残業代請求
看護師は残業が多い?残業代を請求する方法を弁護士が解説!
目次
1.看護師の残業の実態
近年、新型コロナウイルスにより、病院は常にひっ迫した状況にあり、看護師の業務負担が増えています。
残業時間の多さや勤務実態の過酷さを理由に離職という選択をしてしまう看護師も少なくありません。
不規則な勤務時間であり、夜勤も多く、残業が常態化している医療業界。病院などで働く看護師は、勤務時間外の労働を労働時間として数え、残業代も正しく計算され支給されているのか、疑問に思うこともあるでしょう。
そこで、本記事では、看護師の残業の実態をみながら、残業が多くなる理由を紹介します。さらに、どこから残業代の対象になるのか、残業代の請求方法について労働問題を専門とする弁護士が解説します。
弊所では、残業代を申請する際、交渉窓口を弁護士に依頼することが可能なため、精神的な不安を解消できます。もし、看護師の残業代についてお困りでしたら本記事を参考にしてください。
1-1.看護師の仕事の現状
看護師の仕事の現状として、病院やクリニックなど多くの職場で人員が不足しています。
近年では、新型コロナウイルスにより、労働時間を超えて働かなければならない現状が続いています。その結果、精神的、身体的なストレスを感じることが増え、離職するという選択を取ってしまう看護師も少なくありません。
さらに、今の日本は少子高齢化により、日常的に医療や介護を必要とする人が増えている現状もあります。老人ホームや訪問看護サービスなどの利用も増加傾向にあるため、需要過多であり看護師不足の現状がこれからも続くとされています。
また、看護師は企業の求人数に対して求職者数が少ない現状であり、高い離職率でもあります。離職後、看護師として復職しないことも多い現状です。
看護業界全体で待遇改善や働き方改革など早急に行うべきでしょう。
1-2.看護師の平均残業時間
紹介する勤務形態は日勤と準夜勤務です。
日勤とは、8時から17時まで途中休憩時間1時間を含む8時間労働。準夜勤務とは、16時から24時30分までの勤務時間のことです。
日勤と準夜勤務での残業時間の割合は以下の表です。
看護師の残業時間 (日勤と準夜勤務)
残業時間 | 日勤の終業時間後 | 準夜勤務の終業時間後 |
---|---|---|
なし | 12.8% | 39.7% |
約30分 | 23.3% | 記載なし |
30分以上 | 記載なし | 43.5% |
60分以上 | 40.7% | 16.3% |
120分以上 | 8.4% | 1.3% |
2022年に日本医療労働組合連合会が行った調査によると、日勤に残業をしている看護師の割合は87%にのぼります。
上表より、日勤では「60分以上」の残業の割合が4割、準夜勤務では、「30分以上」の残業が4割以上ということが分かります。
日勤と比較すると、準夜勤務の終業時間後に残業なしと答えている人は26%の差があり、日勤よりも準夜勤務の方が残業は少ないという結果です。
2.看護師の残業が多くなる理由
前の章より、残業時間が多いことが分かったのではないでしょうか。終業時間後の残業だけでなく、始業時間前の勤務時間外労働もあることが分かっています。では、なぜ看護師は働く時間が長くなってしまうのか、残業が多くなるのか、疑問に思うこともあるでしょう。
看護師の残業が多くなる理由としてこの章では4つ挙げます。
- 慢性的な人員不足
- 時間外の勉強会
- 看護記録などの書類作成
- 急患やナースコールによる対応
1つずつ解説します。
2-1.慢性的な人員不足
1人当たりの業務負担が増え、看護師の離職を招いている現状です。ベテランが抜けることによる経験不足の人材があてられることで、適切な医療を受けられなくなったり、医療サービスが低下したりしている現状です。
人員不足の原因として4つ挙げられます。
- 人数がいないから過酷な勤務体制になってしまう
- 福利厚生が充実していない
- 不規則な勤務形態がある
- 新型コロナウイルスによる精神的、身体的負担が増えた
このように、過酷な勤務が当たり前の仕事となっています。
人員不足の対策として、以下の対策が立てられています。
- 看護師養成促進
- 子育てや過酷な勤務でやめてしまった看護師の復職支援
- 夜勤などの手当の充実
- 育児休業や介護休業などの取りやすさ改善
- スキルアップのサポート
働きやすい環境づくりで看護師不足を解消していかなければならないでしょう。
2-2. 時間外研修や勉強会
