自己破産
自己破産はいくらからできる?目安や条件などを弁護士が解説!
「借金の残高が200万円くらいで、毎月の返済額が約8万円ですが、収入が減ってしまい貯金も底をついているので、とても返せない状態です。自己破産を考えていますが、借金の残高がこのぐらいでも認められるでしょうか?」
このように、借金がいくら以上であれば自己破産が認められるか気になる方は多いのではないでしょうか。
本記事では、自己破産が認められる条件について、債務総額の目安や自己破産手続にかかる費用、自己破産以外の借金問題解決方法などを借金問題・債務整理に強い弁護士が解説します。
目次
1. 自己破産は借金いくらから可能なのか
次章で述べるように、自己破産が認められる条件は法律で定められています。しかし、借金の総額の基準については規定がありません。
自己破産が認められる借金額について、なんらかの目安はあるでしょうか。
1-1. 借金総額が「5年以内に完済することが困難な程度」
ひとつの目安としては、「借金の総額が、3~5年以内に完済することが困難な程度であること」というものがあります。
これは、他の債務整理手段(個人再生・任意整理)では、債務の分割返済の期間が最長5年とされていることに基づきます。
たとえば、毎月の給料から借金返済に充てられる額が5万円だった場合、借金の総額が5万円×12か月×5年=300万円を超えていれば、自己破産が認められる可能性が高くなります。
しかし、実際には、借金の金額以外の事情も考慮されています。たとえば、生活保護受給者の場合、保護費を借金の返済に充てることが認められないため※、借金の額にかかわらず自己破産が認められています。
※保護費による借金返済を直接禁止した規定はありません。ただし、生活保護法12条が保護費について「衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの」の購入・支払いのために支給すると定めていることから、保護費を借金返済に充てることが認められないと解されています。
1-2. 平均的な借金総額は100万円~300万円
日弁連が2020年に実施した調査によると、自己破産手続を行った人のうち、負債総額が500万円未満の割合が50%を超えていました。
負債総額の全体でみても、100万円~300万円が4分の1以上を占めています。この状況は、2020年以前の調査結果でも類似していることがわかります。
また、100万円未満の割合は、調査ごとに増加しているといえます。
従って、100万円~300万円が平均的な借金額といえるでしょう。
出典:「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」(日本弁護士連合会)p3
2. 自己破産が認められる条件
自己破産が認められるのは、破産法で定められた以下の3つの条件すべてに該当する場合です。
2-1.債務が支払い不能の状態にあること
まず、債務が支払い不能、つまり借金の支払いができない状態であることが必要です。
支払い不能とは、「借金を返済できる見込みがない」状態をいいます。借金を返済できる見込みがない状態とは、すべての債権者(銀行、カード会社など)に対して、一時的ではなく継続的に借金が返済できない状態を指します。
破産法に基づき、「支払い不能」にあたるか否かは以下の点を考慮して判断されます。
- 債務の総額
- 債務の内容(どのカード会社の債務残高がどの程度あるかなど)
- 債務者の収入と資産総額、資産内容
- 家族構成(配偶者・子どもの有無、人数、年齢、親との同居の有無など)
- 生活状況(生活にかかる費用、子どもの学費、配偶者の収入、本人の就業状況など)
- 債務を負担するに至った事由(どのような原因で借金をしたかなど)
一般的には、「現在の借入総額を3年以内に完済できるか否か」が目安となります。
従って、債務総額が年収の3分の1を超えている場合は「支払い不能」と認められやすくなります。
2-2.債務が非免責債権でないこと
2つ目の条件として「借金などの債務が非免責債権にあたらないこと」があります。
非免責債権とは、裁判所で免責許可決定が出たとしてもその返済義務を免れることができない債務をいいます(破産法第253条1項)。
非免責債権の具体例として以下が挙げられます。
- 所得税、住民税などの税金
- 社会保険料
- 公共料金(光熱費、通信費など)
- 養育費
- 損害賠償金、慰謝料
- 罰金
- 従業員に支払う給与(個人事業主の場合)
これは、公益上の理由や、法律上の重要な権利を保護するためです。
