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労働基準監督署に相談できることや相談方法を弁護士が解説!

労働基準監督署に相談できることや相談方法を弁護士が解説!
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労働問題で悩んだ際に、どこに相談するか色々調べている際に、有力なものとして労働基準監督署を挙げる人は多いです。

では、そもそも労働基準監督署とはどのような組織で、何の相談ができて、労働問題の悩みにどう役に立つのでしょうか。

本記事では、労働基準監督署とはどのような組織か、どんな内容の相談ができるのかなどについて弁護士が解説します。

1.そもそも労働基準監督署とは

労働基準監督署とは、厚生労働省の地方支分部局であり、労働基準法などの法令に基づいて、事業所の監督などを行う機関をいいます。

労働基準監督署は、厚生労働省設置法22条に規定されており、都道府県労働局の所掌事務の一部を分担すると定められています。

都道府県労働局は、厚生労働省設置法21条に規定されており、厚生労働省の所掌事務のうち、厚生労働省設置法4条1項目41号~47号・50号・53号~73号・99号・104号・109号までに掲げる事務を分掌するとしており、上記の項目に規定されているのは労働に関するものです。

なお、同じように都道府県労働局の事務を分掌する機関として、公共職業安定所(ハローワーク)があり、こちらは雇用保険に関する事務を取り扱っています。

労働基準監督署はよく、労基(ろうき)・労基署(ろうきしょ)などと省略して呼ばれることもあります。

1-1.労働基準監督署の役割

労働基準監督署の基本的な役割には、次のようなものがあります。

  • 労働基準法その他の労働者を保護するための法律に基づいて事業場に対する監督
  • 労基法違反の刑事事件の捜査
  • 就業規則の検認・届け
  • 労災保険に関する事務
  • 労働安全衛生法等による免許の選任

労働基準監督署は、労働基準法などの労働者保護のための法律に基づいて、事業所に対する監督を行います。

事業所に対する監督の手段として、例えば労働基準法では次のような権限が認められています。

  • 事業場や寄宿舎その他の附属建設物に立ち入る
  • 帳簿及び書類の提出を求める
  • 使用者・労働者に対して尋問を行う
  • 使用者・労働者に対して報告させる・出頭を命ずる

また、労働基準法違反については刑事罰が課される場合があるのですが、この場合には労働基準監督管は司法警察員(警察)としての役割を担うことになっています。

さらに、就業規則については届け出る必要があるのですが、この事務も労働基準法に関する機関である労働基準監督署が担っています。

労働基準法に関するもののほかに、労働基準監督署は労災保険・労働安全衛生法に関する事務を取り扱うという役割があります。

1-2.労働基準監督署では相談を受け付けている

労働基準監督署では労働関係の法令違反についての相談を受け付けています。

例えば、労働基準法104条2項は、会社の労働基準法違反について、労働者が申告できることを規定しています。

これを受けて、労働基準監督署では、労働関係法令の違反についての相談を受け付けています。

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2.労働基準監督署に相談できる労働トラブルとは

労働基準監督署に相談できる労働トラブルとしては、労働関係に関する法令についてのトラブルが挙げられます。

労働関係に関する法令として、次のようなものが挙げられます。

  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 最低賃金法
  • 賃金の支払の確保等に関する法律
  • じん肺法

以上のような法律違反の例としては次のようなものが挙げられます。

  • 賃金・残業代が支払われない
  • 休日・休憩時間を適切に与えてもらっていない
  • 違法な長時間労働をさせられている
  • 違法な解雇が行われた
  • 労働安全衛生法に定められた措置を行ってくれない
  • 最低賃金を下回っている
  • じん肺法に基づく健康管理措置を怠っている

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3.労働基準監督署では対応が難しい労働トラブルとは

労働基準監督署では対応が難しい労働トラブルとしては、セクハラ・パワハラなど、労働基準監督署が権限を持っておらず、都道府県労働局に対応してもらうことになります。

ただし、労働基準監督署でもこれらのトラブルに対して解決策を示すことは可能で、かつ都道府県労働局の労働相談コーナーは労働基準監督署の中にあることが多いので、労働基準監督署としては対応が難しい場合でも、相談してみても良いでしょう。

