自己破産
官報で自己破産者の名前検索できる?掲載期間などを弁護士が解説
自己破産で免責が認められると、官報に破産者の名前・住所などが掲載されます。
これに対して「会社や知り合いに知られてしまうのでは」「仕事ができなくなるのでは」などと不安を持つ方が多いのではないでしょうか。
本記事では、自己破産で官報に氏名・住所などが載るのはなぜか、官報に載った場合に第三者が名前を検索できるか、氏名・住所などが掲載される期間、官報に載ることによるデメリットなどを借金問題・債務整理に強い弁護士が解説します。
目次
1. そもそも官報とは
官報とは、内閣府が発行している機関紙です。
行政機関の休日を除き毎日発行され、政府や各省庁の決定事項や人事異動、国家試験に関する事項や競争入札など、国に関わる様々な情報が載っています。
1-1. 官報を閲覧する方法
官報を閲覧する方法は、主に以下の3つです。
- 発行日に官報販売所で購入
- 図書館で閲覧
- インターネット版官報にアクセス
(1)紙版の官報を閲覧する方法
紙版の官報を閲覧する方法は、発行日に全国48か所にある官報販売所で購入するか、図書館で閲覧するという方法です。
①購入する場合
購入する場合は一部143円で、官報販売所で申し込みすれば定期購読も可能です(1か月1,641円)。
自己破産の情報が公告されるのは、後述するように「破産手続開始決定時」と「免責許可決定時」の2回です。
従って、ある人についての自己破産情報が公告された紙版の官報を入手できるのは、その情報が掲載された日のみです。
②図書館で閲覧する場合
官報は、国立国会図書館や各地の大きな図書館で無料で閲覧できます。
ただし、各地の図書館での所蔵期間は限定されているので、過去に発行されたすべての官報を閲覧できるわけではありません。
(2)インターネット版官報にアクセスする方法
インターネット版の官報には、無料版と、会員のみが閲覧できる有料版があります。
無料版は、誰でも閲覧できますが、閲覧可能なのは直近の90日間のみです。
有料版(官報情報検索サービス)は、1947[S22]年5月3日以降の官報を閲覧できます。
また、検索機能があるので、日付やキーワードで情報を絞り込むことが可能です。
1-2. 官報を閲覧するのはどのような人か
官報を日常的に閲覧する可能性があるのは、以下のような業種・機関の関係者です。
- 弁護士・司法書士・税理士などの士業者
- 銀行・保険会社などの従業員
- 警備会社の従業員
- 税務署など、行政機関の職員
- 信用情報機関の従業員・職員
官報には破産者情報以外に法令改正など様々な情報が載っています。閲覧する目的も様々なので、個人の破産情報が知られる可能性は少ないといえるでしょう。
2. 自己破産によって官報に掲載される内容
自己破産によって官報に掲載(公告)される内容は、破産法第32条に定められています。
2-1. 公告の記載内容
官報には、以下の内容が記載されます。
- 事件番号
- 破産者の氏名
- 破産者の住所
- 決定日時
- 主文(決定内容)
- 決定理由
- 破産債権の届出期間
- 裁判所名
- 破産管財人名(管財事件の場合)
- 財産状況報告集会等の日時(管財事件の場合) など
2-1. 公告の例
以下は、管財事件の破産手続開始決定時の公告の例です。
令和〇年(フ)第〇号 東京都〇〇区〇〇1丁目〇番地〇 債務者 〇〇 1 決定年月日時 令和〇年〇月〇日午前10時 2 主文 債務者について破産手続を開始する。 3 破産管財人 〇〇 4 一般異議申述機関 令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで 5 財産状況報告集会・一般調査・廃止意見聴取・計算報告・免責新人の期日令和〇年〇月〇日 6 免責意見申述期間 令和〇年〇月〇日まで 〇〇地方裁判所 |
このうち、個人が特定されてしまう情報は債務者の氏名と住所です。生年月日は記載されません。
同姓同名の人もいることから、現住所を知っている人でない限り、自己破産したことが官報の公告によって第三者に知られてしまう可能性は高いとはいえないでしょう。
3. 自己破産で官報に載ると名前検索できるのか
それでは、自己破産で官報に載ると、第三者が名前を検索できるでしょうか。
3-1. インターネット無料版には検索機能がない
官報は、紙媒体及びインターネットの無料版・有料版(会員制情報検索サービス)が発行されています。
