自己破産

自己破産で車を手元に残す方法や残るケースなどを弁護士が解説!

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目次

1.自己破産すると所有している車はどうなるのか

自己破産すると所有している車は、原則として換価処分されますが、その車の価値や自動車ローンが残っているか否かにより処分が異なります。

車のローンが完済されていなければ、車はローン会社に引き上げられ、ローンが完済されていても、査定価値が20万円以上であれば、車は破産手続の中で換価処分されます。

自己破産することで、債務が免除される代わりに、債務者が所持している財産はすべて換価処分の対象となり、そのまま保有することができなくなるからです。

しかし、車は日常生活には欠かせないために、自己破産する前に、手放すことを避けたいと思う方も多いことでしょう。

自己破産すると、所有している車がどうなるかをきちんと知ったうえで、自己破産を行うかを考えることが重要になります。

本記事では、自己破産で車を手元に残す方法、手元に残したいときにやってはいけないこと、自己破産後に車を所有できるのか、などを債務整理に強い弁護士が解説します。

1-1.ローンが残っていない場合

自己破産すると所有している車は、車のローンが残っていない場合と、ローンが残っている場合とで、処分が異なります。

ローンが残っていない場合は、車の時価が20万円を超える場合に限り、破産手続きのなかで車は換価処分されるのが原則です。

反対に、車の時価が20万円未満である場合は、車をそのまま所有することができます。

また、どうしても車の所有を希望する場合は、その必要性を裁判所に説明して、車の査定価値と同額を破産管財人に支払うことにより、例外的に維持できる場合もあります。

さらに、車の法定耐用年数が6年を超えている場合は、査定をしなくても、そのまま手元に残せる可能性もあります。

ただし、この場合でも外車や人気の車種などである場合には、裁判所の査定が必要になることもあるため、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

1-2.ローンが残っている場合

ローンが残っている場合には、車の時価に関わらず、原則的には、ローン会社に車を引き上げられてしまいます。

ローン会社との契約によりローンを完済するまでは、車の所有権はローン会社に留保されている(所有権留保)ためです。

車を引き上げられてしまう時期は、一般的にはローンの支払いが滞り、残債の一括返済義務が生じた段階です。そのような状態になったら、ローン会社から連絡が来て、車を回収されることになります。

車がローン会社に引き上げられてしまうなら、これまでどおりローンを支払いたいと思っても、自己破産をする場合には、特定の借入先だけの返済を続けることは、原則として認められません。

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2.自己破産後に車を手元に残す方法

自己破産後に車を手元に残す方法は、以下の3つです。

それぞれ見ていきましょう。

2-1.第三者がローンを返済する(第三者弁済)

自己破産後に車を手元に残す1つめの方法は、家族や親族など、債務者以外の第三者にローンを一括で支払ってもらうことです。

第三者にローンを支払ってもらうことで、ローン会社の所有権留保は解除されます。そのため、車は法的に問題なく手元に残すことができます。

ただし、注意しなければならないのは、第三者が債務者の代わりにローンを返済する場合は、債権者の同意が必要になることです。

家族や親族などの第三者が、債務者の代わりにローンを支払うことを、ローン会社に事前に連絡しておくことが必要です。

また、第三者弁済後の車の所有権をどうするかも注意する必要があります。査定価格が20万円を超える場合には、破産手続の中で換価しなければならなくなることもあるため、この点も含めて検討する必要があります。

2-2.自由財産の拡張を申し立てる

自己破産後に車を手元に残す2つめの方法は、自由財産の拡張を申し立てることです。

車の評価額が20万円を超える場合であっても、裁判所に「自由財産の拡張の申立て」(破産法34条4項)をすることで、生活に必要な最低限の財産として認めてもらえる可能性があります。

自己破産は、無一文になるイメージが強いかもしれませんが、自己破産をしても無一文になってしまうわけではありません。

自己破産においては、自由財産として処分しなくても良いとされる財産が破産法により定められています。自由財産とは、破産財団に組み込まれずに、破産者が自由に使用できる財産です。

具体的には、99万円以下の現金、新得財産、差押禁止財産、自由財産拡張により裁判所に保有が認められた財産、破産管財人が破産財団から放棄した財産、などです(破産法第34条3項)。

