自己破産

自己破産したいけどできない!できる条件や対処法を弁護士が解説

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「借金返済のめどがどうしてもたたないので自己破産を考えているのですが、保険会社に勤めているので仕事ができなくなるのではないかと不安です。」

「借金で首が回らないので自己破産したいが、車がないとできない仕事をしています。どうしても車を処分しないといけないでしょうか?」

このように、自己破産を考えている方は「自身の状況で自己破産ができるか」、つまり自己破産の条件が気になるのではないでしょうか。

本記事では、自己破産の条件について、借金問題・債務整理に強い弁護士が解説します。

1. 自己破産できる条件

自己破産はどのような場合でも認められるわけではなく、破産法で認められた以下の条件すべてに該当する必要があります。

  • 債務が支払い不能の状態にあること
  • 債務が非免責債権でないこと
  • 債務を負担した理由が免責不許可事由に該当しないこと

以下、順にご説明します。

1-1.債務が支払い不能の状態にあること

まず、債務が支払い不能、つまり借金の支払いができない状態であることが必要です。

「支払い不能」とは、「借金を返済できる見込みがない」状態をいいます。

「借金を返済できる見込みがない状態」とは、すべての債権者(銀行、カード会社など)に対して、一時的ではなく継続的に借金が返済できない状態を指します。

破産法に基づき、「支払い不能」にあたるか否かは以下の点を考慮して判断されます。

  • 債務の総額
  • 債務の内容(どのカード会社の債務残高がどの程度あるかなど)
  • 債務者の収入と資産総額、資産内容
  • 家族構成(配偶者・子どもの有無、人数、年齢、親との同居の有無など)
  • 生活状況(生活にかかる費用、子どもの学費、配偶者の収入、本人の就業状況など)
  • 債務を負担するに至った理由(どのような原因で借金をしたかなど)

一般的には、「現在の借入総額を3年以内に完済できるか否か」が目安となります。

従って、債務総額が年収の3分の1を超えている場合は「支払い不能」と認められやすくなります。

1-2.債務が非免責債権でないこと

2つ目の条件として「借金などの債務が非免責債権にあたらないこと」があります。

非免責債権とは、裁判所で免責許可決定が出たとしてもその返済義務を免れることができない債務をいいます(破産法第253条1項)。

非免責債権の具体例として、以下が挙げられます。

  • 所得税、住民税などの税金
  • 社会保険料(健康保険料、年金保険料)
  • 公共料金(光熱費、通信費など)
  • 養育費
  • 損害賠償金、慰謝料
  • 罰金
  • 従業員に支払う給与(個人事業主の場合)

これは、公益上の理由や、第三者の法律上の権利を保護するためです。

非免責債権については、破産手続終了後も返済する義務があります。

厳密にいえば、非免責債権があっても自己破産は可能です。非免責債権以外の債権については返済義務を免除してもらえます。

ただ、債務が非免責債権しかない場合には、自己破産を行うメリットがないため、やめておいたほうが良いと言えます。

1-3.債務を負担した理由が免責不許可事由に該当しないこと

3つ目の条件は、免責不許可事由(破産法第252条1項各号)に該当しないことです。

免責不許可事由とは、自己破産が認められない原因や事実をいいます。免責不許可事由にあてはまるとみなされた場合には、自己破産は認められません。

破産法第252条1項に定められた主な免責不許可事由には、以下が挙げられます。

  • 浪費やギャンブルなどによって著しく財産を減少させた(同条1項4号)
  • 支払い不能であることを認識していながら、債権者と信用取引を行った(同条1項5号)
  • 債権者を侵害する目的で自身の財産を減少・隠匿した(同条1項1号)
  • 裁判所に対して虚偽の申告を行ったり、説明を拒否した(同条1項8号)
  • 過去7年以内に自己破産による免責を受けている(同条1項10号)

ただし、免責不許可事由に該当する場合であっても、裁判所の判断により免責許可が出る場合もあります(裁量免責)。

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2. 自己破産ができないケース

自己破産ができないのは、以下の5つのいずれかに該当する場合です。

  • 債務額が少額で支払い不能状態と認められない
  • 免責不許可事由に該当する
  • 自己破産申立ての際に必要な予納金が支払えない
  • 過去7年以内に自己破産の免責を受けている

