残業代請求

月30時間残業は多い?違法性や残業代、計算方法を弁護士が解説

月30時間残業は多い?違法性や残業代、計算方法を弁護士が解説
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業種によって発生する残業時間はさまざまですが、月30時間の残業時間は多いのでしょうか。今回の記事では、そもそも残業とは何か、月30時間の場合の残業代の計算方法、残業代が支払われない場合の請求方法などについて詳しく解説します。

残業代の計算方法を知りたい方や、サービス残業をさせられて悩んでいる方は、ぜひ最後までお読みください。

1.そもそも残業とは

仕事をする上でよく使われる「残業」という言葉ですが、そもそも「残業」の定義は何でしょうか。決まった就業時間を超えて働くことというイメージをお持ちの方は多いと思いますが、ここでは「残業」について詳しく説明します。

まず、残業には「法(定)内残業」と「(法定)時間外労働」の2種類があります。以下では、それぞれの残業の種類を説明します。

1-1.法(定)内残業

法(定)内残業とは、法定労働時間の範囲内であって、かつ所定労働時間を超えて働くことをいいます

「法定労働時間」とは、1日8時間、週40時間以内の労働時間をいいます。法定労働時間は労働基準法32条で規定されており、原則として1日8時間、週40時間を超えて労働者を働かせることを禁止しています。

また、「所定労働時間」とは、会社の就業規則などで定められている就業時間をいいます。例えば、就業規則で始業時刻が午前9時、終業時刻が午後5時までであり、お昼休みが1時間だったとすると、所定労働時間は7時間と計算されます。

この場合において、7時間を超えて8時間労働したとすると、所定労働時間を超えて労働をしたことになりますが、法定労働時間を超えて労働はしていません。この場合の1時間の労働を「法(定)内残業」といいます。

1-2.(法定)時間外労働

(法定)時間外労働とは、法定労働時間を超えて働くことをいいます。先ほどのとおり、法定労働時間とは1日8時間、週40時間と定められていますから、例えば1日9時間働くと1時間の時間外労働をしたことになります。

「残業」といった場合、一般的には時間外労働を指すことが多いでしょう。以下では、残業=時間外労働を前提として解説していきます。

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2.月平均30時間の残業は多いのか

土日祝日が休日という会社の場合、月の出勤日数はおおよそ20~22日くらいです。月20日が出勤日数だった場合、月平均30時間の残業は1日あたり約1時間半となります。

厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査 令和3年分結果速報」によれば、日本人の平均残業時間は月13.2時間となっています。1日あたりに換算すると約40分です。意外と少ないと思われた方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省が発表した数字を基準とすれば、月平均30時間の残業は多いといえるでしょう。月平均30時間の残業が毎月のように続くのであれば、一般的には残業が多い会社であるといえます。

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3.月30時間残業の場合の残業代と計算方法

月30時間残業をした場合の残業代はどれくらいになるのでしょうか。残業代は労働形態によって異なりますが、ここでは一般的な月給制における残業代とその計算方法を説明します。

なお、月給制とは、月単位で給与を決定する給与形態のことをいいます。日本の会社では一般的に月〇万円などという形で給与を定めている場合が多いでしょう。他には年俸制や日給制がありますが、以下では月給制をもとに月30時間の残業代を計算します。

残業代を計算するためには、まず「基礎賃金」と「割増賃金」という概念を説明する必要があります。

「基礎賃金」とは、1時間あたりの賃金をいいます。月給制の場合、月の平均労働日数に1日あたりの所定労働時間を掛けると、月あたりの総労働時間が求められます。月給額を月あたりの総労働時間で割れば、基礎賃金が求められます。なお、基礎賃金の計算における月給額には通勤手当や住宅手当は含まれません。

(月給額)÷{(1日の所定労働時間)×(月間平均所定労働日数)}

例えば、月給が30万円、月間平均所定労働日数が20日、1日の所定労働時間が8時間とすると、基礎賃金は以下の式で求められます。

基礎賃金 = 300,000(円) ÷ (8(時間) × 20(日))=1,875(円)

次に、「割増賃金」とは、時間外労働を行った場合に支払われる賃金をいいます

時間外労働をした場合は割増賃金を支払わなければならず、割増賃金は基礎賃金の1.25倍以上と労働基準法で定められています。つまり、上記の計算式により基礎賃金が1,875円であったとすると、割増賃金は1,875×1.25=2,344円と計算されます。

以上より、月30時間残業した場合の残業代は以下の式で計算されます。

30(時間) × 2,344(円) = 70,320(円)

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4.月30時間の残業は違法なのか?

