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残業が多いから辞めたい!退職の手順や注意点を弁護士が解説!

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会社を辞めたいと感じる理由は人によってそれぞれですが、残業が多いから辞めたいと感じる方も多いでしょう。

残業が多くて会社を辞めたいという場合、残業時間が労働基準法などの法律に抵触していることを主張することで、退職がスムーズになることがあります。

そこで本記事では、残業が多いから辞めたいとなっている場合に問題となる残業時間に関する法的問題と、会社を辞める場合の手順などを労働問題に強い弁護士が解説します。

目次

1.残業が多いと思うのは何時間から?基準について

残業が多いと思うのは何時間からでしょうか?

残業が多いという感覚は、職種や人によって異なるといえます。

たとえば、体力が無い方にとっては、体を動かすような仕事を1時間程度行ったとしても、残業は多いと感じるでしょう。

一方で、デスクワークに慣れている方が、3時間程度の残業をしても特に長いと感じないこともあるでしょう。

そこで残業が多いと主張するにはある程度客観的な基準が必要であると言えます。

1-1.残業が多いと言える客観的基準となる過労死ライン

残業が多いと言える客観的な評価基準としては、過労死ラインが挙げられます。

過労死ラインとは、厚生労働省が労災認定のために作成した「脳・心臓疾患の認定基準」において、長時間労働と疾患の発症の関連性が強いと認定できる基準をいいます。

具体的には、時間外労働について次のことを示しています。

  • 1ヶ月の時間外労働がおおむね45時間未満である場合には長時間労働と疾患の発症の関連性は弱いと評価できる
  • 1ヶ月おおむね45時間を超える時間外労働をさせている場合には長時間労働と疾患の発症の関連性は徐々に強まる
  • 疾患の発症前1ヶ月におおむね100時間を超える時間外労働をしていた場合は長時間労働と疾患の発症の関連性が強い
  • 疾患の発症前2ヶ月~6ヶ月にわたっておおむね80時間を超える時間外労働をしていた場合は長時間労働と疾患の発症の関連性が強い

この「1ヶ月100時間・2ヶ月~6ヶ月の平均80時間」という時間外労働のことを過労死ラインと呼んでいます。

この時間を超えるような残業をしている場合には、辞めることを検討するレベルで残業が多いと言えるでしょう。

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2.適正な残業時間目安と違法な残業時間

労働時間・残業時間の目安になる、法が定める上限を確認しましょう。

2-1.労働時間の原則は1日8時間・週40時間

労働時間については労働基準法32条で原則として、1日8時間・週40時間が上限となっています。

この時間を超えて残業をさせるためには、労働基準法36条所定の36協定を結ばなければなりません。

そのため、36協定を結ばずに1日8時間の労働時間をこえて残業させる場合には、それだけで違法であるといえます。

2-2.36協定を結んだ場合に許容される残業時間

次に、36協定を結んだ場合に許容される残業時間を確認しましょう。

労働基準法36条4項で、36協定を結んでいる場合に許容される残業時間としては、1ヶ月45時間・年360時間が上限となっています。

そのため、36協定を結んでいても、月45時間以上残業している場合には、後述する特別条項付き36協定が結ばれていなければ違法であるといえます。

月45時間という数字は、上述した過労死ラインとの関係では、45時間を超える労働をさせる場合には長時間労働と疾患の関連性が強くなってくると認定される数字です。

2-3.特別条項付き36協定を結んだ場合に許容される残業時間

36協定の中でも特別条項付き36協定というものがあり、これを結んだ場合には、年6回まで次の上限時間まで残業時間を伸ばすことができるようになっています。

  • 1ヶ月100時間
  • 2ヶ月~6ヶ月の平均が80時間
  • 年720時間

そのため、特別条項付き36協定を結んだとしても、1ヶ月100時間・2ヶ月~6ヶ月の平均が80時間を超える時間外労働をさせているような場合は違法であり、退職を検討するレベルの残業の多さであるといえるでしょう。

1ヶ月100時間・2ヶ月~6ヶ月80時間という数字は、上記の過労死ラインから導かれるもので、このような時間外労働を強いられる長時間労働をしていると、脳・心疾患のリスクや、精神疾患のリスクが高まるといえます。

