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労働組合(ユニオン)は本当にやばいのか?弁護士が解説!

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「ユニオン」と聞いて、どのようなイメージがあるでしょうか。

Googleで「ユニオン」と検索すると、「やばい」というワードが、関連キーワードに表示されることがあります。

本記事では、ユニオンの基本知識や「ユニオン やばい」で検索されている理由、労働法との関係、トラブル解決のための弁護士の役割などを解説します。

1.ユニオンとは

ユニオンとは労働組合の一種で、合同労働組合(合同労組)のことです。

ユニオン(合同労組)は、中小企業の労働者など個人でも加入でき、業種や職業、地域別に組織されます。

日本の労働組合の主流は、大企業や中堅企業などにおいて企業ごとに組織された企業別労働組合でしたが、労働組合員数は減少傾向にあり、労働組合の推定組織率は16.5%(参照元:厚生労働省「令和4年労働組合基礎調査」)まで低下しています。

一方で、中小企業では、企業別労働組合が組織されない傾向にありました。

これは中小企業においては、使用者の力が強かったからであると思われます。

しかし、それでは中小企業の労働者が、使用者や上司からパワハラを受けたり、残業代未払いなどの不利益を受けたとき、誰にも相談できないことになってしまいます。

そんな企業別労働組合のない中小企業の労働者のために作られたのが、ユニオン(合同労組)です。

企業別労働組合が同じ会社の労働者から組織されているのに対し、ユニオンは違う会社の労働者から組織されているという特徴があります。

1-1.考えられる「ユニオン やばい」で検索されている理由

「ユニオン やばい」と検索されている理由として以下の点が考えられます。

  • 突然、ユニオンから突然団体交渉の申入れが来ることがある
  • 一般的な企業別労働組合と比べて、団体交渉のやり方が過激であると評されている

例えば、退職した元従業員がユニオンに加入して、不当解雇や時間外賃金未払いなどをユニオンを通して要求することがあります。

また、団体交渉に大勢の組合員が参加して、その席上で多くのヤジや罵声を浴びせたり、会社の周辺でビラ配布やビラ貼り、集会などを実施したりするなど、強い手段を用いることもあるようです。

推定組織率の低下とともに、企業別労働組合の活動が衰退化している一方で、ユニオンの活動は活発化しています。

企業の担当者としては、ユニオンの団体交渉のやり方に慣れていないため、「ユニオン(合同労組)は『やばい』」という表現が使われているのではないかと思われます。

ただし、団体交渉権は、日本国憲法にて認められた権利の行使であって、ユニオンやユニオンが行う業務自体には何らの違法性もありません。

そのため、一部の限られた事例に対する、極端なイメージのみが先行してしまって、「やばい」というような表現が使われているのではないかと思われます。

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2.労働組合に関する基本知識

既にご説明したとおり、ユニオン(合同労組)は、労働組合の一種です。

では、そもそも労働組合とはどのような組織なのでしょうか?

ここからは、労働組合について解説します。

2-1.労働組合とは何か

労働組合とは、労働者が団結して、労働条件の改善を図るなどの目的を実現するために組織する団体のことです。

日本国憲法第28条は、労働者の権利について、次のように規定しています。

〔勤労者の団結権及び団体行動権〕
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

出典:国立国会図書館公式サイト

日本国憲法第28条によって保障されているのは、次のような労働者の権利です。

  • 団結権
  • 団体交渉権
  • 団体行動権(争議権)

この3つの権利を「労働三権」と言います。

このうち、団結権とは「労働者が労働組合を結成する権利」を意味し、労働者は複数人で労働組合を結成することができます。

労働組合を結成する場合、行政機関による許可や認可などの手続きは必要ありません。

労働組合に加入している労働者は、「組合員」になります。

日本国憲法第28条に規定されている「労働三権」を保障するための法律として、労働組合法があります。

労働組合法には、労働組合の具体的な手続きや権利能力などが規定されています。

特に重要なのは、「不当労働行為」が禁止されていることです(労働組合法第7条)。

「不当労働行為」とは、使用者が労働者を組合員であることなどを理由に解雇などの不利益を与えることを言います。

労働組合法では、次のような「不当労働行為」を禁止しています。

  • 労働者が組合員であることを理由に解雇など不利益な取扱いをすること
  • 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒むこと
  • 労働組合の運営を支配し、もしくは介入すること
  • 労働委員会への申立てなどを理由とする不利益な取扱いをすること

