その他
入社1年未満で育休は取れる?もらえる手当などを弁護士が解説!
雇用されている女性が妊娠・出産をした場合、休暇の制度を利用することができます。その一つに育児休業があります。育児休暇は、1歳未満の子を養育する労働者が取得できる休業制度です。
この育児休業ですが、会社に雇用されてから1年目でも取得をすることはできるのでしょうか。
本記事では、入社1年未満でも育休はとれるのか、どのような手当がもらえるのかについて弁護士が解説します。
目次
1.育児休業(育休)とは
育児休業とは、原則として1歳未満の子を養育する労働者が取得できる休業制度のことをいいます。
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)」に基づいて認められる休業制度です。実は女性(母親)だけでなく、労働者であれば男性(父親)でも取得することが可能です。
育児休業は、省略して育休と呼ばれることもあります。
1-1.育児休業が認められる要件
育児休業が認められる要件は原則として「養育する子が1歳に満たない子について、その事業主に申し出ること」です。期間の定めのない雇用契約のもとで働く労働者(無期雇用労働者)は、原則として、子が1歳未満であれば育児休業が認められます。
他方で、有期雇用労働者の場合は、「子が1歳6ヶ月に達する日までに労働契約の期間が満了することが明らかでないこと」が要件です。有期雇用労働者で、当該期間に契約が更新される場合には、更新後の契約で計算することになります。
有期雇用労働者については、2022年3月末日までは、雇用期間が1年ない場合には、育児休業を取得できないとされていました。しかし、2022年4月より、雇用契約に関する期間についての制限が緩和され、雇用契約に関する期間についての要件が廃止されました。
なお、日雇労働者については、育児休業の制度はありません。
1-1-2.労使協定で育児休業対象外にできる場合
なお、労使協定によって、以下の要件を満たす労働者については、育児休業の申請があっても拒むことが可能となっています。
- 雇用されてからの期間が1年未満である場合
- 1年以内に雇用関係が終了する場合(子が1歳以降の休業の場合は6ヶ月)
- 週の所定労働日数が2日以下の場合
もし、この内容の労使協定がある場合には、要件が追加されることになるので注意が必要です。
1-1-3.育児休業の期間
育児休業の期間は原則として子が1歳に達するまでとなっています。
しかし、子供が保育所などに入所できないなどで、雇用の継続のために特に必要と認められる場合には、1歳6ヶ月になるまでの延長と、2歳になるまでの再延長が認められています。
1-2.育児休暇との違い
育児休業とよく似た用語として、育児休暇というものがあります。
育児休暇とは、育児をするための休暇全般を指すものです。
育児休業は育児のために休業することができる法律上の制度である一方で、育児休暇は会社が従業員に認めているあらゆる育児のための休暇を指し、必ずしも法的に認められているものではなく、会社が独自に設けているものも含むという違いがあります。
1-3.産前産後休業との違い
子供が生まれる前後の休暇については、産前産後休業があります。
産前産後休業とは、労働基準法65条で認められている出産前・出産後の休業のことをいいます。
労働基準法65条は次のことを定めています。
- 6週間以内に出産する予定の女性が請求した場合は就業させてはならない(双子など多胎妊娠の場合には14週間)
- 産後8週間を経過していない女性は就業させてはならない
としています。
両者とも、法律に定められている休業の制度である点は同様です。
しかし、育児休業が育児のために認められている休業の制度であるのに対して、産前産後休業は子供を出産する女性に認められている休業という点で違いがあります。
相談無料初回60分
少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。
2.勤続1年未満で育児休業は取れるのか
では、勤続1年未満で育児休暇は取れるのでしょうか。
この点について、現在では上述したように法律上の原則では、勤続1年未満でも育児休業は取得可能となっています。
そのため、勤続1年未満であっても、育児休業の取得は原則可能です。
もっとも、育児休業の例外には、労使協定で雇用されてからの期間が1年未満である場合には、育児休業を認めないことも可能です。
そのため、そのような労使協定が結ばれている会社であれば、勤続1年未満でも育児休業が認められないケースもあります。
相談無料初回60分
少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。
3.入社1年未満で育休が取れないケース
入社1年未満でも育休が取れないケースとしては次のような場合が挙げられます。
3-1.子が1歳6ヶ月に達する日までに労働契約の期間が満了することが明らか