また、残業代請求などの、個別の請求については、労働基準監督署ではなく直接の請求・裁判を通じて行うため、労働基準監督署では対応ができません。

なお、職場での人間関係のトラブル・恋愛関係に発展してのトラブルは、それ自体は労働基準監督署でも都道府県労働局でも対応は難しいといえます。

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4.労働基準監督署に相談するメリットとデメリット

労働基準監督署に相談するメリット・デメリットとしては次のようなものがあげられます。

4-1.メリット

労働基準監督署に相談するメリットとしては次の3つが挙げられます。

4-1-1相談するのに費用や制限がない.

相談をするのに費用や制限がないことはメリットでしょう。

たとえば弁護士に相談をすれば、30分5,000円程度の法律相談料を支払わなければならない場合があります。

また、無料で相談が可能な市区町村や法テラスの法律相談などでは、1回の相談は30分程度と制限がされています。

労働基準監督署に相談する場合には、これらの費用負担や相談にあたっての制限を気にせずに利用することができます。

4-1-2.労働に関する法律に詳しい人が相談に乗ってくれる

労働に関する法律に詳しい人が相談に乗ってくれます

労働基準監督署は労働基準法等の労働に関する法律を専門に取り扱う機関です。

そのため、労働基準監督署で相談をすれば、労働に関する法律に詳しい職員が相談に乗ってくれます。

仮に労働基準監督署で解決できない問題であったとしても、解決までの道筋について示してくれることも期待できます。

4-1-3.会社に対して働きかけることで問題が解決することもある

会社の行為が労働基準法などの法律に違反している場合、労働基準監督署は会社に対して、臨検や報告をさせるなどの権限を行使して、法令の遵守を求めるように働きかけます。

この働きかけによって、労働トラブルが解決することもあります。

4-2.デメリット

一方で労働基準監督署に相談するデメリットとしては次のようなものが挙げられます。

4-2-1.直接労働トラブルに介入する機関ではない

労働基準監督署は、労働基準法などの法令を守るように指導する機関であり、直接個別の労働トラブルに介入する機関ではありません。

そのため、特定の人が残業代の請求をした場合に、その人に対して残業代を支払えと命じるわけではなく、会社としてすべての従業員に残業代の支払いをするように指導します。

その指導に応じて、会社が改善策を取る中で、間接的に個別の労働トラブルが解決することはありますが、直接相手の財産を差し押さえて回収するといったことは、労働基準監督署は行いません。

4-2-2.労働基準監督署がすぐに対応してくれるとは限らない

労働基準監督署は必ず動いてくれるとは限らないことがあります。

労働基準監督署は労働関係の法律に違反する場合には、調査をして行政指導などを行うのが本来あるべき姿です。

しかし、労働基準監督署は昨今はマンパワーの不足が深刻化しています。

そのため、軽微な案件であるような場合や、証拠も何もない状態で相談をしても、すぐに対応してくれない可能性があります。

4-2-3.会社から不利な取り扱いを受ける可能性は否定できない

会社から不利な取り扱いを受ける可能性を否定できません。

例えば、労働者が労働基準法に違反している事実を労働基準監督署に報告した場合、その申告に対して解雇などの不利益な取り扱いは禁止されています(労働基準法104条2項)。

これに違反して、不利益な取り扱いをしたような場合は、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処することが規定されています(労働基準法119条1号)。

しかし、もともと労働基準法に違反するような会社であれば、こういった規定を無視することは考えられますし、仕事を多く割り振る・あまり割り振らないなどの分かりづらい嫌がらせを受けるような可能性も否定できません。

