残業代請求

タイムカード打刻後の残業は違法?対処法を弁護士が解説!

タイムカード打刻後の残業は違法?対処法を弁護士が解説!
この記事をSNSでシェア!

仕事が定時までに終わらない場合、残業で仕事を終わらせる必要が出てくる日もあるでしょう。

残業するということは本来なら残業代が発生するのですが、ブラック企業や悪質な上司が「タイムカードを打ってから残業するように」と命令するケースがあります。

これは、いわゆるサービス残業になるのですが、打刻後に残業することに違法性はないのでしょうか。

本記事では、タイムカード打刻後の残業の違法性について労働問題に強い弁護士が解説します。

1.タイムカードを押してから残業するのは違法なのか

まず結論から述べると、タイムカードを打刻してから残業をする「サービス残業」と呼ばれるこの行為は、違法となります。

サービス残業は労働基準法において禁止されている行為であり、悪質な場合は労働基準法違反として雇用主側が「懲役6ヶ月以下または30万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。

1-1.サービス残業が違法となる理由

違法であるということは、要するにその行為等を禁止する法律が定められているということです。

では、サービス残業はどの法律に違反するのかというと、労働基準法の37条に抵触します。

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

労働基準法

要するに労働基準法37条には、時間外労働(残業)や休日に労働した場合は、割増賃金を支払わなくてはならないと明記してあるのです。

従業員も、定時を過ぎて仕事をする以上は、相応の報酬を手に入れたいと思うでしょう。

割増賃金になるので会社側にとっては人件費が高騰する原因になりますが、定時までに終わらせることのできない仕事量を割り当ててしまっている以上は、そのデメリットは甘んじなければなりません。

人件費をかけたくないからといって残業代を支払わないと、従業員のモチベーションは下がり、ニュースなどで社会にサービス残業の実態が露呈し、社会的な信用を失うことにもなります。

1-2.サービス残業に対する制裁

サービス残業を強要していたことが証明されれば、会社側は、懲役6ヶ月以下又は30万円以下の罰金に処される可能性があります。

すべてのケースにおいて刑事罰が適用されるわけではなく、悪質だと判断された場合において刑事罰が適用されるケースが多いようです。

そうでない場合は、労使間で交渉を行い、会社側が未払いの残業代の支払い等の要求に応えて当事者間での交渉だけで決着するケースもあります。

ただし、サービス残業が強要されていた場合は、会社側は刑事罰以外の制裁を受ける可能性もあるのです。

まず、サービス残業は従業員のモチベーションを著しく下げる原因になります。

定時を過ぎて夜遅くまで働かされるのにも関わらず、それに見合った報酬がもらえないタダ働きになるのでモチベーションが下がるのは当然です。

それに伴って生産性まで下がり、定時までに仕事を終わらせられない状態が続き、それがサービス残業ともなれば連鎖的に従業員のモチベーションは下がります。

そうなると生産性は更に低下し、それが会社の業績にも少なからず悪影響を受けることになります。

また、サービス残業の実態が世間に露見してしまった場合には、もっと大きな制裁を受けることになるでしょう。

世間からの評判が悪くなれば、不買運動などにつながり、会社の売上に悪影響を及ぼします。それは、金融機関からの融資にも影響する可能性があり、今後の採用にも悪影響を及ぼすでしょう。

このように、人件費を削減したいからと言ってサービス残業を強要すると、会社にはそれ以上のダメージが及ぶ可能性があります。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

2.タイムカード打刻前後にサービス残業させられるケースとは

真っ当な企業で経営理念もしっかりしているところであれば、サービス残業が横行するようなことはないでしょう。

しかし、何らかの理由があれば、サービス残業が横行し、慢性化してしまうケースもあります。

2-1.上司や経営陣が労働基準法を理解していない

まず第一に、サービス残業を命令するような上司や経営陣の場合だと、サービス残業を禁止している労働基準法の内容をきちんと理解していないケースがあります。

「会社の経営や従業員の管理を任されているような立場の人間がそんなこと」と思われるかもしれませんが、経営陣や管理職の人間が必ずしも労働基準法を遵守しようと考えているわけではありません。

