残業代請求
営業職は営業手当があるから残業代なしは本当?弁護士が解説!
目次
1.そもそも営業手当とは
営業職の人に対して支払う手当のことです。営業の役割や責任を持って仕事を行うようにという意味もあり、会社から支給されることがあります。
営業手当については、法律で支給の条件や金額も決まっていないため、会社によって異なります。たとえば、毎月一定額の3万円程度を営業職の人に支払っているケースもあるでしょう。
また、外回り営業に必要な靴やスーツ、カバンなど、営業にはさまざまな経費が発生するため、身だしなみを整えるようにという目的で支給されることもあります。
このように、社外の営業活動にて、金銭的な負担を補填するために支払われる営業手当ですが、残業代の代わりに支払われていることも少なくありません。
その場合、「基準内賃金」または「基準外賃金」であるかを明確にする必要があります。
以下に、営業の目的や基礎内賃金、基礎外賃金について解説します。
1-1.営業手当の目的
営業手当は、営業をスムーズに行うことを目的としています。
たとえば、営業手当の目的は以下のとおりです。
- 身だしなみを整えるための費用として
- ビジネスマナーなどの責務に対して
- 接待の場所、飲食代などの交際費として
- 毎月見込まれる残業代の代わり
営業職は、取引先との信頼獲得をするために、接待することが多い傾向にあります。
たとえば、ゴルフにいったり、打ち合わせを兼ねた食事会だったりなど、会社外で使うお金が増えるでしょう。
これらは会社の経費として、落とすこともできますが、手持ちがなければすぐに対応できないため、支給した営業手当から補うようにという目的で支給されることもあります。
また、時間外手当の代わりとして、営業手当に含んで支給している企業もあります。営業職は、自宅から直接取引先へ行ったり、早出出勤や残業もよくあるでしょう。このようなイレギュラーな勤務が多いため、固定残業代として支給されることもあります。
1-2.基準内賃金
基準内賃金とは、残業代の基準になる賃金のことです。固定されている基本給や、役職手当、交通費など営業に関わる賃金が対象です。
営業手当に関しては、身だしなみを整えるための費用や、営業活動する上で必要な費用として支給される場合は、基準内賃金となります。
たとえば、以下の費用を営業手当とする場合は基礎内賃金とされます。
- 靴代
- スーツ代
- 取引先との接待代
- 手土産代
営業という職に対して支払われる手当のため、職務手当と同じ扱いです。
基礎内賃金に含まれるか、含まれないかというのは、残業代に大きく関わってきます。残業があった場合には、営業手当を含んで計算しなければなりません。
たとえば、基本給25万円、営業手当3万円が支給され、総支給額が28万円と仮定します。
この場合に、残業があった場合、3万円を含めた28万円を基準として、残業代を計算することとなります。
1-3.基準外賃金
基準外賃金とは、労働時間外に対して支払われる賃金です。また、毎月固定での支給がされておらず、働く月によって変動して金額が変わる賃金のことを指します。営業手当を残業手当の代わりとして支払っている場合などが挙げられます。
残業代に代えて、営業手当として支払うと会社と労働者が雇用契約などで内容を確認し、同意していれば、法律上は営業手当を残業手当とみなして問題ないとされています。
営業職は、取引先へ行ったり、接待したりで、いつ終業しているか分からない状況があります。そのため、労働時間の把握が難しいため、固定で営業手当を払っている会社も多いでしょう。
ただ、基準外手当として営業手当を支給する場合は、何時間分の時間外手当であるのか、明確にしなければ、トラブルにつながることもあるため注意が必要です。
2.営業手当が出るため外回りは残業代なしが当たり前は本当?