先ほども説明したとおり、労働基準法32条では、1日8時間、週40時間を超えて労働者を働かせることはできないと定められているため、そもそも時間外労働をさせてはいけません。よって、月30時間の残業は違法とも思えます。

もっとも、労使間で「36協定」を締結することにより、会社は一定の時間外労働をさせてもよいことになっています

「36協定」とは、労働基準法36条で定められた時間外労働を認めるための条件であり、以下の2つの条件を満たすことにより時間外労働が可能となります。

①労働組合(労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)と協定を締結すること

②労働基準監督署への届出

36協定を締結することにより、月45時間、年360時間までの時間外労働が可能となります。よって、36協定を締結している場合には月30時間の残業をしても違法にはなりません。

もっとも、年360時間を超えた場合は違法になります。

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5.どのような場合に残業代請求を検討すればよいのか

法定労働時間を超えて時間外労働をした場合、労働者は当然に残業代を請求する権利を有します。通常であれば会社が残業代を計算して基本給とともに支給されることが多いでしょう。

しかし、会社によっては割増賃金による計算方法が間違っていたり、残業代を支払ってくれなかったりする場合があります。そこで、どのような場合に残業代請求を検討すべきかを以下では解説していきます。

5-1.割増賃金を支払わない

先ほどもご説明したように、時間外労働をした場合には割増賃金が支払われなければなりません。割増賃金は基礎賃金の1.25倍です。給与明細をチェックし、残業代が基礎賃金をもとにして計算されているような場合は、割増賃金との差額について残業代請求を検討しましょう

また、割増賃金は深夜残業や休日残業など残業の種類によっても異なってきます。

例えば、休日に勤務するいわゆる休日出勤の場合、基礎賃金の1.35倍以上を割増賃金として支払う必要があります。また、22時から5時までの間の勤務であるいわゆる深夜残業の場合、時間外労働の1.25倍に0.25倍を加えた1.5倍を割増賃金として支払わなければなりません。

深夜残業や休日出勤をしたのに割増賃金の計算が誤っているような場合も、その差額について残業代請求を検討しましょう

5-2.みなし残業制度の悪用

会社によっては、「みなし残業制度」(固定残業制度)を採用しているケースがあります。「みなし残業制度」とは、基本給とは別に、残業したかどうかにかかわらず所定時間分の残業をしたとみなし、その残業代を含めて給与として支給する制度をいいます

例えば、給与にはみなし残業代10時間が含まれるという条件で採用されたとします。この場合において、時間外労働の割増賃金が1時間あたり2,000円だったとすると、2,000×10=20,000円があらかじめ残業代として給与に含めて支給されます。

この20,000円はみなし残業代なので、実際に残業したかどうかは関係がありません。時間外労働がゼロだったとしても、10時間残業したとみなして20,000円が給与に含めて支給されます。

会社の中にはこのみなし残業制度を悪用し、残業代を支払わないケースがあります。例えば、「うちは基本給の中に残業代が含まれているから残業代は出ない」と告げて、いくら残業をしても残業代は出ないかのような口実に使う場合があるのです。

しかし、みなし残業制度は、残業代が一切出ないという制度ではありません。あらかじめ含まれるとされた残業時間を超えて残業をした場合、その残業時間についてはみなし残業代に加えて残業代を支払わなければなりません。

