残業代請求

フレックスタイム制での残業の考え方と計算方法を弁護士が解説!

フレックスタイム制での残業の考え方と計算方法を弁護士が解説!

会社によっては「フレックスタイム制」を導入しているところもあります。

これは労働者側にとってもメリットが多い制度ではあるのですが、仕事時間に対する自由度が高いと残業に関して問題になることがあるのです。

本記事では、フレックスタイム制での残業の考え方について弁護士が解説します。

1.フレックスタイム制における時間外労働について

フレックスタイム制を導入している場合における残業について理解するためには、「フレックスタイム制」と「時間外労働」に関する基本的な知識を身に着ける必要があります。

そのうえで、両者の関係性がどのようなものであるのかについて見ていきましょう。

1-1.そもそもフレックスタイム制とは

「フレックスタイム制」とは、一定の期間についてあらかじめ定められている総労働時間があって、その範囲内において日々の始業と終業の時刻や働く時間についてを労働者自身が自由に決めることができる制度です。

(1)フレックスタイム制の基本

フレックスタイム制を導入していない会社の場合だと、明確に始業と終業の時間が決められており、労働者はその範囲内において厳格に労働時間を管理されることになります。

フレックスタイム制を導入している場合だと、たとえば1カ月に働く時間が160時間と決められている会社であれば、1カ月間の労働の合計時間が160時間になれば1日10時間働く日や6時間で終業する日があってもよいということになるのです。

ただし、完全に労働者側が自由に就業時間を決めて良いというわけではなく、フレックスタイム制を導入している会社は労働者に対して「コアタイム」という、その時間には必ず出勤しなければならない時間を設けることができます。

コアタイムを除いた時間を「フレキシブルタイム」として、その時間を労働者は自由に調整して労働時間を自分でコントロールすることができるのです。

(2)フレックスタイム制を導入するメリット

フレックスタイム制を導入することには、会社側・労働者側それぞれにメリットがあります。

労働者側のメリットとしては、会社が設定する始業・終業時間にとらわれずに、自身の都合に合わせて労働時間を決めることができる点です。

人によっては家事や子育てなどで特定の時間を消費しなければならなくなり、それゆえに会社が設定する就業時間についてマッチングできずに就職先を探すのが困難になることがあります。

しかし、フレックスタイム制を導入している場合であればフレキシブルタイムの時間内であれば自由にコントロールできるため、自身の都合に合わせて労働時間を調整することで必要な時間を確保しつつ会社に勤めることができるのです。

また、フレックスタイム制を利用することでプライベートの時間を充実させることができるため、日々の生活を充実させつつストレスの発散もしやすくなるでしょう。

フレックスタイム制を導入することは、会社側にもメリットがあります。

フレックスタイム制を導入することにより、労働時間の制約に縛られず、採用に応募してもらえる人数が多くなるため、人手不足を解消しやすくなります。

また、従業員のプライベートを充実させやすくなることで仕事へのモチベーションを高めることにもなり、生産性が向上する可能性があるのです。

このように、フレックスタイム制を導入することで労使間それぞれにメリットがあり、関係するさまざまな人に対して利益をもたらすことになるでしょう。

1-2.時間外労働と残業(法外・法内)について

次に、時間外労働について解説します。

「時間外労働=残業」というイメージをお持ちの方もおられると思いますが、厳密にはこれらは同じものではありません。

残業には実は2種類あり、法律的にはそのうちの一つを時間外労働と表現します。

(1)法外残業

「法内残業」とは、労働基準法により定められている「1日8時間」「1週40時間」という規制を超えて労働者を働かせる残業のことで、これを一般的に「時間外労働」というのです。

基本的にこの規制を超えて労働者を働かせることは禁止されているのですが、労使間で「36協定」を結んでいる場合であれば、1日8時間、週40時間を超えて働くことが可能です。ただし、36協定さえあれば無制限に時間外労働させることができるというものではなく、原則として「月45時間」「年360時間」が上限となっています。この上限を超えるような残業については完全に違法となります。

従業員に法外残業をさせる場合は、法律の規定に従って割増賃金を支払う必要がある点が法内残業との違いです。

(2)法内残業

「法内残業」とは、会社の設定している就業時間を超えて残業するものの、労働基準法が規制する労働時間を超えない時間内で行う残業のことです。

たとえば、会社が設定する終業時間が18時だったとして、1日の労働時間(休憩時間を除く)が7時間であったとしましょう。

この条件下で18時40分まで働いた場合、40分が残業時間になりますが、1日の労働時間はもともと7時間なので、この日の労働時間は合計で7時間40分になり、労働基準法が定める「1日8時間」という規制の範囲内で働くことになります。