営業職の人は、営業手当をもらっているから残業代はでないと認識している方も多いでしょう。半分は正しく、半分は間違っています。
営業手当を支給されても残業代は別として支払われることもあります。
- 「営業手当」が残業代の代わりになるとは限らない
- 労働時間によっては「歩合給制」や「みなし労働時間制」でも残業代は支給される
- そもそも「みなし労働時間制」が適用されないケースも
特に、みなし労働時間制という制度が残業代に大きく変わってきます。
上記3つのケースを以下に詳しく解説します。
2-1.「営業手当」が残業代の代わりになるとは限らない
営業職は時間外労働も多く、残業代の代わりとして営業手当を支払っている会社もあります。その場合、何時間分の残業代であるか、きちんと明確にしなければならない決められています。
たとえば、月20時間の残業代として5万円の営業手当が支払われていた場合、30時間残業すると、10時間分の残業代が支払われていないことになります。
よって、会社は10時間分の残業代を営業手当とは別に新たに支払わなければなりません。
しかし、営業手当を支払っているから残業代は払えないなどと言う会社も少なくないため、どの目的で営業手当が支払われているのか、会社と相違がないか、確認しましょう。
もし、会社が支払わないといった場合には、違法となる可能性もあるため、弁護士に相談するのをおすすめします。
弊社は、未払い残業代請求をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分の無料相談も受け付けているため、お悩みごとがあればぜひお気軽にご相談ください。
2-2.労働時間によっては「歩合給制」や「みなし労働時間制」でも残業代は支給される
営業成績によって支払われる歩合給(インセンティブ)制度を導入している会社もあるでしょう。会社で定めた毎月の営業ノルマを上回り、売上につなげられればその分プラスαで支給される特別な手当ともいえます。
しかし、歩合給だからといって、残業代は支払わなくてもいいというわけではありません。歩合給であったとしても、以下の労働が行われていた場合は支給されます。
- 1日8時間、週40時間以上働いた場合
- 22時から5時の深夜に働いた場合
- 休日に労働をした場合
みなし労働時間制でもあてはまる場合は残業代は支給されます。みなし労働時間制とは、営業職によく使われる制度で、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ設定された時間を働いたとみなすものです。
営業職は外回り勤務であり、会社から離れた場所で働くことになります。そのため、休憩時間が取れているか、何時まで働いたのか把握することが困難だからです。
たとえば、8時間と定められた労働時間で、6時間または9時間働いたとしても、8時間働いたという扱いで給与計算されるという仕組みです。
しかし、みなし労働時間が8時間を下回る場合(6時間など)は、残業代は支給されません。8時間を超える時間(9時間)をみなし労働時間と定めている場合は、1時間分の残業代を支払う必要があります。
なお、「みなし労働時間制」を導入していても、深夜労働や休日出勤に対しては、割り増しで給与を支払わなければならないため、注意が必要です。
2-3.そもそも「みなし労働時間制」が適用されないケースも
しかし、「みなし労働時間制」が適用されないケースもあります。
- 1人ではなく、多人数で外回りをしていて、労働時間を管理する者がいるとき
- 電話で上司から指示を受けながら外回りをしているとき
- 会社内で仕事中、営業で外回りすることとなり、外回り終わり次第、社内に戻るとき
このような場合には、労働時間を把握できないとまでは言い切れないため、適用されません。
みなし労働時間制が適用されるのは、外で営業回りしていて、会社が労働時間をきっちり把握できない場合や、会社の具体的な指示に基づいて仕事を行っていない場合です。
現代では、携帯電話を持ち歩いているため、労働時間の把握ができないという言い分は認められないことが多く、制度の適用が認められていないことが多い傾向にあります。
みなし労働時間制が適用されないことがあるため、注意しましょう。
3.未払いの残業代を会社に請求する方法
未払い残業代を会社に請求する方法として3つ挙げます。
- 実際の労働時間が分かる証拠を集める
- 会社と交渉する
- 労働問題に詳しい弁護士への相談も検討を
営業職で営業手当をもらっているから残業代はないと思わないで下さい。働いた分の残業代を受け取るのは正当な権利です。上記の内容を行えば請求できる可能性も上がります。
では、以下に1つずつ見ていきます。
3-1.実際の労働時間が分かる証拠を集める
未払いの残業代を請求するのは、簡単なことではありません。残業代の請求の際は、実際に労働したという証明が必要です。特に、営業職の方は、外回りの仕事が多く、会社でタイムカードを押すことが少ないでしょう。
