不当解雇

会社を辞めてと言われた!退職勧奨の手口や対処法を弁護士が解説

会社を辞めてと言われた!退職勧奨の手口や対処法を弁護士が解説
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会社の経営状態などを理由にすることが多いですが、会社から「ウチを辞めてくれないか?」と聞かれお願いされることも珍しくありません。

これを一般的には「退職勧奨」といいますが、これに同意すると会社を辞めることになります。

会社に未練がなければ受け入れても良いかも知れませんが、収入などの問題があるので受け入れにくい方も多いでしょう。

そこで本記事では、会社から退職勧奨された際の対処法について労働問題に強い弁護士が解説します。

1.そもそも退職勧奨とは

「退職勧奨」とは、冒頭でも述べましたが、会社側から「辞めてくれないか?」と退職に関する同意を求めるアクションです。

会社としても自社の利益につながる労働をしてもらうための従業員の存在は欠かせませんが、従業員の能力や普段の行動、自社の経営状態の悪化などが理由で「従業員に会社を辞めてもらいたい」と考えるケースは珍しくありません。

ここで気になるポイントは「通常の解雇とは異なるのか?」ということでしょう。

解雇(普通解雇・整理解雇・懲戒解雇)については、解雇するにあたっての合理的な理由があれば、対象となる従業員側の同意を得ることなく会社を辞めてもらうことができます。

一方で、退職勧奨はあくまでも会社側から従業員に対して退職に同意してもらうための交渉であり、解雇とは性質が大きく異なります。

とはいえ、解雇するための合理性がある場合は、まず退職勧奨を行って従業員の同意を得たうえで退職を進め、従業員がこれに同意しなかった場合に解雇するというケースも多いです。

そのため、退職勧奨が行われた時点で会社を辞めるリスクが少なからず存在することになります。

しかし、退職勧奨は「あくまでも従業員に退職を勧める行為」というものですので、解雇のように強制力はありません。

したがって、従業員はこれに同意する必要はなく、必ずしも会社を去らなければならないということもありません。

解雇の合理性がある場合はなかなか難しいですが、退職勧奨の後に解雇通知がされた場合は、不当解雇の問題として会社側と交渉したり、訴訟で争う選択肢もあります。

退職勧奨された時点で立場が危うい状態になっており、この時の行動次第で会社に残れる可能性を狭める可能性もあります。

このような問題は労使問題の分野なので、この問題に詳しい弁護士などの専門家の力を借りて、できるだけ自身に有利な条件で問題を解決できるようにすることが求められます。

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2.退職勧奨のよくある手口

退職勧奨では、会社側はさまざまな理由で従業員に対して退職を勧めてきます。

2-1.能力不足を理由に退職勧奨

1つ目の理由は「従業員の能力不足を理由とした退職勧奨」です。

会社は従業員に対して、労働の対価として賃金を支払います。

会社は利益をあげて会社を成長させたり株主に配当を行わなければならないため、支払う賃金に見合った労働を従業員に求めます。

たとえば、端的な話ですが100の賃金に対して80の労働力しか提供できない場合、差額の20だけ会社は損失を被ることになります。

そうなると、この従業員に退職してもらって100の賃金に対して100以上の成果を出せる従業員を新しく雇用したほうが会社は利益を上げられます。

このような理由から、能力不足と判断された従業員に対して退職勧奨をする会社が多く見られます。

2-2.勤務態度の悪さを理由に退職勧奨

2つ目の理由は「勤務態度の悪さを理由とした退職勧奨」です。

従業員が会社に利益をもたらすためには、適切な労働力を提供する必要があります。

たとえば、上司の指示にきちんと従うことはもちろんですが、遅刻や無断欠勤などの周囲の従業員に迷惑がかかる行為も事情がない限りしないほうが無難です。

しかし、人によっては性格などの問題から上司の指示を無視したり、遅刻や無断欠勤を繰り返すことも珍しくありません。

そうした従業員を放置することは周囲の従業員の不満につながり、社内風紀を著しく乱す恐れがあります。

それならば、勤務態度の悪い従業員に退職してもらい、真面目に働いてくれる従業員を新しく雇用したほうが、会社にとっては利益につながり、社内風紀も守れます。

2-3.社内での人間関係を理由に退職勧奨

3つ目の理由は「社内での人間関係を理由に退職勧奨」です。

遅刻や欠勤などの勤務態度や仕事に対する能力が十分な従業員であっても、社内で同僚や上司に対する協調性がない場合は社内風紀を乱す可能性があります。

また、能力的に問題がない従業員でも、セクハラやパワハラなどのハラスメント行為を繰り返す場合は、これも社内風紀を乱してしまい、場合によっては自社の離職率を高める原因になるでしょう。

