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自己破産したら賠償金の支払いは免除される?弁護士が解説!

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お金の支払いが難しくなった場合には、自己破産を検討することになります。

自己破産を検討する多くのケースが借金の返済ができないことなのですが、中には何らかの賠償金の支払いができなくなっているというケースもあります。

本記事では、自己破産をしたら賠償金の支払いは免除されるのか、債務整理・借金問題に強い弁護士が解説します。

目次

1.そもそも賠償金とは

そもそも賠償金とはどのようなものでしょうか。

賠償という言葉には、損害をおぎなう・つぐなう、という意味があります。

法律上は次の2つの種類の賠償金の支払いが問題となります。

1-1.債務不履行

賠償金の支払いとして、債務不履行に伴う損害賠償が挙げられます。

契約を結んだ当事者は、その契約内容を履行する必要があります。

契約内容を履行しないことが原因で、相手に損害を与えた場合には、その損害を賠償する必要があります。

たとえば、個人事業主である人が、売買契約を結んで、代金を受け取ったにもかかわらず、商品が発送できなくなった場合、賠償金として受け取った代金を返さなければなりません。

1-2.不法行為

当事者に契約関係がなくても賠償金を支払う必要がある場合があります。

たとえば、自分の過失で交通事故を起こして、相手に怪我をさせた場合、怪我をした人は治療費や仕事を休まざるを得なくなるなどの損害が発生します。

また、既婚者であることを知っていてその人と不倫をしたような場合、相手の配偶者に対して精神的苦痛を与えることになります。

これら不法行為に該当する行為を行った場合には、民法709条に規定する不法行為に基づく損害賠償をしなければならず、賠償金の支払いが必要になります。

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2.自己破産すると賠償金はどうなるのか

自己破産をすると賠償金はどうなるのでしょうか。

2-1.賠償金は債務に該当する

そもそもこの賠償金は、借金などと同様に債務に該当するものです。

債務不履行に基づく賠償金は契約に基づいて、不法行為に基づく損害賠償としての賠償金は民法に基づいて発生する債務です。

債務という意味では、借金などと変わりません。

2-2.基本的には自己破産によって免責されることになる

自己破産手続きにおいて、債務は基本的には免責されることになります。

つまり、支払う義務がなくなります。

契約に基づく賠償金の支払い義務でも、不法行為に基づく損害賠償としての賠償金も、後述する非免責債権に該当しない限りは、免責されることになります。

2-3.任意に支払う分には問題はない

なお、自己破産をした後に任意に支払う分には問題はありません。

自己破産による免責の法的な効果は、債権者が法的手段によって強制執行ができなくなるという意味と解釈されており、債権債務自体が消滅するわけではないとされています。

そこで、債務者が任意に支払った場合に、その支払いを受けることは認められているとされています。

この解釈は、債権債務関係がないにも関わらず金銭の支払いをすることが、贈与に該当しないかどうかに関わります。

つまり、たとえば300万円の賠償金である場合に、その300万円を自己破産後に支払っても、債務の返済として受け取ることができ、新たな法律関係が生じるわけではありません。

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3.自己破産しても賠償金が免除されないケース

自己破産については賠償金が免除されないケースもあります。

3-1.免責が許可されなかった

まず免責が許可されなかった場合です。

破産法252条1項各号に該当する事由がある場合、裁判所は免責をすることができません。

この場合でも破産法252条2項に規定する裁量免責による免責を検討するのですが、裁判所に免責を許可されなかった場合には、賠償金のみならずすべての債務が免責されません。

財産隠しが発覚して極めて悪質である、裁判所や破産管財人からの質問に回答しないなど破産手続きに協力しない、などによって、自己破産の申立てを行っても、免責されないこともあります。

3-2.賠償金が非免責債権に該当する

賠償金が非免責債権に該当する場合、自己破産を行って免責許可が出ても、賠償金が免責されません。

破産法253条1項は、特定の債務について、免責がされない場合を規定しています。

賠償金については、次の2つの項目が問題となります。

  • 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法253条1項2号)
  • 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法253条1項3号)

その内容について詳しく確認しましょう。

(1)破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法253条1項2号)

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権については非免責債権となります。

法律用語で「悪意」という言葉は一般的にある事実について知っていることをいいますが、ここでの悪意については、判例で「破産法が非免責債権を設けた趣旨及び目的に照らすと、そこでいう「悪意」とは故意を超えた積極的な害意をいうものと解するのが相当」としました(東京地方裁判所平成28年3月11日)。

たとえば不倫の場合、相手が既婚者だと知っていて肉体関係をもった場合には、たとえ既婚者であることについて知っていても、「積極的な害意」にあたらなければ、非免責債権に該当せず、免責の対象になります。

不倫の場合は、不倫相手の配偶者に精神的苦痛を与える、恋愛感情を持ったわけではなく家庭を壊すことが目的である、といった例外的な場合でない限り、非免責債権に該当するといえるでしょう。

