自己破産
破産宣告になるとどうなる?デメリットや条件を弁護士が解説!
自己破産をすると借金がゼロになるということを聞いたことがある方は多いと思いますが、自己破産にはメリットがある一方でデメリットもあります。
本記事では、自己破産をした場合のメリットやデメリット、自己破産をするための条件などを債務整理に強い弁護士が解説します。
目次
1.そもそも自己破産とは?
自己破産とは、債務整理方法の一つで、裁判所に対し申立てを行い、免責許可決定を得ることで、一定の債務を除き全ての借金をゼロにすることができる手続きをいいます。
1-1.破産宣告と自己破産の違い
「破産宣告」とは、破産手続きを開始することを決定した場合のことをいいます。「破産宣告」は2005年まで使用されていましたが、破産法が制定されて、現在は「破産手続き開始決定」という名称に変更されています。
一方、「自己破産」とは、破産手続き開始決定から免責許可決定に至るまでの一連の流れを指すものであり、破産宣告は自己破産手続きの流れのうちの一部を指しています。
「破産宣告」というと、破産がなされたようなイメージがありますが、実際は破産手続きが開始されたというだけで、実際に破産となったわけではありません。
1-2.破産宣告になる条件
破産宣告(破産手続き開始決定)になる条件は、以下の3つです。
- 支払不能であること
- 破産障害事由に該当しないこと
- 適切な破産申立てが行われていること
それぞれの条件について、以下において詳しく説明します。
(1).支払不能であること
「支払不能」とは、債務者が支払能力を欠くために、弁済期にある債務について、一般的・継続的に弁済することができない客観的な状態をいいます。
簡単にいうと、債務者に収入や財産がなく、継続して借金を返済することが難しい状態に陥ったことをいいます。例えば職を失って収入が途絶え、今後も継続して収入を得ることができないような状態が続く場合などです。
(2).破産障害事由に該当しないこと
破産障害事由とは、破産手続きを開始するために障害となる事由であり、例えば予納金を納めないことや、破産手続以外が開始されている場合などをいいます。
予納金とは、裁判所に手続きをしてもらうための費用のことであり、郵便切手代や破産管財人の報酬などに充てられます。予納金を納めないと破産手続きを進めることができないため、破産の申立ては却下されてしまいます。
また、自己破産の申立ての際、ほかの債務整理方法である個人再生などの手続きが進行中の場合も破産障害事由となりえます。破産の申立ては債務整理の最終手段であり、ほかの手続きが進行中であればそちらが優先されるべきだからです。ただ、個人再生の進行中にやむを得ない事情があって破産せざるを得ない場合もありますので、どちらの手続きで進めるかを裁判所が判断することになります。
(3).適切な破産申立てがされていること
破産申立ての書面が適切に記載されているか、管轄裁判所に申し立てられているかなど、形式的な面に関する条件です。
2.自己破産のデメリット
自己破産をすると借金がゼロになるというメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。まずは自己破産のメリットをお伝えする前に、デメリットを説明します。以下では、自己破産をした場合の主なデメリットについて説明します。
2-1.信用情報機関に事故情報として登録される
自己破産を申し立てると、信用情報機関に事故情報として登録されます。いわゆる「ブラックリスト」に載るとも言われます。
信用情報機関とは、クレジットカードの取引履歴やローンに関する情報などを管理している民間の機関で、主な信用情報機関は以下の3つです。
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
金融機関は、クレジットカードの作成やローンの審査にあたって信用情報機関の事故情報を参照します。過去に自己破産をしたことが登録されていると、新たにクレジットカードを作成することはできなくなりますし、ローンの審査に落ちてしまいます。
自己破産による事故情報が登録される期間はおおむね5~7年程度で、事故情報が抹消されればその後はローンを組んだりクレジットカードを作成できるようになります。
2-2.官報に掲載される
破産手続開始決定になると、官報に氏名・住所が掲載されます。官報とは国民の権利義務に関する公告などが掲載されている国が発行する機関紙です。官報に掲載されると、破産手続開始決定を受けたことが知られてしまう可能性があります。
