自己破産
自己破産できる条件、できない場合の対処法を弁護士が解説!
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「ギャンブルで数百万円の借金をしているのですが、自己破産はできますか?」
「もし自己破産が無理そうだったら、ほかに借金問題を解決できる方法はありますか?」
このように、借金を抱える方にとって気になることとして「自分の状況で自己破産できるか」「自己破産できない場合はどうすればよいか」などがあるのではないでしょうか。
本記事では、自己破産できるのはどのような場合か、自己破産が認められないケース、自己破産できない場合の対処法及び自己破産よりも他の方法をとるほうがよいケースなどを借金問題・債務整理に強い弁護士が解説します。
目次
1. そもそも自己破産とは
まず、自己破産とはどのような制度でしょうか。
1-1. 同時廃止と管財事件について
自己破産とは、借金を返済できなくなってしまった方(債務者)が裁判所に破産の申し立てを行い、裁判所の破産決定によって借金の支払いを原則として免除される制度です。
自己破産の手続には、同時廃止(破産法第216条1項)と管財事件(破産法第31条1項本文)の2種類があります。どちらの手続を行うかは、裁判所が判断します。
1-2. 同時廃止事件と管財事件の違い
同時廃止事件と管財事件には、以下の違いがあります。
(1)破産管財人の有無
管財事件では、債務者の資産を現金化して債権者に配当するために「破産管財人」が選任されます。
破産管財人は、浪費などの深刻な問題がある債務者について、借金を免除してよいか(免責の可否)を判断するために選任される場合もあります。
これに対して、同時廃止事件では、債権者への配当手続は行われず、債務者に浪費などの疑いもないため、破産管財人は選任されません。
(2)手続にかかる時間
管財事件では、破産管財人が配当を行ったり、免責の可否を判断するために時間がかかります。手続にかかる期間はおおむね3か月~6か月程度です。
これに対して、同時廃止にかかる期間は2か月~4か月程度で、管財事件より短く済みます。
(3)手続にかかる費用
管財事件では、裁判所に納める費用(予納金)が最低額でも20万円~50万円程度かかります。破産管財人に対する報酬が含まれているからです。
これに対して、同時廃止の予納金は2万円前後です。破産管財人報酬が発生しないため、管財事件に比べるとかなり費用が安くなります。
(4)その他の違い
上記のほか、管財事件では社会生活上のさまざまな事項について裁判所・破産管財人の指示に従ったり、許可を得なければなりません。
たとえば、破産手続中に引越しや宿泊を伴う旅行・出張を行う場合、裁判所の許可を得る必要があります。
また、破産手続が終了するまでは、債務者宛ての郵便物は一度破産管財人に転送されて、破産管財人が中身を確認してから債務者に返されます。
これは、債務者が裁判所に申し立てた債務以外の債務を負っていないかどうか、他に財産を持っていないかどうかなどを確認するためです。
同時廃止の場合は、このような規制を受けることがありません。
(5)同時廃止の要件
法律上、自己破産手続は、管財事件によって行うのが原則で、同時廃止事件は例外とされます。
しかし実際には、自然人の自己破産手続の7割近くが、同時廃止による簡易な手続で免責を受けています。
参照:令和4年度 司法統計「第108表 破産既済事件数ー破産者及び終局区分別ー全地方裁判所
裁判所によって運用が異なりますが、同時廃止事件になる可能性が高くなるのは以下のすべてにあてはまる場合です。
- ①申立ての時点で、保有する現金が33万円未満
- ②20万円以上の財産がない(不動産、退職金など)
- ③免責不許可事由の疑いがない
- ④債務者が現在に至るまで事業を行ったことがない(債務者が個人事業主ではないこと)
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2. 自己破産の条件とは
自己破産はどのような場合でも認められるわけではなく、破産法で定められた以下の3つの条件すべてに該当する必要があります。
2-1.債務が支払い不能の状態にあること
まず、債務が支払い不能、つまり借金の支払いができない状態であることが必要です。
支払い不能とは、「借金を返済できる見込みがない」状態をいいます。借金を返済できる見込みがない状態とは、すべての債権者(銀行、カード会社など)に対して、一時的ではなく継続的に借金が返済できない状態を指します。
破産法に基づき、「支払い不能」にあたるか否かは以下の点を考慮して判断されます。
- 債務の総額
- 債務の内容(どのカード会社の債務残高がどの程度あるかなど)
