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民事裁判にかかる訴訟費用と弁護士費用について弁護士が解説!

民事裁判にかかる訴訟費用と弁護士費用について弁護士が解説!

労働問題で会社と交渉をしても一向に請求に応じてもらえない場合には、法的な手段を取る必要があります。

法的な手段の典型的なものが民事裁判なのですが、民事裁判とはどのようなものなので、いくらくらいお金がかかるものなのでしょうか。

本記事では、民事裁判とはどのようなものか、裁判にかかる訴訟費用や、弁護士費用などについて弁護士が解説します。

1.民事裁判とは

民事裁判とは、私人間に発生した紛争についての裁判手続をいいます。

裁判とは、当事者の紛争について、国の機関である裁判所に判断してもらって解決する手続きです。

私人間の権利・義務についての争いの解決を法律の解釈・適用によって解決する、という国の作用を司法権といいます。

我が国において司法権は裁判所が行使をすることになっており、個人の権利について争いがある場合は、民事裁判を起こして最終的な解決をしてもらいます。

1-1.「民事裁判」と「刑事裁判」の違い

裁判の種類には民事裁判のほかに刑事裁判というものがあります。

刑事裁判とは、犯罪を犯したと疑われる人について、本当に犯罪を犯したのか・どのような刑罰を科すか、を決定する裁判をいいます。

憲法31条で人に対して刑事罰を科すためには法律に定める手続きが必要とされ、刑事事件については憲法36条で刑事事件において裁判を受ける権利を保障しています。

その手続きが刑事裁判で、国家の刑罰権を課すための手続きであり、私人間の権利義務についての紛争を解決する手続きとは異なります。

1-2.「民事裁判」と「行政裁判」の違い

裁判の種類として、行政裁判という種類の裁判もあります。

行政裁判とは、行政庁の行為が違法・不当である場合に、その行為の取り消しや損害賠償を求めて争うなどの裁判をいいます。行政訴訟と呼ばれるほうが多いです。

例えば、宅建業の許可を得ようとして申請をしたところ、許可が得られなかった場合に、許可しなかったものについて取り消しを求めて争うような場合です。

また、個人の権利の救済以外に、いわゆる住民訴訟・当選訴訟や、行政代執行のような機関訴訟のようなものも行政裁判に含まれます。

私人間の権利に関する紛争を解決する点で、民事訴訟とは異なります。

1-3.民事裁判の当事者

民事裁判を起こす場合、民事裁判を起こした方を原告・民事裁判の対象になった方を被告と呼びます。

控訴をした場合には、控訴をした方を控訴人、控訴をされた方を被控訴人と呼びます。

上告をした場合には、上告をした方を上告人、上告をされた方を被上告人と呼びます。

そのため、例えば不当解雇を争って労働者が会社を相手に訴訟を起こした場合、労働者側が原告・会社が被告となります。

会社が1審で敗訴をして控訴した場合には、会社が控訴人で労働者が被控訴人となります。

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2.民事裁判の種類

民事裁判には次のような種類があります。

2-1.通常訴訟

民事上の紛争を解決するための民事訴訟の一般的な手続きをいいます。あらゆる種類の私人間の紛争解決を行います。

2-2.手形小切手訴訟

手形や小切手の支払い期日に支払いがされなかった、いわゆる不渡りの際に起こされる訴訟を、手形小切手訴訟といいます。

手形・小切手という高い流通性を持つ特殊な決済手段であるため、証拠の種類が制限されていたり、期日が1回で終わるなどの簡易な手続きとなっています。

労働問題で用いられることはありません。

2-3.少額訴訟

60万円以下の金銭債権の請求をするための簡易な訴訟として、少額訴訟があります。

期日が1回で終わる、簡易な訴訟という特徴があります。

労働問題においては、残業代請求をする際に、請求金額が60万円以下であるような場合に利用されます。

2-4.人事訴訟

離婚・認知など、私人間のトラブルの中でも家族に関する争いを解決するための訴訟を人事訴訟と呼んでいます。

通常の民事訴訟と異なる柔軟な解決が必要であるため、人事訴訟法という法律で通常の民事訴訟と異なる紛争解決を行っています。

労働トラブルで利用することはまずありません。

2-5.行政訴訟

裁判の種類でご紹介した行政裁判は、当事者間の権利義務を確定するにあたって当事者の一方が国や地方公共団体・行政庁であるようなケースがあります。

このような場合の訴訟は、民事訴訟とはことなる行政訴訟として分類され、行政事件訴訟法に基づいて手続きが進行します。

労働者が勤務中に事故に遭うなどの労災事案では、労働基準監督署が労災給付の判断をしますが、例えば労災が支給されない場合に労働者が起こす裁判は労災不支給決定の取消しを求める行政訴訟となります。