以下、それぞれのケースについてご説明します。

2-1.債務額が少額で支払い不能状態と認められない

債務総額が少額の場合は、自己破産が認められません。

「少額」の基準は、おおむね100万円とされています。これは、100万円を超えない程度であれば、3年程度で返済可能であるためです。

2-2.免責不許可事由に該当する

前述したように、破産法第252条1項に定める免責不許可事由に該当する場合には、原則として自己破産は認められません。

ここでは、前述の免責不許可事由5つについて、それぞれ具体例などを紹介します。

(1)浪費やギャンブルなどによって著しく財産を減少させた(同条1項4号)

ギャンブルや株取引などの、極度の浪費行為をいいます。

(2)支払い不能であることを認識していながら、債権者と信用取引を行った(同条1項5号)

自己破産することをわかっていながら、それを意図的に隠してクレジットカードでショッピングや借り入れを行うことなどです。

(3)債権者を侵害する目的で自身の財産を減少・隠匿した(同条1項1号)

自己破産の申立てを行う前に、自己所有の不動産の名義書き換えを行ったり、闇金業者から借金するなどの行為をいいます。

(4)裁判所に対して虚偽の申告を行ったり、説明を拒否した(同条1項8号)

裁判所での調査に対してうその内容の申告を行ったり、求められた説明に応じないことをいいます。

(5)過去7年以内に自己破産による免責を受けている(同条1項10号)

過去に、自己破産や任意整理・個人再生などの法的救済制度を利用していて、その免責許可決定を受けてから7年が経過していない場合です。

2-3.自己破産申立ての際に必要な予納金が支払えない

裁判所に自己破産の申立てを行う際に、予納金が支払えない場合には自己破産が認められません。

自己破産の予納金には、自己破産申立てを行う際に、裁判所に対して支払う費用です(破産法第22条)。

予納金の相場は、破産事件を管轄する裁判所や、破産事件の種類によって異なります。

  • この点、管財事件の場合は前述のように予納金が最低20万円は必要となります。一括で支払うことが難しい場合には、裁判所または弁護士に相談することで、以下のような対処方法をとることができます。
  • 裁判所に依頼して予納金を分割払いにしてもらう
  • 弁護士に依頼して予納金を積み立ててもらう
  • (生活保護受給者の場合)法テラスを利用して予納金を立て替えてもらう

2-4.過去7年以内に自己破産の免責を受けている

法律上、自己破産は何度でも行うことができます。ただし、過去に自己破産により免責された経歴がある場合には、免責から7年経過していなければ、原則として自己破産は認められません。

7年が経過している場合は、法律的には再度の自己破産が可能です。しかし、自己破産を認めるか否かの審査基準は厳しくなります。

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3. 自己破産をしないほうがよいケース

また、以下のような場合は、自己破産をしないほうがよいといえます。

3-1.資格制限のある仕事に就いている場合

自己破産の手続期間や手続終了後の一定期間は、特定の職業や資格を一定期間失うことになります。

「特定の職業や資格」の例として以下が挙げられます。

  • 士業関係
    • 弁護士、弁理士、司法書士、不動産鑑定士、公認会計士、税理士、行政書士など
  • 公職関係
    • 公証人、都道府県公安委員会、公正取引委員会、教育委員会
  • 役員関係
    • 商工会議所、金融商品取引業、日本銀行、信用金庫などの各役員
  • その他の職業
    • 警備会社の従業員、建築業経営者、風俗営業管理者、貸金業登録者、保険会社外務員など