たとえば、会社の始業時間前に上司から電話で直接この場所へ営業に行くようにと指示があったとします。その場合、着信履歴により、指示された時間がわかります。その時間をメモしておくか、履歴にそのまま残しておくと、証拠になります。メールでのやり取りは具体的な内容を記しておくと安心でしょう。
また、会社の終業時間を過ぎてしまっていても、外回りが終わっておらず、時間外勤務となりそうな場合もあるでしょう。その際は、外回りを終えた時間をメモに残して下さい。
営業で使用する手土産など購入した領収書など、証明できそうなものは残しておくと証拠として使える可能性があります。
常に労働時間の管理を意識して、証拠集めをしておき、残業代が未払いになった際の証拠として使えるようにするとよいでしょう。
注意点として、メモを残す場合は、ただ記録するのではなく、具体的な指示の内容や、時間を記入するようにしておきましょう。
3-2.会社と交渉する
未払いの残業代があることが判明した場合は、会社と交渉しましょう。まず、交渉する前に最低限の準備をする必要があります。
- 残業代請求の最低限の知識を得る
- 労働時間がわかる証拠を集める
- 残業代を自分で計算してみる
もし、残業代の請求額が少なかった場合は自分で直接会社と交渉を試みてください。その際、上記3つはとても重要です。事前に準備しているかで残業代の請求を成功させることにつながるでしょう。
自分で交渉するメリットとしては、費用がかからないことです。証拠集めなどする際のメモ帳や、ボイスレコーダーなどの費用はかかりますが、最小限に抑えられます。
デメリットとして、残業代の計算や会社とのやり取りを自分でしなければならないことです。残業代の計算は複雑で、割り増し率も異なり、慣れない計算は難しく、時間が取られるでしょう。また、直接会社とのやり取りをしなければならないため、大きな負担がかかります。
このように、事前の準備やメリット、デメリットを把握したうえで、自分で会社に交渉するのも1つの手です。
3-3.労働問題に詳しい弁護士への相談も検討を
自分では、残業代請求や計算、証拠集めなど難しいと分かれば、労働時間に詳しい弁護士への相談も検討しましょう。
自分でやるとなると、時間や精神的ストレスもかかります。1人ですべてやらなければと追いつめられたり、請求すること自体、諦めてしまうこともあるでしょう。そのようにならないためにも、まずは弁護士に相談してみてください。
弁護士に相談することで、残業代の請求をどのように行えばいいのかサポートをしてくれます。
また、残業代請求の件を弁護士に相談しているという旨を会社に伝えるだけでも、対応が変わることもあります。
会社に未払いの残業代を支払ってもらうためには、法的に正しい主張に基づいて行うことが必要です。弁護士に相談、依頼して交渉してもらうことで、会社は未払いの残業代があることを認めざるを得なくなるでしょう。
まずは、弁護士に相談して、未払いの残業代があるかの確認と、証拠集めのアドバイスを受けていてもよいかもしれません。
弊社では、複雑な残業代計算や請求の経験が豊富にあるため、安心して任せられます。初回60分無料相談も行っているため、1人で悩まず気軽にお問い合わせください。
4.未払いの残業代請求を弁護士に相談、依頼するメリット
未払いの残業代請求を弁護士に相談、依頼するメリットとして、3つ挙げられます。
- 未払い残業代の見積もりや計算を行ってくれる
- 会社と対等に交渉ができる
- 労働審判や訴訟まで任せられる
自分で未払いの残業代の計算や会社への交渉もできますが、手間や時間が多くかかります。その点、弁護士に相談、依頼することでスムーズに進められるため、お任せするほうがよいでしょう。
以下にメリットを詳しく解説します。
4-1.未払い残業代の計算を行ってくれる
営業手当は残業代の代わりとして支払っていることもあるため、時間外労働をしても、残業にあたるかどうか、自分では判断できないことがあります。
しかし、弁護士に相談、依頼することで、残業代がいくらになるのか計算をしてくれます。
残業代を計算するためには、深夜残業や休日出勤、時間外労働など割り増し率が変わるため、計算が複雑です。給与計算を自分でしたことがない人にとっては難しく、調べながらやることになるため、時間もかかり、計算ミスも起こるでしょう。
また、営業手当が残業代の代わりとして払われているのか、就業規則や労働契約書の確認も必要となります。
残業代請求の経験のある弁護士に頼めば、勤務形態に応じた計算方法で的確な金額を出してくれます。
また、会社に請求までしてくれるため、自分では言いづらい給与のことでも、安心して任せられます。弁護士からアドバイスを受けることで、残業時間を証明する資料や証拠も集められるため、何からやればいいのか迷わずに残業代請求ができるでしょう。
