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会社に休職制度がない?拒否された際の対処法を弁護士が解説!

会社に休職制度がない?拒否された際の対処法を弁護士が解説!
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会社は従業員に対して、さまざまな福利厚生や保障制度の適用を受けられるように配慮しなければなりません。

「休職制度」もその1つですが、会社によってはこの休職制度を明確に設けていないこともあります。

従業員としては、何らかの事情があれば休職制度を利用したいところですが、会社に制度がない場合はどうすれば良いのでしょうか。

そこで本記事は、会社から休職制度の利用を拒否された際の対処法について労働問題に強い弁護士が解説します。

1.そもそも休職制度とは

休職制度とは、業務外での疾病や事故による怪我など、主に従業員側の個人的な事情により長期間にわたって就労を期待し得ない場合において、従業員としての身分を保有したまま一定期間において就労義務を免除するという特別な制度を指します。

休職制度は労働基準法において定められているわけではなく、各会社において就業規則として定めるのが一般的です。

昨今は仕事や家庭の事情などによってストレスを抱える社会人も多く、それを原因として体調を崩してしまうケースも少なくありません。

どのような病気かにもよりますが、日々の仕事に耐えられないほどの影響を受けてしまうこともあります。

そうなると治療が必要になりますが、場合によっては入院が必要であったり、治療の妨げになるような就労を病院側から避けるように指示されることもあるでしょう。

このような状況では通常通り働くことは難しく、治療に専念するためにも仕事を休まなければなりません。

これが有給休暇を消化するだけで解決できれば良いのですが、病気や怪我の状態によっては有給休暇の設定期間だけでは足りなくなることもあります。

そうなると会社を退職しなければいけないと思いがちですが、会社が休職制度を設定している場合であれば、必要な資料等を提出することによって一時的に会社を休職し、治療が完了してから復職するという方法を選択できるのです。

一度退職してしまう場合だと同じ会社に再就職できる保証はありませんが、休職からの復職であれば制度が有効に作用している限りは従業員としての立場を維持したまま会社を休むことができます。

会社としても優秀な従業員であれば手放したくないはずなので、休職制度を設定しておくことによって従業員が安心して働ける環境を用意することは採用にも良い影響を与えるでしょう。

もちろん、休職制度を悪用することは許されることではありませんが、休職制度を利用することが妥当な状況になった場合は上司に相談しながら休職制度の適用を検討しましょう。

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2.休職制度のメリットとデメリット

休職制度には、従業員側と会社側それぞれにメリットとデメリットの両方が存在します。

2-1.休職制度の従業員側のメリット

休職制度を利用することの従業員側のメリットは、まず「治療や休息に専念できる」という点が挙げられます。

働きながらだと、なかなか休むための時間を十分に確保できない場合もあるでしょう。

とくに、病名が付くような体調不良を呈している場合は、退社後の翌朝までの時間だけでは十分な回復は難しくなります。

休職制度を利用することで体を休めるための十分な時間を確保できれば、しっかりと体を休めて体調を戻してから仕事に復帰できるのです。

また、雇用の地位を確保できるという点もメリットになります。

治療に専念するために会社を退職すると、転職先を見つけるまでの収入源がなくなり、無職という不安定な立ち位置になってしまいます。

休職制度は会社での雇用の立ち位置をそのまま維持できるので、回復してからすぐに復職ができます。

2-2.休職制度の従業員側のデメリット

休職制度の利用には「収入が大幅に減少する」というデメリットがあります。

休職中の給料に関しては、各会社の就業規則でルールが決められており、全く給料がもらえないケースもあるのです。

また、雇用の状態は維持できるものの、休職制度を利用して会社から離れてしまうことで、社内での立場が悪化してしまう可能性もあります。

休職中はほかの従業員に負担が割り当てられるため迷惑をかけることは避けられませんし、昇進に影響する可能性も否定できません。

こうした考え方は人それぞれで異なりますが、少なからず休職制度を利用することに良い顔をしない従業員がいる可能性があることについては、あらかじめ理解したうえで休職制度を利用しなければなりません。

2-3.休職制度の会社側のメリット

休職制度の設定・適用は、会社側にも一定のメリットをもたらします。

まず「人材の流出を避けられる」という点です。

もし、体調不良などを理由として従業員に退職されてしまうと、貴重な人材が社外に流出してしまうことになります。

休職制度であれば会社に籍を残したまま休んでもらうことができるので、回復した後は復職してもらうことができるのです。

また、体調が回復した後は生産性が高まっている可能性が高いため、きちんと休んで治療に専念するほうが会社にも利益をもたらします。

また、福利厚生の充実により従業員のモチベーションが高まるだけでなく、社会に「従業員を大切にしている会社である」というアピールをすることも可能です。

休職制度は従業員の保護につながる制度で、従業員はいざというときには休職制度を利用し安心して仕事に打ち込むことができます。

また、休職制度の設定は会社の福利厚生が充実する要因になるので、社会に対して福利厚生の充実している会社であると評価してもらうことができ、採用活動の充実さにも影響することになるでしょう。

