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契約社員が契約途中で退職できるケースや注意点を弁護士が解説!

契約社員が契約途中で退職できるケースや注意点を弁護士が解説!
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期間の定めのある雇用契約で、「契約社員」と呼ばれる雇用形態で働いている方も最近は多いです。

通常の正社員やパートの場合は自身の意思で退職することができますが、契約期間が厳格に定められている契約社員の場合はどうなのでしょうか。

本記事では、契約社員が契約期間中に退職できるかどうかについて労働問題に強い弁護士が解説します。

1.契約社員は契約期間中に退職ができるのか

まず、原則として契約社員は契約期間の途中でその会社を退職することはできません。

契約社員は、正社員が期間を定めずに雇用されるのに対して、有期契約での雇用契約である点が正社員と大きく異なり、多くの場合は1年ごとに更新するかどうかを判断されます。

正社員は、ケースバイケースでさまざまな仕事を任されたり異動を命じられることもありますが、契約社員の場合は雇用時の雇用契約の内容に示された仕事内容に限定されることが多いです。

一般的に正社員のほうが収入や社会的な地位が安定しやすいですが、契約社員として働いている中で会社から評価されれば、そのまま正社員として登用されるケースも珍しくありません。

そのような契約社員ですが、雇用契約では契約期間が明確に定められているので、その期間中はその会社で仕事をしなければなりません。

そのため、一部の例外を除いて自己都合で退職を希望することはできず、無断欠勤などで強制的に会社から離れようとする場合は状況によって会社から損害賠償請求をされてしまう危険性があります。

前述のとおり、特別な事情がある場合は契約期間中の契約社員でも退職ができる可能性があるので、どうしても契約期間中に退職をしたい場合には弁護士に相談することをおすすめします。

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2.契約社員が契約期間中に退職できるケース

先ほども触れましたが、原則として契約期間中に契約社員が自己都合で退職を申し出ることは認められていません。

しかし、一部の事情がある場合においては、契約期間中でも退職できる可能性があります。

2-1.会社と合意できた場合

契約期間中の退職はできませんが、会社側と交渉して退職について合意が成立した場合は退職できます。

会社側は、契約期間が満了していない契約社員からの退職の申し出については、これを拒否することが可能です。

しかし、あくまでも「拒否ができる」というだけで、会社側が退職を認めれば契約義務違反には該当しません。

もちろん、会社側は拒否する権利もあるので、交渉しても必ずしも合意が成立するというわけではありません。トラブルになるよりも、合意のもとで円満に退職したほうが安心して会社を辞めることができます。

会社側が退職に合意した場合は、無断欠勤等により勝手に辞めた場合と比較して損害賠償請求されるリスクが少ないこともメリットです。

合意に至るかどうかは交渉の内容次第です。具体的にいうと「なぜ会社を辞めなければならないのか?」など、その理由の合理性や妥当性が問われます。虚偽の申告は危険なので正当な理由を正直に話して納得してもらうことが大事です。

2-2.職場でハラスメント被害があった場合

会社側が退職に納得する理由の1つとして「ハラスメント被害の存在」が挙げられます。

昨今、社内でのセクハラ・パワハラ・モラハラは社会問題として危険視されており、しっかりとした会社であれば、社内のハラスメント行為は厳しく罰せられたり、専門の部署を立ち上げるなどの対処をとっています。

しかし、「契約社員である」という理由から正社員が良くない考え方でハラスメント行為に及ぶケースは決して珍しくありません。

ハラスメント行為で仕事を邪魔されるケースがあり、心身にダメージを負うことで怪我や精神疾患を発症するリスクもあるので、その職場で働き続けることは問題です。

会社によっては、そのような問題について相談できる窓口が設置されているケースもあるので、まずは相談して、それでも解決しない場合は会社に退職を申し出てハラスメント行為について納得してもらう必要があります。

会社側としては労働者が安全な環境で従事できるように配慮すべき義務を負っており(安全配慮義務)、ハラスメントを放置することは会社側の義務違反(債務不履行)があるとして、契約解除することが可能になります。

ただし、「何がハラスメント行為に相当するの」か「本当にハラスメント行為に相当するような行為であるか」は判断が難しいこともあるので、話がこじれる場合は弁護士に相談することをおすすめします。

2-3.勤続1年以上が経過している場合

労働基準法には、以下のような規定があります。

第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

労働基準法

つまり、契約社員として働き始めてから1年以上が経過している場合は、仮に契約期間中であっても退職を申し出て退職することができます。

もし条件に該当する場合は、上司に退職したい旨を伝えてください。

そして、契約社員とはいえ会社に勤める社会人なので、退職する際には十分な期間を設けて申し出ることを忘れないでください。

2-4.ケガや病気などで仕事を続けるのが難しい場合

契約社員が退職を認められる理由としては「ケガや病気」も含まれます。

通常は、軽度のケガや風邪などの病気であれば、数日の休暇を申し出れば済みます。

しかし、仕事に致命的な支障が出る重度のケガや、長期の治療を必要とする重病の場合は、これ以上仕事を続けることが困難であることから会社が退職を認めるケースが多いです。