看護師は「専門職としての自己研鑽をする姿勢」が求められます。そのため、看護研修といった、院内研修やセミナーに参加しなければなりません。看護に関する知識や技術の習得などスキルアップのためにするために休日や時間外に学ぶことが多い傾向にあります。
院内で研修や勉強がある場合は、残業して出席しなければなりません。実質的に強制参加させられているにも関わらず、自主参加とみなされて、残業代が出ないことも少なくありません。
サービス残業や休日出勤をしてでも、学ぶのが当たり前とされている職場では、昔から習慣化、教育をされてきたため、考えを変えることは困難でしょう。
院内研修や勉強会は以下のものがあります。
- 看護技術研修
- 感染症予防対策
- 救命処置
- 新人研修
このように、通常の業務に加えて、研修や勉強会といった名目で残業をさせられている現状にあります。
2-3. 看護記録などの書類作成業務
看護師は、患者を見るだけでなく、看護記録など書類も作成しなければなりません。
看護記録とは、看護師が実施した業務内容や過程などを記録するものです。裁判資料としても扱われる重要な書類であり、看護実践の証明や質の向上を図ることが目的とされています。
たとえば、担当していた手術が長引き、退勤時間になった場合でも記録を作成しなければならず、残業をせざるを得なくなることもあるでしょう。
また、勤務時間内に記録する時間が取れず、勤務を終えたあとに看護記録の作業に入るのが実情となっています。近年では、電子カルテの導入で看護師の負担が減った部分もあります。
しかし、ミスが許されないため、厳重にチェックしなければならず、かえって時間がかかってしまうことも多々あるようです。
このように、看護記録を書く業務は後回しにできないため、勤務時間外に行われ、残業をしなければならない現状です。
2-4.急患やナースコールによる対応
残業が多くなる理由として、急患が運ばれてきたり、ナースコールで呼ばれたり突発的な業務に対応するからです。
たとえば、緊急時のサポート体制が充実している病院であれば、対応する看護師も多いため、残業を減らせます。しかし、人数が少なく、対応できる人が限られている場合は、残業せざるを得ないでしょう。
また、担当する部署や科によっては、残業しなくても済む場合もありますが、ヘルプで呼ばれることもあります。
人員が増えない限り、看護師1人ひとりの負担が増え、残業しなければ業務が終われない深刻な状況です。
このように、人員不足や勉強会、書類作成など、さまざまな理由で看護師の仕事の負担が増え、残業が常態化しています。
残業を減らすためには、人員不足を解消したり、業務の改善などを行う必要があるでしょう。
3.看護師の残業代はどこからが対象なのか
看護師の残業代はあいまいな部分があり、どこからが残業代の対象か分からないという人も多いのではないでしょうか。
一般的に残業代とは、会社が決める勤務時間を超えてから行われた業務に対して支払われる賃金のことです。法定労働時間を超えて働いた場合は、通常の賃金の原則1.25倍した割増賃金を支払わなければなりません。
看護師の残業代は以下のものが対象です。
- 定められた勤務時間以降に行った看護業務やミーティング
- 時間外研修や勉強会、セミナーの参加
- 休憩時間中も職場から離れられず、看護対応した時間
- 「宿・日直」として出勤したものの日勤と変わらず通常業務を行っている
新人だから、変形労働時間制だからといって残業代がでない、出さないということもあるでしょう。しかし、所定の労働時間を超えた分の業務に関しては、もちろん残業代が発生するため、残業代の請求はできます。
4.看護師が残業代を請求する方法
看護師が残業代を請求する方法は4つあります。
- 残業しているという証拠を集める
- 病院などに直接請求する
- 労働基準監督署へ請求を求める
- 訴訟、労働審判を起こす
まず、給与明細や勤務時間を記載した書類など、残業しているという証拠を集めましょう。証拠がなければどれだけ口頭で伝えても、認められないことがあります。
その証拠をもとに、病院などに直接請求を行いましょう。お金や時間もかからず、話し合いで解決することもあるでしょう。
それでも解決しなければ、労働基準監督署へ相談し、介入してもらう方法もあります。労働基準監督署は、労働基準法違反などしている会社に、指導勧告を行ったり立ち入り調査を行ったりする機関です。
残業代の未払いとなる証拠などを持っていけば、病院に介入して解決してくれることもあります。
確実に残業代をもらうためには、訴訟や労働審判などの裁判手続きを利用する方法もあります。ただ、訴訟や労働審判には、お金や時間もかかるため、最終手段といえるでしょう。