非免責債権については、破産手続終了後も返済する義務があります。
2-3.債務を負担するに至る理由が免責不許可事由に該当しないこと
3つ目の条件は、免責不許可事由(破産法第252条1項各号)に該当しないことです。
免責不許可事由とは、自己破産が認められない原因や事実をいいます。免責不許可事由にあてはまるとみなされた場合には、自己破産は認められません。
破産法第252条1項に定められた主な免責不許可事由には、以下が挙げられます。
- 浪費やギャンブルなどによって著しく財産を減少させた(同条1項4号)
- 支払い不能であることを認識していながら、債権者と信用取引を行った(同条1項5号)
- 債権者を侵害する目的で自身の財産を減少・隠匿した(同条1項1号)
- 裁判所に対して虚偽の申告を行ったり、説明を拒否した(同条1項8号)
- 過去7年以内に自己破産による免責を受けている(同条1項10号)
ただし、免責不許可事由に該当する場合であっても、裁判所の判断により免責の許可が出る場合もあります(裁量免責:下記7-1・7-2参照)。
3. 自己破産が認められない条件
以下のいずれかに該当する場合、自己破産が認められなくなります。
- 債務額が少額で支払不能状態と認められない
- 免責不許可事由に該当する
- 自己破産申立ての際に必要な予納金が払えない
- 過去7年以内に自己破産の免責を受けている
以下、それぞれのケースについてご説明します。
3-1.債務額が少額で支払い不能状態と認められない
債務総額が少額の場合は、自己破産が認められません。
「少額」の基準は、おおむね100万円とされています。ただし、支払い不能かどうかは債務総額だけではなく、収入や資産なども考慮して判断されますので、あくまで目安として捉えてください。
3-2.免責不許可事由に該当する
前述したように、破産法第252条1項に定める免責不許可事由に該当する場合には、原則として自己破産は認められません。
ここでは、前述の免責不許可事由5つについて、それぞれ具体例などを紹介します。
(1)浪費やギャンブルなどによって著しく財産を減少させた(同条1項4号)
ギャンブルや株取引などの、極度の浪費行為をいいます。
(2)支払い不能であることを認識していながら、債権者と信用取引を行った(同条1項5号)
自己破産することをわかっていながら、それを意図的に隠してクレジットカードでショッピングや借り入れを行うことなどです。
(3)債権者を侵害する目的で自身の財産を減少・隠匿した(同条1項1号)
自己破産の申立てを行う前に、自己所有の不動産の名義書き換えを行ったり、闇金業者から借金するなどの行為をいいます。
(4)裁判所に対して虚偽の申告を行ったり、説明を拒否した(同条1項8号)
裁判所での調査に対してうその内容の申告を行ったり、求められた説明に応じないことをいいます。
(5)過去7年以内に自己破産による免責を受けている(同条1項10号)
過去に、自己破産や任意整理・個人再生などの法的救済制度を利用していて、その免責許可決定を受けてから7年が経過していない場合です。
3-3.自己破産申立ての際に必要な予納金が支払えない
裁判所に自己破産の申立てを行う際に、予納金が支払えない場合には自己破産が認められません。
自己破産の予納金とは、自己破産申立てを行う際に、裁判所に対して支払う費用です(破産法第22条)。
予納金の相場は、破産事件を管轄する裁判所や、破産事件の種類によって異なります。
- この点、管財事件の場合は前述のように予納金が最低20万円は必要となります。一括で支払うことが難しい場合には、裁判所または弁護士に相談することで、以下のような対処方法をとることができます。
- 裁判所に依頼して予納金を分割払いにしてもらう
- 弁護士に依頼して予納金を積み立ててもらう
- (生活保護受給者などの場合)法テラスを利用して予納金を立て替えてもらう
3-4.過去7年以内に自己破産の免責を受けている
法律上、自己破産は何度でも行うことができます。ただし、過去に自己破産により免責された経歴がある場合には、免責から7年経過していなければ、自己破産は認められません。
7年が経過している場合は、法律的には再度の自己破産が可能です。しかし、自己破産を認めるか否かの審査基準は厳しくなります。
4. 自己破産するのにかかる金額
自己破産にかかる費用には、裁判所費用と弁護士費用があります。いずれも、手続きの種類や事案の難易度によって金額が異なります。
4-1.自己破産にかかる費用一覧
自己破産申立てを行う場合、同時廃止事件・管財事件それぞれの手続きにかかる費用は以下の通りです。
