ハラスメント

セクハラ冤罪の疑いをかけられた!対処法などを弁護士が解説!

セクハラ冤罪の疑いをかけられた!対処法などを弁護士が解説!
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同じ職場に異性がいる場合に問題となりやすいのがセクシャル・ハラスメント(セクハラ)の問題です。

気をつけていてもどうしてもトラブルになりがちなセクハラですが、セクハラをしているわけではないのにセクハラの疑いをかけられることもあります。

そこで本記事では、冤罪であるにもかかわらず、セクハラの疑いがかけられた時にどのように対処をするのが良いのかについて労働問題に強い弁護士が解説します。

1.そもそもセクハラ・冤罪とは

そもそもセクハラ・冤罪それぞれの意味について確認しましょう。

1-1.セクハラとは

セクハラとは、セクシャル・ハラスメント(sexual harassment)を省略したもので、職場における性的な言動に対して労働者が労働条件について不利を受けたり、就業環境が害されるハラスメントのことをいいます。

ハラスメントとは嫌がらせのことをいいます。

1989年8月に起きた日本初のセクハラ訴訟である、福岡セクシャルハラスメント事件をきっかけにこの言葉が認知され、「セクシャルハラスメント」という言葉は同年の新語・流行語大賞の新語部門・金賞を受賞します。

その後セクシャルハラスメントという言葉は1990年代にセクハラ訴訟が相次ぎ、一過性の流行語から日本語として定着し、現在では男女雇用機会均等法11条1項で次のように規定されるなど、事業者が防ぐべき義務となっているものとして認識されています。

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

男女雇用機会均等法11条1項

1-2.セクハラの種類

セクハラには次のような種類があります。

1-2-1.対価型セクハラ

職場における上下関係を利用して性的な言動を行い、拒否をする場合には解雇・降格・減給などを行うことをいいます。

次のような行為が対価型セクハラに該当します。

  • 上司が部下にわいせつ行為を行う
  • 商取引において利害関係を利用して性的関係を強要する

1-2-2.環境型セクハラ

職場環境を害する性的な嫌がらせをいいます。

  • ヌードのポスターやカレンダーを目に見えるところに貼る
  • 酒の席で女性にお酌をさせる
  • 回りに聞こえるように性的な会話を行う

1-2-3.妄想型セクハラ

社内チャットや電子メール・SNSなどの利用によって、関係性が深まったと思い込んでしまいセクハラをすることをいいます。

  • 社内チャットを利用してプライベートについての詮索をする
  • セクハラ発言を拒否しても自分のことが好きであると勘違いしてセクハラを行う

1-3.冤罪とは

冤罪(えんざい)とは、無実であるにもかかわらず犯罪者として取り扱われることをいいます。

本来は刑事事件において、犯罪を犯していないにもかかわらず有罪判決を受けてしまった場合を指して使われる言葉ですが、最近では濡れ衣を着せられた状態を指して一般的な用語としても使われます。

セクハラという用語との組み合わせであるセクハラ冤罪との関係としては、セクハラをしていないにも関わらず、会社にセクハラをしたと認定されることをいいます。

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2.セクハラ冤罪のよくある事例

セクハラ冤罪としてよくある事例には次のようなものがあります。

2-1.セクハラをしていないにもかかわらずセクハラをしたと扱われる

セクハラ冤罪のよくある事例としては、セクハラを行っていないにも関わらず、セクハラを行ったと従業員に告発され、セクハラをしたと会社に認定されてしまうケースが挙げられます。

  • 男性の上司が部下である女性に厳しく当たったところ、これに恨みを持った部下が男性の上司にセクハラをしたと告発し、女性の言い分のみが認められて会社からセクハラを行ったとして解雇された。
  • 男性の上司の存在を疎ましくおもった女性が、男性の上司がセクハラしたと会社に告発をした。証拠がなく会社からはセクハラをしたと認定されなかったものの、昇進の話が一度立ち消えることになった。
  • 取引先が取引にあたって有利な条件を引き出すために、自社の担当者からセクハラを受けたと告発した。トラブルを避けるために、取引先に有利な契約を結ばされ、自社で処分を受けることになった。