現実的には官報を一般人がチェックすることはあまりないため、大きなデメリットとはいえないかもしれません。しかし、金融機関など官報を随時チェックしている機関もあるため、知られてしまうリスクはゼロではありません。
2-3.財産が換価処分される
自己破産の最大のデメリットは、一定の財産が換価処分されてしまうことでしょう。自己破産をすると一部の債務を除き借金をゼロにすることができますが、それと引き換えに家や車などの財産は換価処分され、債権者に配当として按分されます。債権者は自己破産により債権の全額回収が困難となることから、いわば当然のことといえますが、債務者にとっては大きなデメリットでしょう。
ただし、全ての財産が換価処分されてしまうわけではなく、99万円以下の現金、20万円以下の預金、処分見込価格が20万円以下の車などは換価処分の対象外です。しかし家など20万円を超えるような財産は手放されなければなりません。
3.自己破産のメリット
自己破産には上記で説明したようなさまざまなデメリットがありますが、そのデメリットを超えるだけのメリットもあります。以下では自己破産のメリットとして3つを挙げて説明します。
3-1.一部を除いて借金がゼロになる
自己破産の最大のメリットは、借金を返済する必要がなくなることです。借金がゼロになることで新たな生活を踏み出すことができるでしょう。
ただし、税金の滞納や養育費などは免除されませんので注意が必要です。
3-2.債権者からの取立てがストップする
破産の申立てをすると債権者からの取立てがストップします。債権者からの取立ての電話や手紙に悩まされていた人にとってはメリットといえるでしょう。
3-3.最低限の生活を維持するための財産を残せる
先ほども説明したとおり、自己破産をしたとしても全ての財産が換価処分されるわけではなく、99万円以下の現金や20万円以下の預金などは手元に残すことができます。
4.自己破産するとできなくなること
自己破産のメリット・デメリットについてお伝えしました。デメリットと一部重複しますが、自己破産するとできなくなることがあります。以下では、破産手続中にできないことと、破産手続後にできないことに分けて詳しく解説します。
4-1.破産手続中にできないこと
破産手続中にできないことは、主に以下の3つです。
- 特定の職業に就くことができなくなる
- 特定の債権者への弁済ができなくなる
- 借金ができなくなる
それぞれについて以下で詳しく説明します。
(1).特定の職業に就くことができなくなる
破産手続中は弁護士、公認会計士などの士業や、警備員、公証人など特定の職業に就くことができなくなります。よって、これらの職業に就いている人は留意したほうがよいでしょう。ただし、この制限は破産手続中のみであり、免責許可決定後は復権して再び就くことができるようになります。
(2).特定の債権者への弁済ができなくなる
破産手続中は、特定の債権者への弁済ができなくなります。例えば、親しい友人に対してだけ借金を返済するなどはできません。もし特定の債権者のみに弁済してしまうと、偏波弁済と呼ばれ免責不許可事由に該当してしまうおそれがあります。
(3).借金ができなくなる
破産手続中は当然のことですが新たな借金はできません。借金をしてしまうと免責不許可事由に該当し、免責を受けることができなくなってしまうおそれがあります。
4-2.破産手続後にできなくなること
破産手続後にできなくなることは、主に以下の4つです。
- クレジットカードを作れなくなる
- ローンを組むことができなくなる
- 保証人になることができなくなる
- 7年間は再び破産できなくなる
デメリットで説明したことと一部重複しますが、以下で改めて説明します。
(1).クレジットカードを作れなくなる
先ほども説明したとおり、自己破産をすると信用情報機関に事故情報として登録されます。事故情報が登録されると、5~7年は抹消されず、その間は新たにクレジットカードを作成することができなくなります。
よって、買い物については現金払いとなるため、クレジットカードを使用することが多いインターネットショッピングは不便となるでしょう。逆にもともとクレジットカードをほとんど使わない人にとってはあまり不便ではないかもしれません。
(2).ローンを組むことができなくなる
信用情報機関に事故情報として登録されると、ローンを組むことができなくなります。住宅ローンや車のローンはもちろん、携帯電話の分割払いなどもできなくなります。なぜなら、分割払いはローンの一種だからです。
(3).保証人になれなくなる