「サービス残業が法律で禁止されていることを知らなかった」という経営陣もいますが、中にはサービス残業の違法性を知っていながらコストカットなどの理由でサービス残業をさせている悪質なケースもあります。

いずれにしても、サービス残業を「便利な従業員の使い方」として悪用したり、無知ゆえに活用してしまっているわけですから、タダで残業させられている従業員からすると耐え難いものです。

外部の専門家や専門機関からの交渉や是正勧告等で解決できればそれに越したことはありませんが、悪用している場合だとなかなか改善しないケースも多いのが厄介です。

2-2.周囲の従業員もやっているから

サービス残業を止める従業員がいれば、サービス残業問題は大きな問題に発展しないケースも多いですが、厄介なのは「周囲も率先してサービス残業をしている」というケースです。

日本では「残業して会社に貢献する=美徳で良いこと」という考え方をしている人も少なくありません。

とくにサービス残業は会社からお金をもらわずに働くことになるわけですから、人件費や費用の観点から見れば会社にとって大きな利点だと言えるでしょう。

会社の風潮で多くの従業員がサービス残業を受け入れている、あるいは率先してサービス残業している状況だと、サービス残業を止めるどころか他人のサービス残業に目をつむる従業員が増えてしまうのです。

こうした状況で「自分はサービス残業は嫌だ」と声を出すことがはばかられてしまい、結果として自身も会社のサービス残業良しの風潮に巻き込まれてしまいます。

あるいは「社会人ってのは、こういうものなんだ」と諦めがついてしまい、誰が止めることもしないためサービス残業が常態化してしまい、疑問を抱かなくなってしまうケースもあるのです。

2-3.会社に残業の実態を知られたくない

3つ目に考えられる原因としては、従業員自身がサービス残業を望んでいるケースです。

本来であれば残業をすれば会社にそのことをきちんと報告して、それに見合った給料をもらうのが一般的でしょう。

誰だってタダ働きなんかしたくないと考えるでしょうが、問題はそこに時間の問題や評価の問題がくっついてくるケースです。

たとえば、残業をするということに対する、上司や会社からの評価基準はそれぞれ異なります。

会社によっては「残業してまで会社に貢献してくれる良い従業員」と評価する場合もあれば、逆に「残業しないと仕事を終わらせられない無能な従業員」の烙印を押されてしまうケースもあるでしょう。

また、会社によっては生産性を表す人時売上高を重要視しているところもあり、残業するということは労働時間が長引くことになりますので人時生産性は低下します。

人時生産性の管理を任されている役職の従業員の場合、自身の評価にもつながるので、サービス残業にすることで労働時間を実質的に増やさず人時生産性を確保しようとするケースもあるのです。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

3.サービス残業代請求の手順

サービス残業による未払いの給料については、給料の発生から3年以内(未払い給料の時効は3年)であれば請求できます。

会社に未払いの給料を請求するにあたっては、大きく分けて「交渉」か「訴訟」の2種類の手続きから選択することになります。

3-1.交渉

もし、交渉という手段だけで未払い給料を支払ってもらうことができれば、負担も手間も最小限に抑えられるでしょう。

しかし、サービス残業を強要するような会社ですから、個人での交渉ではあまり成功率が高いとはいえません。

そのため、他にもサービス残業を強要されていて不満を抱えている従業員がいれば、団結して集団交渉にもちかけるという手段もあります。

とはいえ、それでも会社側が支払いに応じないケースも少なくありません。

そのため、こうしたトラブルの解決について力になってくれる専門機関の助力を得るという方法が現実的です。

労働基準監督署は、労使間のトラブルに関して、あくまでも中立の立場ではありますが是正勧告などの働きかけをしてくれます。

また、自社の労働組合や一般労働組合などに掛け合って、交渉の際に助力してもらうという選択肢もおすすめです。

こうした交渉の最大のメリットは費用があまりかからないということであり、仮に支払いに応じてもらった際の収入が目減りすることを回避できます。

3-2.訴訟

個人間での交渉や専門機関からの働きかけにも会社側が応じてくれなかった場合は、残念ですが訴訟という手段をとらなければ未払い給料を支払ってもらうことはできないでしょう。