2-2.労働組合の目的と役割

憲法で保障される団結権により労働者は、労働組合を結成することができます。

労働組合の目的と役割は、勤務先との交渉を通じて、労働条件や職場環境を改善し、労働者が働きやすい職場にすることです。

パワハラやサービス残業、給料の未払いなど、勤務先に不満があるため、苦情を訴えたいという従業員がいたとしても、1人で会社と交渉することはとても困難です。

しかし、労働組合に加入して、労働組合を通じて交渉すれば、会社側と交渉することが可能になります。

このように、労働組合は会社との交渉によって労働者の権利を守ることができるのです。

その結果、労働者の労働条件や職場環境は改善されるでしょう。

こうして、労働者の職場環境が改善されて、労働者の勤労に対するモチベーションが上がれば、会社に貢献することができるため、経営の安定にもつながります。

そのため、労働組合は実は会社にとっても必要不可欠な存在なのです。

2-3.労働組合の種類と特徴

労働組合には、いくつかの種類があります。

ここでは、労働組合の種類を解説するとともに、それぞれの特徴を解説します。

労働組合には、次の6種類があります。

  • 企業別組合
  • 産業別組合
  • 職業別組合
  • ユニオン(合同労組)
  • ナショナルセンター
  • 国際労働組合総連合(ITUC)

(1)企業別組合

企業別組合とは、企業や事業所ごとの労働者により結成された労働組合のことです。

つまり、企業別組合とは、企業を単位とした労働組合です。

企業別組合は、日本の労働組合の中で最も一般的な労働組合として知られており、職種に関係なく結成され、労働者が勤務先の企業に対して活動します。

企業別組合には、良くも悪くも会社の影響を受けやすいという特徴があります。

(2)産業別組合(産別)

産業別組合(産別)とは、産業ごとの労働者により企業横断的に結成された労働組合のことです。

産業別組合は、それぞれの産業が成長する中で、企業別組合に次いで組織された労働組合です。

企業別組合では、解決できない労働条件などを改善するため、法制度などの仕組みを変えていこうとするのが産業別組合です。

企業別組合では取り組むのが難しい不買運動やボイコットなどの活動がしやすいという特徴があります。

産業別組合は、欧米で一般的な労働組合です。

(3)職業別組合(職能別組合)

職業別組合(職能別組合)とは、同じ職業の労働者(主に職人)によって、産業や企業に関係なく結成された労働組合です。

自分たちのスキル(技能)による賃金などの労働条件を改善したり、利益を守ったりするために活動します。

19世紀のイギリスで発達して、日本でも結成されましたが、日本では珍しい存在と言えるでしょう。

(4)ユニオン(合同労組)

すでに解説しましたが、ユニオン(合同労組)は、中小企業の労働者などを中心に業種や職業、地域別に組織された労働組合です。

ユニオンが中小企業の労働者を中心に結成されているのは、中小企業では企業別組合が結成しにくいからです。

そのため、ユニオンには、個人でも加入できるという特徴があります。

ユニオンの活動は過激であると評されることもあるため、ときには「やばい」などと言われることがあるかもしれません。

しかしながら、ユニオン自体には何らの違法性はありません。

(5)ナショナルセンター

ナショナルセンターとは、全国の労働組合の中央組織のことです。

日本で代表的なナショナルセンターとしては、連合(日本労働組合総連合会)や全労連(全国労働組合総連合)が挙げられます。

基本的には、全国の産業別組合を中心に組織されており、全国的運動を展開しています。

(6)国際労働組合総連合(ITUC)

