます。

ここでは、保証契約にハンコを押す前に知っておくべき保証人のリスクについて解説します。

2-1.奨学金団体から返済の督促が来る

主債務者の返済が滞ると、奨学金団体から保証人に対して返済の督促が届きます。一般的に奨学金団体から委任を受けた業者から、電話や信書などの手段で連絡が来ることが多いです。

保証人が滞納の事実を知らなかった場合、ある日突然取り立てを受けることになり、生活に及ぼす影響が大きくなることが考えられます。保証人は主債務者の代わりに、奨学金の一部あるいは全部を支払う義務を負います。

2-2.裁判上の争いになる可能性がある

主債務者も保証人も返済ができない場合、裁判上の争いになる可能性があります。

奨学金団体は奨学金を回収するため、裁判所に対して支払督促を申立てることが考えられます。支払督促を受け取ってからも保証人が異議を申し立てずにいると、財産の差押えなどの強制執行を受ける恐れがあります。

返済の金額や時期について交渉したい場合は、まず支払督促から2週間以内に異議申立てを行いましょう。異議申し立てをすれば、通常の民事訴訟に移ることになります。

2-3.主債務者が自己破産すると一括請求される

主債務者が奨学金以外にも多額の借金を抱えている場合、支払いが追いつかず自己破産に至ってしまうことがあります。奨学金の返済中に主債務者が自己破産をすると、保証人が一括請求を受ける可能性があります。

自己破産は借金の返済を免除する制度です。ただし、免除されるのは自己破産を申し立てた人のみ。その効果は保証人には及びません

よって、自己破産をした主債務者は奨学金の返済を免れるものの、保証人の返済義務は残ってしまいます。一括請求を受けても分割払いの交渉は可能なため、まずは奨学金団体に確認するようにしましょう。

2-4.返済ができなければ債務整理の必要も

主債務者に加えて保証人も奨学金の返済ができない場合、ともに債務整理を検討する必要があります。

債務整理は裁判上の手続きや奨学金団体との交渉を通して、借金の返済負担を軽減・免除する制度です。借金問題を解決できる一方で、ブラックリストの登録や生活への影響などのデメリットがあることには注意が必要です。

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3.奨学金の保証人トラブルを防ぐポイント

奨学金の保証人トラブルを防ぐには、保証人のリスクをよく理解した上で、主債務者と話し合うことが重要です。ここでは、トラブル防止の具体的なポイントを解説します。

3-1.無理に引き受けない

どんなに頼まれたとしても、不安がある場合には無理に引き受けないことが大切です。保証人になれば、将来的に奨学金という借金を背負う可能性があります。

主債務者が学校卒業後に奨学金を返済し続けてくれるとは限りません。もし返済が滞ることがあれば、保証人や家族の生活に影響を及ぼすおそれがあります。保証人自身の経済状況をよく確認し、保証人を引き受けるかどうか慎重に判断するようにしましょう。

3-2.主債務者の返済能力を確認する

保証人を引き受ける際には、主債務者の返済能力を確認することが重要です。あらかじめ主債務者の現在の資産状況や将来設計などをよく話し合い、返済計画を立てておくようにしましょう。

主債務者は奨学金を借りる時点ではまだ学生で、借金を背負うことをあまり理解していないことが考えられます。奨学金は返済の必要があり、もし返済ができなければ周囲に迷惑がかかることを認識してもらう必要があります。

さらに、主債務者が学校を卒業して返済を開始したら、定期的に返済状況を確認しておくことをおすすめします。「返済額は収入に見合っているか」「継続した返済が可能か」を把握し、必要に応じて月々の返済額を引き下げるよう提案するなど、保証人が返済の義務を負うリスクを最小限に抑えるようにしましょう。

3-3.機関保証を検討する

奨学金団体によっては、人的保証のほかに機関保証制度を設けていることがあります。機関保証を利用すれば、毎月の奨学金から一定の保証料が天引きされますが、保証人がリスクを負うことはなくなります。

奨学金の返済義務は原則として主債務者が負うべきものです。少しでも保証人になることに不安がある場合、主債務者に機関保証を検討するよう提案してみてはいかがでしょうか。

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4.奨学金が保証人トラブルになった際の対処法

いくら注意していても、一度保証人となればトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。ここでは、奨学金の滞納が発生し、主債務者や奨学金団体との間でトラブルになった際の対処法を解説します。

4-1.奨学金の減額・猶予制度を活用する

奨学金団体では、卒業後の収入状況にあわせた奨学金の減額・猶予制度を設けていることがあります。ここでは日本学生支援機構の制度を軸に解説します。

  • 奨学金の減額制度・・・一定期間中の返済月額を減額できる制度(最長15年)。
  • 奨学金の猶予制度・・・一定期間、奨学金の返済を延長できる制度(最長10年)。