2-4.休職制度の会社側のデメリット

休職制度の会社側のデメリットとしては、まず「社会保険料の負担は継続する」という点が挙げられます。

会社は雇用している従業員の社会保険料の一部を負担しなければなりませんが、休職中の従業員は会社に籍があるので、休職中であっても社会保険料は負担しなければなりません。

また、足りなくなった人員の確保にも問題が生じることになります。

休職するということは、その従業員が本来であれば担当するべきであった仕事を他の従業員に割り振らなければなりません。

人員が足りなければ採用を強化すれば良いと考えるかもしれませんが、募集をかけても常に採用に応募してくれるとは限りません。

また、休職制度の大きな問題として、人員の穴埋めが難しいという点も挙げられます。

休職制度は「復帰を前提とする制度」であるため、休職中の従業員は回復すればいつかは会社に復職します。

その間、足りない人員を雇用によって穴埋めした場合、休職中の従業員が復職したら、人手が余って人件費の問題が浮上する可能性があるのです。

それを防ごうとすると、既存の従業員に負担を割り振らなければならなくなり、ほかの従業員からの不満が噴出するリスクを抱えなければならなくなります。

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3.会社に休職制度がない場合どうすればよいのか

労働基準法や労働契約法においては、休職制度の設定に関する明確な規定はありません。

つまり、日本の法律は日本の会社に対して、休職制度を設けることを義務付けていないのです。 

休職制度を設けるかどうかについては、各会社の判断で自由に決められます。 

就業規則に休職制度を定めた場合、それが労働契約の一部になり、会社は休職制度を適用することが原則として義務付けられます。

会社に休職制度がない場合、何らかの理由で今後の就業が困難になった時点で退職または解雇となる場合が多いです。 休職制度そのものが労働関係の法律で定められているわけではないので、これを理由に解雇となっても法律上はとくに問題はありません。

法律上において休職制度を設ける義務はありませんが、「傷病休職」については認めている企業も多いようです。 

ただし、公平性の観点からその取得条件については就業規則などで定めておく必要があります。

また、休職する原因となった病気や怪我の原因が「業務によるもの」である場合には、休職ではなく労災扱いになりますので注意しましょう。

労災扱いになるかについては会社側と争う可能性もあり、病気や怪我を原因として退職の必要性が出てきた場合は、弁護士に相談することを視野に入れておくことをおすすめします。

不当解雇であれば解雇の撤回や損害賠償請求などを会社側に認めさせることができるので、交渉の代行や訴訟手続きなどについては弁護士に一任すると、心身への負担を抑えつつ今後の生活への悪影響を最小限に抑えることができるでしょう。

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4.会社が休職を拒否することが違法となるケース

法律上は、日本の会社は休職制度を設けなくても違法であるとは扱われません。

しかし、場合によっては従業員からの休職の申請を拒否することが違法であると扱われるケースがあるのです。

では、どのような場合に違法性が問われることになるのでしょうか。

4-1.休職制度の要件を満たしている場合

会社の就業規則において休職制度が明記されており、就業規則に明記されている「休職制度を利用するための条件」を満たしている従業員に対しては、会社側は休職制度の申請について拒否することはできません。

労働契約または会社の就業規則において休職制度が設けられている場合は、従業員がその要件に従って休職制度を利用することは、労働契約上において従業員の権利として認められます。

そのため、休職制度の要件を問題なく満たしているにもかかわらず、会社が従業員による休職の申し出を拒否することは契約違反に該当するため、違法性が問われることになるのです。

もし、この状況において休職制度の適用を拒否された場合は、従業員側が就業規則等において定められている要件を満たしていることを証明し、必要な場合は裁判で争うことになります。

訴訟手続きは裁判所に提出する資料の作成などの手続きに時間や手間がかかるので、心身ともに疲れている状況では、さらに体調を悪化させるリスクを高めることになるでしょう。

そのため、諸々の手続きを代行してくれる弁護士に相談することがおすすめです。

4-2.労災によって従業員が働けない場合

従業員が休職を申請したい場合に、その原因となるような病気や怪我の原因として労災が認めらると、会社側は従業員の休職申請を拒否することはできません。

従業員が業務中に負傷または疾病にかかった場合は、会社の費用負担において必要な治療・療養を認めなければならず、これは労働基準法第75条において定められています。

(療養補償)

第七十五条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

② 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。

労働基準法

労災による怪我や病気が原因で従業員が働けない状態になってしまった場合に、労働者の休職を拒否することは上記の療養補償の義務に違反します。

法律による定めがない場合でも、仕事中に病気や怪我をしたのに会社側が十分なケアをしないことは、社会通念上許されることではありません。

もし、会社側が労災を認めない場合は、労災による休職が必要であることを裁判で争うことになるので、これも弁護士に相談して適切な対応をとる必要があります。

4-3.不当な手段により労働を強制した場合

休職を申し出ている従業員に対して、上司や会社側が不当な手段で従業員に対して労働を強制した場合は、会社側は休職を拒否することができなくなります。

会社は、暴行や脅迫、監禁その他の精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって従業員の意思に反して労働を強制することは禁止されており、これは労働基準法第5条によって定められています。

