残業代請求

みなし残業が違法になるケースとは?対処法などを弁護士が解説!

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みなし残業という形で一定の残業代の支払いがある場合があります。

そもそもこのようなみなし残業の規定は有効なのでしょうか。

また、みなし残業が有効である場合に、残業代の支払いはどうなるのでしょうか。

このページでは、みなし残業の問題についてお伝えします。

目次

1.そもそもみなし残業とは

そもそもみなし残業については次のいずれかの意味で用いられます。

  • みなし労働時間制
  • 固定残業代制度

みなし労働時間制とは、1日の労働時間を決めて、その時間を労働したものとして取り扱うものをいいます。

外回りの営業職などの、労働時間の計算が困難な業種の場合に用いられ、残業することも計算にはいっていることがあります。

もう一つは固定残業代制度で、残業代を一定の金額分固定で支払うものをいいます。

残業をしていなくても残業代をもらえる、残業代の計算が簡易で済むなどのメリットがあり、多くの企業で採用されています。

みなし残業と呼ばれる場合は、後者の意味で利用されることがほとんどです。

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2.みなし残業が違法になるパターン

このみなし残業ですが、どのような場合に違法となるのでしょうか。

2-1.三六協定が結ばれていない

みなし残業はあくまで残業をさせることが大前提となっています。

しかし、そもそも労働基準法の労働時間の上限を超えて労働をさせるためには、労働基準法36条所定の協定(いわゆる三六協定)を結ぶ必要があります。

そのため、三六協定なしに残業をさせている場合には、たとえ残業代を適正に支払っていたとしても、違法です。

みなし残業が違法となるパターンの一つ目は、三六協定が結ばれていないまま、みなし残業によって残業をさせている場合です。

2-2.残業時間の上限を超えて労働をさせられている

三六協定を結んでいて、みなし残業によって残業代の支払いをしていても、残業時間については上限が定められており、何時間でも残業をさせて良いというわけではありません。

そのため、みなし残業で支払っているからといって、残業時間の上限を超えて労働をさせられている場合には違法となります。

2-3.残業代を全額支払っていない

みなし残業で残業代の支払いをしているからといって、きちんと残業代の支払いをしていない場合があります。

例えば、20時間分の固定残業代の支払いをするとしている場合に、実際に30時間の残業をしたとします。

このときに、固定残業代の支払いしかしなければ、10時間分の残業代の支払いをしていないことになるので、残業代の支払いをしていないとして違法となります。

みなし残業で問題となるのは、このケースが多いです。

2-4.固定給が最低賃金を下回る

みなし残業の制度を導入し、基本給の金額を抑えた結果、基本給が最低賃金を下回って違法になるケースがあります。

最低賃金を下回ることは当然に違法なので、ただちに是正し適切な賃金体系にする必要があります。

2-5.違法である場合にはどのようなペナルティがあるのか

違法である場合にはどのようなペナルティがあるのでしょうか。

まず、労働基準法違反となるので、会社は労働基準監督署から行政指導を受けることになります。

労働基準法では、労働基準監督署の権限として以下の行為が認められています。

  • 事業所・寄宿舎そのた付属建物への臨検(労働基準法101条)
  • 帳簿及び書類の提出を求めること(労働基準法101条)
  • 使用者・労働者に対して尋問をすること(労働基準法101条)
  • 使用者に対して報告・出頭させる義務を課すこと(労働基準法104条の2)

労働基準法違反に関しては、次のような刑事罰が規定されています。実態として刑事事件となるケースは少ないですが、違反の内容が悪質な場合には刑事事件となることがあります。

  • 労働基準法32条違反(労働時間の制限):労働基準法119条
  • 労働基準法36条違反(残業時間の上限の制限):労働基準法119条
  • 労働基準法24条違反(賃金の支払い):労働基準法120条
  • 最低賃金法4条違反(最低賃金を下回る):最低賃金法40条

