残業代請求

試用期間中は残業代出る?出ないケースや注意点を弁護士が解説!

試用期間中は残業代出る?出ないケースや注意点を弁護士が解説!
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通常、残業をした従業員に対しては「残業代」が支払われます。

しかし、特殊な労働形態など一定の事情がある場合には、残業代を計算しないケースもあることは事実です。

では「試用期間中の従業員」については、どうなのでしょうか。

そこで本記事では、試用期間中の従業員に対する残業代の取り扱いについて労働問題に強い弁護士が解説します。

1.そもそも試用期間とは

まずは、「試用期間」とはどのような扱いになるのかについて、簡単にですが解説しておきます。

1-1.本採用との違い

基本的に「本採用」と「試用期間」において、従業員の取り扱いについて大きな違いはありません。

「試用期間中はお試しであり、労働契約も締結されていない」と勘違いしている方も少なくないですが、試用期間が始まっている時点で会社と当該労働者の間には労働契約が締結されており、その点においては既存の従業員と違いがありません。

過去の判例では、試用期間とは「解約権を留保した状態の労働契約」と解釈されています。

要するに、試用期間が開始した時点で労働契約は成立しているものの、労働者に問題があった場合は労働契約を解約する権利が留保されていると解釈されているのです。

よく「試用期間中は既存の従業員よりも少ない給料で働く」というイメージを持っている方もおられますが、最低賃金を下回る給料設定は原則として違法であり、都道府県から特別に許可を得ていなければ最低でもその都道府県の最低賃金以上の給料を支払う必要があります。

このように、解約権が留保されているという条件が既存の従業員とは異なる扱いにはなるものの、不当に「試用期間中だから」という理由だけで悪い意味で特別扱いすることは認められていません。

1-2.試用期間中は自由に解雇できる?

試用期間中は「解約権が留保されている労働契約」という状態であるため、そこだけを切り取って解釈してしまうと「会社は試用期間中の従業員をいつでも、どんな理由でも解雇しても構わない」と解釈されるケースも少なくありません。

しかし、試用期間中で解約権が留保されている場合であっても、好き勝手に試用期間中の従業員を会社都合で解雇することは認められていません。

そもそも「従業員を解雇する」ということは、そう簡単なことではありません。

日本では「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」といった解雇がありますが、いずれの解雇にしても解雇する理由としての合理性と社会通念上の相当性があることが揃っていなければ、従業員を解雇することはできず、場合によっては不当解雇として争うことになります。試用期間中の解雇も基本的には同じです。通常の解雇と比較して、多少は会社側の裁量が広く認められるところはありますが、基本的には解雇理由の合理性と社会通念上の相当性が必要です。

解雇事由については就業規則で定める必要がありますが、その中に試用期間中で該当することがわかった項目があれば、試用期間開始から14日間なら即時解雇ができます。14日を超えてからは、30日前に解雇予告通知書を作成または解雇予告手当の支払いをすることで解雇が可能です。

1-3.試用期間が延長されることはあるのか?

試用期間については、最初の労働契約の締結の際に具体的な日数などの条件を定めているため、問題なければ試用期間終了後は正式採用をする流れになります。

しかし、特定の事情がある場合においては、試用期間の延長について裁判で認められた事例もあります。

たとえば「試用期間中に休みが多かった」という場合がこれに該当します。

試用期間は基本的にその従業員の適性や能力を見極めることであり、これは1日2日では見定めることができません。

そのため、一般的には3か月前後の試用期間を設けるわけですが、その期間中に病気などの理由で休んでいる日数が多いと、適性を見定めるための十分な時間を確保できないことになります。

そのほかにも「もう少し慎重に適性を見極めたい」「他の部署での適正も調べたい」といった合理的な理由がある場合においては、会社側から試用期間の延長を申し出ることが認められます。

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2.試用期間中でも残業代は支払われるのか

試用期間中にはさまざまな仕事を教わることになります。その際「残業をすることになるのか?」「その場合は残業代は支払われるのか?」という点は、はっきりさせておく必要があります。