積極的な害意にあたる典型的な事例として挙げられるのは、窃盗・横領のような犯罪行為が挙げられます。

(2)破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法253条1項3号)

破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権については、非免責債権とされています。

この条文にいう「故意」とは、人の生命または身体を害することを知っていて行うことをいい、「重過失」とは注意義務への違反の程度が大きい過失のことをいいます。

よくあるのが、交通事故で保険に加入していなかった場合ですが、脇見運転をしていた・軽微なスピード違反であった程度ならば、重過失とはいえず、その損害賠償請求は免責されます。

一方で、飲酒運転をしていた、過度なスピード違反、あおり運転で事故を起こした、といった場合には重過失が認定され、免責の対象にならないでしょう。

故意といえるか、重過失といえるかは、個別の判断が必要となるので、どちらにあたるか判断できない場合には、弁護士に相談してみましょう。

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4.賠償金以外の非免責債権について

破産手続では、賠償金以外にも、様々な見地から自己破産をして免責がされても免責を認めない非免責債権が存在します。

4-1.租税等の請求権(破産法253条1項1号)

税金等の請求権については非免責債権とされています。

租税については平等に負担すべきという観点から、たとえ破産する場合でも免責しないことにしています。

税金の種類は問わず、社会保険料についても租税等にふくまれます。

4-2.家族に関する請求権(破産法253条1項4号)

一定の家族関係に基づいて発生する金銭請求については、非免責債権とされます。

夫婦の協力・扶助の義務(民法752条)、婚姻費用分担義務(民法760条)、養育費請求権(766条)、扶養義務(民法877条~)が非免責債権となります。

なお、過去に未払になっている分については、通常の金銭債権として免責されることになります。

4-3.

4-3.雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権

雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権および使用人の預り金の返還請求権については、非免責債権となります。

個人事業主が人を雇用していた場合の給与や預り金がその対象となるものです。

従業員の給与については、財団債権として優先弁済の対象となっていますが、それだけでは全額保護されないこともあります。

その分については非免責債権として、雇用主に請求できることになっています。

4-4.破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権

破産者が債権者であることを知りながら、債権者名簿に記載しなかった請求権については、非免責債権となります。

債権者はすべて破産手続きで平等に配当を受ける権利があります。

にも関わらず、債権者名簿に記載せず、手続きに参加できなかった以上、免責を認める必要ないという考え方によります。

4-5.罰金等の請求権

罰金等の請求権は非免責債権とされます。

罰金等を免責すると、罰金刑に該当する犯罪を行っても自己破産をすれば良いというモラルハザードのおそれから、非免責債権としています。

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5.賠償金などの非免責債権があっても自己破産はできるのか

一部の賠償金や税金のように、非免責債権に該当するものがあっても、自己破産をすることはできるのでしょうか。

この点、非免責債権に該当するものがある場合、その債務についての免責をしてもらえないことが規定されているだけで、破産手続き・免責を受けることができないことまでは規定していません。

そのため自己破産は可能です。

非免責債権の他に、消費者金融からの借り入れ、信販会社のショッピングローンなどがある場合、これらは免責の対象になるのですから、自己破産手続きを行って免責をしてもらい、非免責債権の支払いをすべきでしょう。

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6.借金問題や自己破産を弁護士に相談するメリット

借金問題や自己破産について弁護士に相談するメリットについては次のものが挙げられます。

6-1.適切な債務整理手続きを知ることができる

適切な債務整理手続きを知ることができます。

借金返済に困っているという場合でも、必ずしも自己破産が自分にあっているとはいえません。

自宅を残したい場合や、警備員・保険外交員・宅建士が仕事を続けたい場合、自己破産をすると自宅を残せない、職業制限がかかるなどで、希望に沿えないことになります。

この場合、他の債務整理手段である、任意整理や個人再生によるべきなのですが、どちらの手続きが適切かは債務額と返済能力、本人の希望によります。

このように、手続きの決定は個々の状況に鑑みて検討することになるのですが、個人でその判断をするのは非常に難しいです。

弁護士に相談すれば、債務整理の手段として自己破産が適切なのかを判断してもらうことができます。

6-2.非免責債権となるかどうかの判断をしてくれる

弁護士に相談すれば、自分の賠償金の支払義務について、非免責債権となるかどうかの判断をしてもらえます。

上述したように、賠償金が非免責債権となるかについて、悪意で加えた不法行為や重過失といったものにあたるかの判断は、個別具体的に判断する必要があります。

弁護士に相談すれば、これにあたるかどうかの判断ができます。

6-3.弁護士に依頼すれば貸金業者からの督促が止まる

弁護士に依頼すれば貸金業者からの督促が止まります。

貸金業法21条1項は、貸金業者の取り立て規制について規定しており、9号で弁護士が自己破産等の債務整理を依頼された場合には、正当な理由がない限り本人に督促をすることができない旨規定しています。