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3民事裁判に必要な費用の内訳や相場

民事裁判に必要な費用の内訳や相場について確認しましょう。

3-1.訴訟費用の内容と金額

まず、手続きを起こすための費用が必要となります。

民事訴訟を起こすための費用としては、申立手数料と予納郵券が挙げられます。

3-1-1.申立手数料(収入印紙)

裁判を起こすのに必要な費用が申立手数料です。

申立手数料は収入印紙を提出する訴状に貼付して納付するので、収入印紙が必要であると紹介されていることもあります。

申立手数料は、民事訴訟費用等に関する法律3条に規定されており、民事訴訟に請求する訴額に応じて次のように定められています。

訴訟の目的の価額が100万円までの部分その価額10万円までごとに 1,000円
訴訟の目的の価額が100万円を超え500万円までの部分その価額20万円までごとに 1,000円
訴訟の目的の価額が500万円を超え1,000万円までの部分その価額50万円までごとに 2,000円
訴訟の目的の価額が1,000万円を超え10億円までの部分その価額100万円までごとに 3,000円
訴訟の目的の価額が10億円を超え50億円までの部分その価額500万円までごとに 10,000円
訴訟の目的の価額が50億円を超える部分その価額1,000万円までごとに 10,000円

となっています。

訴訟の目的の価額というのは、例えば残業代を請求する場合の請求金額のことで、例えば300万円の請求をする場合には、

  • 訴訟の目的の価額が100万円までの部分はその価額10万円までごとに1,000円
  • 訴訟の目的の価額が100万円を超え500万円までの部分その価額20万円までごとに 1,000円

この2つのルールにより、20,000円となります。

申立手数料については、裁判所のホームページに早見表があるので、こちらを参照しましょう。

手数料額早見表(pdf)|裁判所ホームページ

なお、解雇の無効を争うように、金銭請求を目的としない場合・金額での算定が困難な場合には、訴訟の目的の価額は160万円とみなされます(民事訴訟費用等に関する法律4条2項)。

3-1-2.予納郵券

裁判所は、被告に対して訴状を送達したり、原告・被告に対して書面を送るなどします。

その際に必要な郵券(郵便切手)について、事前に納めておく必要があります(民事訴訟費用等に関する法律13条)。

この事前に納める郵券のことを予納郵券と呼んでいます。

予納郵券は裁判所によって異なり、例えば東京地方裁判所に通常訴訟を起こす場合には、原告・被告が1名である場合には6,000円分を、500円× 8枚、100円×10枚、84円× 5枚、50円× 5枚、20円×10枚、10円×10枚、2円×10枚、1円×10枚の組み合わせで納めます。

原告・被告いずれかの当事者が1人増えるごとに、2,388円分、500円×4枚、100円×2枚、84円×2枚、10円×2枚の組み合わせで納めます。

裁判所ごとに金額と切手の組み合わせが異なるので注意が必要なのですが、通常は裁判所にある売店でセットになって販売されているので、これを利用しましょう。

また、東京地方裁判所のように、現金で納付することができる場合があります

東京地方裁判所で現金で予納郵券をおさめる場合、当事者の追加がある場合は2,000円を加算することになるので予納郵券で納めるより安く済みます。

なお、予納郵券については、利用せずに余ったものは事件終了後に返してもらえます。

3-2-3.訴訟費用の余裕がない場合の訴訟上の救助

これらの訴訟費用は、請求する額によっては多額になり、費用を納められないために裁判を利用できないというケースも発生しえます。

そのため、民事訴訟法82条以下で、これらの費用の支払いを免除することができる、訴訟上の救助という制度が認められています。

訴訟上の救助が認められるためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払うお金がない、費用の支払をすると生活に著しい支障が生じる
  • 勝訴の見込みがある