これを理由に退職を申し出る場合には医師の診断書が必要になることもあるので、通院時に準備してもらうことをおすすめします。

ただし、「どの程度のケガや病気であれば退職が認められるか」は会社次第なので、場合によっては交渉が必要になる場合もあります。

2-5.家族の介護が必要になった場合

本人のケガや病気以外にも、家族の介護が必要になった場合も退職が認められる可能性があります。

これを理由に退職を申し出る場合、家族介護の証明書の提出を求められる場合があるので、必要に応じて準備しておきましょう。

なお、家族の介護が理由の場合は退職以外の選択肢も選べるかもしれません。

会社によっては、従業員の事情を汲んで柔軟に対応してくれる場合もあり、勤務時間等を調整することで介護と仕事を両立できる可能性もあります。

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3.契約社員がすぐに退職できるやむを得ない理由とは

上記のような理由があっても、退職を申し出てすぐに退職できないケースも多いです。

逆に、事情によっては即日で退職できる可能性もあります。

たとえば、事故や病気によって入院している場合は出勤できない状態なので、会社側も「出社しろ」とは言えないです。

また、上司などのハラスメント行為が過剰で、極端な話ですが命の危険性もあるような場合は即日の退職が認められる余地も十分にあります。

このような緊急性の高い状況であれば、会社側も従業員を保護管理する義務があり、無用なトラブルを避けるためにも即日退職が認められる可能性があります。民法628条において、「やむを得ない事由」があるときは直ちに契約解除することが認められています。

逆に、そのような緊急性が認められない状況の場合は、仮に退職が認められても申し出から退職までにある程度の期間がかかるケースも多いです。

それについては、「会社側がどういった判断をするか」によって異なるので、どうしても即日退職したい場合は交渉のプロである弁護士に相談することをおすすめします。

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4.契約社員が円満退職するためのポイント

会社側とトラブルになったり損害賠償請求されないためには、可能な限り円満な形で会社を辞めることが重要です。

4-1.早めに相談する

退職を希望する場合は、できるだけ早めに上司などの責任者に相談しましょう。

会社側としても、退職する従業員の穴埋めのために人員の調整をする期間が必要になります。

もし、急に「退職したい」と申し出ても、会社側としては仕事が回らなくなって困ります。

その結果、交渉が難航する可能性があるので、退職を希望する日からさかのぼって余裕をもって相談すると希望日に退職できる可能性が高まるでしょう。

4-2.1年経過するのを待つ

退職の交渉がうまくいかなかった場合は、契約期間1年以上の経過を待ってから退職を申し出るのも1つの手段です。

前述のとおり、契約期間中の退職は原則として認められませんが、1年以上が経過している場合は法律により退職が認められます。

1年未満の場合は会社側は退職の申し出を拒否することが認められていますが、1年以上経過している場合はこれを拒否することは原則としてできません。

この場合も退職希望日までに余裕をもって相談しておくことで、円満に退職できるでしょう。

4-3.就業規則を確認する

契約社員が円満に退職するためには、「就業規則」の確認が欠かせません。

契約社員の退職のルールは会社ごとに異なりますので、就業規則に記載されているルールに則って退職を申し出るのが一番の方法です。

就業規則には契約社員の退職時の退職金や満了金についてのルールも定められていますので、もし契約満了まで働いたほうがメリットが大きいと感じたら満了時まで働くという選択肢についても考えることができます。

4-4.事情がある場合はすべて正直に話す

退職するにあたって、やむを得ない事情がある場合は正直に話しましょう。

場合によっては話しにくい事情があるかもしれませんが、事情を知らなければ会社側も退職について納得できないこともあります。

会社側に納得してもらうことで円満な退職が期待できるので、事情があれば全部正直に話したほうがスムーズに退職できる可能性が高まります。

4-5.会社の繁忙期は避ける

これは社会人のマナーとも言えますが、よほど緊急性がない場合は会社の繁忙期に退職を申し出ることは避けておきましょう。

繁忙期ということは会社も人手が必要な時期なので、そのような時期に「辞めたい」と言っても会社側も納得しにくいです。

仕事をしていれば会社の繁忙期は理解できるはずなので、繁忙期は避けて可能な限り余裕のある時期に退職を申し出たほうが円満に退職できます。

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5.契約社員が退職するときにもらえるお金

契約社員が退職するにあたっては、以下のお金がもらえる可能性があります。

  • 失業保険
  • 満了金
  • 退職金

ただし、これらすべてを受け取れるわけではありません。

たとえば「契約満了金」についてですが、これは「契約満了時まで働いてくれた感謝の意味で支払われるお金」という性質があるので、契約期間中に退職した場合は受け取ることができません。