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5.労働基準監督署への相談方法と受付時間

労働基準監督署に相談する方法と受付時間などについて確認しましょう。

5-1.労働基準監督署への相談方法

労働基準監督署への相談方法には次の3つがあります。

5-1-1.訪問して相談する

労働基準監督署に訪問して相談します。

相談は基本的には会社の所在地を管轄する労働基準監督署に対して行います。

特に事前の連絡等は不要です。

5-1-2.電話で相談する

労働基準監督署に電話をして相談します。

例えば東京都の場合なら、有楽町の有楽町総合労働相談コーナーに繋がるフリーダイヤルが設置されています。

相談したい労働基準監督署のホームページを確認して、電話での相談窓口があるかを確認してみましょう。

5-1-3.メールを送付する

労働基準監督署に対して行うものではないのですが、厚生労働省のホームページに「労働基準関係情報メール窓口」が設置されています。

参考:労働基準関係情報メール窓口」 送信フォーム|厚生労働省ホームページ

ここから送信された内容は労働基準監督署や労働局に共有され、ケースによっては本人に確認の連絡が来て対応をしてくれることがあります。

なお、こちらについてはあくまで情報提供のためのツールで、返信をしてもらうなどの機能があるわけではないので注意しましょう。

5-2.労働基準監督署の相談受付時間

労働基準監督署は平日の午前9時から午後5時まで相談が可能です。

ただし、労働基準監督署にある総合労働相談コーナーでは土日祝日や夜間でも相談できる場合があるので、管轄の労働基準監督署のホームページを確認してみましょう。

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6.労働基準監督署に相談・申告する際の流れ

労働基準監督署に相談・申告する際の流れについて確認しましょう。

6-1.相談に向けて準備を行う

相談に向けての準備を行います。

労働基準監督署で1から順番に整理しながら相談するとなると、労力がかかったり、後日もう一度調べて相談しなければならないということも発生しえます。

そのため、相談に向けて準備を行います。

準備については後述します。

6-2.管轄の労働基準監督署を調べて訪問・連絡をする

管轄となる労働基準監督署を調べましょう。

管轄となる労働基準監督署は、会社の所在地がある労働基準監督署です。

管轄が一覧になっているページが、都道府県労働局ごとに設置されていることがあるので、そこで調べましょう。

または、会社の所在地の市区町村名と「労働基準監督署」という検索キーワードで検索をして見つけることができることもあります。

たとえば東京都港区であれば、三田労働基準監督署が管轄となります。

管轄の労働基準監督署が判明すれば、訪問して相談したり、電話窓口が設けられている場合には電話で連絡して相談をしましょう。

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7.【トラブル別】労働基準監督署に多く寄せられる相談内容

労働基準監督署には次のような相談が寄せられています。

7-1.採用要件や労働条件に関するもの

採用要件や労働条件に関して、労働基準監督署で次のような相談が行われています。

  • 給与について事前の説明と実際の説明が異なる
  • 残業時間があまりにも長すぎる
  • 18歳未満がつくことが禁止されている仕事につかされている
  • 休日や休憩を適切にもらえない

7-2.解雇に関するもの

解雇に関する相談は労働基準監督署で次のような相談が行われています。

  • 労働基準法等で解雇が無効であるとされているのに解雇された
  • 整理解雇をされたが適法なのか
  • 懲戒解雇をされたが適法なのか

7-3.賃金に関するもの

賃金に関する相談は労働基準監督署で次のような相談が行われています。

  • 賃金の支払いをしてもらえない・遅れている
  • 最低賃金を下回っている
  • 残業代の支払いをしてもらえない

7-4.退職に関するもの

退職に関する相談として、次のような相談が行われています。

  • 退職させてもらえない
  • 退職を迫らている
  • 退職理由証明書を交付してくれない
  • 退職金の支払いがない

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8.労働基準監督署に相談する前に準備すること

前述したように、労働基準監督署に相談する前には、相談を効率的に行うために、相談前に準備を行うのが望ましいです。

次のような準備をしておくのが良いでしょう。

8-1.事実関係をまとめる

まず、労働トラブルになるに至った事実関係をまとめましょう

例えば、解雇されたとしてトラブルになっている場合に、解雇に至るまでにどのような事実関係があったのかを把握しなければ、解雇が違法なのかどうか判断できないことがあります。

労働者が仕事が原因で怪我をした・病気になった、復職してから30日間の解雇禁止が問題になっている場合には、怪我・病気の期間や復職したのがいつかがわからないと解雇が違法かどうかの判断ができません。