国際労働組合総連合(ITUC)とは、世界の国々のナショナルセンターから成る労働組合の国際組織です。

ITUCは、世界の労働者の人権や労働基準の確立、労働組合権の確保などの労働問題を解決するため、国際的な労働運動を行っています。

ITUCには、日本の連合も加盟しています。

なお、ITUCの本部は、ベルギーのブリュッセルにあります。

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3.労働組合と労働法の関係

労働組合については、労働組合法という法律があると解説しました。

では、労働組合とその他の労働法は、どのような関係にあるのでしょうか。

ここでは、労働組合と労働法の関係について、解説します。

3-1.労働法とは何か

「労働法」とは、労働問題に関する法律全体の総称です。

そのため、実は、「労働法」という法律自体は存在せず、労働契約法、労働基準法や労働組合法など労働問題に関する法律をまとめて「労働法」と言います。

通常、使用者が労働者を雇用する場合、雇用契約を締結します。

しかし、立場が強いのは、労働者よりも使用者であるため、労働者にとって不利な労働条件で契約されてしまうおそれがあります。

通常、労働者は使用者から支給される給料を生活の糧としているため、労働条件について、強く主張することができない傾向にあります。

そのため、労働法が存在し、労働問題に関する多くの法律によって、労働条件や労働組合などについてさまざまな規定が設けられて、労働者の保護が図られています。

つまり、労働法は基本的には、労働者を保護するために存在しているのです。

(1)労働法の主な法律

労働法にはさまざまな法律がありますが、労働法の基本となるのが、「労働三法」と呼ばれる3つの法律です。

・労働基準法

労働基準法は、労働時間や有給休暇などの労動条件について、最低基準を定めた法律です。

・労働組合法

労働組合法は、労働者が組織する労働組合について定めるとともに、日本国憲法第28条で定められている労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)を具体化するための一般法です。

・労働関係調整法

労働関係調整法とは、労働者・使用者間の労働争議(ストライキなど)の予防・解決を図り、その役割を担う労働委員会の裁定に関する手続きやルールを定めた法律です。

労働三法以外にも、労働に関する法律は、次のとおり数多く存在します。

  • 労働安全衛生法
  • 職業安定法
  • 最低賃金法
  • 障害者基本法
  • 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
  • 雇用保険法
  • 健康保険法
  • 厚生年金保険法
  • 国民健康保険法
  • 国民年金法
  • 介護保険法  など

3-2.労働法と労働組合の関係

労働法と労働組合の関係は、目的と手段の関係です。

労働者の権利保護を定めた労働法の規定を実現することを目的として、労働組合が結成され、労働組合はその手段として機能するからです。

労働法には、労働者の権利を保護するため、労働条件や労働組合、労働争議の予防・解決などの詳細が規定されています。

しかし、労働法に基づき、労働条件などについて、労働者が使用者に対して交渉する場合、個人で交渉するのはとても難しいことです。

なぜなら、労働者の多くが使用者から支給される給料によって生活しているため、労働条件などについて、強く主張することができないからです。

そこで、労働者にとって必要になるのが労働組合です。

労働者が労働組合に加入して、労働組合を通じて使用者側と交渉すれば、労働条件や職場環境の改善などの目的を果たすことができます。

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4.労働組合のトラブル事例

ここでは、労働組合のトラブル事例について解説します。

4-1.労働組合に関する事例

A会社の従業員であるBさんは、長時間にわたる労働を強いられていたにもかかわらず、毎日定時である9時~18時までのタイムカードを打刻するよう指示されていました。

また、Bさんが有給休暇の申請をしても、上司から「皆がこんなに忙しくしているのに、よく有休なんて申請できるね」などと言われ、受理をしてもらえませんでした。

このような会社の対応に疑問を持ったBさんは、A社を退職するとともに、これまでの未払賃金を支払うよう求めるとともに、有給休暇を取得できなかったことに対する慰謝料を求めるため、ユニオン(合同労組)を通じて、団体交渉の申入れを行いました。

ユニオンでは、早期にBさんのために交渉を申し入れてくれ、有給休暇については上司がこれを断ったとする事実が認められないということで認められませんでしたが、未払賃金については、Bさんが独自につけていた労働時間管理アプリに基づく支払がなされました。

4-2.労働組合に関するトラブル事例

望まない配置転換を強制されたとして、C社に対して、ユニオンを通して配置転換の無効を訴えていたDさんでしたが、C社とユニオンの交渉は難航していました。

そのため、Dさんは、ユニオンとの打ち合わせにおいて、「こんな会社であればもう働きたくもないですよ」などと言っていたところ、ユニオンがDさんへの明確な説明や確認もなく、C社に対し「●か月分の給与相当額を支払ってもらえるのであれば、退職する」と伝え、C社がこれに応じて、退職手続きが進んでしまいました。