この場合だと時間外労働は発生していないことになりますので、実質的には40分の残業であっても、割増賃金は支払われずに通常の賃金として計算されることになるのです。

1-3.清算時間と総労働時間とは

フレックスタイム制を導入する場合における残業の考え方を理解するためには、あと「清算時間」と「総労働時間」について理解しておきましょう。

「清算時間」とは、フレックスタイム制において労働するべき時間を定めた期間のことで、現在では最長3か月となっています。

「総労働時間」とは、フレックスタイム制を導入している会社の労働者が清算期間において労働すべき所定労働時間のことで、フレックスタイム制ではこの総労働時間を超えて働くと残業とみなされるのです。

1-4.フレックスタイム制における時間外労働

それでは、ここまで解説してきたことをおさらいしつつ、フレックスタイム制における時間外労働とはどのように扱われるのかについて解説しましょう。

まず、労働者は労働基準法が定める労働時間を超えて労働することは禁止されていますが、労使間で36協定を結んでいるとその規制の上限が上がります。

フレックスタイム制においても36協定が結ばれていれば時間外労働が認められますが、フレックスタイム制の場合だと1日8時間・1週40時間を超えても確実には時間外労働には該当しない可能性があるので注意が必要です。

フレックスタイム制において時間外労働に該当するのは「法定労働時間の総枠を超えた範囲」となり、これは以下の計算式で求められます。

法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間(40時間)×清算期間の暦数/7日

なお、フレックスタイム制の清算期間を3か月とした場合は「清算期間全体の労働時間が週平均40時間を超えた」「1か月の労働時間が週平均50時間を超えた」場合に時間外労働として扱われます。

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2.フレックスタイム制における残業代の計算方法

次に、フレックスタイムで発生した時間外労働に対する残業代の計算方法について解説します。

2-1.残業代の計算方法

原則として法外残業に対する残業代は、以下の計算式で求めます。

残業代=1時間あたりの基礎賃金×残業時間×割増率

上記計算式の「1時間あたりの基礎賃金」については、以下の計算式で求めます。

1時間あたりの基礎賃金=基礎賃金÷年間における1か月平均所定労働時間

「割増率」については、以下の内容となっています。

  • 通常の法定時間外労働:25%以上
  • 法定時間外労働(月60時間超):50%以上※中小企業は令和5年4月から
  • 深夜労働:25%以上
  • 休日労働:35%以上
  • 法定時間外労働かつ深夜労働:50%以上
  • 休日労働かつ深夜労働:60%以上

「基礎賃金」とは、支払われる給与の総額から以下の手当や賃金を除いた金額です。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住居手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

フレックスタイム制の残業時間についても、総労働時間を超えて働いた時間を「法内残業」と「法外残業」に分ける必要があり、法内残業であれば通常の賃金を、法外残業に該当する場合は割増賃金を支払う必要があります。

2-2.有給休暇を取得した場合、労働時間の計算はどうなる?

フレックスタイム制において有給休暇を取得した場合は、労使協定で定めている「標準となる1日の労働時間」の時間数分について働いたとみなして実労働時間に加えて計算します。

半日単位での有給休暇については、労働者が希望して会社側が同意した場合であれば、仮に労使協定が締結されていなくても日単位での取得について阻害とならない範囲で取得することが可能です。

半日単位の有給休暇を取得した場合には「標準となる1日の労働時間」の半分を分単位で切り上げて、これを実労働時間に加えます。

ただし、残業代の計算においては「実際に働いていた時間(実労働時間)」が基礎となるので、有給休暇によって発生した労働時間は除外されます。

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3.フレックスタイム制で残業が違法になるケースとは?

先ほども触れていますが、仮に36協定が労使間で締結されていたとしても、残業させすぎると違法になるケースがあります。

フレックスタイム制においてもそれは同様です。では、どのようなケースだとフレックスタイム制において残業が違法になるのでしょうか。

3-1.(1)時間外労働の上限を超える残業命令が下されている

仮に36協定が締結されているとしても、労働時間の上限は上限は原則として「月45時間以内」「年360時間以内」が基本であり、臨時で特別な事情がある場合を除いてこれを超えることはできません。

臨時的で特別な事情があるために労使が合意した場合であったとしても、次の条件を順守する必要があります。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
  • 時間外労働と休⽇労働の合計が2か⽉~6か⽉の平均がすべて1か月あたり80時間以内
  • 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは年6か⽉が限度

フレックスタイム制においても原則として時間外労働についての上限規制は適用され、もしこれに違反した場合には会社や経営者に対して6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が科される可能性があります。

3-2.(2)時間外労働に対する適正な残業代が支払われていない

フレックスタイム制においては、清算期間における労働時間が総労働時間(所定労働時間)に達しなかった場合は、不足した労働時間を次の清算期間に繰り越すことが可能です。

ただし、総労働時間を超えて働いた分については、次の清算期間に繰り越すことはできませんので、その分については残業代が支払われていなければ違法となります。

そのため、そのケースにおいては労働者は会社に残業代を請求することができます。

もし、フレックスタイム制において時間外労働に対する適正な残業代が支払われていない場合については会社側と交渉する必要がありますが、今後訴訟などの手続きに移行する可能性を考えると早めに弁護士に相談して今後の対応について話し合うことをおすすめします。