自己破産の制度は、破産者を救済して再スタートを後押しすることを目的としているため、生活に必要な最低限の財産は、破産者の手元に残せるようにしています。

車は、基本的には、破産法の自由財産には含まれませんが、裁判所では評価額の低い車については、例外的に自由財産として認めるという基準を設けています。

この自由財産の範囲を広げる裁判所独自の基準を「換価基準(自由財産拡張基準)」といいますが、かなり厳しいものであるため、まずは、弁護士に相談してみることをおすすめします。

2-3.自己破産以外の債務整理を検討する

車を手元に残しておける方法として、自己破産以外の債務整理を検討することも可能です。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つの方法があります。

債務整理の種類特徴
任意整理債権者と交渉して利息や遅延損害金を免除する手続き
・毎月の返済を減額したい人向き
個人再生裁判所に申し立て、財産を残しながら借金を減額する手続き
・財産を残して借金を減額したい人向き
自己破産裁判所に申し立て、利息や遅延損害金を免除する手続き
・全く返済できないときの最終手段

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3.自己破産後も車が手元に残るケース

自己破産をすると、原則的には車は手元に残りませんが、以下のように、ケースによっては車が手元に残ることもあります。

それぞれ見ていきましょう。

3-1.ローンがなく車の時価が20万円以下

自己破産しても、車のローンがなく車の時価が20万円以下の場合は、先に述べた自由財産として車が手元に残る可能性があります。

自由財産とは、債務者が自己破産後に生活を立て直すために最低限必要な財産です。

車は、基本的には、自由財産の中には含まれていませんが、裁判所によっては車を自由財産と認めるケースが多くあります。

裁判所が自由財産と認めれば、自己破産後も車が手元に残ります。

車が時価20万円以下となるのは、車の年式が古い、事故車、故障者、など車の状態が悪く換価価値の低い車がほとんどです。

ただし、ローンを返済中の場合は、完済するまでの期間は所有権がローン会社に留保されるため、自己破産すれば車はローン会社に引き上げられることになります。

3-2.車の名義人が本人以外

車の名義人が自己破産した本人以外であれば、自己破産後も車は手元に残ります。

例えば、親、兄弟、姉妹、子ども、親戚、など、車の名義人が自己破産の本人以外であれば、自己破産をしても車を回収されることはありません。

自己破産で財産を回収されるのは、自己破産を申し立てた本人であり、それ以外の家族や第三者の財産は対象にはなりません。

ただし、家族の車であっても購入費用を自己破産した本人が支払っていた場合は、裁判所より家族に対して購入費用の返還を求められる可能性があるため、注意が必要です。

3-3.車がないと生活が困難である

車がないと著しく生活に支障をきたす状況の場合には、先に述べた、裁判所の自由財産拡張を申し立てることにより、自己破産後にも車を手元に残すことができます。

自由財産拡張の申立てが認められるのは、以下のようなケースです。

  • 生活または仕事にどうしても必要
  • 身体に障害があるため、移動に必要
  • 高齢であるため、生活に必要
  • 親の介護に必要
  • 病気の治療や通院に必要

上記のケースでは、裁判所に自由財産の拡張を申し立てることにより、自己破産後でも車が手元に残る可能性が高いでしょう。

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4.自己破産後も車を手元に残したいときにやってはいけないこと