本来、会社での仕事は上司の指示に従って同僚たちと協力しながら行うことが正常な姿であり、協調性に欠ける従業員は会社に不利益をもたらす存在になりかねません。

そのため、能力的・勤務態度的に問題がない従業員でも、上記のような理由があれば退職勧奨をされるケースも珍しくありません。

2-4.労使間の信頼関係を理由に退職勧奨

4つ目の理由は「労使間での信頼関係を理由とした退職勧奨」です。

労使間では、入社時に労働契約を結んで、就業規則を遵守して労働することを約束します。

就業規則には禁止事項も多く記載されています。たとえば社内の機密情報の漏洩や業務上横領、社内の人間に対する誹謗中傷などの犯罪行為に類する行為は厳しく禁止されやすいです。

そうした事項の遵守は、労使間の信頼関係によって成り立ちます。

よって、就業規則違反などの問題行動をした従業員は、もはや労使間で信頼関係に基づいた労働契約を継続することは困難であり、場合によっては懲戒解雇の合理的な理由にもなり得ます。

そのため、懲戒解雇の前段階として従業員に対して退職勧奨をするケースも多いのです。

以上の理由から、このケースにおいて退職勧奨をされた従業員は、これに同意しなくても懲戒解雇か良くても普通解雇を通知されることになるでしょう。

2-5.会社の経営状態を理由に退職勧奨

5つ目の理由は「会社の経営状態を理由とした退職勧奨」です。

いわゆる「リストラ」が行われる前段階であり、会社の経営難や不採算事業の廃止など、事業を縮小せざるを得ないケースにおいて人員整理をするための整理解雇に近い状態の退職勧奨です。

この場合、「どのような従業員が退職勧奨の対象になるか」は人事部や経営陣の判断にもよりますが、多くの場合は能力などを総合的に判断して順位付けを行い、そのうえで退職勧奨をする従業員を決めているでしょう。

この場合も退職勧奨を断ってもその後に整理解雇が待っているケースが多いため、有利な条件で退職したい場合や転職先がすでに決まっている状態であれば、退職勧奨に応じたほうがスムーズかつ良い条件で退職できる可能性もあります。

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3.退職勧奨されたときどうすればいいのか

上記のように退職勧奨にはさまざまな理由がありますが、会社としても理由があるからこそ自社の従業員に対して退職勧奨を行います。

では、実際に自身が退職勧奨の対象になった場合、どういった行動をとるべきでしょうか。

3-1.すぐには返事をしない

まず重要なことは「すぐには返事をしない」ということです。

もし、「はい、それでは辞めます」とすぐに返事をしてしまうと、会社側に「この従業員はもともと辞めるつもりだった」と判断される可能性があります。

そうなると、その後に退職勧奨による退職に関する交渉を会社と進めることになりますが、その際に不利な条件を突き付けられる可能性があります。

また、会社から退職勧奨を突き付けられた方の多くは、ショックを受けて判断力が鈍る可能性もあります。

そのような精神状態で重要な決断をすることは危険なので、まずは落ち着いて今後のことを決めるためにも返事は待ってもらいましょう。

その際に、相手から「すぐに返事をするように」や「1か月後までに返事をするように」といった指示を命じられた場合は不当解雇に類する問題となるので、この点については最終的に訴訟で争うことも可能です。