インターネット版があると、「無料版ならば誰でも名前を検索できるのでは」と不安に思われるかもしれません。
確かに、インターネットの無料版は誰でも閲覧できます。しかし、閲覧できる期間は直近の90日間分で、名前検索の機能もありません。
3-2.有料版では名前を検索できるが取得情報の漏洩が禁止されている
これに対して、有料版には検索機能があります。そのため、有料版のサイト内で氏名・住所を検索される可能性はあります。
ただし、有料版が一般の方に閲覧される可能性は低いといえます。
また、有料版で取得した個人情報は個人情報保護法により保護されています。個人の氏名・住所などを故意に漏洩することは同法で禁止され、違反した場合は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」の罰則が課せられます(個人情報保護法第181条)。
このことから、自己破産をした人の氏名や住所を、一般の方に知られる可能性は低いといえるでしょう。
4. 自己破産によって官報に載るタイミング
自己破産情報が官報で公告されるタイミングは、「破産手続開始決定時」と「免責許可決定時」の2回です。
以下、それぞれの手続きについて解説します。
4-1.破産手続開始決定時
1回目に公告されるのは、「破産手続開始決定時」です(破産法第32条)。
破産手続開始決定とは、裁判所が自己破産の手続きを行うことを認める旨の決定をいいます。
この決定は通常、裁判所に自己破産の申立てを行ってから1か月程度で行われます。
4-2.免責許可決定時
2回目に公告されるのは「免責許可決定時」です(破産法第10条3項・第252条3項)。
免責許可決定とは、裁判所によって借金の返済義務の免除、つまり免責が決定されることをいいます。
免責許可決定は、自己破産の申立てを行ってから2~3か月で行われます。
免責許可決定が行われた際には、官報による公告とともに、債権者に対して個別の通知も行われます。
債権者に対する通知書面を「免責許可確定証明書」といいます。
5. 自己破産によって官報に載るデメリット
自己破産によって氏名や住所が官報に載ることにより、考えられるデメリットとして以下が挙げられます。
5-1.官報公告費用がかかる
自己破産の申立てをする際に、官報に公告するための料金(官報公告費用)を支払う必要があります。
裁判所によって金額は異なりますが、東京地裁の場合は2024年3月現在以下の金額となっています。
- 管財事件:18,543円
- 同時廃止事件:11,859円
5-2.信用情報機関のブラックリストに登録される
官報の公告は、信用情報機関の「事故情報」の登録要因になります。
「事故情報」は、自己破産などの事実をいいます。事故情報が登録されることは、いわゆる「ブラックリストに載る」状態です。
事故情報の登録要因は、官報の公告の他に、弁護士による債権者への受任通知、裁判所による債権者に対する破産手続開始決定通知などがあります。
自己破産した場合、信用情報機関に事故情報が登録される期間は、破産手続開始決定または免責許可確定後から5年~7年です。
6. なぜ自己破産で官報に掲載されるのか
それでは、自己破産すると官報に掲載されるのはなぜでしょうか。
自己破産情報が官報に掲載、つまり公告される目的は、債権者などの関係者を破産手続に参加させるためです。
破産法上、裁判所が破産手続開始の決定をした時点で、官報に公告することが定められています(破産法第32条)。
7. 自己破産で官報に掲載されるのはどれくらいか
また、自己破産で官報に掲載されるのはどのくらいの期間でしょうか。
前述のように、情報が官報に掲載されるのは「破産手続開始決定時」と「免責許可決定時」の2回です。
仮に、破産手続き開始決定日が6月3日(月)、免責許可決定時が9月3日(火)で、官報に掲載されるのは6月4日(火)と9月4日(水)だったとします。
この場合、官報に掲載されるタイミング自体は6月4日と9月4日の、それぞれ1日に限られます。
一方、官報に掲載されたその情報が「公開されていて一般の人が閲覧できる」期間については、紙版とインターネット版で異なります。
- 紙版の場合
各地の図書館の場合は、所蔵されている期間がそれぞれ異なります。国会図書館の場合は、半永久的に閲覧可能ということになります。
- インターネット版の場合
インターネットの無料版は、直近の90日分が公開され、閲覧できます。
有料版の場合は、半永久的に検索が可能なので、その情報の閲覧も可能ということになります。