自己破産後も車を手元に残したいときに、やってはいけないことは、以下のような行為です。

これらの行為をすると、自己破産が認められなくなる可能性があるため、注意が必要です。

それぞれ見ていきましょう。

4-1.車の名義を他人名義にする

やってはいけないことの1つめは、車の名義を他人名義にすることです。

自己破産の直前に、車の名義を配偶者や親、兄弟姉妹、親戚などの他人名義に変更することは、やってはいけません。

他人名義に変更することは、「財産隠し」として債務の免責を認めない事由にあたるため、自己破産が認められなくなることがあるからです。

4-2.車のローンの申告をしない

やってはいけないことの2つめは、車のローンがあることを申告しないことです。

車があることを隠すために、車のローンがあることを申告しないことも「財産隠し」として免責不許可事由になるため、自己破産しても返済義務が消滅しなくなります。

また、車のローンが残っていることを隠すことは、詐欺破産罪に問われる可能性もあるため、注意が必要です。

たとえ、虚偽の申告を行っても、通帳やローン会社の申出などから、ローンがあることが発覚してしまうため、必ず真実を伝えるようにしましょう。

4-3.車を勝手に売却する

やってはいけないことの3つめは、車を不当に売却してしまうことです。

自己破産すれば車は処分されるから、という理由で、車を勝手に売却して現金を手元に残すことはできません。

また、車などの資産を不当に安い価格で処分することは、破産法で禁止されています。勝手に処分した場合には、破産管財人から否認されたり、最悪のケースでは自己破産が認められなくなるでしょう。