有期雇用労働者である場合、入社1年未満の人が育休が取れないケースとしては、そもそもの育休のための要件である、子が1歳6ヶ月に達する日までに労働契約の期間が満了することが明らかでないこと、に該当しなければ育児休業は取得できません。
3-2.日雇労働者である
日雇労働者については、育児休業制度は適用されません。
そのため、育児休業は取得できません。
3-3.労使協定に該当する場合である
労使協定で例外を定めている場合には、育児休業の例外が認められます。
雇用されてから1年未満である場合には育児休業を認めないとする労使協定が結ばれている場合には、育児休業は取得できません。
また、1年以内に雇用関係が終了する場合(子が1歳以降の休業の場合は6ヶ月)週の所定労働日数が2日以下の場合という例外が定められており、これにあたる場合も同様に認められません。
相談無料初回60分
少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。
4.入社1年未満で育休が取れずに休んだらどうなるか
入社1年未満で育休が取れず、一方で会社に出社できずに休んでしまう場合どのような取り扱いになるのでしょうか。
4-1.会社がどのような制度を設けているかを確認
入社1年未満であり、育休が取れずに休むということは、法律上は通常の欠勤となります。
4-1-1.会社が育児休業を認めれば通常の育休と同様に扱える
労使協定に雇用期間が1年未満の人と育休を拒むことができるとしている場合でも、あくまで会社が拒むことができるとするだけで、育児休業を認めることもできます。
この場合には、通常通り育児休業を取得することができます。
会社に欠かせないスキルを持っているような場合や、会社が人手不足でなるべくならば戻ってきてもらいたいようなケースでは、会社に育休を認めてもらえないか交渉をしてみるのも良いでしょう。
4-1-2.育児休業とならない場合は欠勤となりこれを会社がどう取り扱うか
育児休業を認めてもらえない場合には、通常の欠勤となります。
雇用されてから6ヶ月が経過しており、年次有給休暇がある場合にはその利用をすることも検討しましょう。
欠勤となるので、欠勤が続けば労務の提供ができないとして、普通解雇の対象となります。
一方的に欠勤を続けているような場合には、懲戒事由に該当して懲戒解雇となってしまう可能性もあるので注意しましょう。
4-1-3.入社1年を経過した時点で申し出をすれば育児休業の取得は可能
なお、もうすぐ入社してから1年というようなケースもあるでしょう。
申し出をしようとおもったタイミングで雇用してから1年未満である場合でも、その後1年を経過した時点で申し出をすれば、育児休業の取得が可能です。
会社と交渉をして、1年を経過するまでを欠勤として、1年を経過してからの育児休業については育児休業として取り扱ってもらいましょう。
相談無料初回60分
少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。
5.出産育児に関してもらえるお金にはどのようなものがある?
出産や育児で休業・休暇を取得する場合、当然ですが給与を受けとることはできません。
しかし、出産・育児をする場合には次のようなお金をもらえる制度があるので、積極的に活用しましょう。
5-1.会社独自の制度
優秀な人材を会社に集め・定着を促すために、会社は独自の福利厚生の制度を設けています。
その一環で、出産や育児に関して、金銭の給付をしていることがあります。
会社に出産・育児に関する給付の制度がないかを確認してみましょう。
5-2.出産育児一時金
公的な給付の一つに、出産育児一時金があります。
出産育児一時金は、健康保険の被保険者及びその被扶養者が出産をした場合に支給される金銭で、出産にかかる費用負担を軽減するために設けられた制度です。
支給される金額は次の通りです。
令和5年4月1日以降に出産した場合 | 令和4年1月1日から令和5年3月31日までに出産した場合 | 令和3年12月31日以前の出産した場合 | |
---|---|---|---|
産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週以降に出産した場合 | 子1人につき50万円 | 子1人につき42万円 | 子1人につき42万円 |
産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合 | 子1人につき48.8万円 | 子1人につき40.8万円 | 子1人につき40.4万円 |
産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週未満で出産した場合 | 子1人につき48.8万円 | 子1人につき40.8万円 | 子1人につき40.4万円 |
子1人につき支給される金額なので、多胎出産をした場合には、生まれてきた子の数だけ受け取ることができます。
頻繁に改定されており、インターネット上では古い情報も散見されるので、支給金額については最新の情報を確認するようにしてください。
5-3.出産手当金