- 債務者の収入と資産総額、資産内容
- 家族構成(配偶者・子どもの有無、人数、年齢、親との同居の有無など)
- 生活状況(生活にかかる費用、子どもの学費、配偶者の収入、本人の就業状況など)
- 債務を負担するに至った事由(どのような原因で借金をしたかなど)
一般的には、「現在の借入総額を3年以内に完済できるか否か」が目安となります。
従って、債務総額が年収の3分の1を超えている場合は「支払い不能」と認められやすくなります。
2-2.債務が非免責債権でないこと
2つ目の条件として「借金などの債務が非免責債権にあたらないこと」があります。
非免責債権とは、裁判所で免責許可決定が出たとしてもその返済義務を免れることができない債務をいいます(破産法第253条1項)。
非免責債権の具体例として以下が挙げられます。
- 所得税、住民税などの税金
- 社会保険料
- 公共料金(光熱費、通信費など)
- 養育費
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償金、慰謝料等
- 罰金
- 従業員に支払う給与(個人事業主の場合)
これは、公益上の理由や、法律上の重要な権利を保護するためです。
非免責債権については、破産手続終了後も返済する義務があります。
2-3.債務を負担するに至る理由が免責不許可事由に該当しないこと
3つ目の条件は、免責不許可事由(破産法第252条1項各号)に該当しないことです。
免責不許可事由とは、自己破産が認められない原因や事実をいいます。免責不許可事由にあてはまるとみなされた場合には、自己破産は認められません。
破産法第252条1項に定められた主な免責不許可事由には、以下が挙げられます。
- 浪費やギャンブルなどによって著しく財産を減少させた(同条1項4号)
- 支払い不能であることを認識していながら、債権者と信用取引を行った(同条1項5号)
- 債権者を侵害する目的で自身の財産を減少・隠匿した(同条1項1号)
- 裁判所に対して虚偽の申告を行ったり、説明を拒否した(同条1項8号)
- 過去7年以内に自己破産による免責を受けている(同条1項10号)
ただし、免責不許可事由に該当する場合であっても、裁判所の判断により免責の許可が出る場合もあります(裁量免責:下記7-1・7-2参照)。
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3. 自己破産ができないケース
自己破産ができないのは、以下の4つのいずれかに該当する場合です。
- 債務額が少額で支払い不能状態と認められない
- 免責不許可事由に該当する
- 自己破産申立ての際に必要な予納金が支払えない
- 過去7年以内に自己破産の免責を受けている
以下、それぞれのケースについてご説明します。
3-1.債務額が少額で支払い不能状態と認められない
債務総額が少額の場合は、自己破産が認められません。
「少額」の基準は、おおむね100万円とされていますが、これは、個別の事情によります。ケースによっては100万円以下の負債でも破産が認められることもあります。
3-2.免責不許可事由に該当する
前述したように、破産法第252条1項に定める免責不許可事由に該当する場合には、原則として自己破産は認められません。
ここでは、前述の免責不許可事由5つについて、それぞれ具体例などを紹介します。
(1)浪費やギャンブルなどによって著しく財産を減少させた(同条1項4号)
ギャンブルや株取引などの、極度の浪費行為をいいます。
(2)支払い不能であることを認識していながら、債権者と信用取引を行った(同条1項5号)
支払ができないことをわかっていながら、それを意図的に隠してクレジットカードでショッピングや借り入れを行うことなどです。
(3)債権者を侵害する目的で自身の財産を減少・隠匿した(同条1項1号)
自己破産の申立てを行う前に、自己所有の不動産の名義書き換えを行ったり、闇金業者から借金するなどの行為をいいます。
(4)裁判所に対して虚偽の申告を行ったり、説明を拒否した(同条1項8号)
裁判所での調査に対してうその内容の申告を行ったり、求められた説明に応じないことをいいます。
(5)過去7年以内に自己破産による免責を受けている(同条1項10号)
過去に、自己破産していて、その免責許可決定を受けてから7年が経過していない場合です。
3-3.自己破産申立ての際に必要な予納金が支払えない
裁判所に自己破産の申立てを行う際に、予納金が支払えない場合には自己破産が認められません。
自己破産の予納金は、自己破産申立てを行う際に、裁判所に対して支払う費用のことです(破産法第22条)。
予納金の相場は、破産事件を管轄する裁判所や、破産事件の種類によって異なります。
