自己破産

自己破産で奨学金はどうなる?保証人への影響などを弁護士が解説

自己破産で奨学金はどうなる?保証人への影響などを弁護士が解説
この記事をSNSでシェア!

現在多くの人が大学への進学をする中で、学費を工面するために奨学金を利用しています。

奨学金の借り入れをしている場合に、自己破産をすることはできるのでしょうか?保証人への影響や、救済の制度はあるのでしょうか。

本記事では、自己破産と奨学金の関係について、債務整理に強い弁護士が解説します。

目次

1.奨学金による自己破産は可能?自己破産の条件

奨学金による自己破産は可能なのでしょうか?自己破産の条件とともに確認しましょう。

なお、奨学金と呼ばれるものについては、日本学生支援機構から借り入れるものや、大学独自のものがあり、給付型・貸与型など種類もありますが、本記事では特に断りがない限り、最も利用頻度が高い日本学生支援機構からの貸与型の奨学金について取り扱います。

1-1.自己破産とは

前提として、自己破産とはどのようなものか確認しておきましょう。

自己破産とは、債務整理の一つの手段で、地方裁判所に申立てを行って、借金などの債務の返済義務を免責してもらうことをいいます。

借金などの債務の返済が困難となった場合に、借金返済を免除してもらったり楽にしてもらう債務整理の中の一つの手段で、唯一債務を免責してもらえる手続きが自己破産です。

返済が前提となる任意整理・個人再生よりも、早く借金から解放される強力な債務整理方法であるといえます。

1-2.自己破産の条件

自己破産をして免責してもらうための条件としては次の2つが挙げられます。

  • 支払不能である
  • 免責不許可事由がない

それぞれ内容を確認しましょう。

(1)支払不能である

破産法15条1項は「債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。」と規定します。

自己破産をして免責をしてもらうためには、まず破産手続きを経る必要があり、その破産手続きが開始するための条件として「支払不能」にあることが必要とされています。

「支払不能」については破産法2条11号が「この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(中略)をいう。」と定義づけています。

つまり、次の状態にある場合には、支払不能といえることになります。

  • 支払能力を欠いている
  • 弁済期にある債務を払えない
  • 一般的かつ継続的に弁済することができない状態

支払能力を欠いているというのは、収入が無いなど客観的に借金の返済能力を欠いている場合をいい、支払いたくないといった主観的な事情は考慮しません。

弁済期にある債務を払えない状態である必要があるので、たとえば借金自体はあっても、返済時期が来ていない借金しかない場合については自己破産をすることはできません。

最後に一般的かつ継続的に弁済することができない状態である必要があり、たとえば冠婚葬祭で一時的に出費が多いので払えない、ということは支払不能にあたらないことになります。

具体的に何日返済が滞ったら、毎月いくらの支払いになったら、など具体的な数字で判断することができないのですが、生活に支障を来すレベルになっていると、毎月返済ができていても支払不能と認定されることも多いです。

支払不能といえるかどうかについては、弁護士に相談してみてください。

なお、返済ができず支払停止となっている場合には、支払不能が推定される旨の規定もありますので、返済ができなくなっている場合には支払不能と認定されるでしょう(破産法15条2項)。

(2)免責不許可事由が無いこと

自己破産手続きで免責してもらうためのもう一つの要件として、免責不許可事由が無いことが挙げられます。

自己破産手続き自体は、債務者の財産を金銭に換価して配当をする手続きで、借金の免責については破産法第12章からの規定によります。

個人が破産手続きをする場合、破産手続き後に債務を免責してもらうことで、支払いを免れることが可能となっています(破産法253条)。

しかし、破産法252条1項各号に規定される免責不許可事由に該当する場合、裁判所は免責の許可をすることができないことになっています。

免責不許可事由は、自己破産手続きで免責を認めることが妥当でない事項が挙げられており、たとえば浪費や賭博で借金を負ったような場合(4号)、債権者に配当する財産を隠したような場合(1号)、破産手続きで虚偽の説明を行った場合(8号)、特定の債権者にのみ返済をした場合(偏頗弁済:3号)、などが挙げられます。

奨学金の場合注意が必要なのが、自己破産手続きを行っているのに奨学金だけは返済を続けていたようなケースです。これは特定の債権者のみを優遇する偏頗弁済となってしまいます。

なお、免責不許可事由に該当する場合でも、破産手続開始の決定に至った経緯やその他一切の事情を考慮して、免責を許可することが相当であるといえる場合には、裁判所はその裁量で免責許可の決定をすることができます(裁量免責:破産法252条2項)。

借り入れの原因がギャンブルや浪費ということは多いのですが、現実には裁量免責によって免責されることになりますので、弁護士に依頼して裁量免責を勝ち取ることが大事です。

(3)一部免責が認められない債務もある

なお、自己破産による免責が認められる場合でも、免責が認められない債務があることも併せて知っておきましょう。

破産法253条1項に、免責が許可されても、免責されない債務について規定があります。

代表的なものでは次のようなものがあります。

  • 税金(1号)
  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(2号)
  • 故意または重過失で行った他人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(3号)
  • 養育費(4号ハ)
  • 罰金(7号)

奨学金について規定はありません。

1-3.自己破産をすれば奨学金は免責される

奨学金は法的には日本学生支援機構等からの借金であり、特に奨学金を借り入れしていることを理由に自己破産を禁止する規定はなく、また奨学金を借りていること自体は浪費などにも該当しません。

そのため、奨学金がある場合でも自己破産は可能で、自己破産をすれば奨学金は免責されることになります。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

2.自己破産すると奨学金はどうなるのか?保証人への影響は?