自己破産をして事故情報が登録されると、保証人になることができなくなります。保証人になる機会は少ないためあまり影響がないとも思われますが、子供の学費や賃貸の保証人になることができなくなるため、子供がいる人は留意しなければなりません。
(4).7年間は再び破産ができなくなる
免責許可決定を受けると借金がゼロになりますが、7年間は再び破産をすることができなくなります。
5.自己破産による家族への影響について
自己破産をすると家族に影響があるのではないかと心配するかもしれませんが、原則として家族の財産に影響はありません。自己破産はあくまで本人の問題であり、家族は関係がないからです。よって、家族の財産が換価処分されたりすることはありません。
もっとも、本人の自己破産によって家族に事実上の影響が及ぶ可能性があります。家族に及ぶ可能性がある影響について3つを挙げた上で説明します。
5-1.家族が保証人となっている場合家族に請求がいく
本人が自己破産をしても家族の財産に影響はないと説明しましたが、家族が借金の保証人になっている場合は別です。その場合、自己破産によって保証人である家族に一括請求がいくことになります。よって、家族が保証人になっている場合、自己破産をすべきか慎重になるべきでしょう。
5-2.家族カードが作れなくなる
本人が自己破産をすると、本人はクレジットカードを作ることができなくなりますが、本人のカードに紐づいている家族カードも作ることができなくなります。
また、家族名義のクレジットカードを作る際も事故情報が参照され、事実上悪影響が及ぶ可能性があります。
5-3.子供のための教育ローンを借りることができない
自己破産をするとローンを組むことができなくなります。子供のために教育ローンを検討している場合も当然組むことができないため、子供に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、奨学金の保証人になることも難しくなります。子供がいる家庭にとっては大きな影響となるでしょう。
6.自己破産できないケース
自己破産を申し立てれば必ず借金がゼロになるわけではありません。免責不許可事由に該当すると、免責許可決定を受けることができず自己破産は失敗に終わってしまいます。
免責不許可事由とは借金が免責されない事由のことで、具体的には以下のような事由が挙げられます。
6-1.浪費やギャンブルによる借金
浪費やギャンブルによって作った借金は、原則として免責することができません。債権者が損失を被ってまで免責するのにふさわしくない借金だからです。
ただし、浪費やギャンブルによる借金だから絶対に免責できないというわけではなく、裁量免責という制度によって免責になる場合があります。実際は悪質なものではない限り、裁量免責によって免責となるケースが多いです。
浪費やギャンブルによる借金の場合は弁護士に相談することをおすすめします。
6-2.特定の債権者にのみ弁済する行為
自己破産では債権者間の平等が原則であり、債務者の財産から平等に配当を受けることができます。特定の債権者にのみ弁済する行為は、その債権者のみがメリットを受けることになるため認められていません。これを行うと免責不許可事由となり、借金が免責されないおそれがあります。
例えば、親族や親しい友人にのみ借金を弁済するような行為がこれに該当します。
6-3.債務者の財産を不当に処分する行為
債務者の財産は換価処分され、債権者に平等に配当されます。債務者が自己破産手続によらず勝手に処分してしまうと債権者に平等に配当されず、債権者を害することになりますので免責不許可事由とされています。
例えば、自分の車を破産手続開始後に勝手に売却し、それを現金に換えてしまうような行為がこれに該当します。
6-4.不当に債務を負担する行為
自己破産により借金が免責されると、債務者は返済を免れることができます。借金がゼロになるからといって自己破産手続中にクレジットカードを使って限度額いっぱいまで買い物をし、借金を増やすような行為は免責不許可事由になるおそれがあります。
7.自己破産でよく誤解されていること
自己破産をすると職場にバレるのではないか、財産が全て処分されてしまうのではないかなど、自己破産にまつわる誤解が存在します。例えば、よくある誤解として以下のようなものがあります。
- 財産が全て処分される
- 職場に通知がいく
- 生活保護が受けられない
これらは全て誤解です。先ほども説明したとおり、自己破産をしたからといって全ての財産が処分されるわけではありません。債務者にも生活があるため、99万円以下の現金や20万円以下の預金などは残すことができます。