このような退職の意思を表明するつもりがなかったDさんは、退職手続きを撤回したいと法律事務所に相談することとなってしまいました。

5.労働トラブル解決のための弁護士の役割

労働トラブルを解決するためには、弁護士の役割がとても重要です。

ここでは、労働トラブルを解決するために、弁護士が果たす役割について解説します。

5-1.労働トラブルを解決するために、弁護士が果たす役割

労働組合は、組合員の労働トラブルにつき、会社に対し団体交渉を申し入れ、これを解決することができることがあります。

そして、会社は、この団体交渉を正当な理由なく拒むことは出来ません。

しかしながら、労働組合が行うのはあくまでも団体交渉であり、労働者全体の利益のために活動するものです。組合員個人の権利保護を保障してくれるものではありません。

また、団体交渉は、あくまで交渉です。会社と労働者との間で折り合いがつかない場合には労働トラブルを終局的に解決することはできません。

すなわち、労働組合は、組合員を代理して、民事裁判や労働審判等の法的解決手続を採ることはできないのです。

この点、弁護士であれば、交渉はもちろん、依頼者の代理人として民事裁判を提起し、又は労働審判を申し立てることが可能です。

そのため、弁護士に依頼をした場合には、労働者個人の労働トラブルを終局的に解決することが可能です。

5-2.弁護士に相談すべき労働トラブル

上記のとおり、労働組合では、話合いによる解決ができない場合には、労働トラブルを終局的に解決することができません。

そのため、話合いが困難であると思われる労働トラブルについては、弁護士に相談しましょう。

具体的には、以下のような労働トラブルについては、弁護士に相談するのが良いでしょう。

  • 不当解雇
  • 不当な配置転換
  • 不当な降格人事(特に減給を伴うもの)
  • タイムカード等の明確な証拠がない残業代の請求
  • 会社が管理監督者等の不支給理由を説明している場合の残業代の請求
  • 残業代の金額が多額となる場合
  • 在職強要トラブル

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6.労働組合トラブルに備えた法的対策

労働組合トラブルに備えた法的対策について、雇用主が取るべき対策について解説します。

6-1.労働組合のトラブルに備えて、雇用主が取るべき対策

最後に、雇用主の立場から、労働組合のトラブルに備えて、どのような対応を採るべきかについて解説します。

まず、労働組合から団体交渉の申入れがあった場合、雇用主には、誠実に対応することが求められます。

誠実な対応とは、労働組合から団体交渉の申入れがあったら、原則として応じるということです。

正当な理由があれば、団体交渉の申入れを拒否することもできますが、雇用主の判断で団体交渉を拒否すると、不当労働行為になってしまうおそれがあります。

そのため、団体交渉に応じるか否かについては、顧問弁護士や労働組合トラブルに詳しい弁護士に依頼することをおすすめします。

ほかにも、会社は、組合員であることや労働委員会への申立てを理由とした労働者に対する不利益な取扱い、労働組合の運営を支配し、または介入することなどが禁止されています。

このような不法労働行為に該当しないようにすることも最大限の注意が必要です。

6-2.その他、企業が労働トラブルを発生させないために必要な対策

雇用主は、労働組合のトラブルに備えて、法的対策を講じる一方で、組合員との円滑なコミュニケーションや組合員の要望に対する適切な対応を取るなど、組合員の意見を把握して解決する努力をする必要があります。

このような対応をすれば、職場で起きている問題を把握できるので、把握した問題を解決することにより働きやすい職場環境を実現することができます。

その結果、労働組合とのトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

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7.まとめ

この記事では、「ユニオンがやばい」とはどういう意味かについて解説するとともに、労働組合について、基本知識や労働法との関係、トラブル解決のための弁護士の役割などを解説しました。

ユニオンに限らず、労働組合にて解決することが望ましいトラブルもあれば、弁護士に相談すべき労働トラブルもあるでしょう。

すくなくとも、ユニオンが「やばい」ということではありません。

ただ、労働組合に加入する労働者は減ってきており、なにか労働トラブルに巻き込まれたときにどこに相談すればいいのか悩む方も少なくないと思います。

そこで、頼りになるのが、労働問題トラブルに詳しい弁護士です。

今では、初回の相談を無料で受ける法律事務所が多く存在します。

そこで、労働トラブルに巻き込まれたときには、まずは法律事務所に電話して、弁護士に相談に乗ってもらうのが良いでしょう。

私たち法律事務所リーガルスマートは、初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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