3-2.退職に応じるかどうかを考える

退職勧奨に関する返事を待ってもらえることに成功したら、次は「退職に応じるかどうか」を冷静に考えましょう。

前述のとおり、解雇とは異なり退職勧奨における退職は従業員の同意に基づいたものであり、従業員にとっては任意の返事になります。

退職勧奨に応じると会社を去らなければいけないので、転職先を探す必要もあり、転職先が見つかっても給料などの労働条件が悪化するリスクもあります。

そのため、収入などの安定を求めるのであれば、退職勧奨には応じないほうが良いでしょう。

しかし、退職勧奨に応じるメリットも存在します。

まず、退職勧奨では退職に際しての条件を会社側と交渉できます。

解雇よりも退職金やそれに類する和解金を多くもらえたり、退職理由を「会社都合退職」にしてもらうことが可能です。

解雇の場合は、このあたりの条件の交渉が難しくなるので、退職勧奨に応じたことを強みにして自身に少しでも有利な条件で退職できるようにしましょう。

また、会社都合退職にできれば、自己都合退職の場合よりも早めに失業保険がもらえるようになります。

そして、退職勧奨された際は、応じなかった場合は解雇通告される可能性も視野に入れて、「どのみち退職するのであれば少しでも有利な条件で退職できたほうが良い」と考えるのも良いでしょう。

このように、退職勧奨に応じる場合も応じない場合もメリットはあるので、今後のことをしっかりと考えて「応じるかどうか」を考えることをおすすめします。

3-3.退職勧奨の証拠を集める

退職勧奨に「応じる」「応じない」どちらにしても、会社にいられる間に退職勧奨に関する証拠を集めておきましょう。

退職勧奨に関する録音データや退職勧奨に関するメールなどが、これに該当します。

これらの証拠は、後に退職勧奨に関してトラブルになった際に有力な証拠として利用することが可能です。

そして、失業保険の扱いに関しては、ハローワークに提出する離職票に自己都合退職か会社都合退職のどちらが記載されているかによって受給できるタイミングが異なります。

もし離職票に自己都合退職と記載されている場合でも、退職勧奨に関する証拠をハローワークに提出すると離職理由の異議申し立てが可能です。

この場合、ハローワークが調査を進めて「会社都合退職に相当する」と判断されれば、離職票の記載内容に関わらず会社都合退職として失業保険の手続きを進めてもらえます。

また、これらの証拠は退職金に関する訴訟でも有利になる可能性があります。

会社によって基準は異なりますが、会社都合退職よりも自己都合退職のほうが退職金が少なく計算されるケースもあります。

もし、自己都合退職扱いで退職金が計算された場合は、労働審判や通常の訴訟で差額の請求ができる可能性があります。

他にも、例えば、退職勧奨に応じてしまったとしても、それが事実上強制されたものであれば不当に解雇されたものとして、後々に訴訟に発展することがあります。その際にどのように退職勧奨を進められたのかの証拠として録音データやメールの内容が重要になってくることがあります。

こうした各場面で証拠は役に立つので、可能な限り退職勧奨に関する音声データや文書データなどを確保しておきましょう。

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4.会社をどうしても辞めたくないときはどうすればよいのか

会社から退職勧奨された時に、その会社を辞めたくない場合は、方法は単純ですが「応じない」という手段をとることも可能です。

前述のとおり、退職勧奨は「従業員に対して退職に応じてほしい」と勧める行為というだけなので、正当な理由のある場合の解雇とは異なり強制力はありません。

そして、可能であれば自身が退職勧奨の対象になった理由を確認しておきましょう。

たとえば、勤務態度に問題があると判断された場合、該当する理由に心当たりがなければ反論し、社内で調査してもらうことで濡れ衣を晴らすこともできるかもしれません。

また、会社側のやり方次第では、退職勧奨そのものに違法性が認められるケースもあります。

たとえば、脅迫や詐欺などによる意思決定は民法によって取り消しが可能であり、従業員を心理的に追いつめて退職させた場合は不当解雇の可能性が高くなるので、これも訴訟などで会社側と争うことが可能です。

このように、退職勧奨されてもその正当性について争うことで会社に残留できる可能性は十分にあります。

ただし、解雇事由に相当する合理的な理由が認められる場合は、退職勧奨に応じなかった後に解雇される可能性があるので、特に退職勧奨される理由の確認は重要であり、思い当たることがある場合は退職勧奨に応じたほうが有利な条件で退職できることは念頭に置いておきましょう。