この点、管財事件の場合は前述のように予納金が最低20万円は必要となります。一括で支払うことが難しい場合には、裁判所または弁護士に相談することで、以下のような対処方法をとることができます。
- 裁判所・弁護士に依頼して予納金の積み立てが完了するまで手続きを待ってもらう
- (生活保護受給者の場合)法テラスを利用して予納金を立て替えてもらう
3-4.過去7年以内に自己破産の免責を受けている
法律上、自己破産は何度でも行うことができます。ただし、過去に自己破産により免責された経歴がある場合には、免責から7年経過していなければ、自己破産は認められません。
7年が経過している場合は、法律的には再度の自己破産が可能です。しかし、自己破産を認めるか否かの審査基準は厳しくなります。
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4. 自己破産できない場合の対処法
自己破産ができない場合、他に「任意整理」または「個人再生」という方法をとれる可能性があります。以下、順にご説明します。
4-1. 任意整理を検討する
任意整理とは、将来利息をカットして元本のみの返済にしてもらう制度のことです。
通常3年、最大5年程度での完済を目指すので、返済可能な収入があることが前提となります。
任意整理は、減額率は少ないですが、自己破産や個人再生のように、裁判所を介する必要がありません。
債務者・債権者の二者間の話し合いのみで手続きできるので、費用も少なく、迅速に手続きを終えることができます。
また、整理対象とする債権者を選ぶことができるので、「住宅ローンや自動車ローンの債権者・保証人がついている債務を外す」ことも可能です。
4-2. 個人再生を検討する
個人再生(民事再生法第221条1項)とは、裁判所の認可決定を得て借金を5分の1程度(最低100万円以上)まで圧縮できる制度です。
認可決定確定後は、原則3年(裁判所が認めた場合は5年)で減額後の借金を完済します。
個人再生は、自己破産のような免責不許可事由がないので、免責不許可事由があるために自己破産が難しい場合に個人再生を選択する方が多いです。
また、不動産や車などの高価な財産を処分されることもありません。
住宅ローンが残っている場合も、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」により、マイホームを手元に残すことができます。
ただし、個人再生認可決定確定後は、再生計画通りに返済する義務があります。従って、安定した継続的な収入があることが前提となります。
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5. 自己破産をしないほうがよいケース
また、状況によっては、自己破産によらず、他の方法をとったほうがよいケースもあります。
自己破産をしない方がよいケースとしては、以下が挙げられます。
また、以下のような場合は、自己破産をしないほうがよいといえます。
5-1.資格制限のある仕事に就いている場合
自己破産の手続期間や手続終了後の一定期間は、特定の職業や資格を一定期間失うことになります。
「特定の職業や資格」の例として以下が挙げられます。
- 士業関係
- 弁護士、弁理士、司法書士、不動産鑑定士、公認会計士、税理士、行政書士など
- 公職関係
- 公証人、都道府県公安委員会、公正取引委員会、教育委員会
- 役員関係
- 商工会議所、金融商品取引業、日本銀行、信用金庫などの各役員
- その他の職業
- 警備会社の従業員、建築業経営者、風俗営業管理者、貸金業登録者、保険会社外務員など
職業や資格を失う期間については、それぞれの職業等に関する法律で定められています。
一般的に、法律では「復権を得ない間」とされています(弁護士法第7条4号など)。
「復権を得る」方法は、主に以下の2つです。
- 免責許可決定が確定すること
- 破産手続開始から10年が経過すること
一般的に、自己破産の申立てから免責許可決定が出るまでが約4~5か月、決定が出てから確定するまでが約1か月程度です。
従って、自己破産が認められた場合は、申立て時点から半年程度で職業制限が解除されると考えてよいでしょう。
この資格制限期間に対応することが難しいとすれば、自己破産ではなく他の債務整理方法をとったほうがよいでしょう。
5-2.自宅不動産などの財産を手放したくない場合
自己破産すると、生活に必要な物を除く一定金額以外の価値のある財産は、裁判所によって処分換価されてしまいます。
処分対象となる財産は、20万円以上の価値がある動産や不動産とされています。
形見の宝飾品や美術品・着物など、20万円以上の財産を手放したくない場合は、自己破産以外の手続きをとったほうがよいでしょう。
5-3.税金などの非免責債権が多い場合