4-2.会社と対等に交渉ができる
労働者自身が会社に交渉することもできますが、知識もない労働者が言ったところで、会社は素直に聞いてくれないケースも少なくありません。
そのため、精神的ストレスや、会社に押し切られることもあるため、残業代請求を諦めてしまうことも多くみられます。
一方で、弁護士が代理人として、対等に交渉することで、会社の対応も変わることもあります。
弁護士は法律のプロであるため、労働基準法違反していることや、残業代を支払うべきという証拠や根拠をきちんと説明できます。会社は受け入れざるを得ず、未払いの残業代の支払いに応じる可能性が高くなるでしょう。
1人では交渉しずらいことでも弁護士に代理してもらうだけで心強く、安心材料となるのは間違いなしです。
弁護士費用はかかりますが、法律と証拠に基づいて交渉を行えば、会社も真摯に対応してくれるでしょう。交渉を有利に進めるためにも、弁護士に依頼するのがおすすめです。
4-3.労働審判や訴訟まで任せられる
もし、会社と交渉しても未払いの残業代を支払ってくれない場合は、労働審判や訴訟も考えたほうがよいでしょう。
労働審判とは、話し合いと訴訟の中間のような手続きで、裁判所からの審判によって残業代を払ってもらいます。
自分で行うことも可能ですが、申立の段階から準備をして、証拠集めや申立書の作成をして提出する必要があるため、とても難しいでしょう。
弁護士に依頼することで、手続きをすべて任せられるため、手間や時間の短縮にもつながります。もし、会社が労働審判を無視した場合は、訴訟に持ち込むことになります。訴訟を起こすのも難しいため、弁護士に依頼するのが一般的です。
このように、労働審判や訴訟になっても、弁護士がサポートしてくれるため安心です。
未払いの残業代を専門とする弁護士を探して依頼しましょう。
5.営業手当に関するよくあるQ&A
5-1.営業手当とは残業代のことですか?
営業手当が残業代として支給されていることもあります。残業代に代わるものであれば、その旨を会社は明確に定めておく必要があります。また、営業手当が固定残業代として支給されている会社でも、その固定残業代の時間を超えて残業があった場合には、営業手当とは別に残業代を支払わなければならないケースもあります。
会社に営業手当がどういう目的で支払われているのか確認しましょう。
5-2.営業手当は基本給に含まれますか?
営業手当に関しては、身だしなみを整えるための費用や、営業活動する上で必要な費用として支給される場合は、基準内賃金となります。
5-3.営業職でも残業代は支給されますか?
営業職でも残業代は支給されます。労働基準法規定の勤務時間である1日8時間、週40時間を超える場合は、残業代を支払う必要があります。営業手当を支給しているからといって、残業代は払えないなどと言う可能性もあるため、注意しましょう。
5-4.みなし残業制度とは何ですか?
営業職の場合、外回り業務が多く、正確な労働時間が把握できないことがあります。そのため、残業代をあらかじめ含んだ形で、給与を支払う制度です。
営業職でみなし残業制度が違法になる可能性があるのは、営業手当以外支給されない場合や、営業手当の中にみなし残業が何時間であるか記載がない場合です。会社と内容をきちんと確認しましょう。
6.まとめ
本記事では、営業職に支給される営業手当や残業代について解説しました。
営業手当は、営業するためにスーツや靴など頻繁に使うため、身だしなみを整えるという意味や、取引先の接待で飲食代など支払う際に使うための手当として支払われている場合と、残業代の代わりに支払われている場合など、その目的によって違うということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
営業手当は、残業代の代わりになるとは限りません。その目的によって変わります。固定残業代としての営業手当であれば、その金額と残業時間を明確に定めておく必要があります。その残業時間を超えて時間外労働した場合は、残業代を請求できることもあります。
もし、未払いの残業代があった場合は、会社に交渉するか、証拠を集めて弁護士に相談、依頼をしましょう。
弊社では、初回の60分相談無料を行っております。営業の手当や未払い残業代のことでお悩みの営業職の方はご相談ください。メールやLINEからもお問い合わせも可能です。
未払いの残業代請求などでお悩みの方は、労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
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担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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