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3.退職を検討する判断基準について

以上は労働時間に関する法制との関係で、残業が多いから辞めたい、と考える基準を検討しましたが、実際に残業が多いから辞める、ということが適切であるといえるような判断基準としては次のようなものが挙げられます。

3-1.労働時間・時間外労働の上限を超えて労働させている

上記のような労働時間・時間外労働の上限を超えて労働をさせているような場合には、客観的な数字として違法なレベルで残業が多いといえる場合です。

そのため、残業が多いから辞める、ということは、自分の身を脳・心疾患や精神疾患から守る上でも正当であるといえるでしょう。

3-2.残業代が適正に支払われない

残業があるにもかかわらず、残業代が適正に支払われていない場合には、支払われる給与に比べて残業が多い、と主張して辞めるのもやむを得ないといえるでしょう。

例えば、20時間の時間外労働手当をみなし残業代として出している会社があり、実際には毎月40時間程度の残業があるとします。

この場合、20時間分の残業代が未払いということになり、会社としては20時間分の残業代を払うのか、残業を20時間以内にするのかどちらかが適切であるといえます。

残業代の支払いをしないのに40時間分の残業代の支払いをしないのであれば、残業が多いから辞めたい、というのもやむを得ないでしょう。

3-3.仕事の疲れやストレスが原因で体調不良である

残業時間が法律の範囲内であって、残業代の支払いも適切に行っている場合でも、仕事の疲れやストレスが原因で体調不良となっている場合には、残業が多くて仕事を辞める判断をする基準になるでしょう。

業務の内容によっては、多少の残業でも仕事の疲れやストレスが蓄積するような場合もあります。

力を使ったり体を動かすことが求められるような仕事であったり、クレームに対応しなければならないような仕事である場合、残業の時間がそのまま疲れ・ストレスに直結します。

いくら法律の時間内に収まっていても、心身を十分に休められず、常に体調不良という状態になってしまうような場合には、法律の範囲内であっても残業が多いといえるでしょう。

3-4.人手不足で補充される見込みがない

一時的に人手不足で残業が多くなってしまうようなこともあります。

しかし、その場合には人手不足が解消されれば元に戻ります。

問題は慢性的に人手不足の状態で、これを解消するために人員が補充される見込みがないような場合があります。

この場合、人手不足というより、残業することを前提に事業の計画がされているので改善を期待できません。

そのため、残業が多いから辞めることに理由があるといえるでしょう。

3-5.残業の多い社員が人事考課などで高い評価を受ける

日本では今でも会社のための貢献や忠誠心を残業時間で測ることがあります。

その結果、残業の多い社員が人事考課などで高い評価を受けていることがあります。

このような価値観の会社では、どれだけ業務を早く終わらせるための工夫をしても、その会社では正当に評価してもらえないでしょう。

そのため、残業が多いからという理由で会社を辞めることもやむを得ないといえるでしょう。

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4.退職する手順

会社を退職する場合の手順を確認しましょう。

4-1.退職の準備

会社を退職する準備を行いましょう。

退職の準備としてどのようなことを行うかは人によって様々です。

すぐに転職できるような明確な資格やスキルがあるような場合には準備はそんなに必要ないかもしれません。

しかし、転職先を探すことが困難であるような場合には、転職のために資格やスキルを身につける準備をすることを検討することになります。

ただし、残業が多くて辞めるような場合には、資格取得やスキル習得に十分な時間も取れないことが考えられます。

退職してからしばらくは給付を受けられる失業手当を使って資格の取得をするなどの計画を立てることも考えることになります。

なお、後述するように、残業代が未払いである・ハラスメントの被害にあっているといった場合には、退職後に証拠を収集することは非常に困難なので、在職中に証拠の収集を行いましょう。