さらに、労働基準法違反が認められる場合、

  • 慰謝料請求
  • 未払い残業代請求

などの民事事件となることがあります。

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3.みなし残業が違法な場合の対処法

みなし残業が違法な場合の対処法としては、次のものが挙げられます。

3-1.みなし残業分を超える残業をしない

みなし残業としているものの、固定残業代以上の支払いがされない場合には、みなし残業分を超える残業をしない、残業の指示をされても断ることが対処法として考えられます。

しかし、現実にはこのような対応は難しいため、他の方法を考えざるを得ないケースが多いでしょう。

3-2.使用者・会社の労務担当者と話し合う

使用者・会社の労務担当者と話し合える場合には、話し合いをしてみましょう。

みなし残業・固定残業代制は、よくある制度であり、これが法律上も正しいという認識をしていることが多いです。

20時間分の固定残業代が出ている会社の従業員が、20時間未満の残業しかしていない場合には違法性はありません。

しかし、20時間を超えて残業した場合には、法律上は超えた時間分の残業代が別途支払う義務があります。もし、支払わなければ、残業代未払いの会社となります。

このことを使用者や会社の労務担当者が単に知らないだけなのであれば、話し合いによって解決してもらうことを検討しましょう。

3-4.労働組合に相談

会社と話し合うのが厳しい場合には、会社と交渉することになるのですが、個人と会社では力関係も異なり、会社が応じる気がない場合には問題は解決できません。

このような場合には、労働者が団結して使用者と話し合う必要があるので、労働組合に相談することを検討しましょう。

会社の中に労働組合がある場合には、その労働組合に相談して、会社と交渉してもらうことができます。

ただ、多くのケースで会社にある労働組合は、会社と本気で交渉するつもりがないことがあり、会社の中の労働組合では問題解決ができないケースも少なくありません。

そのため、地域や職域で連帯している労働組合(ユニオン)にも相談をしてみましょう。

交渉のサポートをしてくれることを期待できます。

3-5.労働基準監督署に申告をする

労働基準法違反については、労働基準監督署が取り扱いをしています。

そのため、労働基準監督署に相談・申告をすることも一つの解決方法です。

会社の行為に違法性が認められる場合には、労働基準監督署が行政指導を通じて会社に是正を求めます。

会社がこれに応じて、違法状態を是正することによって、みなし残業に関するトラブルの解決が期待できます。

3-6.弁護士に依頼する

労働基準監督署によるトラブル解決は、会社に改善をするように行政指導を行い、これに応じて会社が違法状態の是正をすることによって行われます。

三六協定が結ばれていない、労働時間に関する上限が守られていないような場合には、このような方法によって改善されることが期待できます。

しかし、例えば健康状態を害したので慰謝料請求をしたいという場合や、労働基準監督署が指導しても会社が指導に従わず、残業代が支払われていないので残業代請求をしたいという場合もあります。

労働基準監督署は、労働基準法を守らせるための行政機関であり、個々の請求権についての手助けをするための機関ではありません。

そのため、個々の請求権についての解決をするためには、弁護士に相談・依頼して解決することをお勧めします。

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4.みなし残業がある場合の残業代の計算方法

みなし残業がある場合の残業代の計算方法について確認しましょう。

4-1.時間外労働・休日労働には割増賃金が必要

残業や早出のような時間外労働や、休日労働をさせる場合には、労働基準法37条で定めた割増賃金の支払いが必要です。

割増賃金は次の割合によって支払う必要があります。

  • 8時間以内の時間外労働:割増なし
  • 8時間を超える時間外労働:1.25倍
  • 時間外労働が月60時間を超えた場合:1.5倍
  • 深夜労働(22時~5時):1.35倍
  • 時間外労働が深夜労働である場合:1.50倍
  • 休日労働が深夜労働である場合:1.60倍