(強制労働の禁止)

第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

労働基準法

仮に、会社が従業員の休職申し出を拒否できる場合でも、職場まで無理やり連れてきたり、脅迫などをして出社せざるを得ないようにすることは、この条文に反することになるので違法となります。

また、会社側が従業員に対して行った仕打ちの内容によっては、ほかの法律に抵触して刑事罰に問われる可能性があることも念頭に置いておきましょう。

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5.会社が休職を拒否することが認められるケース

上記のように、一般的に休職制度の適用に関して会社側が拒否することは違法性が問われる可能性がありますが、場合によっては逆に会社側が休職の申請を拒否することが認められるケースもあります。

会社の休職制度は、就業規則などにおいて明記されていることが多いですが、同時に「休職制度を利用するための要件」についても就業規則で定められていることが多いのです。

たとえば、休職制度の利用の根拠となるような病気や怪我に関する医師の診断書の提出が必要であったり、休職前の一定期間において申請が必要であったり、内容は会社によって異なりますが無条件に休職制度を利用できないように何らかの条件を設定しています。

休職制度が悪用されると会社は人員不足に陥ってしまいます。しかも、休職期間中は労働の対価がないにも関わらず社会保険料の負担もしなければならないため、会社側には多少の負担がかかるでしょう。

休職制度の適用条件を満たしていれば会社側は申請を拒否することはできないので、体調が悪化して就労が難しくなった場合は、まず就業規則における休職制度の要件をきちんと確認しておく必要があります。

就業規則の明記内容によっては自身での判断が難しいケースも珍しくありません。条件を満たしているかの判断が難しい場合には、就業規則のコピーを用意して弁護士事務所に持参して相談してみることをおすすめします。

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6.会社に休職を拒否された場合の対処法

会社に休職を拒否された場合にとれる手段としては、大きく分けて2種類あります。

  • 労働基準監督署に相談する
  • 弁護士に相談する

いずれの手段を利用するにしても、休職制度の要件を満たしていることを証明するために、就業規則等のコピーと休職する原因となる病気や怪我を証明するための診断書を用意しておく必要があります

労働基準監督署に相談することで是正勧告をしてもらうことが期待でき、悪質であると判断された場合は刑事事件として捜査が入るケースもあります。

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7.休職の拒否から発展した労働問題を弁護士に相談、依頼するメリット

休職制度の申請について拒否された場合は、場合によっては弁護士に相談して事態の解決に向けて行動する必要もあるかもしれません。

弁護士に依頼することで費用はかかりますが、それでも休職制度の適用について弁護士に相談することにはさまざまなメリットがあるのです。

まず、弁護士に相談すれば交渉を有利に進めることができます。

弁護士は事態の解決に向けて会社との交渉を代行してもらうことができますが、会社側としては一従業員と交渉するよりも弁護士と交渉するほうが不利であると考えられるでしょう。

弁護士は法律と交渉の専門家ですから、高度な法律の知識とベテランの交渉術により会社と交渉を進めることができます。

会社としては弁護士と争うことはデメリットが大きいので、交渉の時点で会社に休職制度の適用を認めさせる可能性が高くなります。

また、今後について訴訟に発展する可能性があることを考慮しても、弁護士に相談することにはメリットがあります。

会社と裁判で争うにあたっては、さまざまな準備や手続きが必要になります。

休職制度の利用を考えるほど体が弱っている状況で、そのような大変な行動をとることは体調の悪化につながりかねません。

弁護士に依頼すれば必要な裁判手続きを代行してもらうことができるので、その間は心身に負担をかけることなく、弁護士からの吉報を待つことができます。

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8.休職の拒否に関するよくあるQ&A

最後に、休職制度に関してよくある質問についてまとめてみました。

8-1.会社に休職制度がありません、違法ではないのですか?

労働基準法など、日本の法律では休職制度を設けることを義務付ける法律は存在しません。

つまり、会社が休職制度を設けていなくても違法性が問われることはありません。

8-2.休職制度を拒否されました。労働基準監督署に相談すれば解決しますか?

休職制度の適用に問題がないことを証明できれば、会社に対して是正勧告をしてくれる可能性があります。

また、その際に悪質であると判断された場合は、刑事事件として扱われて警察の捜査が入る可能性もあります。

8-3.休職制度を拒否されました。弁護士に相談したほうが良いでしょうか?

弁護士に相談することで、会社との交渉を有利に進めることができるでしょう。

また、訴訟手続きに移行しなければならない場合でも手続きを代行してくれるので、面倒な手続きを一任することができます。

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9.まとめ

休職制度は法律で義務付けられているものではありませんが、就業規則に記載されている場合や労災が認められる場合には会社は拒否できない可能性が高いです。

それでも会社がこれを拒否する場合は労働基準監督署に相談したり弁護士に相談・依頼するなどして、事態の解決に努めることをおすすめします。

私たち法律事務所リーガルスマートは、休職に関するトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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