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5.会社を辞めてもいいが自分に不利益がないようにする方法

退職勧奨に応じて会社を辞めると決めた場合は、少しでも自身に有利な条件で会社を退職できるように工夫することが重要です。

特に重要なことが「退職金」と「離職理由」についてで、「これらを少しでも有利な条件で会社側と交渉できるかどうか」がポイントになります。

退職金は少しでも多くもらったほうが今後の生活に不安が出ないというメリットがあり、離職票に記載される離職理由は会社都合退職のほうが失業保険などの点でメリットがあります。

自身が納得できる水準まで退職条件を交渉できたら、合意内容について合意書を作成しましょう。

合意書を締結しておかないと、後になって会社側と退職についてトラブルに発展する可能性があります。

合意書に記載されている内容に問題がないことをしっかりと確認しておき、合意書を締結した後は引継ぎなど残る従業員が業務で困ることがないようにして気持ちよく会社を辞められるようにしておきましょう。

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6.退職勧奨を弁護士に相談、依頼するメリット

退職勧奨に関して会社側とトラブルになっている場合は、早めに労使関係に強い弁護士に相談することをおすすめします。

会社に残りたい場合でも辞めても良い場合でも、退職勧奨では会社側とさまざまな交渉をすることになります。

場合によっては法律の知識を生かして退職勧奨に関する違法性を争う場面も出てくるかもしれません。

ここで重要なのは、交渉の経験値と労使問題に関係する法律の知識です。

一般的な社会人の場合、交渉ごとについては業種によっては強みがある方もいるかもしれませんが、法律の知識については疎い方が多いでしょう。

自身の希望に少しでも沿う形で会社側との交渉を決着させるためには、交渉力も法律の知識もどちらも欠かせません。

労使問題に強い弁護士はその両方を持ち合わせる専門家であり、会社側との交渉を有利に進めることができます。

会社側も「相手は弁護士をつけている」とわかれば、態度を軟化させてこちらの要求を受け入れてくれる可能性が高まるでしょう。

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7.退職勧奨に関するよくあるQ&A

最後に、退職勧奨に関するよくある質問についてまとめました。

7-1.「辞める」と「辞めさせられる」はどのように違いますか?

「辞める」とは、従業員が自らの意思で会社に対して退職を申し入れることです。

一方で「辞めさせられる」というのは要するに解雇のことであり、従業員の同意なしに退職してもらうことができますが、社会通念上認められるような合理性がなければ従業員の解雇は難しいとされています。

退職勧奨の場合は、基本的に従業員が合意することで会社を「辞める」ことになりますが、会社側のやり方次第では「辞めさせられる」に該当し、不当解雇などの違法性が問われる可能性もあります。

7-2.退職勧奨に応じないとデメリットがありますか?

退職勧奨されるということは、勤務態度や能力不足など何かしらの理由があることが多いです。

そのため、退職勧奨に応じなかった場合は、それらを合理的な理由として解雇通告されるケースも少なくありません。

ただし、基本的に退職勧奨は任意であって応じなくても強制力はありません。

7-3.違法な退職勧奨はありますか?

民法では詐欺や脅迫による意思表示は取り消すことができます。退職勧奨において会社側が従業員に嘘を言ったり脅迫により退職を迫った場合は取り消すことが可能です。

また、圧迫面談などによって従業員を心理的に追い詰めて退職させた場合に、労働契約法で不当解雇と認められれば無効になる可能性もあります。

「退職勧奨の手口が悪質である」と認められれば、この件に関して会社側に損害賠償請求ができるケースもあります。

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8.まとめ

退職勧奨されるとショックを受ける方も多いと思いますが、今後の生活に大きく関わる以上は冷静に考えて今後の行動を決める必要があります。

会社側との交渉も必要になる場合があるので、退職勧奨について悩んでいたり会社側とトラブルになっている方は早めに弁護士に相談して解決に向かいましょう。

私たち法律事務所リーガルスマートは、解雇・退職勧奨に関するトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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