2-1.試用期間中でも残業はあり得る

まずは、「残業を試用期間中でも会社は命じることができるのか?」という点について確認しておきましょう。

結論を述べると、条件がそろっていれば会社は試用期間中の従業員に対して残業を命じることは可能です。

先ほども触れていますが、仮に試用期間中であっても会社と試用中の労働者との間には労働契約が成立しているので、通常の労働者と同様に「労働基準法」などの仕事関係の法律が適用されます。

労働基準法においては、「1日8時間まで」「1週40時間まで」が法定労働時間として定められており、それを超えた分は時間外労働という扱いになります。

この法定労働時間を超えて時間外労働をすることが、いわゆる残業です。会社が従業員に残業を命じるためには「36協定」の締結と、その届け出が必要です。

つまり、会社が36協定の締結と届け出をしている場合であれば、労働契約を結んでいる試用期間中の労働者であっても、会社から残業を命じることができます。

とはいえ、本採用までに適性を確認して、職場に慣れてもらう目的であるはずの試用期間中において、いきなり残業をさせるのもどうかとは思います。

しかし会社側としては、ちょうど職場が繁忙期であるなど、試用期間中の従業員であっても残業に参加してもらいたい事情もあるでしょう。

36協定の締結という条件があれば会社は残業を命じることができますが、体調不良や家族の介護に時間が必要であるなど、正当な理由がある場合には残業の命令を断ることは可能です。

とくに理由なく残業を断り続けると勤務態度に問題があるとして解雇の理由になる可能性もあります。しかし、残業を断る正当な理由があるにも関わらず、会社から不当に評価されて解雇された場合は、不当解雇として裁判で争うことも十分に可能です。

残業の強制に関しては裁判例も多いほど多くの会社で争われている事情なので、そのような事態に直面した場合は弁護士に相談することをおすすめします。

2-2.試用期間中でも残業代はもらえる

前述のように、試用期間中であっても従業員には労働基準法が適用されるので、試用期間中に残業をした場合は労働基準法に則って残業代として割増賃金が支払われる必要があります。

仮に会社との雇用契約や就業規則において、試用期間中は残業代を支払わないと定められていたとしても、社内規約よりも法律が優先されます。もし、会社が試用期間中であることを理由として残業代を支払わないとすれば、それは労働基準法に反する違法行為です。

また、試用期間中の労働者が、残業だけではなく休日労働や深夜労働をした場合にも、労働基準法が定める割増率によって増額をした割増賃金の支払いを受けることができます。

もし、試用期間中の割増賃金に関して全く支払われない、もしくは割増率を無視して通常の賃金分しか支払われないといった事態になった場合、最終的には訴訟を起こして適正な割増賃金を請求することができるということになります。

「試用期間中のくせに生意気な」と言われるかもしれませんが、労働に対する適法な給料を受け取ることは労働者として当然の権利であり、仮にその会社に居ずらくなったとしてもそのようなブラック企業に対して泣き寝入りをする必要はありません。

弁護士は、そうした不当な扱いを受ける労働者の強い味方となり、会社との交渉に臨んだり、手間のかかる訴訟手続きを代行することも可能です。

こうした問題は早めに解決することが生活の質を落とさないことにつながるので、給料やその他の扱いで不当なことがあれば弁護士に相談して事態の解決に臨みましょう。

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3.試用期間中に残業代が支払われないケース

試用期間中に残業を命じられてそれに従事した場合は、該当する時間に応じた残業代を支払われるのが正当な流れとなります。

しかし、場合によっては残業をしても会社から残業代が支払われず、これについて訴えを起こしても認められないケースもあります。

繰り返しになりますが、残業については、労働基準法において厳しく定められています。

ここで重要になるのが、残業に対して残業代が支払われるかどうかについては「残業時間が労働基準法上の労働時間に該当するか」ということです。

「労働基準法上の労働時間」とは、労働者が会社からの指揮命令下に置かれていると判断できる労働時間のことをいいます。

逆に言えば、会社からの指揮命令下にない状態で行われた残業に関しては、残業という名目であっても法律上は労働時間としてカウントされないのです。

わかりやすく言えば、自発的に行った残業に関しては労働時間として認められず、会社はその従業員に対して残業代を支払う必要がありません。法律上も問題がないため、違法性について争っても会社側が勝訴することになります。ただし、会社が残業を黙認・許容していた場合では残業代請求が認められる可能性もありますので、判断に迷ったら弁護士にご相談ください。