職業や資格を失う期間については、それぞれの職業等に関する法律で定められています。

一般的に、法律では「復権を得ない間」とされています(弁護士法第7条4号など)。

「復権を得る」方法は、主に以下の2つで、いずれかを満たせば足ります。

  • 免責許可決定が確定すること
  • 破産手続開始から10年が経過すること

一般的に、自己破産の申立てから免責許可決定が出るまでが約4~5か月、決定が出てから確定するまでが約1か月程度です。

従って、自己破産が認められた場合は、申立て時点から半年程度で職業制限が解除されると考えてよいでしょう。

この資格制限期間に対応することが難しいとすれば、自己破産ではなく他の債務整理方法をとったほうがよいでしょう。

3-2.自宅不動産などの財産を手放したくない場合

自己破産すると、生活に必要な物を除く一定金額以外の価値のある財産は、裁判所によって処分換価されてしまいます。

処分対象となる財産は、20万円以上の価値がある動産や不動産とされています。

形見の宝飾品や美術品・着物など、20万円以上の財産を手放したくない場合は、自己破産以外の手続きをとったほうがよいでしょう。ただし、事情によっては自由財産拡張の申し立てなどの方法がありますので、具体的には弁護士に相談するようにしましょう。

3-3.税金などの非免責債権が多い場合

前述のように、税金や社会保険料などは債務が免除されません。そのため、負債の内容が非免責債権ばかりである場合には、自己破産するメリットが乏しいと言えます。債務の中で税金や社会保険料の滞納額の割合が多い場合は、お住いの市区町村の窓口に相談することをおすすめします。

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4. 自己破産ができないとどうなるのか

自己破産ができない、つまり免責が認められなかった場合、借金がなくならず、現状の苦しい生活が続いてしまうことになります。

しかし、次章でご説明するように、自己破産ができないからといって借金問題を解決できないわけではありません。任意整理、個人再生といった別の方法をとれる可能性があります。

また、自己破産手続きを行う場合は専門家に依頼することがほとんどです。自分の状況で自己破産が可能か、専門家にあらかじめチェックしてもらうことで、「自己破産を申し立てたのに認められなかった」という事態は避けられるでしょう。

仮に、免責不許可事由がある場合でも、弁護士の指示に従って反省を示した上で裁判所や弁護士に協力する姿勢を明らかにすれば、裁量免責が得られる可能性が高いです。

決して「自己破産ができなかったら借金地獄から抜けられない」ということはありません。

そのためにもまずは弁護士に相談しましょう。

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5. 自己破産ができないときの対処法

自己破産ができない場合、他に「任意整理」または「個人再生」という方法を取れる可能性があります。以下、それぞれご説明します。

5-1. 任意整理を検討する

任意整理とは、債権者と交渉して将来利息をカットして元本のみの分割返済にしてもらうなどの和解をする制度のことです。

通常3年、最大5年程度での完済を目指すので、返済可能な収入があることが前提となります。

任意整理は、減額率は少ないですが、自己破産や個人再生のように、裁判所を介する必要がありません。

債務者・債権者の二者間の話し合いのみで手続きできるので、費用も少なく、迅速に手続きを終えることができます。

また、整理対象とする債権者を選ぶことができるので、「住宅ローンや自動車ローンの債権者・保証人がついている債務を外す」ことも可能です。

5-2. 個人再生を検討する

個人再生(民事再生法第221条1項)とは、裁判所の認可決定を得て借金を5分の1程度(最低100万円以上)まで圧縮できる制度です。

認可決定確定後は、原則3年(裁判所が認めた場合は5年)で減額後の借金を完済します。

個人再生は、自己破産のような免責不許可事由がないので、免責不許可事由があるために自己破産が難しい場合に個人再生を選択するケースもあります。

また、不動産や車などの高価な財産を処分されることも基本的にはありません。

住宅ローンが残っている場合も、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」により、マイホームを手元に残すことができます。

ただし、個人再生認可決定確定後は、再生計画通りに返済する義務があります。従って、安定した継続的な収入があることが前提となります。

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6. 自己破産を弁護士に相談、依頼するメリット

自己破産手続きを弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。

6-1.自己破産ができる条件やメリット・デメリットを教えてもらえる

自己破産を考えている方の多くは、自分の状況で自己破産ができるかが気になっていると思います。

弁護士に相談することで、自己破産が可能かどうか、自己破産のメリット・デメリットとともに説明を受けることができます。

ギャンブルなどの免責不許可事由があっても裁量免責を受けられるケースが多くあります。該当する理由があっても、あきらめずに弁護士にご相談ください。

6-2.債権者の取立てがストップする

借金を抱えている方は、毎月のカード会社からの督促の電話や通知に悩まされることも少なくありません。

自己破産手続きを弁護士に依頼すると、弁護士が債権者に対して受任通知を送付します。弁護士から受任通知を受け取った貸金業者は、以後債務者に対する督促が禁止されます(貸金業法第21条1項9号)。

