残業代請求

歩合給制は残業代出る?残業代の計算・請求方法を弁護士が解説!

歩合給制は残業代出る?残業代の計算・請求方法を弁護士が解説!
この記事をSNSでシェア!

歩合給制度が導入されている会社の場合、残業代が出るのか分からないといった方がいらっしゃるのではないでしょうか。

歩合給は、売上などに連動して、給与が増減する制度ですが、時間外労働や深夜就業をした場合は残業代や深夜就業手当が発生します。

歩合給制度の職業であっても、残業代請求できる場合があるため、残業代請求をしたいと検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

自身のケースではどうなるのか詳しく知りたい方は、弁護士へ相談してみると良いでしょう。

1.そもそも歩合給とは

歩合給は、自身の売上などの実績によって変動する給与のことであり、営業職などで採用されることが多い給与制度です。

歩合給以外の給与制度として、固定給がありますが、こちらは自身の売上などの成果に関係なく、規定された額が支給される制度です。

歩合給の制度は、変動給や出来高制、成果報酬型などの呼び名があります。

1-1.歩合給には2種類ある

歩合給にも2種類あり、実績のみで完全に給与が決まるフルコミッション制と、固定給と合わせて給与が決まるインセンティブ制があります。

フルコミッション制は仕事の成果に応じて支払われるため、成果のない場合は給与が発生しないことがあります。

フルコミッション制の歩合給である具体的な職業として、フリーランスのクリエイターや不動産、保険などの営業が挙げられます。

また、インセンティブ制の職業の例としては、不動産、保険などの営業のほか、Webマーケティングやコンサルタントがあります。

歩合給は、個人の仕事の実績や成果を数値で表すことのできる職業で多く採用されている給与制度だといえるでしょう。

ただし、フルコミッション制は、使用者である会社と雇用契約を結んで仕事をしている場合、賃金の保障がなされないため、労働基準法(第27条)や最低賃金法に触れ、採用することができません。

個人事業主として会社と契約する際にのみ、フルコミッション制で仕事をすることができます。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

2.歩合制では残業代が発生しないのか

歩合給の制度が適用される職種に就いている人であっても、固定給の人と同様に、残業をすれば、時間外勤務手当である残業代が発生します。

割増賃金が発生する労働は以下の通りです。

  • 時間外労働:労働基準法に規定の時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働
  • 休日労働:法定休日に労働
  • 深夜労働:午後10時から朝5時までの時間帯に労働

割増賃金は、労働者の1時間あたりの賃金×時間外労働時間数×割増率で計算することができます。

割増率は以下の通りです。

  • 時間外労働:25%以上(1か月60時間を超えるものは50%以上。ただし中小企業は2023年4月1日から適用)
  • 休日労働:35%以上
  • 深夜労働:25%以上

歩合給の場合、1時間あたりの賃金は、歩合給の額を労働時間で割って算出します。

歩合給部分に残業代が含まれると会社側から主張される場合がありますが、歩合給の変動する部分については、成果や実績が根拠になっているため、労働時間を根拠とする残業代を歩合給とは別に請求することができる可能性があります。

残業代とは

残業代とは、所定の労働時間を超えて働いた場合に支払われる賃金のことをいい、時間外労働手当とも呼ばれます。

法定労働時間を超えて労働したとき、原則、1.25倍の割増賃金を残業代として受け取ることができます。

所定の労働時間とは、雇用契約において、労働者が通常勤務することが義務付けられた時間のことを指します。

労働者に残業をさせるには36(サブロク)協定が必要

労働者に残業代の発生する時間外労働をさせる場合は、36協定を労働者と使用者の間で締結しておく必要があります。

締結した36協定は、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

36協定とは、労働基準法第36条に規定された労使協定のことをいい、この協定を締結し、労働基準監督署へ届出を行わなかった場合、企業は労働者に残業させることができません。

(時間外及び休日の労働) 
1.使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省の定めるところにより、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間または前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、または休日に労働させることができる。