試用期間中ということもあり、「早く仕事に慣れたい」「上司や先輩たちに良く評価されたい」という気持ちが先行してしまったり、日本独自の残業を美徳とする考え方によって自主的に残業をする試用中の従業員も珍しくありません。

しかし、こうしたサービス残業については会社側も扱いが難しいため、逆に悪く評価される可能性もあるでしょう。

試用期間は相応に長く設定されているはずなので、定時になったらきちんと退勤し、翌日以降の仕事に備えることをおすすめします。

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4.試用期間中に残業する際の注意点

試用期間中の残業に関しては、残業のルールを詳しく把握できていないケースも珍しくありません。

余計な損やトラブルを避けるためにも、残業でよくある注意点を2つ紹介します。

4-1.残業代はあくまでも法定外の時間外労働につく

残業代というものは労働基準法により定められている割増賃金ですが、これは必ずしも残業をすれば確実に残業代が付くわけではないという点に注意が必要です。

先ほども触れた通り、自主的に行った残業については基本的に残業代を請求できませんが、他にも残業代が付かない残業のケースがあります。

そもそも「残業代」というのは、先ほども触れた「1日8時間」「週40時間」という法定労働時間がありますが、それを超えて働いた時間に対して割増賃金が適用されるという制度です。

たとえば、1日の実労働時間が6時間の従業員がいて、1時間残業をするとします。

この1時間追加された労働時間は一般的に残業であると思われがちですが、労働基準法では「1日8時間」が法定労働時間であり、このケースでは実労働時間が残業時間を含めても7時間しかありません。

つまり、1日8時間の法定労働時間を超えた労働ではないので、残業した分については通常と同じ賃金で計算されることになり、割増賃金を請求することはできません。なお、所定労働時間を超え、法定労働時間内の残業を行なった場合には、基礎賃金に基づく賃金は支払ってもらうことができます。

4-2.固定残業代制度でも残業代を請求できる

次に、会社によっては「固定残業代制度」が採用されているケースもありますが、その場合でも働き方によっては残業代を請求できる可能性があります。

固定残業代制度とは「みなし残業」とも呼ばれており、会社側が労働時間を把握することが難しい営業職などでよく採用されている制度です。

この制度が適用される場合、従業員にはみなし残業時間が設定されており、「みなし残業時間分だけ働いているとして扱う」という管理体制となります。

また、この制度で設定されている「みなし残業時間分」の残業をしていない場合でも固定の残業代は支払われますが、設定されているみなし残業時間を超えて残業した場合は差額分だけ残業代を請求できます。

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5.試用期間中に未払い残業代がある際の対処法

試用期間中に残業をして、それが正当に支払われていない場合は適切に対処する必要があります。

5-1.まずは「すぐに請求する」か「後に請求する予定にする」かを決める

まずは、残業代の請求タイミングについて考えておきましょう。

悲しいことではありますが、未払いの残業代を請求すると会社側からの評価が大きく落ち込んでしまう可能性があります。

試用期間中ということは本採用を目指しているので、ここで会社からの評価を落とすことは得策であるとはいえません。

もし本採用を目指す道をとるのであれば、すぐに訴えを起こすことは避けたほうが無難でしょう。

もちろん、泣き寝入りすることは弁護士としてもおすすめではないので、証拠集めをし、残業代の消滅時効である3年以内に訴えを起こすことをおすすめします。

もし、本採用を諦めて転職を検討するのであれば、すぐにでも行動を起こすべきです。

後述する証拠集めは退職後には難しくなるので、試用期間中に迅速に証拠を集め、証拠が揃ったら会社に対して残業代を請求しましょう。

5-2.未払い残業代についての証拠を集める

未払い残業代を請求するためには、未払い残業代があることを証明できる証拠を十分に集める必要があります。

たとえば、以下のようなものが証拠能力として認められる可能性が高いです。

  • タイムカード
  • 労働契約書
  • 雇用通知書
  • 就業規則
  • 業務用メールの送受信記録
  • 業務用パソコンのログイン記録
  • 給与明細