2-2.他人のセクハラ行為の責任を取らされる

セクハラ自体はあったものの、そのセクハラ行為が他人の行為であるにもかかわらず、自分が責任を取らされるタイプのセクハラ冤罪のケースがあります。

  • 職場でセクハラに該当するような会話をしていたとして告発されたが、その会話をしていたのは他人であるにもかかわらず、自分がその会話をしていたとして告発され、会社がセクハラと認定した。
  • 会社において他の従業員がヌードのカレンダーを掲示していたが、それが自分が掲示したものであるとして告発され、会社がセクハラと認定した。

2-3.セクハラとされた結果どうなるのか

セクハラと認定されてしまうと、どうなる可能性があるのかを確認しましょう。

2-3-1.解雇

セクハラをしたとして会社を解雇される可能性があります。

会社は、従業員が職場の規律を破り、秩序を乱すような行為をしたときに、その従業員に対して不利益な取り扱いをする、懲戒処分を行うことができます。

通常、就業規則にはセクハラを禁止する旨の規定が置かれ、これに違反したような場合には懲戒解雇をすることができる旨が規定されます。

例えば、厚生労働省が公表しているモデル就業規則では、次のように定めています。

第13条  性的言動により、他の労働者に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。
第64条2項 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。⑨ 第12条、第13条、第14条、第15条に違反し、その情状が悪質と認められるとき。
セクハラ冤罪であったとしても、会社がセクハラと認定することによって、就業規則を根拠に解雇される可能性があります。

モデル就業規則

2-3-2.降格・減給など

セクハラを理由として、懲戒処分が行われる可能性があります。

モデル就業規則の64条2項にあるように、「平素の服務態度その他情状によっては」「その情状が悪質と認められるとき。」とされており、解雇をするほどでもないような悪質ではないような場合にはや、反省をして被害者に対して謝罪をしている、といった場合には、解雇ではなく降格や減給などの軽い処分が行われる可能性があります。

2-3-3.刑事事件

セクハラの内容によっては刑事事件となる可能性があります。

刑法176条1項8号は「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。」という状態を利用して「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者」について不同意わいせつ等罪が成立するとしています。

また、刑法177条は、上述の状態で「性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部…若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものをした者」については、不同意性交等罪が成立するとしています。

セクハラであるとされた場合には、これらの犯罪に該当するとして刑事事件となる可能性があります。

2-3-4.民事上の請求

セクハラの被害者は、加害者に対して受けた精神的苦痛に対して慰謝料の請求が可能です(民法709条・710条)。

加害者は、セクハラの被害者から民事訴訟などの民事上の請求をされる可能性があります。

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3.セクハラの疑いをかけられた際の対処法

セクハラの疑いをかけられた際にはどのような対処法を取るべきでしょうか。

3-1.セクハラをしたと認めない

セクハラをしていないにもかかわらずセクハラをしたと疑われている場合に特に注意すべきなのはセクハラをしたと認めないことです。

セクハラをしていないのであるから当然のように思えるのですが、中には上司や経営者から「穏便に済ませたいので早くセクハラを認め被害者に謝罪して解決して欲しい」と依頼されることがあります。

もし本当にセクハラをしたのであれば、上述したモデル就業規則64条2項の「その情状が悪質」ではないと主張するために、謝罪をすべきであるといえます。

また、刑事事件になるような場合には、情状酌量の余地を認めてもらうために、セクハラを認め謝罪をすることになります。

しかし、実際にはセクハラをしていないにも関わらず、セクハラをしたと認める、または被害者に謝罪をするなど、セクハラをしたことを事実上認める行動を取ると、そのことによってセクハラをしたと認定されてしまうリスクがあります。