会社に未払いの給料の支払いをしてもらうための訴訟ですが、大きく分けて「労働審判」と「通常訴訟」という2種類の法的手続きがあります。

労働審判は労働問題を迅速に解決させるための法的手続であり、後述する通常訴訟よりも短期間での解決が期待できるでしょう。

なお、労働審判での結果は法的効力もありますので、その結果に対しては多くの使用者が従います。

通常訴訟は労働審判よりも時間がかかりますので、できるだけ労働審判にしておいたほうが良いでしょう。

なお、勝訴して裁判所から会社に命令が下された後も会社が支払いを拒否した場合には強制執行ができますので、最後の手段としては非常に有力な方法となります。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

4.未払いの残業代を請求するために証拠となるもの

会社に直接交渉する場合でも、訴訟を選択する場合であっても、未払い給料の支払いを認めさせるためには「残業した証拠」を準備する必要があります

一般的に、会社側との交渉や訴訟を有利に進めるための証拠としては、以下のようなものが役に立ちます。

  • 雇用契約書や労働契約書
  • 就業規則のコピー
  • タイムカードなどの勤怠記録
  • 業務日報
  • 業務用メールの送受信履歴
  • 残業を命じられた内容が記載されているメール
  • 日記
  • 帰宅用のタクシーの領収書
  • 残業指示書
  • 残業承諾書
  • 残業中の業務内容がわかる記録

仮に退勤時刻を立証できたとしても、「勝手に残っていただけ」「それまでの間遊んでいただけ」など、会社側から反論される可能性があるでしょう。

この反論は当然のことなので、労働者が独自の判断で単に会社に居残っていただけでは労務の提供がないため、残業代は請求できません。

そのため、ただ単に帰宅時間が遅くなっていることを証明できるだけでなく、どれだけ正確に「残業中にきちんと仕事をした」「この残業は会社から命令されたものである」ということを証明できる有力な証拠を数多くそろえられるかが鍵を握ります。

自分一人だけではどういったものであれば証拠として交渉や訴訟を有利に進められるかの判断はおそらく難しいので、どの方法で残業代を請求するかに関わらず弁護士に相談して、どういった証拠を用意するべきかのアドバイスを受けると良いでしょう。また、会社が積極的に命令していなくても残業を黙認して許容していたのであれば、残業を指示したものと評価されるケースもあります。この判断は難しいので、まずは弁護士に相談しましょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

5.未払いの残業代請求を弁護士に相談、依頼するメリット

サービス残業によって発生した未払いの残業代を支払うように会社側と交渉したり訴訟を起こすことは、個人でも可能です。また、同じ境遇の従業員と結託したり、労働基準監督署などの機関に相談することもできます。

この方法であればあまり費用をかけることなく残業代の請求が可能ですが、どのような方法で決着させたいかに関わらず、サービス残業の問題については弁護士に相談することをおすすめします。

まず、個人間の交渉では、今までサービス残業をさせていた会社がいきなり態度を軟化させるとは思えません。交渉は失敗し、会社や上司との関係が悪化して退職に追い込まれるというケースも多いのです。

必ずしも失敗するとは限りませんが、少しでも交渉のハードルを下げるためには、法律と交渉の専門家であり労使関係のトラブルに強い弁護士に相談したほうがスムーズに交渉が進むでしょう。