例えば、みなし残業代10時間が含まれるとされている場合において、15時間残業をした場合、10時間のみなし残業時間を5時間超えていますので、5時間分についてはみなし残業代に加えて残業代を支払う必要があります。

よって、会社がみなし残業代しか支払わない場合、その差額について残業代請求を検討しましょう

5-3.始業時間や終業時間の不正操作

会社によっては、拘束時間が開始しているのに始業時間を遅らせるよう指示したり、逆に終業時間を超えて労働時間が発生しているにもかかわらずタイムカードを押すよう指示したりといったケースがあります。

これは明らかに違法なケースですが、ブラック企業と呼ばれる企業の場合、こういったことが横行しているケースがあるのです。この場合、当然残業代請求を検討していくことになります。もっとも、タイムカード上は残業していないことになっていたりして記録が残っていない場合もあります。その場合は後述する方法で証拠を収集するようにしましょう。

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6.未払い残業代の請求方法

会社に対して未払い残業代を請求するためには、段階を踏んで請求する必要があります。以下では、段階に応じた請求方法を詳しく解説します。

6-1.交渉による請求

会社が残業代を支払っていないことが判明した場合、まずは会社と話し合ってみましょう。会社のミスによる場合は残業代を支払ってくれるかもしれません。

しかし、意図的に残業代を支払っていない場合は会社と話し合いをしても難しい場合が多いでしょう。その場合は弁護士に依頼して交渉を代理してもらうか、別の方法を取るほかありません。

6-2.労働審判

交渉によっても会社が残業代を支払ってくれない場合、法的措置を取ることになります。未払い残業代を請求するための法的措置としては訴訟が思い浮かぶ方が多いと思いますが、労働問題についてはまず労働審判を検討しましょう。

労働審判とは、会社と労働者の間での労働トラブルを迅速に解決するために設けられた手続きです。未払い残業代のほか、解雇手続きの無効を争ったりする場合に利用されます。

労働審判は相手方の住所や営業所等または労働者が勤務している事業所等を管轄する地方裁判所に申し立てます。

原則として3回以内の期日で終了することとされているので、申し立てから解決までの期間が短いことが特徴です。裁判所が公表している「労働審判手続の概要」によれば、平均審理期間は80.6日となっています。

労働審判の手続きでは、審判官によって話による解決(調停)が図られ、話し合いが難しい場合には労働審判が下されます。

労働審判の結果に納得できない場合、異議を申し立てることができます。異議が申し立てられると、審判はその効力を失い、通常の訴訟手続きへと移行します。

6-3.訴訟

労働審判は労働者と会社間の労働トラブルのみを扱う手続きですが、訴訟はそのような制限はないため、労働トラブルとはいえない紛争の場合でも提訴することが可能です。また、労働審判の結果に納得できない場合は、異議を申し立てることによって訴訟に移行させることができます。

訴訟は労働審判と異なり回数制限がないため、労働審判よりも時間がかかります。早くても半年、場合によっては1~2年程度の時間がかかることもあります。

未払い残業代の額が60万円以下の場合、少額訴訟という手続きを取ることも可能です。少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる訴訟手続きで、簡易裁判所に訴えます。原則として1回の審理で終了し、直ちに判決が言い渡されることが特徴です。

未払い残業代が60万円以下の場合、少額訴訟であれば迅速な解決を目指すこともできます。

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7.残業代請求を弁護士に依頼するメリット

残業代請求の方法は以上のとおりですが、本人で行うよりも弁護士に依頼したほうがさまざまなメリットがあります。以下では、弁護士に依頼する主なメリットを3つ挙げて解説します。

7-1.交渉による解決の確率が上がる

労働者本人が会社と交渉をすると、会社に言いくるめられてしまう可能性がありますし、何より交渉の負担が大きいです。

弁護士に依頼すれば、会社の主張が法的に誤っている場合には的確に指摘した上で交渉を行ってくれますし、会社側も弁護士が代理人についたとなると適当な態度を取ることはできなくなります。弁護士に依頼することによって早期に解決できる可能性は高まるでしょう。