みなし残業の制度をとっている場合でも、この割合で支払う必要があります。

4-1.みなし残業がある場合の残業代の計算方法

みなし残業として、固定残業代の支払いがされている場合、

  • 基本給とは別に固定残業代を支払う手当型
  • 基本給の中に固定残業代を組み込んで支払う組込型

という2種類があります。

そして、実際の残業時間から残業代の総額を換算して、固定残業代・固定残業代として基本給に組み込まれる部分のほうが多い場合には、固定残業代・固定残業代が組み込まれた給与によって支払いを行います。

実際に発生した残業代のほうが、支払われている固定残業代・固定残業代として基本給に組み込まれる部分よりも多い場合には、固定残業代・基本給に組み込まれた固定残業代との差額を、残業代として支払うべきことになります。

例えば、固定残業代が5万円だとして次のような関係になります。

実際の残業代実際に支払う額
発生する残業代が2万円固定残業代の5万円のみ
発生する残業代が10万円固定残業代5万円+差額の5万円

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5.みなし残業を理由に違法に支払っていない残業代を請求する方法

上記のような残業代について、会社が全額しはらっていない場合に、残業代を請求する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

5-1.会社と交渉をする

残業代の請求をする方法として、会社と交渉する方法が挙げられます。

会社が法令についての理解が足りなかった、解釈が誤っていた、などで、きちんと残業代の支払いをしてもらえるのであれば、これでトラブルは解決します。

しかし、みなし残業を理由に残業代請求を会社が拒んでいるような場合、個人が交渉をして解決できるケースは稀です。

そのため、別の方法を考える必要があります。

5-2.労働組合に相談する

残業代の支払いが適切になされていない場合でも、労働組合に相談をして、残業代の支払いをしてもらうように交渉することが有用である場合があります。

しかし、みなし残業を理由に支払わないような場合には、労働組合の手を借りて交渉しても、みなし残業を理由に拒否することが予想されます。

5-3.労働基準監督署に申告する

労働基準監督署に申告する方法はどうでしょうか?

労働基準監督署は、上述したように、労働基準法違反について是正するための行政機関です。

そのため、みなし残業を理由に正当な残業代の支払いを拒んでいるような場合には、賃金に関する規定である労働基準法24条に違反するものとして、行政指導・刑事罰の対象になりうるものです。

しかし、これらはあくまで会社に労働基準法を守らせるためのもので、残業代請求のような個々の請求権については労働基準監督署ではアドバイスをすることはできても介入することはできません。

5-4.裁判等の法的手段

交渉をしても支払わない場合には、裁判等の法的手段によって請求を行わざるを得ません。

典型的には、民事裁判を提起して、残業代の支払い義務について勝訴判決をもらうことです。

ただ、残業代請求をするためには、民事調停・労働審判・支払督促・少額訴訟など、裁判以外の法的手段も存在します。

これらの法的手続きは後述する強制執行をするための債務名義の取得につながるもので、適切な手段によって法的請求を行う必要があります。

5-5.強制執行

裁判に勝訴したなどで、未払い残業代として支払う義務や額を確定したにも関わらず、会社が支払いをしない場合には、会社の財産に対して強制執行を行うことができます。

どのような会社かによって、強制執行ができる対象は大きく異なるので、会社にどのような財産があるのかをしっかり調べ、強制執行をするようにしましょう。

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6.未払い残業代の請求を弁護士に相談するメリット

未払い残業代の請求を弁護士に相談するメリットには次のようなものがあります。

6-1.法的なサポートしてもらえる

法的にサポートしてもらうことができます。

未払い残業代の請求に関しては、労働基準法の理解や、各種法令によるといくらの未払い残業代の請求ができるのか、会社に支払わせるための手続きなどの、法的知識が必要不可欠です。

労働に関する法令・裁判などの手続きは非常に細かく難解です。

また、未払い残業代の請求をするにあたって、証拠は非常に重要です。

未払い残業代の請求をするための証拠にはどのようなものがあるのか、現状だとどれくらいの証拠による認定ができるのか、これから取得すべき証拠は何なのか、といったことを適切に見極める必要があります。