そのため、弁護士に依頼すれば、督促が止まります。

6-4.精神的にも楽になる

弁護士に相談・依頼することで精神的に楽になれます。

多額の賠償金や、これに伴う借金についての問題は、他人に相談し辛いのが現実で、一人で抱え込んでいることも珍しくありません。

また、延滞をしている場合には、電話や手紙での督促を受けていて、精神的に大きく追い詰められます。

弁護士に相談し、今後どのようなことを行えばいいか知ることができれば、上述したように弁護士に依頼すれば督促を止めることができ、これらによって精神的にも楽になるといえるでしょう。

6-5.確実かつスムーズに手続きを進行できる

本来返済すべき債務について、法律によって一方的に免責してもらう自己破産手続きは、非常に厳格に行われます。

作成する申立書や添付書類に不備があると、必ず裁判所や破産管財人は不備について確認をしてきますし、これらについては適切に回答する必要があります。

弁護士に依頼して自己破産手続きをすすめれば、確実かつスムーズに手続きを進行できます。

6-6.弁護士に依頼すると手続きが有利になることがある

弁護士に依頼すると手続きが有利になることがあります。

自己破産手続きには、同時廃止と管財事件があり、管財事件には少額管財と通常管財(特定管財)に分かれます。

破産管財人がつかない同時廃止で手続きを行うことができれば、破産管財人に対する報酬となる引継予納金が発生しません。

また、管財事件でも簡易な手続きである少額管財にすることができれば、引継予納金は安くなります(通常管財の場合は50万円~・少額管財の場合は20万円~)。

同時廃止や少額管財といった簡易な手続きを利用する前提として、弁護士が申立代理人として事前にチェックをしながら申立てをしていることが前提となっており、本人が申立てをした場合にはこれらの手続きが利用できず、必ず通常管財(特定管財)になるという運用をしている裁判所も多いです。

そのため、弁護士に依頼するほうが、トータルでかかる費用を安く抑えることが可能となります。

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7.自己破産した際の賠償金に関するよくあるQ&A

自己破産した際の賠償金に関するよくあるQ&Aとしては次のようなものがあげられます。

7-1.被害者にだけ支払ってしまうことはできないのか

賠償金の支払いを求められている被害者に対してだけ破産手続き中でも払ってしまうことはできるのでしょうか。

この点について、通常はいったん破産手続きに参加してもらい、破産手続きが終了した後に当事者で賠償金について解決することになります。

というのも、本当に悪意で加えた不法行為であるか、故意・重過失があるといえるかは、確認してみないとわかりません。

賠償金であるからといって返済してしまって、それがもし非免責債権の対象となるものではない場合、免責の対象となる債権について特定の債権者に支払いをする偏頗弁済となってしまい、免責不許可事由となってしまいます。

賠償金の支払いは、破産手続き後に支払うこととして、被害者であっても手続き中は支払わないようにしましょう。

7-2.個人再生や任意整理でも賠償金は免責されないのか

個人再生や任意整理でも賠償金は免責されないのでしょうか。

個人再生について規定する民事再生法229条3項は、再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(1号)、再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(2号)、について、「当該再生債権者の同意がある場合を除き、債務の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない」としています。

わかりやすく言い換えると、自己破産の場合と同じように、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権や、故意または重過失によって人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権については、債権者の同意がある場合を除いて、債務の減免の対象にできないとしています。

自己破産との違いは被害者(債権者)の同意があれば減免の対象にできる点です。

任意整理は債権者との交渉によって返済を軽くする手続きですので、賠償金の被害者との交渉の結果、合意を得られれば減額・免除することができます。

7-3.弁護士に無料で相談できるのか

弁護士に無料で相談をすることはできないのでしょうか。

弁護士のような士業といわれる人に相談をする場合、通常30分5,000円~の相談料の支払いが必要となります。

しかし、賠償金の支払いに困っている、自己破産を検討しているという状況で、相談料を捻出することが難しい方も多いでしょう。

そこで、市区町村の無料弁護士相談や、法テラスの相談を使うことで、弁護士に無料で相談が可能です。

ただ、これらの相談は20分~30分前後と非常に限られた時間でしか相談できず、状況確認すらままならずに終わってしまうことがあります。

また、借金問題に力を入れている弁護士が相談の担当ではない場合には、適切な回答が得られない可能性もあります。

自己破産を含めた個人の借金問題について注力している弁護士であれば、相談料の捻出も難しい状況であることに配慮して、無料で相談を受けていることが通常です。

インターネット等で借金問題に取り組んでいる弁護士を探して、無料相談を利用することをお勧めします。

法律事務所リーガルスマートも初回60分無料の法律相談を行っているのでお気軽にご利用ください。

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8.まとめ

本記事では、自己破産した場合に賠償金の支払いは免除されるのかについてお伝えしました。

賠償金の中でも、悪意で加えた不法行為の損害賠償や、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権や、故意または重過失によって人の生命又は身体を害する不法行為に対する損害賠償請求については、非免責債権とされており、免責されません。

賠償金が免責されるか、あるいは他にも自己破産について心配なことがある場合には、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

私たち法律事務所リーガルスマートは、債務整理・借金問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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