3-2.弁護士費用の内容と金額

裁判をするには、法律の知識や民事裁判の進行や手続きにおけるルールなどに習熟している必要があります。

そのため、多くのケースでは弁護士に依頼して裁判の代理をしてもらうことがあります。

この場合の弁護士費用の内容と金額の相場について確認しましょう。

3-2-1.弁護士費用の種類

弁護士費用と一口にいっても次のような種類があります。

  • 法律相談をするために必要な相談料
  • 依頼をする際に支払う着手金
  • 依頼した案件の処理に成功した場合に支払う成功報酬
  • その他の費用

それぞれの費用について確認しましょう。

3-2-2.相談料

弁護士に法律相談をするのに必要な費用を相談料(法律相談料)といいます。

30分5,000円~が相場となっていますが、市区町村の法律相談や法テラスを利用すれば無料で相談することも可能です。

法律事務所リーガルスマートでも初回60分であれば無料相談を承っているので、お気軽にご相談ください。

3-2-3.着手金

弁護士に依頼する際に支払う金銭のことを着手金と呼んでいます。

着手金の相場としては、日本弁護士連合会が規定している旧報酬規定を参考に報酬を決めている弁護士が多いです。

旧報酬規定によると、

  • 経済的な利益の額が300万円以下の場合:8%
  • 300万円を超え、3000万円以下の場合:5%+9万円
  • 3000万円を超え、3億円以下の場合:3%+69万円
  • 3億円を超える場合:2%+369万円

※最低金額10万円

と、経済的な利益の額によって、割合によって計算します。

例えば、400万円の残業代の請求をする場合には、以下から38万円となります。

  • 300万円までの部分は8%=24万円
  • 100万円の部分については5%+9万円=14万円

大きな額の支払いになるので、分割での支払いでも良い事務所もあるので、法律相談をする際に確認をしてみましょう。また、法テラスの立替払い制度が利用できるケースもありますので、この点も併せて弁護士に相談してみてください。

3-2-4.成功報酬

依頼した案件の処理に成功したときに弁護士に支払う費用が成功報酬です。

成功報酬も日本弁護士連合会の旧報酬規定を参考にしている事務所が多く、次の通りとなっています。

  • 経済的利益の額が300 万円以下の場合:16%
  • 300 万円を超え3000 万円以下の場合:10%+18 万円 
  • 3000 万円を超え3 億円以下の場合:6%+138 万円 
  • 3 億円を超える場合:4%+738 万円

上記のように、400万円の残業代の請求をする場合には、以下から76万円となります。

  • 300万円までの部分は16%=48万円
  • 100万円の部分については10%+18万円=28万円

成功報酬については、相手から回収したお金がいちど弁護士の事務所に振り込まれるので、成功報酬を差し引いた金額が依頼者に弁護士から振り込まれることになります。

3-2-5.その他の費用

その他、弁護士が連絡のために電話・FAX・郵送などをする実費、裁判所に出頭するための交通費が実費で必要です。

また、裁判所に出頭する場合には日当として、半日の場合には3万円~5万円・1日の場合には5万円~10万円の費用が必要です。

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4.民事裁判の費用は誰が払うのか

民事裁判の費用は、原則として敗訴した人が支払うことになります。

判決文において、訴訟費用の負担についても裁判所が定め、通常は敗訴者がこれを負担することになります。

5.民事裁判の手続きの流れ

民事裁判の手続きは次のような流れで行います。

  • 原告が訴状を提出する
  • 被告に訴状を送達する
  • 準備書面・答弁書を提出する
  • 口頭弁論・和解の期日
  • 判決

5-1.原告が訴状を提出する

原告が訴状を裁判所に提出します。

訴状の提出は管轄の裁判所に直接持参しても良いですし、郵送で提出してもかまいません。

訴状が提出されると裁判所で書面の内容を確認し、不備がなければ訴状を受理します。

提出後に第一回口頭弁論期日の希望日を裁判所と調整します。

5-2.被告に訴状を送達する

裁判所が被告に訴状を送達します。

送達には郵便局の書留の一種である特別送達という方法が用いられます。

被告が訴状を受け取り訴状が送達されると、民事訴訟が係属したという状態になり、裁判が始まります。

訴状の送達と同時に第一回口頭弁論期日が記載された呼出状が一緒に届けられます。

5-3.答弁書・準備書面を提出する

口頭弁論期日に向けて、被告は答弁書を作成し、その後は双方が必要に応じて準備書面を提出します。

提出された準備書面の内容は、訴訟で主張する内容として取り上げられることになるので、慎重に記載します。

必要に応じて証拠を提出するときには、証拠説明書を添付することも必要となります。

5-4.口頭弁論・和解の期日

口頭弁論期日に出廷します。

多くのケースで訴状・答弁書・準備書面の内容を陳述すると述べるのみであることが多いのですが、裁判所から、不明点や明らかにして欲しい点、和解の可能性などについて質問があることがあります。