ひとまず債権者からの取立てが止まることで、借金によるストレスが軽減されるでしょう。

自己破産手続きを弁護士に依頼してから自己破産申立てまでは一般的には半年ほど期間があります。借金返済義務がなくなっているこの期間に、裁判所費用と弁護士費用の積立てを行うことが多いです。

6-3.裁判所での手続きを任せられる

自己破産の手続きは必ず裁判所を介して行います。手続きは複雑で、債務者本人が行うことは困難です。

債務整理を専門とする弁護士に依頼することで、申立てを行えばほぼ確実に免責を得られます。

免責不許可事由がある場合は、裁量免責を受けるためにどのようなことをすればよいか、助言や指示を受けられます。

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7. 自己破産ができない人に関するよくあるQ&A

本章では、自己破産ができないのはどのような場合かについて頂くことが多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

7-1.裁判所の予納金が払えない場合はどうすればよいですか?

自己破産の手続きを弁護士などの専門家に依頼すると、債権者に受任通知を送るので、債権者からの取立てがストップします。従って、専門家に依頼した時点からは、借金の返済をする必要がなくなります。

多くの場合、専門家に手続きを依頼した時点から自己破産の申立てまでの半年程度の準備期間に、予納金と弁護士費用の積み立てを行います。

なお、収入が少なく、財産もないという場合には「同時廃止」の申立てを行います。同時廃止事件にするか管財事件にするかは裁判所が決定するので、必ず同時廃止事件になるわけではないのですが、同時廃止事件となった場合は予納金も弁護士費用も安くなります。

特に予納金は12,000円~15,000円程度で済みます。同時廃止事件を申し立てる弁護士費用の支払いが難しい場合は、法テラスの立替制度を利用して、分割払いで返済するという方法があります。

また、特に管財事件の場合は、予納金が数十万円になるため、裁判所に申し出ると予納金分割払いにしてもらえる可能性があります。

東京地裁では4回、大阪地裁では6回程度の分割払いが可能なケースもあるようです。ただし、これらは、裁判所が分割払いを認めるというわけではなく、予納金が貯まるまで破産手続きを止めるということに過ぎません。

代理人である弁護士とよく相談して進めるようにしましょう。

7-2.自己破産する前に株やFX取引を行ってはだめですか?

株式取引やFX取引も、免責不許可事由の1つである「浪費または賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担」する行為にあたります(破産法第252条1項4号)。

株式取引やFX取引の履歴は簡単にわかってしまうので、自己破産する予定がある場合は、申立ての前に行わないようにしてください。

7-3.ギャンブルなどで浪費していた場合、裁量免責が認められるためにはどうすればよいですか?

免責不許可事由がある場合に裁量免責が認められるためには、「その事由に該当する行為を行ったことを反省し、生活を立て直すための努力を行っている」旨の意思を表すとともに、その証拠を示すことが必要です。

たとえば、以下のような行動をとってください。

  • 反省文を提出する
  • 現在は浪費せず収入の範囲で堅実な生活を送っていることを家計簿や領収書などで示す
  • 収入がないのに浪費していた場合は、現在は就労していて家計収入を増やす努力をしていることを通帳の写しなどで示す

裁判所に対して具体的にどのようなことをすればよいかについては、債務整理に精通した弁護士にご相談ください。

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8. まとめ

収入状況の悪化などにより、借金を返済するめどが立たない方は、自己破産を行うことが得策です。

借金の原因にギャンブルなどの浪費行為があっても、多くの方が裁量免責を得ているので、あきらめずに弁護士にご相談ください。

弁護士が状況を伺った上で、自己破産が難しいと判断した場合には任意整理や個人再生を検討することができます。

弁護士に借金問題解決の手続きを依頼すると費用がかかりますが、多くの法律事務所が初回相談を無料で行っています。自己破産ができる条件を満たしているか、他の債務整理方法を行った方がよいかなどの判断は、初回相談の時間内にできることが多いです。

借金問題でお悩みの方は、債務整理分野に精通した弁護士にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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