3-3.(3)時間外労働や残業代で気になる点は、弁護士への相談も検討を

フレックスタイム制は通常の「会社が労働時間を決定するケース」と異なり、労働時間制についてルールが異なるため時間外労働の算出方法や残業代の支払いルールをめぐってトラブルに発展することが少なくありません。

「法定労働時間の総枠を超えて働いているのに割増賃金がない」「時間外労働の上限規制を超えて働いている」などのように、会社側の違法行為が認められる場合には未払い残業代の支払いや労働時間管理の是正について会社側に求めることが可能です。

この点について会社側と交渉するにあたっては、専門家に依頼しなくても個人で会社と交渉することも不可能ではありません。

ただし、未払い残業代の請求には時効があり、不当な残業についての証拠集めが難しいケースもありますので、お悩みやトラブルを抱えている方はできるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば法的根拠に基づくアドバイスはもちろんですが、代理人として会社と直接交渉することも可能ですし、会社に対して証拠の開示を求めることも可能です。

弁護士に相談するだけで交渉が有利に働く可能性が高まりますので、依頼料を支払う以上のメリットを得られるでしょう。

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4.フレックスタイム制で未払い残業代を請求する方法

労働に対する適正な残業代が支払われていないのであれば、会社側に対して適切な対応を講じて、適正な残業代を請求する必要があります。

個人で交渉して会社側が納得すればそれで問題ないのですが、少なからず会社側がこちらからの交渉に応じないケースも少なくありません。

そうなると、もはや個人での交渉だけでこの問題を解決することは難しいです。

フレックスタイム制となると、時間の管理など難しい点も少なくないでしょう。

しかし、残業に該当する労働時間が発生しているのであれば、会社から残業に相当する対価を支払ってもらうべきであるという評価を下さざるを得ません。

その交渉および、会社側が交渉に応じなかった場合の今後の訴訟手続きなどについては、個人で対応することも不可能ではありませんが、これは労使関係のプロの目線からはお勧めできない方法なのです。

会社側は、自身が雇用している相手というだけあって、交渉に対して強みを持って対応します。

ですが弁護士が側にいる場合だと会社側も強硬にでることが難しくなり、フレックスタイム制に対する適正な残業代について適正に交渉に応じてくれる可能性が高まるのです。

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5.未払い残業代の請求を弁護士に相談、依頼するメリット

フレックスタイム制においては、労働者側の自由な労働時間の設定について、残業代の支払いについてトラブルになることも少なくありません。

そのため、未払い残業代が発生している現状において、その問題を弁護士に相談することは決して間違っていることではありません。

弁護士に相談することなく事態を解決することは不可能ではありませんが、様々なデメリットを受けることになるでしょう。

こうしたデメリットを一気に解消する方法として、弁護士の助力を得ることがおすすめなのです。

交渉にあたっては「相手は弁護士を連れている」という点が会社側にとってプレッシャーとなり、交渉を有利に進めることができる可能性が高まります。

また、訴訟手続きにおいては証拠集めや裁判手続きを代行してもらうことが可能であるため、ご自身は仕事やプライベートにきちんと時間を取ることが可能です。

そのため、費用が掛かっても弁護士に事態の収束を依頼したほうが、手っ取り早く解決に導くことができる手段になります。

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6.フレックスタイム制に関するよくあるQ&A

最後に、フレックスタイムに関係する質問について、よくある質問についてまとめました。

6-1.フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制とは、企業側が設定するコアタイムを除く部分について自由に労働時間を設定することができる労働時間制のことです。

自由に労働時間を決められるといっても、いわゆる「残業時間」というものは定められるため、時間外労働に関する残業代が発生する可能性はあります。

6-2.フレックスタイム制において残業代が発生する原因になるのは?

労働者は労働基準法が定める労働時間を超えて労働することは禁止されていますが、労使間で36協定を結んでいるとその規制の上限が上がります。

フレックスタイム制においても36協定が結ばれていれば時間外労働が認められますが、フレックスタイム制の場合だと1日8時間・1週40時間を超えても確実には時間外労働には該当しない可能性があるので注意が必要です。

フレックスタイム制において時間外労働に該当するのは「法定労働時間の総枠を超えた範囲」となり、これは以下の計算式で求められます。

法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間(40時間)×清算期間の暦数/7日

なお、フレックスタイム制の清算期間を3か月とした場合は「清算期間全体の労働時間が週平均40時間を超えた」「1か月の労働時間が週平均50時間を超えた」場合に時間外労働として扱われます。

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7.まとめ

フレックスタイムは、労働者側に多くのメリットをもたらす一方で、残業に関する決まりについては曖昧になることも珍しくありません。

どれだけ労働者にメリットがあるといっても、法律の決まりを妨げることはないのです。

ご自身の働き方について問題があると判断した場合は、早めに弁護士に相談して、早期の解決を臨むことをおすすめします。

私たち法律事務所リーガルスマートは、未払いの残業代請求をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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