不明点や明らかにして欲しい点などについて、次回の口頭弁論期日までに準備書面や証拠を提出します。

併せて、和解のための話し合いをする期日も設けられます。

5-5.判決

口頭弁論期日を繰り返し、裁判所が判断するのに十分な主張・立証が行われると、裁判は結審し、判決の言い渡し期日が定められます。

そして、判決言い渡し期日において判決が言い渡され、民事裁判は終了します。

不服がある場合には、控訴・上告を行うことになります。

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6.民事裁判を有利に進める方法

民事裁判を有利に進める方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

6-1.法令・手続きに関する理解

裁判は法令に基づいて行われます。

そのため、法令に関する理解は不可欠です。

また、民事裁判は民事訴訟法などのルールに則って行われます。

そのため、民事裁判に関する手続きについての理解も不可欠です。

民事裁判を有利にすすめるためには、法令・民事裁判に関する深い理解が欠かせません。

6-2.事実関係を正確に把握する

事実関係を正確に把握します。

裁判においては、自分の主張を通すためには、法律上の要件に合致することを主張することになります。

例えば未払いの残業代の支払いを求めるためには、次のようなことを主張します。

  • 上司から残業の指示があった
  • 残業をした
  • 会社が残業代の支払いをしない

このときに、残業の指示に関する事実関係や、残業をしたこと及びその時間などの事実関係が曖昧である場合、残業の指示があったのか・残業をしたのか・何時間残業をしたのか、などの事実認定を裁判所ができなくなります。

その結果最悪のケースでは事実が確認できずに、敗訴することも考えられます。

事実関係を正確に把握する必要があります。

6-3.証拠の保全・収集は確実に

証拠の保全・収集は確実に行いましょう。

民事裁判では、当事者が主張する事実について争いになった場合、その事実の認定には証拠が用いられます。

残業代の支払い義務について争いになっている場合に、残業をしたことを立証できる証拠がない場合には、残業はしていないと認定されてしまいます。

トラブルになっていることに関する証拠の保全・収集は確実に行いましょう。

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7.民事裁判に関するよくあるQ&A

民事訴訟に関するよくあるQ&Aとしては次のようなものがあります。

7-1.民事裁判で要した費用は相手に請求できる?

上述したように、民事裁判に関する費用のうち、印紙代等については、相手に負担させることが可能です。

ただし、弁護士費用については相手に負担させることは原則としてできません。

しかし、事案によっては相手に弁護士費用を負担させることができることもあり、労働トラブルについては、プレス作業を行う工場で両手の親指を除く4指を失う事故に巻き込まれた労働者が、使用者の安全配慮義務違反を主張した事案の最高裁判決で、弁護士費用も相手に支払わせることを認めています(最高裁判所平成24年2月24日判決)。

7-2.もし民事裁判の判決を無視したらどうなるの?

民事裁判の判決を無視するとどうなるのでしょうか。

例えば、判決で金銭の支払い義務が会社に認められたにも関わらず、これを無視している場合、会社の財産に対して強制執行をすることが可能です。

会社の保有している動産や負動産を差し押さえて売却して金銭を回収したり、会社の預金や売掛金を差し押さえて回収することが可能です。

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8.まとめ

このページでは、民事訴訟についてお伝えしました。

任意の交渉ではトラブルの解決ができない場合に利用するのが民事訴訟で、相手がこれに従わない場合には勝訴判決をもらって強制執行をすることも可能となります。

民事訴訟を有利にすすめるためには、法律・手続きに関する理解が不可欠です。

また、労働トラブルについては、裁判のほかにも労働審判・支払督促などの解決方法もあります。

まずは弁護士に相談をして、確実にトラブル解決ができるようにしましょう。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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