上述したように、労働基準法は産前産後休業の制度が認められており、会社も独自で産前産後の休暇の制度を設けていることもあります。
しかし、これらはあくまで休業・休暇を認めるのみで、休んでいる場合には給与の支払はありません(ノーワーク・ノーペイの原則)。
そのため、産前産後の収入減を補うために設けられているのが出産手当金です。
出産手当金は出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの期間、「(支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3」の金額が支払われます。
産前産後の収入減を補うために設けられている制度なので、会社から給与が出ている場合に支給はありませんが、支給されている金額が出産手当金で支払われる金額よりも少ない場合には差額を受け取ることが可能です。
5-4.育児休業給付金
育児休業をしている場合の収入減を補うための制度が育児休業給付金です。
育児休業給付金の支給要件は次の通りです。
- 2年間の間に11日以上働いた月が12ヵ月以上あること
- 育児休業期間中に賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと
- 就業日数が1ヶ月に10日以下であること
- 有期雇用契約の場合は同じ職場で1年以上継続して働いており、かつ、子が1歳6ヵ月に達する日までにその労働契約が満了することが明らかでないこと
以上の要件を満たす場合に、次のような給付を受けることができます。
- 育児休業に入ってから180日まで:休業開始時賃金日額×支給日数(30日)×給付率(67%)
- 育児休業に入ってから181日目以降:休業開始時賃金日額×支給日数(30日)×給付率(50%)
相談無料初回60分
少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。
6.育児休業・各種手当や妊娠・出産に関しての相談相手は?
育児休業や各種手当てなどをはじめ、女性が妊娠・出産する際には様々なトラブルが発生します。
もし、トラブルが発生してしまったときには、どのような相談先があるかを知っておきましょう。
6-1.人事の担当者に直接話してみる
人事の担当者に直接話してみましょう。
育児休業や各種手当については、その内容が非常に複雑である上に、頻繁に内容が改正されます。
今回問題となった育児休業についても最近(2022年4月)に1年以上雇用されていることが必要とする要件を撤廃しています。
小規模な会社の場合、あまり詳しくない人が他の業務とともに担当しているようなことも多く、これらの制度を正確に把握していないことがあります。
適切な対応を受けられてないのであれば、会社の人事担当者に制度をきちんと説明してみて、対応をしてもらうようにしてみましょう。
6-2.労働組合に交渉の手助けをしてもらう
会社と直接交渉するにあたって、労働者が会社と直接交渉をするのは、力関係を考えると非常に厳しいことが多いです。
そのため、労働組合に交渉の手助けをしてもらいましょう。
労働組合とは、労働者の地位を改善するための労働者が団結した団体をいいます。
一定の規模があれば会社に労働組合がありますので、相談を行って会社との交渉に力を貸してもらいましょう。
もっとも会社の労働組合は、会社側にたっているような場合もあります。
このような場合には、地域や職域で労働組合が結成されていることがあるので、相談して交渉の手助けをしてもらいましょう。
6-3.労働基準監督署
労使の関係でトラブルになった際の相談相手として、労働基準監督署が挙げられます。
労働基準監督署は、労働基準法などの労働関係法令が遵守されるように、会社を監督する役割をもった機関です。
そして、労働基準法など管轄している法律についての違反があった場合には、会社に対して立ち入りや質問、報告を求めるなどの権限を行使することが可能です。
これによって、個別のトラブルについても解決することが期待できます。
育児休業制度は労働基準監督署の管轄ではなく、都道府県労働局の管轄ですので、労働基準監督署は管轄の範囲外ですが、例えば妊娠・出産を理由とした解雇のように、労働基準法などの法律が関係しているトラブルがある場合には、適切に対応してくれることが期待できます。
6-4.総合労働相談コーナー
労働問題について管轄している都道府県労働局では、総合労働相談コーナーというものを設けており、労働者からの相談を受け付けています。
育児休業や各種手当てについての相談もこちらで行うことができます。
総合労働相談コーナーの多くは労働基準監督署の中にあるので、自分がトラブルになっている法律はどちらの管轄か迷ったときでも、労働基準監督署に出向いて相談をすれば、適切な窓口に案内してもらえるでしょう。
6-5.弁護士
労働問題については弁護士に相談することをお勧めします。
労働基準監督署や総合労働相談コーナーでも、労働問題について詳しい人に相談が可能です。