自己破産をすると奨学金はどうなるのでしょうか。

2-1.奨学金の法律関係

奨学金はどのような法律関係にあるのでしょうか。

日本学生支援機構の貸与型の奨学金である場合、進学する本人が債務者となる金銭消費貸借契約を結んでいることになります。

また、主債務者である本人が返済できなかったときのために、保証人が必要となるのですが、機関保証・人的保証のいずれかを選ぶことになっています。

機関保証とは、保証会社に保証人となってもらい、その保証会社に保証料の支払いを行うものです。

人的保証とは、親やおじ・おばなどに保証人となってもらうものです。

2-2.自己破産した場合に奨学金はどうなるか

自己破産をした場合、奨学金はどうなるのでしょうか。

奨学金は上述したように債務であり、非免責債権でもないので、自己破産によって奨学金は免責されます。

2-3.機関保証との関係で奨学金はどうなるか

まず保証人として機関保証を選択している場合どうなるのでしょうか。

主債務者が自己破産をすると、日本学生支援機構は機関保証をしている保証会社に対して、保証債務の履行を求めます。

これに応じて保証会社は、日本学生支援機構に対して奨学金の残債務を弁済します。

このとき、保証会社は弁済によって求償権を取得することになります(民法429条1項)。

つまり、代わりに払った奨学金分の請求ができることになります。

この権利についても、自己破産によって免責されることになり、支払義務は無くなることになります。

2-4.人的補償との関係で奨学金はどうなるか

一方で人的保証、つまり親や親族が保証人・連帯保証人となっている場合にはどうなるのでしょうか。

この場合、保証人・連帯保証人となる人に対して、保証債務の履行を求めて請求がされることになります。

この債務は保証人・連帯保証人が独自に引き受けた債務になるので、主債務者が自己破産をしても保証人・連帯保証人が支払う義務があります。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

3.自己破産する前に利用できる奨学金返還の救済制度

奨学金の返済が難しくなったとしても、日本学生支援機構の奨学金については次のような救済制度があることも知っておきましょう。

3-1.減額返還制度

救済制度の一つに返済金額を減額してもらう減額返還制度があります。

災害・傷病・その他経済的な理由が原因で、奨学金の返済が困難となった場合でも、当初決められた支払い額から減額すれば返済できる場合に利用できるものです。

経済的理由によって減額返済を求める場合には、給与所得者の場合には年間収入金額325万円以下である場合(給与所得以外の所得を含む場合は225万円以下)に用いることができます(本人の被扶養者について1人につき38万円を収入・所得金額から控除することができます)。

1回の申し出によって12ヶ月減額が適用され、最大15年(180ヶ月)減額をしてもらうことが可能です。

なお、減額返還制度を利用する条件として延滞していないことが必要なので、延滞がある場合には延滞を解消しなければ利用できません。

3-2.返還期限猶予

次の救済制度は、返還期限猶予です。

災害・傷病・経済的に困難である、失業したなどの理由で、返済が困難な事情が生じた場合、返還期限の猶予を求めることができます。

傷病、生活保護受給中等、真に返還が困難な場合な場合には延滞をしていても利用ができ、その期間は加算金は課されません。

返還期限猶予については最長で10年猶予が可能です。

3-3.返還免除

本人が亡くなってしまったときや、精神又は身体の障害により労働能力を喪失・労働能力に高度の制限を有しており返済ができなくなったときには、返還は免除されます。

これらの手続きの詳細については、日本学生支援機構のホームページを参考にしてください。

参考:返還が難しくなった場合|日本学生支援機構

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

4.自己破産以外の債務整理は可能なのか

自己破産以外の債務整理は可能なのでしょうか。

4-1.個人再生をすることも可能だが保証人への請求がされる

自己破産と同じように裁判所に申立てをして行う債務整理に、個人再生があります。

個人再生をすれば、借金を最大で1/10に減額してもらうことができ、残った金額を分割して支払えばよくなるので、返済が大幅に楽になります。

個人再生は奨学金での借り入れをしていても利用することが可能です。

ただ、この手続きではすべての債務が手続きの対象となるため、当然奨学金についても減額されることになります。

そのため、自己破産とおなじように、保証人への請求がされることになります。

4-2.任意整理では奨学金に介入しなければ保証人には請求されない

個別に債権者と返済について話し合う債務整理の方法が任意整理です。

任意整理は債権者と個別に交渉を行うので、奨学金以外の債権者についてだけ交渉を行うことが可能です。

その上で上述の減額返済制度・返済期限猶予を併用することで、保証人に影響せずに債務整理をすることができます。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

5.奨学金がある場合の最適な解決方法

奨学金がある場合の最適な債務整理はどの手続きなのでしょうか?