5.残業代の請求、相談先の選択肢
実際に残業代を請求したいけど、どのような相談先があるか分からないという人も多いでしょう。相談だけで請求はできないこともあるので注意してください。
残業代の請求、相談先の選択肢として3つ挙げます。
- 社内の相談窓口や労働組合へ相談する
- 労働基準監督署へ相談する
- 弁護士に相談、請求する
1つずつ見ていきましょう。
5-1.社内の相談窓口や労働組合へ相談する
公的機関に相談する前に、雇用されている病院などの相談窓口や労働組合へ相談してみましょう。
まずは、会社や病院の内部で相談し、解決できるか試して下さい。
小さい会社や病院では、相談窓口などがないこともあります。その際は、公的機関の相談窓口へ相談をするとよいでしょう。
たとえば、公的機関の相談窓口は以下のものがあります。
- はたらくナースの相談窓口
- 労働条件相談ほっとライン
- 総合労働相談コーナー
電話や面談での相談もしているため、活用するとよいでしょう。
しかし、労働組合などに相談しても、個人の残業代の請求に積極的に取り組んでくれるわけではないため、注意しましょう。
相談に乗ってもらい、どうすればいいかアドバイスをもらう場所であると考えたほうが良いかもしれません。
このように、直接解決することにはつながりませんが、相談することで次にどう動けばいいのか分かるため、1人で悩まず相談しましょう。
5-2.労働基準監督署へ相談する
労働基準監督署では、未払い問題を解決してくれる相談窓口があります。場合によっては、病院に介入して、調査してくれることもあります。労働基準監督署は守秘義務があるため、相談内容も会社や病院にばれることはないため、安心して相談できるでしょう。
しかし、病院へ掛け合ってくれるだけで、労働基準監督署が直接請求してくれるものではありません。あくまでも、病院への残業代の支払い催促や注意喚起を行ってくれる機関だと割り切りましょう。
詳しく調査してほしい場合は、匿名ではなく実名で相談し、証拠など集めて持っていくとスムーズに進められます。
労働基準監督署は、匿名での電話やメールで相談ができるため、気兼ねなく問合わせてみるのもいいかもしれません。
5-3.弁護士に相談する
公的機関の相談窓口で相談しても、直接は請求できないならどうすればいいのかと悩むこともあるでしょう。その場合は、弁護士に相談し、代理人として請求までしてもらいましょう。
弁護士の選び方としては、労務問題に強い弁護士、または、労働者側の労務問題が得意な弁護士と絞って探してみましょう。
弁護士にも得意不得意の分野があります。特に、残業代の請求に関しては、労務問題に強い弁護士の方が、多くの残業代獲得にむけて力を入れてくれるメリットがあります。
しかし、弁護士費用がどれだけかかるか不安を感じることもあるでしょう。その場合は、無料相談も行っている弁護士を探してみて下さい。
弊社では、初回60分の無料相談を行っています。残業代についてどの弁護士に相談すればいいのか困っている人は、ぜひ弊社へご連絡下さい。問い合わせはLINEやメールからも受け付けております。
6.残業代の請求を弁護士に相談・依頼するメリット
社内での相談や、労働組合、公的機関の相談窓口などをご紹介しました。残業代についての相談だけでなく、請求をきちんと行いたいという場合は弁護士に依頼するとよいでしょう。
ここでは、残業代の請求を弁護士に相談・依頼するメリットを3つ挙げます。
- 会社との交渉を代理してもらえる
- 相談から申請、裁判まで任せられる
- 残業代を正確に計算してもらえる
一つずつ見ていきましょう。
6-1.会社との交渉を代理してもらえる
弁護士に依頼すれば、会社との交渉を代理してもらえるのがメリットです。残業代請求は、交渉から裁判まで、すべて自分自身でも行えます。しかし、会社と交渉する際は、手間や時間、労力がかかります。
最終的には残業代をもらえるとしても、交渉するのはつらく、ストレスを抱えることが多くなるでしょう。できれば時間と労力はかけずに行いたいものです。
その場合、弁護士に依頼することで、残業代に関する作業を素早く行えます。そして会社との交渉を代理してくれるため、ストレスも減らせます。
自分の大切な時間をこれ以上無駄にしないためにも、弁護士に会社との交渉を代理してもらい、残業代をもらうために動き出しましょう。
6-2.相談から申請、裁判まで任せられる
弁護士に依頼すれば、相談から申請、裁判(訴訟、労働審判)まで任せられます。自分自身で行うとなると、申請方法はどうすればいいのか、裁判はどうやるのかなど調べながら進めていくことになります。