しかし、個別のトラブルについての解決について、当事者を代理して交渉をしてくれたり、裁判手続きを行ってくれるものではありません。
また、会社に対して法律を遵守するように働きかけるという手段のみしか行使できないので、個別の法律トラブルに介入することができません。
弁護士に相談をすれば、個別の法律トラブルの解決のための行動について相談し、依頼をすれば解決に向けて手助けしてくれます。
相談無料初回60分
少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。
7.育児休業や各種手当に関するトラブルを弁護士に相談するメリット
育児休暇や各種手当てに関するトラブルを弁護士に相談するメリットは次の通りです。
7-1.法的なサポートを得られる
弁護士に相談・依頼することで法的なサポートを得ることができます。
上述したように、育児休業を含め、妊娠・出産に関する休業・休暇・手当・解雇制限などの各種保護のための制度は、非常に細かい上に、様々な法律にまたがっていることもあり、非常に細かく難解です。
また、会社は本来通用しないような言い訳をすることがあり、その主張する内容が法的にどのように誤っているのかを、法律に照らして判断する必要もあります。
また、裁判や労働審判で争うような場合には、裁判手続きなどの手続きに関する知識も欠かせません。
さらに、ほかにも残業代の未払いや不当解雇という問題が発生していないかどうかをチェックしておくのは望ましいといえます。
弁護士に相談・依頼すれば、これらの法的なサポートを得られます。
7-2.弁護士に依頼をすれば会社との交渉や法的手続きを任せられる
弁護士に依頼をすれば会社との交渉や裁判などの法的手続きを任せることができます。
労働問題で会社とトラブルになるような場合、会社と非常に厳しい交渉を強いられることは珍しくありません。
妊娠している状態・出産直後の状態で、会社との厳しい交渉を独力で行うのは、肉体的にも精神的にも非常に厳しく、請求を諦める・不利な条件を飲んでしまう、ということに繋がりかねません。
弁護士に依頼すれば、相手との交渉を任せることや、法的手続きを任せてしまうことが可能で、安心して出産・子育てに取り組めます。
相談無料初回60分
少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。
8.育休や手当に関するよくあるQ&A
育休や手当に関するよくあるQ&Aには次のようなものがあります。
8-1.他のホームページと情報が異なる
他のホームページでは、雇用されてから1年未満である場合には育児休業ができない、出産育児一時金は42万円である、というような記載があることもあります。
しかし、2023年11月現在、育児休業は2022年に改正され、1年未満でも取得できる場合があり、また出産育児一時金については50万円となっています。
出産・育児に関する休業や手当については、その時の政策に影響されて細かく改正されることがあり、このページに記載されている情報も数年後には古くなっている可能性もあります。
厚生労働省や健康保険・雇用保険などのホームページの最新情報を確認するとともに、できれば現在どうなっているかをきちんと把握している専門家に相談することをお勧めします。
8-2.弁護士に無料で相談ができる
弁護士に相談する際には相談料を支払います。
しかし、市区町村の弁護士相談会や、法テラスでの相談を利用すれば、無料で相談をすることが可能です。
法律事務所リーガルスマートでは、初回60分無料の法律相談を承っていますので、お気軽にご利用ください。
相談無料初回60分
少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。
9.まとめ
このページでは、入社1年未満でも育児休業は取れるのか?どのような手当てをもらうことができるか、を中心にお伝えしました。
現在では法律の原則では、入社1年未満でも育児休業を取得することは可能ですが、労使協定で例外があります。
入社からの期間の問題だけではない要件を満たしている必要があったり、入社から短期間で育児休業をするような場合、退職勧奨やパワーハラスメントなどの問題も生じる可能性があるので、トラブルになりそうなときには早めに弁護士に相談するようにしましょう。
私たち法律事務所リーガルスマートは、労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
担当者
-
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
担当記事
- その他5月 16, 2024離婚のメリット・デメリットを男女別などケース別に弁護士が解説
- 親権・養育費5月 16, 2024再婚したら養育費はどうなる?減額するケースなどを弁護士が解説
- その他5月 16, 2024子なし夫婦が離婚するよくある理由や慰謝料などを弁護士が解説!
- 財産分与5月 15, 2024離婚時の財産分与で家はどうなる?状況別の対処法を弁護士が解説