5-1.奨学金しか借り入れしていない場合には救済制度を利用する

奨学金しか借り入れしていない場合には、まず救済制度の利用を検討しましょう。

失業した・病気や怪我で収入を得ることができていない場合には、上述したように返済期限を猶予してもらうことができます。

不景気等で返済できる額が減っている場合には、減額返済制度を利用することができます。

これらの制度を利用して、危機を凌ぎましょう。

もし怪我や病気で復職の目処がたたない場合には、返還免除を請求します。

期限いっぱいまで救済制度を利用しても返済の見込みがない場合には、保証人に請求されることになりますが、自己破産をするのが適切となります。

5-2.絶対に保証人には請求されたくない場合は任意整理

以下、奨学金以外にも借り入れがある場合について検討しましょう。

まず、絶対に保証人には請求されたくないのであれば、利用すべき手続きは上述したように任意整理となります。

任意整理で奨学金以外の債務について返済の減額を受け、奨学金は従来通り支払い続ける、あるいは減額返済制度の利用や返済期限猶予を受けます。

この方法は、任意整理をした後の貸金業者等への返済と、奨学金の返済(あるいは救済制度を利用する)の両方ができることが前提です。

5-3.自己破産・個人再生を利用する

もし任意整理では返済が難しい場合には、自己破産や個人再生を利用することになります。

この際どうしても保証人に請求されることになりますが、やむを得ないことだと言えるでしょう。

住宅ローンがあり住宅を守りたい場合や、警備員・保険外交員・宅建業などで職業制限にかかる場合には個人再生を、それ以外の場合には自己破産をするのが適切でしょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

6.奨学金による自己破産を弁護士に相談、依頼するメリット

奨学金の返済が難しくなった場合の自己破産や債務整理を弁護士に相談・依頼するメリットには次のようなものがあります。

6-1.精神的に落ち着くことができる

弁護士に依頼すれば、精神的に落ち着くことができます。

奨学金の支払いが厳しくなっているような状況だと、保証人となっている親や親族など身近に相談できる人も居ず、一人で悩みを抱えている状況になることが多いです。

弁護士への相談で話をするだけで、またどうすればいいかわからなくなっている状況を整理するだけでも、精神的に落ち着くことができます。

6-2.相談することで適切な手続きを知ることができる

弁護士に相談することで、状況にあった適切な手続きを知ることができます。

上記のように奨学金がある場合の債務整理は、債務が任意整理で返済できるのか、できないとしてその他のどの手続きが適切か、個人の状況を判断しながら慎重に行う必要があります。

その判断は非常に難しいので、弁護士に相談して個別に判断してもらうのが適切であるといえるでしょう。

6-3.弁護士に依頼すれば督促を止めることができ落ち着いて対応ができる

返済が滞り始めると、自宅や携帯電話に督促の電話がされるようになり、かつ郵送でも督促が行われます。

これらの督促は精神的にも非常に負担です。

弁護士に依頼をすると、貸金業法21条9号で、本人に対する督促は、正当な理由がない限りできなくなるので、落ち着いて債務整理に取り組めます。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

7.奨学金による自己破産に関するよくあるQ&A

奨学金の借り入れによる自己破産には次のようなQ&Aがあります。

7-1.自己破産をすると自分の子どもが奨学金の借り入れができなくなりませんか

自己破産をした際に自分の子どもが奨学金の借り入れができなくならないかと心配する方は多いです。

まず、自己破産をした場合に子どもが親の自己破産が原因で奨学金その他の借り入れができなくなる、ということはありません。

ただし、自己破産をすると一定期間信用情報機関に自己破産をしたことが登録され、信用取引ができなくなります(ブラックリスト)。

その状態のままだと、保証人・連帯保証人になることができないので、その意味で借り入れができないケースがあります。

この場合でも、ブラックリストを解消した後で問題なく信用取引ができるようになれば問題なく、7年程度でブラックリストを解消できますので、早めに手続きを済ませたほうが良いといえるでしょう。

7-2.奨学金を自己破産で免責してもらうと卒業は取り消されませんか

奨学金を自己破産で免責してもらった場合、学校の卒業を取り消されないか心配する方もいます。

学校の卒業と日本学生支援機構の奨学金については関連していませんので、奨学金の返済ができないことを理由に卒業が取り消されるようなことはありません。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

8.まとめ

本記事では、奨学金の返済をしている人が自己破産をするとどうなるかについてお伝えしました。

奨学金については親や親族を保証人にしていることから、自己破産をすると保証債務の履行を求められることになってしまいます。

任意整理であれば保証人に請求されずに債務整理が可能ですが、残債務の支払いが必要となるので、本人の状況にもよります。

早めに弁護士に相談して、適切な債務整理方法を検討するようにしましょう。

私たち法律事務所リーガルスマートは、債務整理の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

この記事をSNSでシェア!

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
ホーム お役立ちコラム 債務整理 自己破産 自己破産で奨学金はどうなる?保証人への影響などを弁護士が解説

電話受付時間 10:00〜17:30 (土日祝・年末年始を除く)