4-2.退職の意思を伝え退職届を出す

退職の意思を伝え、退職届を出します。

退職の意思を伝える方法について、法律で定められている方法はありません。

大体のケースで、退職の意思を直属の上司に伝えて、人事に退職届を出すという流れになります。

退職届については会社でフォーマットがあることもあるので、指定された方法で退職届を提出します。

業務の引き継ぎにどれくらいの時間がかかるか、などによって退職に必要な期間は人によって異なるので、よく話し合いましょう。

4-3.業務の引き継ぎ

退職に向けて業務の引き継ぎを行います。

チームで業務をしているような場合、その人が具体的にどのような業務を受け持っているかを上司やプロジェクトの管理をしている人と認識を合わせ、引き継ぎに必要なことを確定しましょう。

引き継ぎに時間をかけると、計画通りのタイミングを逸することになるので、引き継ぎの期間もしっかり決めると良いでしょう。

4-4.社内外への挨拶回りなど

最終出社に向けて社内外への挨拶回りをしっかり行いましょう。

転職先が決まっているような場合には、転職先の会社や部署も知らせておくと良いでしょう。

4-5.退職日

退職日に会社に返却するものを人事担当者に確認しておきましょう。

会社に私物を置いているような場合には、退職日までに整理できるものは整理して、最終日に大荷物にならないようにしておくべきです。

退職日には、退職証明書や離職票など退職後に必要な書類の受け取りなどについても確認しておきましょう。

退職後に転居をするような場合には、転居先を伝えるようにしておきます。

4-6.退職後

退職証明書や離職票などの書類を受け取ります。

ユニフォームや制服があるような場合で、退職後に返却するような場合には、きちんとクリーニングをした上で返却することが望ましいです。

離職票を手に入れたら、ハローワークに赴いて失業保険の申請を行います。

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5.退職を伝える際に使うおすすめの理由

退職を伝える際に、おすすめの理由としては次のようなものが挙げられます。

5-1.残業が多くてワークライフバランスがとれないと伝える

残業が多くて辞めるようなケースでは、残業をしてもらっている人が抜けることは痛手であるため、できる限り辞めてほしくないと考えていることが多いです。

そのため、退職を伝えると辞めないような工作をしてくることが予想されます。

そこで、残業が多くてワークライフバランスがとれないと、素直に伝えてみましょう。

家族と触れ合う時間が欲しい、趣味を充実させたい、など残業が多くて自分の生活にどのような影響が出ているのかも伝えると、さらに退職の意思が強いことを分かってもらえるでしょう。

5-2.体調に悪影響が出ている場合も素直に伝える

残業が多くて体調に悪影響があるような場合も、素直に伝えてみましょう。

残業が多すぎて体調に悪影響が出ているような場合、通院などが必要な状況になると労働災害になる可能性もあります。

会社としてもそれ以上働かせることはできず、退職に素直に応じてもらえるでしょう。

5-3.キャリアアップをしたい

残業が多いということは私生活の時間が持てない状況です。

そのため、スキルアップや資格取得、社会人大学・大学院などを志すことも難しい状況です。

これらのキャリアアップをするために、今の残業の多い生活では両立できないというのも退職をする立派な理由と言えるでしょう。

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6.辞めると言いにくい・会社が辞めさせてくれない際の対処法

残業が多いような場合には、すでに人手不足で、一人でも退職者が出ると業務の運営が立ち行かなくなることも考えられます。

そこで、辞めるとは言い出しづらい環境である、辞めると伝えても辞めさせてもらえないようなことがあります。

この場合の対処法を確認しましょう。

6-1.退職の意思ははっきりと伝える

退職の意思ははっきりと伝えるようにしましょう。

上述したように直属の上司に退職する旨を伝える際に、あいまいな言い方で退職を伝えようとすると、単に辞めようと思っていると相談を受けた程度にしか思われなかったり、真摯に聞いてもらえずに対応をしてもらえないことがあります。

退職の意思ははっきりと伝え、上司がこれを認めない場合には、上司の上司にあたる人や人事担当者にきちんと伝えるようにします。

6-2.内容証明で退職の意思を伝える

会社の退職に関して、雇用契約について定めた民法627条では、2週間前に退職の意思を伝えれば、退職することができることになっています(契約期間の定めがある場合などの契約形態によって例外があります)。

就業規則などでは1ヶ月~2ヶ月前に退職届を出すことになっていることが多いのですが、会社が退職を認めないような場合には、退職の意思を伝えて2週間で退職をすることも可能です。