8. 自己破産を弁護士に相談、依頼するメリット
自己破産を弁護士に相談、依頼することには、以下のようなメリットがあります。
8-1.自己破産のメリット・デメリットについて詳細な説明を受けられる
自己破産を検討されている方は、ご自身の状況で自己破産することが可能か判断しづらいと思います。また、自己破産することによるさまざまな影響を懸念されているのではないでしょうか。
自己破産について弁護士に相談することで、自己破産のメリットやデメリットについて詳しい説明を受けられます。
また、相談者の方の事情に沿って、自己破産によるべきか、他の救済方法(任意整理・個人再生など)を利用したほうがよいか、最適の方法を提案いたします。
8-2.債権者の取立てがストップする
自己破産を考えている方の多くは、カード会社などからの支払督促の通知や電話で悩まれていると思います。
自己破産の手続きを弁護士に依頼すると、弁護士が債権者に対して受任通知を送付します。
貸金業者は、弁護士から受任通知を受けた場合、当該債務者に対して以後の取立て行為を行うことが禁止されます(貸金業法第21条1項9号)。
ひとまず取立てがストップすることで、債権者による督促から解放されます。また、債権者に対する借金返済義務がストップするため、生活の立て直しを図ることができるでしょう。
8-3.家族への影響を最小限に抑える方法の提案を受けられる
また、自己破産に対しては、家族に知られることや、家族への影響が心配になる方も多いのではないでしょうか。
弁護士に相談することで、極力ご家族に知られずに済む連絡手段をとります。また、家族への影響を最小限にする方法を提案いたします。
8-4.裁判所での手続きを任せられる
自己破産の手続きは必ず裁判所を通して行います。手続自体が複雑なので、債務者本人が行うことは困難です。また、管財事件になった場合は、管財人から生活状況について追及されるおそれもあります。
自己破産手続きを弁護士に依頼することにより、裁判所での申立て手続きを任せることができます。
また、管財事件になった場合の管財人とのやり取りに対して、不当な不利益を受けないように細かくアドバイスさせて頂きます。
9. 自己破産における官報に関するよくあるQ&A
本章では、自己破産で官報に載ることに対して頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。
9-1. 官報に載せられた破産者情報を官報以外の媒体で公開されることはありますか?
自己破産を考えている方にとっては、破産者情報が官報以外の媒体で公開される可能性に不安を感じている方も多いと思います。
いわゆる「破産者マップ」をはじめとする破産者情報サイトは、現在では個人情報保護法強化による規制を受けています。
2019年に、官報に記載された破産者の氏名と住所をGoogleマップ上の地図情報に表示する「破産者マップ」が出現しました。
このような破産者情報サイトの存在により、自己破産の事実が近所の人や勤務先・知人などに知られてしまう可能性が高まり、プライバシー侵害が危惧されていました。
また、サイト運営者が削除を求める破産者から法外な手数料を請求していたことなどもあいまって、破産者マップは大きな社会問題となりました。
この問題に対して日本弁護士連合会は、2020年7月に「破産手続きなどにおいて公告された情報の拡散を防止するための措置を講じるべき」とする意見書を国に提出しました。
参照:日本弁護士会連合会|公告された破産者情報を含む「本人が破産、民事再生その他の倒産事件に関する手続を行ったこと」に関する情報の拡散を防止する措置を求める意見書」
その後も出現し続けた破産者情報サイトに対して、国(個人情報保護委員会)は、個人情報保護法に反するとして、事業者に閉鎖を要求し、任意の閉鎖に応じなかった事業者に対して2020年7月29日に停止命令を発令しました。
結局、当時開設されていた破産者情報サイトは運営を停止しました。
当時の問題を受けて、インターネット版の官報は、テキスト検索が不可能になるようにデータが修正されました(画像データとして保存されています)。
そのため、過去に出現した破産者情報サイトのように、テキストの自動検索によってデータを収集することはできなくなりました。
これらの動きにより、類似のサイトが再度開設される可能性は高くないといえます。
9-2. 自己破産する場合、官報に載らないで済む方法はありますか?