また、仕事をしながら、証拠集めや残業代を申請する準備などしなければなりません。
残業代申請をするのが初めての場合が多いため、分からないことが多く、時間もかかるでしょう。
しかし、弁護士に相談から申請、裁判を任せることで、精神的ストレスが減ることはもちろん、時間短縮や正確に残業代の計算をしてくれるため、安心して任せられるでしょう。
また、労働法の知識のない労働者が残業代を請求しても、法律や裁判例に基づいた反論を受けることもあるかもしれません。
このように、自分で全て行うのがつらく、1人では途中であきらめてしまうことも考えられます。そうならないためにも、弁護士に相談して、申請から裁判まで任せましょう。
法律の専門家であるため、裁判まで任せられ、反論にも対応できるのはメリットでしょう。
6-3.残業代を正確に計算してもらえる
弁護士に任せると残業代を正確に計算してもらえます。残業代の計算は複雑で、労働時間制度によって計算方法に違いがあるので注意が必要です。
残業代には法定内外のどちらか、深夜残業に該当するかなどによって割増率の割合が変わるなど、細かな決まりがあります。
自分でまとめてやるとなると時間もかかりますし、間違ってしまったり、カウント漏れも出てくるでしょう。経験がない人にはとても大変な作業となります。
労働者自身が残業代計算のためにできることは、証拠を集めることです。たとえば、以下のものがあるとスムーズに計算ができます。
- 就業規則
- 雇用契約書
- タイムカード
- シフト表
- 電子カルテの記録
- パソコンのログイン記録
- 詳細な勤務時間を記載したメモ
このように、証拠を集めて弁護士に依頼することで、法的に残業代を正確に計算して、漏れなく請求することが可能です。
7.看護師の残業に関するよくあるQ&A
7-1.看護師の残業時間は何時間か?
2022年に日本医療労働組合連合会が行った調査によると、日勤に30分以上残業をしている看護師の割合は87%にのぼります。
最も多い残業時間は、1時間以上という結果でした。看護師の割合は4割を超えており、看護師の残業は常態化していると言えます。
7-2.残業代は自分で計算できるのか?
残業代は自分で計算できます。しかし、法定内外の時間外労働や、変形労働時間制などによって、計算方法がさまざまあるため複雑です。また、毎日日記やメモなどで記録を取っておかなければならず、時間と労力が大きくかかってくるでしょう。
7-3.残業代の申請方法は?
カンゴトークが行った調査によると、残業代の申請方法は、紙で行う人が半数です。その次にパソコンからの申請が3割という結果です。
7-4.勤務先に残業代を請求するためには、どのような資料を準備する必要があるのか?
残業の証拠として一番強いものは、タイムカード、勤怠管理ソフトの記録データです。それ以外には、上司の承認印がある業務日報などが挙げられます。
また、正確な残業代を計算するためにも雇用契約書、賃金規定や労働条件通知書などの控えは準備する必要があります。
給与明細も重要な証拠となります。給与明細がない場合は、給与が振り込まれた「銀行口座の写し」を準備してください。
8.まとめ
本記事では、看護師の残業の実態や残業が多くなる理由を紹介しました。
人員の不足や、時間外の研修、急患などによる対応のため、残業が常態化していると分かったのではないでしょうか。
残業代について相談、申請する場合は、社内の相談窓口や労働基準監督署、弁護士へ相談するとよいでしょう。
弁護士に相談するメリットとして、会社へ代理交渉や、相談から申請、裁判まで行ってくれるところです。精神的ストレスが減ることはもちろん、時間短縮や正確に残業代の計算をしてくれるため、安心して任せられるでしょう。
弊社では、初回の60分相談無料で行っているため、残業代のことでお悩みの看護師はご相談ください。メールやLINEからもお問い合わせできます。
また、弊社のホームページでは、労働問題についてのコラムもあるため、参考にしてみてください。
残業代の請求など残業でお悩みの方は、労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
私たち法律事務所リーガルスマートは、未払いの残業代請求をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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