この意思表示をしたことを証明するために、送った文書の内容を証明してくれる、内容証明郵便を利用するようにしましょう(送った日時を証明してくれる配達証明もつけます)。

6-3.退職代行サービスを利用する

会社を退職することを代行してくれる、いわゆる退職代行サービスの利用を検討しましょう。

退職代行サービスは、会社の退職に関する代行をしてくれるサービスです。

退職代行は会社との労働契約の解消という弁護士法72条における法律事務に該当するため、弁護士が行う必要があり、特に退職条件の交渉などは弁護士しか行なえませんので、退職代行サービスを利用する際には注意をしましょう。

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7.残業が多いという理由で会社を辞める際の注意点

残業が多いという理由で会社を辞める際の注意点としては次のようなものが挙げられます。

7-1.未払いの残業代がなどほかの法律問題がないか確認をする

残業が多いという理由で会社を辞める際には、ほかの労働問題・法律問題も合わせて生じていることが多いです。

最も多いのが残業代を適切に支払っていなかったり、そもそも未払いであるようなケースです。

ほかにも36協定が有効ではない、残業時間の上限を超えている、労災隠し、パワハラ・セクハラなどの労働問題が発生していることがあります。

とにかく今の残業が多い状況から抜け出したいとだけ考えているような場合、ほかにも未払い残業代の請求をしたり、慰謝料の請求をしたりすることを失念してしまうことがあります。

退職を検討するほど残業が多い遵法精神のない会社を辞める際には、何かしら労働問題がほかにも発生していることがあるので、できれば弁護士に相談をするのが望ましいといえます。

7-2.失業手当を待期期間なしに受け取れる可能性がある

残業が多いような場合には、失業手当を待期期間に受け取れる可能性があります。

自己都合退職をした場合、失業手当を受け取るには2ヶ月の待期期間が必要なのが通常です。

しかし、残業が多く次の3つのいずれかに該当する場合には、会社都合退職として取り扱うことができます。

  • いずれか3か月連続で45時間を超える残業をした
  • いずれか2か月~6ヶ月の平均で1ヶ月80時間以上の残業をした
  • いずれか1ヶ月で100時間以上の残業をした

会社から発行される離職票からは自己都合退職とされていますが、ハローワークで手続きをする際に、以上を証明できる書類とともにハローワークで残業時間が上記の時間を超えていた旨を伝えれば会社都合退職とすることができます。

会社都合退職とできると、支給要件が軽くなる、待機期間の2ヶ月が不要、給付日数も長くなる、といったメリットがあるので、ハローワークで手続きをする際に申し出てみましょう。

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8.退職代行や未払いの残業代請求を弁護士に相談・依頼するメリット

退職代行や未払いの残業代請求を弁護士に相談・依頼するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

8-1.法的な権限に関する問題なく相談・依頼ができる

上述したように、退職に関する交渉は、労働契約に関する交渉となるので、弁護士法72条所定の法律事務であり、法律の例外が無い限り弁護士にしかなしえません。

そして、2023年現在、退職代行サービスを民間の会社などができる権限を有するような法律は制定されていません。

そのため、民間の会社ができる退職代行サービスには限界があり、ケースによっては弁護士法に違反して退職代行サービスを行っていることがあります。

このような退職代行を利用すると、退職がうまくいかずに会社とトラブルとなることがあり、退職がスムーズにできない可能性もあります。

弁護士であれば法的な権限に問題なく、退職代行に関する相談・依頼が可能です。

8-2.弁護士に相談すれば労働問題・法律問題をすべて解決できる

上述したように、退職を検討するほど残業の多い会社には、残業代が未払いであるなど様々な労働問題・法律問題が併存しています。

弁護士に相談すれば、これらの問題をまとめて解決することが可能です。

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9.まとめ

このページでは、残業が多いから辞めたい!という場合の退職の手順や注意点を中心にお伝えしました。

残業が多くて辞めたいという職場の場合、すでに人手不足で、退職するにも一苦労ということも珍しくありません。

退職について弁護士に相談し、退職代行を依頼すれば、スムーズな退職が可能となります。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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