失業や怪我、病気などの事情により、奨学金の支払いが難しくなった場合はあらかじめ申請することで滞納を防ぐことができます。ただし、どちらにも収入要件があるため、まずは問い合わせてみましょう。

4-2.そのほかの借金を任意整理してもらう

主債務者が奨学金の返済に加えて、ほかの借金の返済義務を抱えている場合、任意整理を検討すると良いでしょう。

任意整理とは、当事者同士が直接交渉を行い、借金の返済条件を見直す手続きのことです。ほかの債務整理とは違って裁判所を介さないため、整理の対象とする借金を指定して柔軟な交渉をすることが可能です。利息カットや返済期間の延長を交渉すれば、月々の返済負担を減らすことができます。

任意整理を用いて奨学金以外の借金の返済負担を減らせば、奨学金を滞納せずに支払い続けられる可能性があります。

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5.奨学金の保証人トラブルを弁護士に相談、依頼するメリット

どうしても奨学金の返済が難しく、保証人トラブルに発展してしまった場合には、弁護士に相談することをおすすめします。ここでは、弁護士に相談・依頼するメリットを解説します。

5-1.保証人の抗弁権を主張できる

奨学金団体から奨学金の返済を求められた場合、保証人は自己の権利を法的に主張できる可能性があります。主張できる権利は、「分別の利益」「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」の3つです。弁護士に相談すれば、適切なタイミングで保証人の抗弁権を主張し、必要以上の請求を受けることを防ぐことができます。

5-2.過大請求を防げる

近年、複数の保証人がいるにも関わらず、奨学金の借金全額を請求される事例が相次ぎました。

通常、保証人は人数で頭割りした金額を支払えば良いところ、「分別の利益」についての連絡をすることなく、全額を請求していたようでした。裁判所は奨学金団体の主張を退け、奨学金過払い分の返還を命じています。

弁護士に相談すれば、このような過大請求を防ぎ、保証人の利益を最大限に保護することができます。

5-3.法的なアドバイスを受けられる

あらかじめ弁護士に依頼すれば、保証人がどのような主張をするべきか法的なアドバイスを受けることができます。今後取るべき行動の指針を示してもらい、迅速かつ適切なトラブル解決につながります。たとえ訴訟手続きに発展してしまっても、弁護士に一貫して対処を任せることが可能です。

5-4.主債務者や保証人の債務整理を依頼できる

どうしても奨学金の返済ができなければ、主債務者と保証人の両方が債務整理を検討することになります。弁護士は債務整理の専門家であり、それぞれの事情に応じて最適な手段を提案できます。債務整理をすれば、奨学金の返済負担を軽減・免除することが可能です。

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6.奨学金の保証人に関するよくあるQ&A

ここでは、奨学金の保証人に関する質問に回答します。

6-1.保証人の返済は半額で良いと耳にしたが本当か?

保証人には分別の利益があるため、連帯保証人と保証人の人数に応じて頭割りした金額を支払えば済みます裁判所はこの分別の利益を無視した請求は無効だとする判決を出しています。このため、連帯保証人を含めて保証人が2人いる場合には、保証人の返済額は半額で良いことになります。

6-3.奨学金の保証人を辞められる?

保証人の意思のみで奨学金の保証人を辞めることはできません。保証人は奨学金団体と保証契約を結んでいるためです。

ただし、奨学金の保証人を変更することは可能です。この場合、ほかの保証人を立て、奨学金団体との保証契約をしてもらうことになります。

6-2.主債務者の代わりに返済したらお金は戻ってこない?

主債務者の代わりに保証人が返済をした場合、その金額は主債務者に請求できます。保証人は実際に支払った金額だけでなく、法定利息や費用、損害賠償金を求めることも可能です。

また、本来であれば保証人が支払わなくても良い部分について、保証人が支払いを行っていれば、主債務者やほかの保証人に対して請求できます。このとき、保証人が請求できるのは、主債務者やほかの保証人が当時利益を受けた金額に限られます。

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7.まとめ

奨学金の保証人になれば、将来的に奨学金を返済する責任を負う可能性があります。奨学金団体からの督促や裁判上の争いに巻き込まれるリスクがあるほか、主債務者が自己破産を選択すれば一括返済を求められることも考えられます。保証契約を結ぶ前には主債務者とよく話し合う必要があります。

保証契約を結んだあとも定期的に返済状況を確認し、必要に応じて奨学金の減額・猶予制度や債務整理を利用しましょう。もし保証人トラブルに発生した場合には、なるべく速やかに弁護士に相談することをおすすめします。保証人の利益を守るために必要なアドバイスを受けることができます。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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