7-2.適切な証拠収集が可能である

弁護士に依頼した場合、法的に適切な交渉ができる他、その主張を支える証拠の収集を適切に行ってくれます。未払い残業代請求の場合、タイムカードを早めに切るよう要求されたりして記録が残っていないケースが多くみられます。そのような場合であっても、メールのやりとりや、パソコンの稼働状況などから労働時間をある程度立証することは可能です。労働問題に強い弁護士であれば残業代に関する証拠の収集の経験が豊富ですので、心強い味方となるでしょう。

7-3.あらゆる法的措置が可能

弁護士は労働者本人に代わってあらゆる法的措置を取ることが可能です。本人が労働審判や訴訟を行うことも可能ですが、法的手続きに慣れていない場合が多いため、心身ともに負担が大きいでしょう。弁護士に依頼すれば本人が出頭する必要はなく、心理的な負担は軽くなります。

また、労働問題に強い弁護士であれば、労働審判や労働訴訟の経験が豊富ですので、本人が手続きを行うよりもより多くの残業代を請求できる確率は高まるでしょう。

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8.残業に関するよくあるQ&A

以下では、残業に関するよくある質問を3つ挙げてそれぞれについて具体的に回答します。似たような疑問をお持ちの方は参考にしてみてください。

8-1.残業をした証拠がないのですが、残業代を請求することは可能でしょうか。

会社によってはタイムカードがなかったり、あったとしてもタイムカードを早く切るよう強要されたりして、勤務時間の立証が困難な場合があります。

そういった場合でも、パソコンのログイン履歴やメールの送受信時間から労働時間を立証することは可能です。パソコンを使わない職場であったとしても、公共交通機関の乗降履歴、業務日誌等から労働時間を立証することが可能なこともあります。

よって、タイムカードによって労働時間が管理されていなかったり、実際よりも短い時間しか労働時間が記録されていなかったとしても残業代を請求することは可能です。まずは労働問題に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。

8-2.裁量労働制の場合、残業代は請求できないのでしょうか。

裁量労働制とは、簡単にいうと、あらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」や「企画業務型裁量労働制」といった種類があり、高度な専門性を有する職業や企画・分析等に従事する者に適用されます。

例えば1日8時間働いたものとみなす裁量労働制が採用されている場合、実際の労働時間が1日5時間であったとしても8時間働いたものとみなされます。逆に、1日13時間働いたとしても8時間働いたものとみなされるため、5時間分の残業代は出ないことになります。

よって、裁量労働制の場合、1日8時間以上働いた場合でも残業代は請求できないのが原則です。もっとも、裁量労働制の場合は残業代が一切請求できないというわけではなく、深夜残業や休日出勤をした場合は割増賃金による残業代が支払われることになります

8-3.残業代の請求には時効があると聞きましたが本当でしょうか。

残業代の請求には時効が存在するというのは本当です。以前は賃金の請求を行うことができる時から2年間行使しない場合は時効によって消滅するとされていましたが、現在では労働基準法が改正され、賃金の支払請求権の時効は2年から3年に延長されました

よって、賃金の請求を行うことができる時から3年間行使しないと残業代の請求はできなくなってしまいます。時効によって消滅してしまう前に、早めに弁護士に相談してください。

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9.まとめ

残業代の計算方法、請求方法などについて詳しく解説してきましたがいかがでしたでしょうか。

月30時間の残業は、平均的な残業時間よりは多いといえるでしょう。コンスタントに月30時間の残業が発生する職場は、人によっては負担かもしれません。

残業が発生した場合、労働者には残業代を請求する権利があります。

みなし残業制度を採用する会社であっても残業代は請求できますし、労働時間がタイムカードで記録されていなくても残業代は請求できます。

労働問題に強い弁護士であれば、適切な証拠収集のアドバイスをしてくれたり、本人の代理人となって法的措置を取ることが可能です

残業代が請求できるか知りたい方や、会社が残業代を支払ってくれず悩んでいる方は、時効によって消滅してしまう前に早めに弁護士に相談してみましょう。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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