前述のように、税金や社会保険料などは債務が免除されません。債務の中で税金や社会保険料の滞納額の割合が多い場合は、お住いの市区町村の窓口に相談することをおすすめします。
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6. 自己破産を弁護士に相談、依頼するメリット
自己破産について弁護士に相談、依頼すると以下のようなメリットがあります。
6-1.自己破産ができる条件やメリット・デメリットを教えてもらえる
自己破産を考えている方の多くは、自分の状況で自己破産ができるかが気になっていると思います。
弁護士に相談することで、自己破産が可能かどうか、自己破産のメリット・デメリットとともに説明を受けることができます。
ギャンブルなどの免責不許可事由があっても裁量免責を受けられるケースが多くあります。該当する理由があっても、あきらめずに弁護士にご相談ください。
6-2.債権者の取立てがストップする
借金を抱えている方は、毎月のカード会社からの督促の電話や通知に悩まされることも少なくありません。
自己破産手続きを弁護士に依頼すると、弁護士が債権者に対して受任通知を送付します。弁護士から受任通知を受け取った貸金業者は、以後債務者に対する督促が禁止されます(貸金業法第21条1項9号)。
ひとまず債権者からの取立てが止まることで、借金によるストレスが軽減されるでしょう。
自己破産手続きを弁護士に依頼してから自己破産申立てまでは半年ほど期間があります。借金返済義務がなくなっているこの期間に、裁判所費用と弁護士費用の積立てを行うことが多いです。
6-3.裁判所での手続きを任せられる
自己破産の手続きは必ず裁判所を介して行います。手続きは複雑で、債務者本人が行うことは困難です。
債務整理に精通した弁護士に依頼することで、申立てを行えばほぼ確実に免責を得られます。
免責不許可事由がある場合は、裁量免責を受けるためにどのようなことをすればよいか、弁護士から助言や指示を受けられます。
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7. 自己破産の条件に関するよくあるQ&A
本章では、自己破産について頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。
7-1.借金の原因のほとんどがギャンブルだった場合、自己破産は認められますか?
借金の大半がギャンブルによる場合、免責不許可事由に該当するため自己破産(免責)が認められない可能性が高いです。
また、借金全体の中でのギャンブルによる借金の割合が少ない場合も免責不許可事由に該当すると判断されるおそれがあります。
ただ、今後はギャンブルをしないと誓う内容の反省文を作成するなど、債務者の態様によっては、裁量免責(次項参照)により免責が認められる可能性があります。
7-2.免責不許可事由があっても自己破産が認められることはありますか?
実際には、認められる場合が多くあります。
免責不許可事由がある場合も、裁判所の裁量で免責を認められる可能性があります(裁量免責)。
裁判所に裁量免責を認めてもらうためには、債務者自身が次のようなことを心がける必要があります。
- 借金の原因を解消できるよう、生活を改めること
- 自己破産手続に積極的かつ誠実に対応すること
- 裁判所や弁護士の調査に協力的であること
裁判所に対して、これらの心がけを行っていることを示すためにどのようなことをすればよいかについては、弁護士から助言・指示を受けられます。
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8. まとめ
自己破産の条件については、特にギャンブルなどの射幸行為・浪費行為が非免責事由にあたることから、自己破産できるか不安になる方が多いと思います。
債務整理問題に精通する弁護士に相談すれば、まず相談者様の状況で自己破産が可能かどうかを判断できます。弁護士が「可能」と判断した場合は、免責が認められる可能性が十分にありますので、非免責事由があってもあきらめずにご相談ください。
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担当者
![南 陽輔](https://www.legalsmart.jp/wp-content/uploads/2023/07/顔写真(南)-150x150.jpg)
- 一歩法律事務所弁護士
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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