また、自己破産をすると職場に通知がいってバレてしまうのではないかと心配する人がいますが、自己破産をしても原則として職場に通知がいくことはありません。ただし、官報には掲載されるため職場にバレる可能性はありますし、破産手続開始決定時に受取予定の給料が確定している場合には給料を差し押さえられる可能性があるため、会社に通知がいく可能性はあります。
自己破産をすると生活保護が受けられなくなるというのもよくある誤解です。自己破産をしたことは生活保護の受給要件と関係がありません。むしろ自己破産によって借金をゼロにしてから生活保護を受給したほうが望ましいでしょう。生活保護で受給したお金を借金の返済に充てることは生活保護の趣旨に反し認められないからです。
8.自己破産を弁護士に相談するメリット
自己破産を申し立てることによって確実に借金をゼロにしたいのであれば、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談するメリットは主に以下の3つです。
8-1.手続を全て代理してくれる
自己破産を申し立てるためには、自己破産の申立書の作成から始まり、裁判所からの審尋への対応など、さまざまな法的手続が絡んできます。自己破産手続に慣れていない本人にとってこれらを全て自分で行わなければならないとすると心理的・時間的負担は大きいでしょう。
弁護士は破産手続を全て代理する権限を有していますので、弁護士に依頼することにより手続を一任することが可能です。
8-2.免責不許可事由とならないようアドバイスしてくれる
先ほども説明した通り、自己破産を申し立てたからといって必ず借金が免責されるわけではなく、免責不許可事由に該当すると免責許可決定を得ることができないおそれがあります。よって破産手続中は免責不許可事由に該当する行為は慎まなければなりませんが、それを知らないと免責不許可事由に該当する行為をしてしまう可能性があります。
弁護士に相談すれば、破産手続中にやってはいけない行為をアドバイスしてくれますので安心です。また、浪費やギャンブルによる借金であっても裁量免責により免責となる可能性があります。弁護士に相談すれば、裁量免責されるためのアドバイスももらえます。
8-3.自己破産費用が安くなる可能性がある
自己破産を申し立てた場合に価値のある財産を持っていると管財事件となり、破産管財人が選任されることになります。管財事件の場合、予納金が高くなる傾向にありますが、財産が少ない場合、少額管財事件として処理できるケースがあります。少額管財事件となった場合、予納金の額を通常の管財事件よりも減らすことが可能です。
ただし、少額管財事件は弁護士が代理人として破産申立てをすることが必須となっています。つまり、弁護士に依頼すれば自己破産費用を安くすることができる可能性があります。
9.自己破産のデメリットに関するよくあるQ&A
自己破産にはデメリットが存在しますが、この点に関してよくある質問にお答えします。
9-1.自己破産をすると財産を全て処分しないといけないのでしょうか?
自己破産をした場合、価値のある財産は換価処分となり債権者への配当に充てられるのが原則です。しかし全ての財産を処分しなければならないわけではありません。99万円以下の現金や処分見込価格が20万円以下の財産などは手元に残すことができます。
残すことができる財産については裁判所によって若干異なってきますので、詳しくは管轄裁判所にお問い合わせください。
9-2.自己破産をすると会社を辞めないといけないのでしょうか?
自己破産をしても会社を辞める必要はありませんし、給料が差し押さえられない限り、会社に通知がいくことはありません。
ただし、警備員など特定の職業については自己破産手続中に就くことが制限されますので、業務を行うことができなくなります。その結果、辞めざるを得ないケースがありますので注意してください。
10.まとめ
自己破産をすると借金がゼロになるというメリットを受けられる一方で、デメリットも存在します。メリットばかりに目がいくとデメリットにより大きな不利益を被る可能性もあります。
また、免責許可決定を得るためには条件があり、免責不許可事由に該当する場合には免責を受けることができません。破産手続中は免責不許可事由に該当する行為をしないよう注意を払う必要があります。
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担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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