労働基準法第36条

管理監督者の場合は残業代がつかない

歩合給であっても、固定給であっても、立場によっては残業代がつきません。

一般的に管理職と呼ばれる管理監督者の地位にいる場合、労働基準法の労働時間や休日の規定が適用されないため、残業代は発生しないことになります。

ただし、名ばかり管理職と呼ばれるような、実際には管理監督者の立場にない状況にもかかわらず、管理職として扱われて、残業代が払われていない場合は、残業代請求をすることができる可能性があります。残業代が出ない管理監督者に該当するためには、実質的に経営者と同様の立場にあるなどの要件を満たさなければならないため、実態として管理監督者に該当するケースは少ないです。

名ばかり管理職で残業代が支払われていない場合は、一度、弁護士に相談することをお勧めします。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

3.歩合制の未払い残業代の計算方法

歩合制での未払い残業代の計算方法について紹介します。

個人で残業代請求を行わない場合であっても、自身に発生している残業代がいくらくらいなのか、おおよその金額を把握しておくことは大切です。

実際に、自身の賃金など、具体的な数字を当てはめて、計算をしてみましょう。

3-1.未払い残業代の請求には残業代の計算が必要

残業代請求をするためには、請求する残業代を確定させる必要があります。

残業代請求では、残業があったことの証明をした上で、残業代として計算した額について合意を得ることが必要です。

残業代計算を誤り、残業代を少なく見積もってしまえば、支払ってもらうべきだった賃金(残業代)をもらい損ねてしまう恐れがあります。

弁護士に依頼した場合、弁護士が正確に残業代を計算してくれるため、計算間違いのリスクをなくすことができます。

3-2.未払い残業代の計算方法

歩合給の未払い残業代の計算をするには、まずは、1時間あたりの賃金を算出することが必要です。

1時間あたりの賃金=歩合給の額÷総労働時間

1時間あたりの賃金に、割増賃金の割増率を乗じて、1時間あたりの歩合給の割増賃金を計算します。

1時間あたりの歩合給の割増賃金=1時間あたりの賃金×0.25以上(割増率)

計算した、1時間あたりの歩合給の割増賃金に、残業した時間数を乗じることで、歩合給での残業代の額を計算することができます。

また、残業代金すべてを計算するためには、固定給の部分についても残業代を計算する必要があります。

固定給部分は、以下の式で計算します。

固定給部分の残業代=1時間あたりの賃金(基礎時給)×残業した時間数×1.25以上

基礎時給は、歩合給や家族手当などの手当金を除いた基礎賃金を所定労働時間で割った金額です。

歩合給の残業代の計算では、総労働時間数で給与を除算するため、違いに注意しましょう。

計算して出した固定給部分と歩合給部分の残業代を合計すると、未払い残業代の額を出すことができます。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

4.未払い残業代を請求する方法

未払い残業代を会社に対して請求する方法について説明します。

弁護士に依頼せず、個人で残業代請求を行う場合であっても、原則、流れは同様です。

ただし、個人で残業代請求をする場合、会社が誠実な対応をしてくれない恐れがあったり、隠蔽や改ざんなどをされてしまい証拠集めが難航してしまったりなど、スムーズに残業代請求ができない可能性があります。

法律の専門家である弁護士の力を借りて、残業代の請求をすることをお勧めします。

4-1.弁護士に相談する

まずは弁護士へ相談してみましょう。

弁護士への依頼を積極的に検討していない場合であっても、初回無料の法律相談などを利用して、法律の専門家である弁護士の意見を聞くことが大切です。

また、依頼や相談をする弁護士は、労務問題を専門にしている人にしましょう。

弁護士は法律の知識を網羅的に持っていますが、得意とする分野はそれぞれ異なるため、労務問題に特化している弁護士を頼ることをお勧めします。

残業代請求について、実績や知識が豊富な専門家に依頼することで、よりストレスなく、残業代請求をすることができるでしょう。

さらに、自身で証拠集めを進めていくことも大切ですが、弁護士は全体的な流れを踏まえたアドバイスをくれるため、早めに相談することがお勧めです。

残業代請求に向けた事前準備が効率よく進めることができるようになるでしょう。

4-2.残業代計算や交渉のための証拠集めなど、事前準備をする

残業代請求には、残業があったことを証明し、歩合給などから計算した正確な残業代を請求することが必要です。

残業があったことの証明では、以下の書面などが証拠として使うことができます。

  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 給与明細書
  • 源泉徴収票
  • タイムカードなどの勤怠の時間が記録されたもの
  • 通勤で利用した交通ICカードの履歴
  • 日記やSNSの書き込みなど