他方で、自己破産前であっても、売却代金を借金の返済に充てるためであれば、車を適正価格で売却できます。

4-4.車のローンを一括返済する

やってはいけないことの4つめは、車のローンを一括返済することです。

自己破産する前に、車のローンを一括返済することは、偏頗弁済にあたる可能性があります。一部の債権者だけに弁済することを偏頗弁済といい、法律により禁止されています。

偏頗弁済を行うと、自己破産しても破産管財人から否認されたり、場合によっては免責が認められないことになるため、注意しましょう。

どうしても車を残したい場合は、家族に協力してもらいローンを弁済してもらうことを検討してもらいましょう。

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5.自己破産後に車を持つことは可能なのか

自己破産後に車を持つことは可能ですが、自己破産前と同じというわけではありません。

以下は、自己破産後に車を持つ方法です。

5-1.一括払いの購入は可能

車を購入する際にローンではなく、一括払いであれば、購入することが可能です。

自己破産をしても、その後は、貯金やボーナスなど一括払いで車を購入することができます。

自己破産をすると金融機関の信用情報(いわゆるブラックリスト)に載りますので、ローンでの購入は難しいでしょう。

5-2.一定期間の経過後であれば購入は可能

自己破産後は、5年~7年間の一定期間中は自動車ローンを組むことができません。

自己破産すると、信用情報機関に自己破産の情報が掲載されるため、掲載期間中はローンを含む新たな借り入れができなくなります。

もしも、配偶者など協力してくれる人が身近にいるような場合には、その人にローンを組んでもらい車を購入することができます。

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6.車を手元に残して借金問題を解決する方法

車を手元に残して借金問題を解決する方法は、以下の2つがあります。

借金問題があると、すぐに頭に思い浮かぶのは自己破産ですが、借金問題の解決方法には自己破産以外にもあります。

それぞれ見ていきましょう。

6-1.任意整理

任意整理とは、弁護士がカード会社などの金融機関と交渉して、今後の利息を減免してもらい3年〜5年で分割返済できるよう毎月の返済額を減らす手続です。

任意整理は、今後の利息を減免してもらうことで返済額を減らしますが、借金の元金自体が減るわけではありません。

任意整理は、自己破産と異なり、基本的に財産を処分されることはないため、車のローンがなければ、任意整理をしても車を処分されることはありません。

車のローンがある場合でも、そのローンを任意整理の対象から外すことにより、車を手元に残すことができます。

ただし、任意整理をしても、車のローンは継続して支払わなければならないため、その後の返済が可能であるのか否か、慎重に検討しなければなりません。

任意整理は、債務の中から、手続きを行う債務と行わない債務を選ぶことができる制度でもあります。

そのため、車以外にも家やバイクなどのローンを手続きから外すことが可能で、財産を手元に残して借金問題を解決できるようになります。

また、任意整理の手続きは、弁護士とローン会社などの金融機関の間の交渉がメインであり、裁判所を通さないため、手続きも自己破産や個人再生よりも比較的簡易です。

弁護士に依頼することで、直接金融会社と交渉を行ってくれるため、時間や労力を大幅に削減することができるでしょう。

6-2.個人再生

個人再生とは、裁判所を通して借金問題を解決する方法です。借金の金額を大幅に圧縮することが可能な手続きです。

個人再生は、借金が返済不可能であることを裁判所に認めてもらい、大幅に減額された借金を3〜5年で返済していきます。その後の利息も免除されます。

個人再生は、車や家などの財産を手元に残したまま、借金を大幅に減らせる制度です。

借金の金額が大きいために完済は難しいが、車や家などの財産を手元に残しておきたい場合には、個人再生が適しているでしょう。

ただし、個人再生では、任意整理のように債務を手続きの対象から外すということができません。すべての債務が手続きの対象となります。

したがって、個人再生をしても車を手元に残せるのか否かは、ローンの有無により異なります。

車のローンがない場合は、車は手元に残ります。ただし、車の時価が高い場合は、個人再生後の返済額が増額される可能性があります。

車のローンがある場合は、一般的には車のローン会社に所有権が留保されているので、車は回収されて手元には残りません。

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7.借金問題を弁護士に相談、依頼するメリット

借金問題を弁護士に相談、依頼することには、以下のようなメリットがあります。

それぞれ見ていきましょう。

7-1.借金の催促・取り立てがストップする

弁護士に相談・依頼する1つめのメリットは、弁護士に正式に依頼することで借金の取立てがストップすることです。

借金問題を自力で手続きした場合、手続き期間中であっても、債権者の借金の催促など取立ての連絡がなくなることはありません。

弁護士に正式に依頼して委任契約を結んだ時点で、弁護士から債権者に対して借金問題の受任通知が送られます。

受任通知を受けた貸金業者などの債権者は、それ以降は債務者に取立てすることが法律で禁止されているため(貸金業法21条1項9号)、借金の取立てがストップします。

7-2.状況に応じた最適な解決策を提案してもらえる

借金問題を弁護士に相談・依頼する2つめのメリットは、あなたの状況に応じた最適な債務整理の解決策を提案してもらえることです。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つの方法がありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。

それぞれの状況に応じた手続きをしないと、債務整理に失敗したり、借金問題がさらに悪化してしまうなどのデメリットを被ることにもなりかねません。

弁護士に相談することで、あなたの所有している財産を考慮しながら、最善策により早期に借金問題を解決することが可能になります。

7-3.手続きなどを一任できる

自力で借金問題に対応することになると、裁判所への申立て書類の作成や提出、債権者との交渉、などの法律手続きをすべて自分で行わなければなりません。

裁判所への申立て書類の作成や提出は複雑であるため、書類の不備などにより手続きが中断してしまい、借金問題の解決が進まないこともあります。

借金問題を弁護士に依頼することで、必要書類の提出、数回の裁判所への出頭などをする以外は、基本的に手続きを一任できるため、時間や労力の浪費を防げるようになります。

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8.自己破産で車を手元に残すことに関するよくあるQ&A

ここでは、自己破産での車の処分に関するよくある質問を見ていきましょう。

8-1.自己破産した後にも車を購入できますか?

はい、自己破産をした後でも車を購入できますが、以下の点に注意が必要です。

  • 一定期間(通常は5年~7年間)は、車のローンを組めない
  • 一括払いであれば、車の購入は可能

8-2.自己破産すると車は処分されますか?

はい、原則として車も処分の対象になります。

ただし、車の価値が20万円以下の場合は、処分対象外となるため、処分されません。

また、20万円以上であっても事情によっては処分せずに済む可能性もあります。

8-3.車を手元に残して借金問題を解決する方法はありますか?

はい、債権者と債務の交渉をして利子の減額を行う任意整理や、家など一部の財産を残して借金を減らす個人再生などの方法で、車を手元に残して借金問題を解決することができます。

8-4.自己破産すると運転免許まで剝奪されますか?

いいえ、運転免許まで剥奪することはありません。自己破産をすると一部の資格に制限がかかる場合もありますが、車に乗ること自体に制限を受けることはありません。

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9.まとめ

自己破産をすると、基本的には車は手放すことになりますが、車の価値が20万円以下であったり、日常生活に著しい支障をきたす場合には、車を手元に残せる可能性があります。

車の時価は自分では判断するのが難しいため、自己破産を検討している場合は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

特に、自己破産前に車の名義を変更したり売却するなどの行為は、自己破産ができないばかりか罪に問われる場合もあるため、決してしてはいけません。

法律事務所リーガルスマートでは、依頼者に寄り添い、二人三脚で借金問題を解決していきます。その後の人生を見据えたサポートをさせていただきますので、是非ご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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