その結果約束を反故にされ、会社を解雇される・懲戒処分を受ける危険性があります。

また、自ら認める発言をしていることを理由に刑事事件化・民事上の請求を受ける危険性もあります。

最終的にこれを覆せるような場合でも、一時的には解雇・懲戒処分をされ、ケースによっては逮捕される、慰謝料請求の訴訟を起こされるという可能性もあるのです。

解雇される・逮捕される・民事訴訟を起こされるなどされた場合、弁護士を雇うなどして適切に対応する必要があり、その費用が必要となることになります。

以上から、セクハラをしたと認めてはいけません。

3-2.適切な手続と証拠の提示を求める

適切な手続と証拠の提示を求めましょう。

会社において懲戒処分をする場合には、懲戒対象となっている人に対して事情聴取をして弁明の余地を認めるなどの手続きを取る必要があるとされています。

セクハラにおいては被害者の言い分ばかりが取り上げられるケースがあり、加害者は反論の余地もなくセクハラであると認定されてしまう危険性があります。

そこで、会社の社内手続きを適正に行い、証拠の提示を求め、適切な反論をするようにしましょう。

3-3.虚偽のセクハラ告発をしている人には厳格な対応をする

セクハラ冤罪が特定の従業員の虚偽の告発によって行われたような場合、その従業員に対して厳格な対応をするようにしましょう。

当該従業員の告発が虚偽であることを主張して、次のような対応をすることを検討しましょう。

  • 虚偽のセクハラ告発をした従業員を懲戒処分にするように会社に求める
  • 警察に告訴された場合には刑法172条の虚偽告訴罪にあたると主張する
  • 民事上の請求をされた場合には虚偽のセクハラ告発で被害を被ったことを元に慰謝料を逆に請求する

3-4.なるべく早く弁護士に相談・依頼して適切な対処をする

ここまででお伝えしているように、セクハラ冤罪であるにもかかわらず、セクハラとして認定されてしまうと、最終的には解雇・刑事事件化・損害賠償請求を受けるといった結果をもたらすリスクがあります。

刑事事件化するということは逮捕・送検されることになり、長時間身柄を確保されてしまい、反論のための行動を制限されます。

発生する不利益を最小限にとどめた上で、適切な対処をするためには、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。

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4.セクハラの疑いをかけられた際にやってはいけないこと

セクハラの疑いをかけられた際に、やってはいけないこととしては次のようなものがあります。

4-1.セクハラを認める・とりあえず謝る

セクハラを認めることおよびとりあえず謝るということはやってはいけません

前述した通り、セクハラしたことを認めると、その内容が証拠となって、セクハラを行ったと認定される可能性があり、これを覆せなければ会社を解雇されるなどの可能性があり、覆すためのにも労力と民事訴訟などの費用がかかる可能性があります。

謝るということも、前提としてセクハラしたことを認めることになるので同様です。

4-2.セクハラの被害者を主張する人に直接連絡をすること

セクハラの疑いをかけられた後にセクハラ被害者と直接連絡を取ることも、やってはいけないことに挙げられます。

セクハラ被害者とされる人に対して直接連絡する行為自体が、セクハラをしていたような印象を与えるのが一つの理由です。

また、連絡をとろうと、電話・メール・SNSでコンタクトを撮ろうとするその行為自体もセクハラであると主張されかねません。

また、冤罪であるにもかかわらずセクハラであることを会社に告発することで、金銭の要求をするなど、不当な請求をされる可能性もあります。

セクハラの被害者を主張する人に対しての反論等は、会社・警察・裁判所を通して行うようにしましょう。

もしセクハラ被害者側からアプローチがあった場合でも、自分の主張は会社・警察・裁判所に対して行うことをきちんと伝えるようにしましょう。

万が一金銭を要求するような主張がある場合には、直接金銭請求をしてきていることを会社に伝えるようにしましょう。

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5.セクハラ冤罪のトラブルを弁護士に相談・依頼するメリット

セクハラ冤罪のトラブルを弁護士に相談・依頼するメリットには次のようなものがあります。

5-1.セクハラが冤罪であるという主張を適切に行うことができる

セクハラが冤罪であるという主張を適切に行うことができるようになります。

セクハラについては、どのような行為がセクハラに該当するのか、セクハラに該当するという場合にどのような主張・証拠によって覆すべきか、といった民事上・手続きに関する複雑な問題があります。