中には従業員自身が確保できるものもありますが、会社に開示を請求しなければ手に入らないものもあります。

その場合は弁護士に相談して、必要な資料の開示請求を行いましょう。

会社と交渉するにしても、どこかに訴えを出すにしても、根拠となる証拠がなければ相手にされません。

証拠は多ければ多いほど有利になるので、仕事に差し支えたり怪しまれたりしない範囲で十分な証拠を集めることが重要です。

5-3.労働基準監督署に相談する

会社との直接交渉で解決すれば話は早いのですが、証拠が揃っていても必ずしも会社側が応じてくれるとは限りません。

そこで、次に手を出すべきは「労働基準監督署」です。

労働基準監督署では、会社側に労働者に対する不当な扱いについての是正勧告を出してくれます。

ただし労働基準監督署は、是正勧告するべき内容を証明できる十分な証拠がなければ動いてくれません。

また、交渉や何らかの手続きが必要な場合でも、基本的には中立の立場なので、これらを代行してくれるわけではない点に注意が必要です。

5-4.訴訟手続きで解決する

労働基準監督署の是正勧告も無視するようであれば、訴訟での解決を目指すのが最も現実的な手段となります。

労働に関するトラブルなので、通常の訴訟に入る前にまずは「労働審判」を利用しましょう。

労働審判では労働関係のトラブルについて調停や審判を行う訴訟手続きを行います。

集めた証拠がどれだけ有効性を持つかによって結果も異なるので、必要な証拠はしっかりと集めておきましょう。

もし労働審判でも決着しなかった場合は、通常の訴訟手続きに移行します。

労働審判は比較的短期間で決着できますが、通常の訴訟は下手をすると数か月~1年単位で会社と争うことになります。

相当な労力を消耗するので、訴訟に関しては必要最低限のこと以外は弁護士に一任することをおすすめします。

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6.未払い残業代請求を弁護士に相談、依頼するメリット

前述のとおり、試用期間中の残業問題については弁護士に相談して事態の解決に向かうことが重要です。

会社に残業代を請求するにあたっては、その会社を退職する決意をする方も多いでしょう。

そうなると、次の就職先を見つけるための活動に多くの時間と労力が必要になります。

会社に残業代を支払ってもらうためには、交渉や訴訟手続きなど長い戦いが待っているので、余計なことに時間を割いてしまうと就職活動にも支障をきたすことになるでしょう。

弁護士に依頼すれば、面倒で手間のかかる行動の代行を依頼でき、就職活動など本当に必要なことだけに時間を使うことができるようになります。

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7.試用期間中の残業に関するよくあるQ&A

最後に、試用期間中の残業に関して、よくある質問についてまとめました。

7-1.試用期間中でも残業しなければならない?

試用期間中の従業員も既に会社と労働契約を結んでいるため、解約権が留保されている以外は既存の従業員と同じ扱いになります。

会社が36協定を締結している場合は残業を命じることが認められ、その場合は残業を命じられても基本的に違法性はありません。

7-2.試用期間中の残業にも残業代は出るの?

これも労働契約に関わりますが、試用期間中でも労働契約は締結されているため、残業代の扱いに関して既存の従業員と区別して支払わないということは認められません。

ただし、会社からの命令ではなく自主的にした残業については、残業代を請求できないので注意が必要です。

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8.まとめ

「試用期間中である」ということが、特別な扱いであると勘違いをしている方も少なくありませんが、基本的な扱いは既存の従業員と違いがありません。残業を命じられて従事した場合は残業代を受け取る権利があります。

もし会社側が試用期間中であることを理由に残業代の支払いを拒否した場合は、早めに弁護士に相談して不当に支払われなかった残業代をしっかりと請求しましょう。

私たち法律事務所リーガルスマートは、未払いの残業代請求をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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