弁護士に依頼した場合は、弁護士が開示請求などを行うことで、依頼者の負担を少なくして、証拠集めをすることができる場合があります。

手元に証拠となりそうなものがないと思っても、まずは弁護士に相談してみることが大切です。

4-3.会社と交渉をする

会社に対して、未払いの残業代を支払ってもらうよう、交渉をスタートさせます。

弁護士に依頼した場合は、弁護士が依頼者の代理人として会社と交渉をするため、依頼者本人が直接会社にコンタクトを取る必要はありません。

弁護士は書面や電話などを用いて、相手方と交渉します。

支払う金額について合意ができれば、残業代請求の手続きは終わり、依頼者には未払い分の残業代が支払われることとなります。

4-4.交渉が決裂した場合、労働審判に進む

交渉がうまく行かず、金額合意などができなかった場合、労働審判へと進みます。

労働審判をするためには申立てが必要ですが、弁護士へ依頼した場合、弁護士が申立てを代理し、審理の際も依頼者の代理人として同席し、進めてくれます。

労働審判では、原則、審理を行う期日は3回以内とされており、迅速な解決が目指されています。

また、審理中に当事者間で合意が得られそうな場合は、審判ではなく調停での解決をすることがあります。

労働審判では、初回の期日にのみ、依頼者本人が当事者として出席する必要があります。

労働審判の流れ

申立て→期日指定・呼び出し→答弁書などの提出→労働審判手続期日(原則、3回以内で行う)→調停成立、もしくは労働審判

労働審判は、労働審判委員会が出します。

労働審判委員会は、労働審判員と労働審判官(裁判官)によって構成されています。

調停が成立した場合は、調停の内容が調停調書に記載されます。

調停で合意した内容によっては、調停調書を債務名義として、強制執行を申し立てることができる場合があります。

4-5.労働審判もうまくいかなかった場合、訴訟に進む

労働審判で審判が出ても、審判の内容に不服がある場合、異議申立てをすることができます。

異議申立てがされた場合、審判は効力を失い、訴訟に移行します。

訴訟は、労働審判と異なり、期日の回数に制限がありません。

そのため、長期化してしまうリスクがあります。

しかし、会社側も時間や費用がかかる訴訟を望んでいないことが多く、訴訟までいかずに解決することがほとんどだといえるでしょう。

労働審判をせずに、交渉決裂後、訴訟をすぐに起こすことも可能です。

どのようにしたいのか、弁護士に相談しつつ、流れを決めていくと良いでしょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

5.未払い残業代の請求を弁護士に依頼するメリット

未払い残業代の請求を弁護士に依頼した場合、さまざまなメリットがあるといえます。

特に大きなメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  • 会社との交渉など、手間と時間のかかる手続きを代わりにしてくれる
  • 手続きにかかるストレスが軽減される
  • スムーズに残業代請求できる可能性が高い