弁護士に相談すれば、これらの法的なサポートをしてもらうことが可能となります。

6-2.厳しい交渉の代理をしてもらえる

弁護士に依頼をすれば、難しい交渉の代理をしてもらえます。

みなし残業によって残業代の支払い義務を拒否する会社のように、残業代を適切に支払う気がない会社に対して行う残業代の支払い交渉をする場合、非常に厳しい交渉をすることになります。

他の従業員も同様にもらっていない、会社で面倒を見てあげたのに、などの考えをもっていることが多く、そのような考えを持つ会社は、従業員からの残業代の請求に対して、非常に厳しい態度で交渉してくることもあります。

弁護士に依頼すれば、こうした交渉を全て任せることができます。

また、会社側も弁護士が代理人に就くことで、支払いに応じる可能性も高くなるといえるでしょう。

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7.みなし残業・残業代請求に関するよくあるQ&A

みなし残業に関するよくあるQ&Aには次のようなものがあります。

7-1.固定残業代の時間を45時間以上にすることは可能か

固定残業代の時間を45時間以上にすることは可能なのでしょうか。

残業は三六協定を結べば行うことができるのですが、三六協定を結んだとしても残業には上限があります。

通常の三六協定を結んだ場合には、1ヶ月45時間、年360時間以内としなければなりません。

45時間以上のみなし残業を設定することは、この法律の規定を損なう可能性があるものとなるため、明確に違反する規定ではないものの、固定残業代も1ヶ月45時間以内におさめるのが望ましいとされています。

7-2.残業代請求をする際に証拠が重要である理由

残業代請求をする際には、証拠が非常に重要である理由を知っておきましょう。

残業代請求をする場合、会社が任意に支払わない場合には、裁判を起こして支払い義務と金額を確定させるなどする必要があります。

裁判などの法的手続きによる場合、主張する事実については、証拠によって確定する必要があります。

証拠がなければ主張した事実はなかったものと扱われてしまうため、最悪のケースでは残業代の請求自体が棄却され、全く未払いの残業代を回収できない可能性があります。

そのため、残業代請求をする際には証拠が重要であるといえます。

これらの証拠の多くは、タイムカード・メールの履歴など、会社に居ないと収集できないものが多いです。

そのため、会社を退職する前に収集をするようにしましょう。

7-3.残業代請求の時効に注意をする

残業代請求については時効に注意をしましょう。

残業代は給与の支払いであり、給与等の請求権については労働基準法115条で3年で時効になることになっています。

そのため、支払い時期から3年を超える残業代から順次時効にかかって、請求をしても支払いを拒むことができるようになるので、注意が必要です。

時効にかからないようにするためには、時効の更新・時効の完成猶予をする必要があります。

多くのケースで民法150条1項に規定されている催告を行うことで6ヶ月の時効の完成猶予となるので、その間に交渉をまとめ、まとまらない場合には裁判を起こして判決を得ることで時効を更新します

7-4.みなし残業・残業代請求を無料で弁護士に相談するには

みなし残業・残業代請求について弁護士に相談する際には、通常30分5,000円~の法律相談料がかかることが一般的です。

しかし、市区町村の弁護士相談・弁護士会の相談などで、無料で弁護士に相談することができることがあります。

また、収入が一定程度までの人であれば、法テラスで無料で法律相談を受けることができます。

さらに、一部の法律事務所では、個人の法律問題・労働問題については無料で相談を受けていることがあるので、利用してみましょう。

法律事務所リーガルスマートでは、初回60分無料の法律相談を実施していますので、お気軽にご利用ください

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8まとめ

このページでは、みなし残業が違法になるケースなどについてお伝えしました。

みなし残業・固定残業代制度は、残業が発生することが多い多くの会社で採用されている一方で、残業代の支払いを拒むための口実としても多く利用されます。

みなし残業の適用が違法である場合や、違法に残業代が払われていない場合には、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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