また、整理解雇である場合には、会社の業績や解雇回避義務を尽くしたか、従業員に説明をしたかなどを総合的に判断するため、整理解雇になった前の経緯を詳しく調べる必要があります。

相談にあたってはこれらの事実関係をしっかり整理して、労働基準監督署で説明しやすいようにしておくのが良いでしょう。

8-2.現在収集できている証拠をチェックする

事実関係をまとめたならば、これらをきちんと証明できるか、持っている証拠をチェックしましょう。

メールなどで保存している場合には、労働基準監督署への相談で渡せるようにコピーをしておくのが良いでしょう。

整理した事実ごとに証明できる証拠があるかを確認しておけば、いざトラブル解決のための行動を取る際に、これから収集をしなければならない証拠資料の確認が容易となるでしょう。

8-3.どのような結果となることを求めているか

労働基準監督署に相談をして、どのような結果となることを求めているかを再度確認してみましょう。

労働基準監督署は調査をした上で会社に対して労働関係の法令を遵守するように指導を行います。

そのため、退職後の未払い残業代の請求をしたい・不法解雇なので解決金という形で金銭を請求して終わらせたいという場合には、労働基準監督署への相談は不向きです。

一方で、今働いている最中であり、労働関係法令を会社に守ってもらって、職場環境を良くしたいという相談については、労働基準監督署から会社にはたらきかけてもらうほうが向いています。

トラブルを解決してどのような結果となることを求めているかを確認し、労働基準監督署に相談すべき事例であるかどうかを確認してみましょう。

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9.労働基準監督署に関するよくあるQ&A

労働基準監督署に関するよくあるQ&Aは次の通りです。

9-1.労働基準監督署に通報したら、会社にバレてしまいますか?

労働基準監督署に通報したら、会社にバレるのでしょうか。

労働基準監督署に通報する内容によっては、会社にバレる・疑われる可能性はあります。

例えば、残業時間の上限に関する規定を守って居ないのが、会社全員ではなく特定の部署の数人のみであるような場合があるとします。

この場合に会社に労働基準法違反があったとして会社に対して労働基準監督署が通報があったと働きかけがあった場合、通報をしたのは特定の部署の数人の誰かであると考えるでしょう。

申告する内容次第では会社にバレる可能性は否定できないといえます。

ただし、労働基準監督署に申告したことを原因とする、解雇その他の不利益な取り扱いは禁止されています。

もっとも、事実上の不利益取扱いをされる可能性は否定できません。

9-2.労働基準監督署に匿名のメールでも相談できるか?

労働基準監督署への相談で匿名のメールでも相談できるのでしょうか。

労働基準監督への相談は訪問もしくは電話のみで、メールで相談することはできません。

メールでの相談については、上述の通り、厚生労働省が情報提供という形で取り扱っており、情報提供のフォームでは匿名を希望するかについて、次の3種類に分けて希望をチェックすることが可能です。

  • 匿名だが、情報提供内容(メールの内容)を明らかにしてよい
  • 匿名だが、情報提供があったこと(メールがあったこと)のみ明らかにしてよい
  • 匿名の上、メールがあったことも明かさないでもらいたい

メールの内容を明らかにしてよいを選択すると、厚生労働省から情報提供を受けた労働基準監督署が、メールの中身が明らかになると個人が特定されるようなケースもあるので注意が必要です。

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10.まとめ

本記事では、労働基準監督署に相談できることや、相談方法などについてお伝えしました。

厚生労働省の出先機関である労働基準監督署は、労働関係法令を会社に遵守させる役割を持っており、法律で認められている権限を用いて会社に働きかけます。

労働基準監督署に相談することで、労働関係法令の専門家に相談することができ、ケースによっては、労働基準監督署から会社への働きがけに応じて会社が改善をすることで、労働トラブルが解決する可能性もあります。

しかし、残業代請求や不当解雇問題の解決を目指すような、個別の請求については、労働基準監督署で相談に乗ることができても、解決まではできませんので、個別の請求に関する解決ができる弁護士に相談しましょう。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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