また、「退職金」については法律上その支払い義務は存在せず、就業規則に記載があれば支払われますが、契約社員は対象外になっているケースも多いです。

ただし、一部の会社は契約社員も退職金の支払い対象になっていることがあるので、退職を考えている場合は就業規則をしっかりと確認しておきましょう。

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6.契約社員の中途退職は損害賠償請求の対象となる

ケースバイケースですが、契約社員が契約期間中に退職する場合、会社から損害賠償請求される可能性があります。

契約社員も会社の利益になる仕事に従事するので、その人員を失えばその分だけ会社の利益を損失することになります。

特に、無断欠勤などで会社の合意を得ずに勝手に退職して会社に大きな損失を与えた場合は、会社から損害賠償請求される可能性が高まります。

どのくらいの金額を請求されるかは従事していた仕事内容などによって異なりますが、おそらく相応の規模になるでしょう。

これを回避するためには円満に退職することが重要になるので、前述の方法を駆使して会社と交渉し、退職に納得してもらって、トラブルなく会社を退職することが重要です。

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7.契約期間中の退職が認められなかった際の対処法

1年未満の状態の契約期間中の契約社員は、原則として途中で退職することはできません。

しかし、どうしても辞めたい事情がある方も多いでしょう。

ここで重要なことは、最後まで誠意のある対応を一貫することです。

たとえば、会社側が退職を認めてくれないからといって無断欠勤を続けたり、退職代行業者に依頼する行動は避けなければなりません。

前述のとおり、契約期間中に退職した契約社員に対しては、会社側から損害賠償請求をされる可能性があります。

特に、上記のような強硬手段に出た場合は会社側に損害を与える可能性が高くなるので、具体的な金額はケースバイケースですが裁判になって多額の賠償金を支払う可能性があります。

そもそも雇用契約時に契約内容に合意しているので、契約期間の途中で退職することはその信頼を裏切る行為であることを念頭に置いておく必要もあります。

しかし、ケガなどの治療が必要であったり、社内でのハラスメント行為に耐えられないなど、すぐにでも会社を辞めたい事情がある方も少なくありません。

そのような事情がある場合は、まずは上司に退職について相談して、会社側と交渉を始めることが重要です。

会社側としても従業員側にやむを得ない事情があれば汲みとってくれる可能性があり、ハラスメント行為のような問題が社内にある場合はその原因となる従業員に対して何らかの対策を講じてくれる可能性もあります。

交渉によって円満に問題を解決できたり、円満に退職できれば損害賠償請求のリスクは大きく下がるので、強硬な手段に訴えるのではなく、社会人として誠意ある態度を一貫して退職を希望する旨を意思表示してください。

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8.契約社員の退職でのトラブルを弁護士に相談、依頼するメリット

契約社員として働いていて「会社を辞めたい」と考えている場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

特に、契約期間中の退職は認められないことが多く、それでも退職したい場合は会社側との交渉に臨む必要があります。

交渉の相手は会社内でも上位の従業員になるはずなので、プレッシャーに押しつぶされて納得できる内容で決着できないリスクが高まるでしょう。

そこで、交渉と労使問題に強い弁護士に相談することで、弁護士が本人の事情を踏まえたうえで円満に退職できるように交渉してくれます。

前述のとおり、円満に退職できないと損害賠償請求される可能性があるので、そのリスクを避けるためにも弁護士に交渉してもらい、円満に退職できるようにしましょう。

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9.契約社員の退職に関するよくあるQ&A

最後に、契約社員の退職に関するよくある質問についてまとめました。

9-1.契約社員でも退職届は必要ですか?

契約満了時の退職であれば必要としないケースも多いですが、会社によっては退職届の提出を求められるケースもあります。

また、契約期間中の退職の場合は退職届が必要になるケースが多いです。

9-2.契約期間中の退職は違法になる?

違法ではありませんが、原則として契約期間中の退職は会社に拒否されます。

ただし、契約期間の開始から1年以上が経過している場合は、労働基準法の定めにより退職が認められます。

また、ケガや病気、家族の介護や社内でのハラスメント行為など、仕事を続けることが困難な事情を説明すれば、会社側から退職を認めてもらえる可能性があります。

9-3.契約社員の退職時でも退職金はもらえますか?

そもそも退職金の支払い自体は労働基準法や労働契約法などの法律で義務付けられているわけではなく、正社員でも退職金が支払われない会社は少なくありません。

また、契約社員を対象外として退職金を支払っている会社もあります。

退職金とは異なりますが、契約満了時まで働けば「契約完了金」としてある程度のお金をもらうことはでき、会社によっては契約社員であっても退職金を支払う会社もあります。

退職金をもらえるかどうかは会社によりますので、就業規則等で確認してみてください。

9-4.辞めたければ無断欠勤等すれば良いのでしょうか?

これは最悪の手段です。

無断欠勤をしたことによって会社に損失を与えた場合、それに相当する金額を損害賠償請求される可能性があります。

また、連絡が取れない状態になると会社から家族に連絡されたり、状況によっては行方不明扱いになって警察に通報されるなど、多くの人に迷惑をかけます。

あくまでも円満な方法での退職を考えてください。

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10.まとめ

契約社員は通常の正社員よりも退職に制限があり、場合によっては退職することで損害賠償請求されるリスクもあります。

これを回避して退職するためには会社と交渉して退職に合意し、円満な退職を目指す必要があります。

そのためには交渉のプロである弁護士に相談し、スムーズに退職を進めることをおすすめします。

私たち法律事務所リーガルスマートは、契約社員の退職に関するトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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