たとえば、あなたが誰かとトラブルを起こしてしまい、相手が弁護士を連れてきたら緊張するのではないでしょうか。

「相手には弁護士がついている」ということが一種のプレッシャーになり、交渉のハードルを下げることにつながるのです。

また、労働基準監督署などの公的機関は、会社に対して是正勧告などの働きかけはしてくれますが、交渉を代理するなどの行動はとってくれません。

公的機関があくまでも中立の立場で行動するのに対して、弁護士であればあなたの味方になってくれますし、交渉の代理なども任せることができます。

さらに、交渉が難航してしまい、訴訟に発展する場合でも弁護士は強い味方となってくれるでしょう。

裁判所に提出する証拠などの資料の準備も依頼できますし、裁判手続き自体を代理でしてくれるので、自分の時間を裁判手続きで消費してしまうということがありません。

唯一のデメリットとしては費用がかかることですが、そもそも残業代の請求に失敗すると、お金が増えることはありません。

弁護士に依頼すれば支払われた残業代から依頼料を支払うことができるので、よほどのことがない限りは収支がマイナスになることもないでしょう。

会社と交渉や訴訟で争うことになる以上は、その会社にはもういられないはずです。

そんな不安と闘いながら交渉や訴訟手続きを進めることは心身のストレスの原因になるので、弁護士という味方をつければ心身への悪影響も最小限に抑えられるでしょう。

弁護士に任せている間に自身は転職などの将来へのアクションに時間を十分に割くことができるので、今後の人生の新たなスタートを順調に始めるためにもサービス残業問題は弁護士に任せたほうがメリットが大きいのです。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

6.タイムカード後の残業に関するよくあるQ&A

最後に、サービス残業に関するよくある質問についてまとめました。

6-1.サービス残業は法的に問題ありませんか?

大ありです。

サービス残業は労働基準法において禁止されている使用法であり、悪質な場合は刑事罰に問われる可能性もあります。

6-2.未払いの残業代に時効はあるの?

未払いの残業代の請求権は、3年の消滅時効が設定されています。

そのため、残業代を請求するためには3年以内に十分な証拠を集めて、交渉や訴訟などの手続きを始める必要があります。

6-3.必要な証拠を会社側から請求することはできますか?

勤怠履歴のように、会社側が保管義務のある書類等については、民事訴訟手続きにおける「開示請求」を会社にすることによって、必要な証拠を集められます。

会社によっては開示請求に応じないケースもありますが、そうなると「不利な証拠でもあるのか?」と裁判所に印象付けることができ、訴訟を有利に進めることができる可能性があります。

6-4.未払いの残業代の請求はどんなタイミングが良い?

未払いの残業代の請求権には3年の時効がありますので、できるだけ早いほうが良いでしょう。

ただし、残業代を請求することによって会社との関係が悪化するので、遅かれ早かれ会社を退職することになると思います。

そうなると「すでに転職先が決まっている」「近いうちに退職することが決まっている」というタイミングのように、会社とのしがらみが問題にならないタイミングで請求するのが良いでしょう。

6-5.匿名で是正勧告を出してもらうことはできるの?

十分な証拠があれば、労働基準監督署に動いてもらい、会社に是正勧告を出してもらうことができます。

その際、担当者に対して「匿名で申告があったようにお願いします」と依頼しておけば、会社にあなたが通報したことがバレるリスクを下げられるでしょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

7.まとめ

サービス残業に関する問題は、会社によっては根深いこともあります。

タイムカードを打刻してからのサービス残業は違法であり、悪質な場合は会社を刑事罰に問うことも可能です。

しかし、交渉により残業代を支払ってもらう場合でも、訴訟沙汰に発展する場合でも、こちらに有利な結果で終わるためには有力な証拠集めが欠かせません。

また交渉する場合は、会社との交渉が訴訟の場合は手続きにそれぞれ時間と労力を割かれることになり、心身に不調をきたして体調が悪化する可能性もあります。

こうしたデメリットを回避するためには、労使問題に強い弁護士を味方につけることが一番です。

交渉の代行や裁判手続きのための書類の作成など、素人では負担の大きな行動を代行してくれるので、負担を最小限に抑えながらサービス残業で生じた未払いの給料の支払いを会社に認めさせることができるでしょう。

私たち法律事務所リーガルスマートは、サービス残業のトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

この記事をSNSでシェア!

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
ホーム お役立ちコラム 労働問題 残業代請求 タイムカード打刻後の残業は違法?対処法を弁護士が解説!

電話受付時間 10:00〜17:30 (土日祝・年末年始を除く)