それぞれのメリットについて説明します。

5-1.会社との交渉など、手間と時間のかかる手続きを代わりにしてくれる

残業代請求では、証拠集めや残業代の計算、会社との交渉など、手間と時間のかかってしまうことを不足なく、着実に行う必要があります。

残業のあったことを証明するための証拠集めでは、退職していた場合、証拠がうまく集まらない可能性があります。

また、残業代の計算は、個人で行った場合、計算を誤ってしまうかもしれません。

残業代請求は、これまでに残業代請求の経験がない個人が1人で行うにはハードルが高いといえるでしょう。

ノウハウや知識があり、法律の資格を持った弁護士に依頼すれば、効率的な手順で、開示請求など弁護士の権限を駆使して、スムーズに手続きを進めてもらえます。

さらに、個人で残業代請求を行った場合、訴訟などに進むことはないと判断され、誠実な対応がなされない恐れがあります。

弁護士が代理人となることで、会社側の誠実な対応を引き出すことが可能になる場合もあるでしょう。

5-2.手続きにかかるストレスが軽減される

残業代手続きは手間も時間もかかる作業が多く、また、これまで勤めた会社との交渉は精神的な負担も大きいものだといえるでしょう。

在職中であれ、そのほかの仕事に就いている場合であっても、残業代請求を個人で行う場合は、さまざまな場面で日常生活を圧迫してしまうことが予想されます。

弁護士に依頼することで、請求する本人自身が会社との直接の交渉をする必要がなくなります。

また、書類の準備なども任せることができるため、個人で残業代請求をするときよりも、種々の負担が軽減されるでしょう。

5-3.スムーズに残業代請求できる可能性が高い

残業代請求について、ノウハウや知識、実績のある弁護士へ依頼した場合、スムーズに残業代請求ができる可能性が高いといえます。

法的トラブルが長く続いてしまうことは、費用的にも、精神的にも、負担が大きいです。

また、手続きに必要な証拠集めや残業代の計算も、個人で行う場合、時間を要してしまう可能性があります。

専門の知識を持った弁護士へ依頼すれば、交渉のみで解決する望みがあり、訴訟まで進まず、早めに請求内容について合意できるかもしれません。

ただし、スムーズな解決をするためには、弁護士選びが重要です。

必要最低限の時間と費用で、望んだ結果を得るためにも、弁護士選びは慎重に行い、解決したい問題について専門の知識や実績がある人を選ぶようにしましょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

6.歩合給に関するよくあるQ&A

歩合給と残業代に関するよくあるQ&Aをご紹介します。

残業代請求を検討されている歩合給の方は、弁護士に相談する前に一読しておくことをお勧めします。

残業代請求の検討の際の参考にしてみてください。

6-1.歩合給の中に残業代が含まれていると言われましたが、本当ですか?

歩合給制度の人が会社に残業代請求をしようとしたら、歩合給の中に残業代が含まれると説明されるケースがあります。

会社で、固定残業代制が採用されていた場合、残業代がすでに給与に含まれていることがありますが、その区別が明確でなく、あいまいな場合は、残業代請求ができる可能性があります。

固定残業代制とは、事前に決めておいた一定の残業時間を給与に含める制度であり、みなし残業制とも呼ばれます。

固定残業代制では、残業時間がみなし残業時間を超えない場合でも、固定の残業代が支払われますが、他方で、残業時間がみなし残業時間を超えた場合には別途残業代が支払われます。

固定残業代制を会社が導入するには、労働契約において、固定残業代制について、合意をしておく必要があり、また、通常の労働に対する賃金と、固定残業代分の額が明確に分かれていなくてはいけません。

これらの条件に適合していなければ、固定残業代制として残業代が含まれているとはいえない可能性が高いといえるでしょう。

6-2.残業代請求には時効がありますか?

残業代請求にも消滅時効があります。

残業代請求の時効は、2020年4月1日以降に発生したものについては、3年、それ以前のものについては、2年と定められています。

労働基準法の改正によって、残業代の時効期間が延長され、条文では2年から5年に変更されましたが、附則により当分の間は3年で運用されることとなりました。

消滅時効の起算点は、それぞれの賃金支払日(給料日)からとなっており、請求をしなければ、毎月、請求できた残業代が消滅していくことになります。

ただし、消滅時効は、会社側が時効の援用をすることで有効となるため、会社側が主張しない限りは未払い残業代を請求することが可能です。

消滅時効が来たからといって、未払い残業代に含めずに計算すると損をする可能性があるといえるでしょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

7.まとめ

歩合給であっても、残業代請求ができるケースがあります。

しかし、残業代請求ができるかどうかの判断はケースによってことなります。

また、個人で残業代請求をすることは難しく、証拠集めに時間を要したり、会社との交渉が難航したりする可能性が否定できません。

スムーズに残業代請求をするためにも、未払いの残業代がある方、または残業代について不安や疑問点のある方は、一度、法律の専門家である弁護士に相談してみることをお勧めします。

私たち法律事務所リーガルスマートは、未払いの残業代請求をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

この記事をSNSでシェア!

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
ホーム お役立ちコラム 労働問題 残業代請求 歩合給制は残業代出る?残業代の計算・請求方法を弁護士が解説!

電話受付時間 10:00〜17:30 (土日祝・年末年始を除く)