会社も被害者とされる相手に味方をしているようなケースもあったり、なるべく穏便に済まそうと上述したようなセクハラを認めてるような働きかけをすることも多く、適切な主張・反論・立証が、セクハラ冤罪の解決には欠かせません。

弁護士に相談・依頼すれば、セクハラ冤罪解決のための適切な主張等をすることができるようになります。

5-2.精神的負担を和らげてくれる

セクハラ冤罪という精神的負担が大きいトラブルにおいて、弁護士に相談することでその精神的負担を和らげてくれることが期待できます。

自分がセクハラを告発されているということを、会社の同僚や家族、友人に相談するのは非常に難しく、セクハラ冤罪問題に直面している人の多くは一人でトラブルと向き合うことになります。

このような状態で会社などにセクハラ冤罪であることを主張し、交渉していく必要があり、その精神的負担は計り知れません。

弁護士に相談するだけでも精神的負担を和らげることができ、依頼をすれば最後までセクハラ冤罪に立ち向かうために頼りになる存在となるといえます。

5-3.会社・相手方等との交渉を任せることができる

弁護士に依頼をすれば、会社・相手方との交渉を任せることができます。

セクハラ冤罪のトラブルにあうと、会社や相手方との交渉が欠かせません。

会社や相手の主張に対してタイムリーに適切な反論を行う必要があり、それには冷静に対応する必要があります。

セクハラ冤罪でトラブルになってしまったような場合には、自分も会社も相手方も非常に感情的になっていることがあります。

冷静に交渉ができないと、トラブル解決までに時間がかかることになります。

また、上述したように、相手方と直接交渉することは、不利な認定をされることになります。

弁護士に依頼をすれば、代理人として交渉を任せることができるので、適切でタイムリーな反論をすることができ、かつ冷静に交渉をすることが期待できます。

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6.セクハラ冤罪に関するよくあるQ&A

セクハラ冤罪に関するQ&Aには次のようなものがあります。

6-1.セクハラ冤罪で解雇された場合争うと元の職場に戻る必要があるのか

セクハラ冤罪が原因で解雇されてしまった場合、不当解雇であるとして会社と争うことになります。

不当解雇を争う場合には、解雇は無効であるという主張をすることになり、その結果解雇が無効となる場合、労働契約が継続していたことになり、元の職場に戻ることになりそうです。

しかし、セクハラ冤罪が原因で解雇されたというような場合、解雇をした会社にも良い感情を持っていない、セクハラで解雇されたというイメージがついてしまって職場に戻りづらい、すでに新しい職場を見つけて働いている、といったことが考えられ、元の職場に戻ることを希望しないケースもあるでしょう。

この場合、金銭的な解決をすることも可能で、必ず元の職場に戻る必要はありません。

6-2.セクハラ冤罪で有罪になる可能性はあるのか

セクハラが不同意わいせつ罪などの刑事事件になった場合には、警察・検察による捜査が行われます。

この場合刑事責任を追及する捜査機関側が証拠を収集する必要があり、セクハラの証拠が何もないような場合に刑事事件として起訴され、立証される可能性は非常に低いでしょう。

しかし、セクハラで追い落とすことを目的として性行為に応じ、後から警察に相談して体液などの証拠収集をするなどしてくるようなことも考えられます。

有罪となる可能性は0とはいえないので、刑事事件になるような場合には早めに弁護士に相談するようにしましょう。

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7.まとめ

このページでは、冤罪であるにもかかわらずセクハラを疑われた場合の対応方法についてお伝えしました。

セクハラ冤罪でトラブルになった際に対応を間違うと、会社を解雇され、刑事事件・民事事件となる可能性があり、大きなトラブルに見舞われる可能性があります。

会社が必ず味方してくれるわけではないので、早めに弁護士に相談・依頼し、適切な対応を取るようにしましょう。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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