同時廃止事件 | 少額管財事件 | 通常管財事件 | |
---|---|---|---|
裁判所費用 | 1万5千円~3万円 | 23万円程度 | 40万円以上 |
弁護士費用 | 25万円~50万円 | 30万円~50万円 | 30万円~60万円 |
合計 | 26万5,000円~53万円 | 53万円~73万円 | 70万円以上~100万円 |
参考:破産事件の手続費用一覧|裁判所(東京地裁民事第20部)
4-2. 自己破産にかかる費用相場
自己破産にかかる費用の相場について、手続きごとに見ていきましょう。
(1)同時廃止事件
同時廃止事件にかかる裁判所費用と弁護士費用の相場は、以下の通りです。
1.裁判所費用
申立手数料(収入印紙代)以外の額は、裁判所や債権者の数などによって異なります。
裁判所費用の合計額は約15,000円~3万円が相場となります。
- 申立手数料(収入印紙代):1,500円
- 予納郵券(郵便切手代):数千円程度(東京地裁の場合4,400円)
- 官報公告費用(予納金):1万円程度(東京地裁の場合11,859円)
2.弁護士費用
弁護士費用は、相談料・着手金・報酬金(成功報酬)・実費(交通費など)・日当(遠方に出張する場合)に分かれます。
自己破産の場合、着手金・報酬金を分けずに「成功報酬」として一括で請求する法律事務所もあります。
また、相談料については30分5,500円~11,000円程度が相場ですが、初回相談を無料で行う法律事務所も多くあります。
同時廃止事件の場合、弁護士費用の相場はトータルで25万円~50万円程度となります。同時廃止事件の申立てが認められるために多くの労力がかかった場合は、費用が高めになる可能性があります。
事務所の報酬体系については初回相談で説明があるはずですので、その際に不明な点をご確認ください。
(2)少額管財事件
少額管財事件にかかる費用の相場は、以下の通りです。
1.裁判所費用
少額管財事件の場合、裁判所費用は合計23万円程度が相場となります。
- 申立手数料(収入印紙代):1,500円
- 予納郵券(郵便切手代):数千円程度(東京地裁の場合4,400円)
- 官報公告費用(予納金):2万円程度
- 引継予納金(破産管財人への報酬):20万円以上
2.弁護士費用
少額管財事件の弁護士費用は、30万円~50万円程度が相場となります。
(3)通常管財事件
通常管財事件にかかる費用の相場は、以下の通りです。
1.裁判所費用
通常管財事件の場合、裁判所の費用は負債総額によってかなり幅があります。
たとえば東京地裁の場合、負債総額5,000万円の場合予納金は50万円、5000万円以上1億円未満は80万円となります。
- 申立手数料(収入印紙代):1,500円
- 予納郵券(郵便切手代):数千円程度(東京地裁の場合4,400円)
- 官報公告費用(予納金):2万円程度
- 引継予納金:40万円以上
2.弁護士費用
通常管財事件の弁護士費用は、30万円~60万円程度となります。
5. 自己破産以外の借金の解決方法について
自己破産が認められない場合や、自己破産したくない事情がある場合、借金の解決方法として任意整理または個人再生が挙げられます。
5-1. 任意整理
任意整理とは、債権者と交渉して、将来利息や遅延損害金をカットして元本のみの分割返済を認めてもらうという債務整理方法です。
任意整理を行う場合、通常3年、最大5年程度での完済を目指します。そのため、この期間内で返済できる程度の収入があることが前提となります。
任意整理は、他の債務整理方法に比べると減額率が少ないですが、裁判所を介さず債権者との話し合いのみで手続できます。
そのため、かかる費用が少なく、短期間で終えることができます。
また、整理対象とする債権者を選ぶことができるので、住宅ローンの債権者や、保証人がついている債務の債権者など、家族や第三者に影響が及びやすい債務の債権者を外すことも可能です。
5-2. 個人再生
個人再生(民事再生法第221条1項)とは、裁判所の認可決定を得て、借金総額を5分の1程度(最低100万円以上)まで圧縮できる制度です。
認可決定が確定した後、原則3年(裁判所が認めた場合は5年)で、減額後の借金を完済することになります。
個人再生は、自己破産のような免責不許可事由がないため、ギャンブルでの多額の借金などの免責不許可事由があるために自己破産が難しい場合に選択するケースが多くなっています。
また、自己破産のように、不動産や車などの高価な財産を処分されることもありません。