残念ながら、自己破産手続きを行う場合は、破産者情報が官報に載ることは避けられません。
破産法上、自己破産手続開始決定時と免責許可決定時に、裁判所が債務者の住所・氏名を含む情報を官報で公告することが義務づけられています。
これは、その債務者に関わる債権者に対して平等に破産手続きに参加させる目的で行われるためなので、公告を行わずに自己破産手続きを行うことはできないからです。
官報に載ることをどうしても避けたいとすれば、任意整理を検討することをおすすめします。
任意整理は裁判所を介さずに当事者間の交渉で解決を目指す方法なので、官報に公告されることはありません。
また、整理の対象とする借金(ないし債権者)を選べるため、保証人・連帯保証人つきの借金があれば整理対象から外すことができます。
従って、保証人・連帯保証人に一括請求が行われたり、任意整理の事実を知られるおそれもありません。
債務の残額や収入状況などから任意整理が可能かどうかについては、弁護士にご相談ください。
9-3. 官報以外から破産を知られる可能性はありますか?
自己破産の情報については、信用情報機関の信用情報及び、市区町村で管理する「破産者名簿」に登録されます。
しかし、これらの情報から債務者の勤務先や同居していない親族、知人・友人などに破産の事実が知られる可能性は低いです。
(1)信用情報について
信用情報機関に登録された信用情報にアクセスできるのは、それぞれの信用情報機関に加盟している金融機関または債務者本人のみです。
金融機関についても、融資の際の審査など、正当な目的がある場合以外は情報照会が禁止されています。
また、破産に関する情報は、信用情報機関ごとに保存期間が決まっています。
保存期間は原則5年で、全国銀行個人信用情報センター加盟の債権者を相手に破産した場合のみ10年となっています。
(2)市区町村の破産者名簿
現在、各市区町村では、そこに本籍を有する人の中で、破産手続きを行った人のうち免責不許可が確定した、または免責の申立てをしていない・破産手続終了後も免責手続が開始していない場合に限って破産者名簿への登録がなされています。
この破産者名簿は、個人が「破産者でないこと」の証明を必要とする場合に「破産者名簿に登録されていないこと」によって判断するために作成された非公開の名簿です。
そして、現在の行政の運用上、自己破産した人が破産者名簿に登録されるケースはほとんどありません。
これらのことから、破産者名⑤によって自己破産の事実を知られるおそれはないといえます。
なお、「自己破産すると戸籍や住民票に記載される」といわれることがありますが、これは明確な誤りです。自己破産手続きを行った事実が、戸籍や住民票に記載されることはありません。
10. まとめ
自己破産の申立てを行った場合、破産手続開始決定時と免責許可決定時の2回、官報に氏名と住所が記載されます。
これによって破産の事実を周囲に知られてしまうことを不安に思われる方が多いのは事実です。
しかし、実際に官報の公告によって自己破産したことを他人に知られる可能性は低いです。
それよりも、自己破産によるデメリットを過剰におそれて解決手段をとらずにいると、事態が悪化するだけでなく、借金問題を他人に知られるリスクも高くなるといえるでしょう。
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担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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