住宅ローンが残っている場合も、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」により、マイホームを手元に残すことができます。
ただし、認可決定確定後は、再生計画通りに返済することが義務づけられています。従って、債務者に安定した継続的な収入があることが前提となります。
6. 自己破産を弁護士に相談、依頼するメリット
自己破産について弁護士に相談、依頼することには、以下のようなメリットがあります。
6-1.自己破産ができる条件やメリット・デメリットを教えてもらえる
自己破産を考えている方の多くは、「借金額が少ないのではないか」「免責不許可事由に該当するのではないか」など、自分の状況で自己破産が認められるかが気になっていると思います。
債務整理に精通する弁護士に相談することで、自己破産が可能かどうかについて、自己破産のメリット・デメリットと合わせて説明を受けることができます。
「返済が苦しい」状況であれば、借金総額にかかわらず自己破産が認められることが多いです。また、ギャンブルなどの免責不許可事由があっても、裁量免責(破産法第252条2項)が認められるケースが多くあります。
自分では「無理ではないか」と思っても、あきらめずに弁護士にご相談ください。
6-2. 債権者の取立てがストップする
借金を抱えている方は、貸金業者からの督促の電話や通知に悩まされることが少なくありません。
自己破産手続を弁護士に依頼すると、速やかに債権者に対して受任通知を送付します。弁護士から受任通知を受け取った貸金業者は、それ以後、債務者に対して督促できなくなります(貸金業法第21条1項9号)。
債権者からの取立てが止まるだけでも、借金によるストレスが軽減されるでしょう。
6-3. 裁判所での手続を任せられる
自己破産の手続は、必ず裁判所を介して行います。手続は複雑で、債務者本人が行うことは困難です。
債務整理に精通する弁護士に依頼することで、申立てを行えば高い確率で免責を受けられるようになるでしょう。
免責不許可事由がある場合は、申立ての準備段階で、裁量免責を受けるためにどのようなことをすればよいか助言や指示を受けられます。
7. 自己破産の借金額に関するよくあるQ&A
本章では、自己破産の借金額に関して頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。
7-1.自己破産する人の借金の平均はいくらぐらいですか?
前出の、日弁連の調査によると、2020年調査での自己破産の平均負債額は約1,500万円(1,449万9,580円)となっています。
ただし、これは、1億円、2億円といったレベルの負債額のケースも全て含めたうえでの平均値です。
実際には、100万円~200万円未満と200万円~300万円未満の割合が最も多くなっています。また、100万円未満のケースも8%程度あります。
7-2.自己破産できる借金総額の上限はありますか?
自己破産が認められる負債(借金)総額には、限度がありません。個人が何億円という借金を抱えている場合でも、免責が認められれば全額免除してもらえます。
この点、個人再生では限度額が5,000万円となっています。任意整理の場合は法律上の定めはないものの、「月々可能な額で返済を続けて3年~5年で完済する」ことが条件となるため、500万円を超える場合は事実上難しいといえます。
8. まとめ
「破産」という言葉には多額の借金を抱えるイメージがあるため、返済が苦しくても、100万円程度といった借金額では自己破産が認められないと思われる方もいるかもしれません。
しかし、実際には、100万円未満、200万円未満の借金額で自己破産が認められています。
借金額などで「無理ではないか」と思えても、債務整理に精通する弁護士に相談すれば、相談者様の状況で自己破産が可能かどうかを判断できます。
弁護士が「可能」と判断した場合はほぼ免責が認められていますので、借金の額やその他の理由で自己破産できるか不安であっても、あきらめずにご相談ください。
私たち法律事務所リーガルスマートは、借金問題・債務整理の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
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担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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