自己破産
自己破産の復権とは?期間や条件、確認方法を弁護士が解説!
自己破産手続きを行う場合、手続き期間中は様々な制限を受けることになります。
その制限の中の一つに職業制限があるのですが、職業制限は復権がされるまで続くという説明がされています。
この自己破産における「復権」とはどのようなものなのでしょうか。
そこで本記事では自己破産手続きにおける復権について、借金問題・債務整理に強い弁護士が解説します。
目次
1.自己破産における復権とは
自己破産における復権とはどのようなものか確認しましょう。
1-1.復権とは
復権とは、破産手続き中に行われる職業制限を消滅させることをいいます。
自己破産手続きについて規定している破産法255条・256条に規定されています。
1-2.自己破産手続き中の職業制限とは
復権は、自己破産手続き中の職業制限を消滅させる行為なのですが、そもそも自己破産手続き中の職業制限とはどのようなものなのでしょうか。
資格に基づいて登録をするなどの必要がある職業について、一定の事項に該当する場合に登録を認めない旨の規定があります(欠格事由)。
例えば、宅建業法18条1項は、宅地建物取引士の登録を受けることができない事由を列挙しています。
その18条1項2号は「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」と規定しており、自己破産手続開始決定を受けてから、復権するまでの間は宅地建物取引士の登録を受けることができないことになります。
なお、宅地建物取引士の登録をする際に「登記されていないことの証明書(身分証明書)」が要求されることになっており、ここで破産手続開始決定をうけているとわかるようになっています。
また、すでに登録をしている人が、破産手続開始決定を受けた場合には、その届出をしなければならず(宅建業法21条2号)、届出によって登録が取り消されることになっています。
自己破産の職業制限とは、これら法律の規定に基づく欠格事由によるものです。
同様の規定を置いている職業に次のようなものがあります。
- 警備員(警備業法14条)
- 生命保険募集人(保険業法279条・307条)
- 質屋(質屋営業法3条)
- 貸金業の登録(貸金業法6条)
- 旅行業の登録(旅行業法6条)
- 行政書士(行政書士法2条の2)
- 公認会計士(公認会計士法4条)
- 司法書士(司法書士法5条)
- 社会保険労務士(社会保険労務士法5条)
- 税理士(税理士法4条)
- 弁護士(弁護士法7条)
これらの職業については、破産手続開始決定がされてから復権までの間は就くことができません。
なお、同じように資格に基づいて仕事をするものでも、医師・看護師・薬剤師などの職業については制限されません。
その違いは、他人の財産を預かる可能性があるものについては制限がされる一方で、公衆衛生など財産とは関係のない理由で資格制になっているものは制限されることになります。
2.復権するとどのような効果が生じるのか
復権をするとどうなるのでしょうか。
復権をすると上記のような職業制限がなくなります。
登録をする際に取得する「登記されていないことの証明書」にも破産手続開始決定されていないことを証明してもらえます。
そのため、新たに登録してそ宅建士・保険募集人などの仕事に就くことができるようになります。
3.復権するための条件はどうなっているのか
どのような条件を満たせば復権することができるのでしょうか。
復権には、当然復権と申立てによる復権の2種類があります。
3-1.当然復権により復権する
法律の規定によって復権をすることを当然復権と呼んでます。
破産法255条1項に規定されている次の事項に該当すると、復権することになります。
3-1-1.免責許可が確定
免責許可が確定したときに復権します(破産法255条1項1号)。
自己破産をした場合、破産法252条1項によって、もしくは破産法252条2項によって裁判所が免責の許可をします。
この免責の許可については、債権者などが即時抗告という手段で異議申立てをすることができるようになっています。
免責の許可は、官報に公告してから2週間の間即時抗告ができるとされており、この2週間の間に即時抗告が無ければ免責は確定します。
即時抗告があった場合、即時抗告が退けられた段階で免責が確定します。
この免責の確定によって、申立人は復権することになります。
自己破産をした場合の復権はほとんどがこのケースで、以下の方法は例外的な事例です。
3-1-2.債権者の同意によって破産手続きが廃止された場合
債権者の同意によって破産手続きが廃止された場合に復権します(破産法255条1項2号)。
破産法255条1項2号は、218条1項の規定により、破産手続き廃止の決定が確定したときに復権すると規定しています。
そして、破産法218条1項は、次の場合に破産手続きの廃止を規定しています。
- 破産債権者全員の同意を得た
- 同意をしない破産債権者がいる場合に担保を供している
しかし、自己破産の場合に、貸金業者からこのような同意を得られることはありませんし、同意をしない破産債権者に担保を供することも不可能です。
この方法によって復権するケースは非常に稀であるといえるでしょう。
3-1-3.個人再生の再生計画の認可の決定が確定したとき
自己破産手続きで免責不許可事由があるような場合で(破産法252条1項)、裁量免責を得ることもできなかった場合(破産法252条2項)、債務は残ってしまいます。
このような場合に次善の策として、個人再生をして借金を減額してもらって、返済することが考えられます。
そこで、個人再生を利用して、再生計画の認可の決定が確定したときに、復権することになっています。
3-1-4.破産手続開始決定をした後詐欺破産罪の有罪の確定判決を受けることなく10年が経過
破産法255条1項4号では、破産法265条の罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過すると免責すると定めています。
破産法265条とは、詐欺破産罪を定めるもので、具体的には次の行為が挙げられています。
- 債権者を害する目的で次の行為を行う
- 債務者の財産を隠匿・損壊する行為
- 債務者の財産を譲渡したり債務負担を仮装する行為
- 債務者の財産の現状を改変して価値を減損する行為
- 債務者の財産を債権者の不利益に処分する
- 債権者に不利益な債務を負担する
- 債務者に破産手続開始決定などが下されたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾や正当な理由なしに、債務者の財産を取得しまたは第三者に取得させた
なお、これらの行為があったからといって、当然に復権しないわけではなく、詐欺破産罪として起訴され、有罪となってその判決が確定した場合のみ復権をしてもらえなくなります。
そのため、上記の行為が裁判所に露見してしまい、免責不許可となった場合でも、詐欺破産罪として起訴まではされなかった場合には、破産手続開始決定がされてから10年が経過すれば免責されます。
3-2.申立てによる復権
法律の規定により当然に復権するものではなく、当事者の申立てにより復権する場合、弁済その他の方法により債務の全部について責任を免れた場合に復権が行われます。
債務の全部について責任を免れる方法の典型例は債務の全部について弁済することですが、例えば時効によって債務を免れた場合や、債権者が返済について免除してくれたときもこれにあたります。
この場合、裁判所に申立てを行って復権をすることになります。
4.自己破産をしてから復権までにかかる期間
自己破産をしてから復権までにはどのくらいの期間がかかるのでしょうか。
ほとんどのケースで、当然復権を定める255条1項1号の免責が確定した時に復権されます。
自己破産の申立てをしてから復権をするまでは、およそ4ヵ月~6ヵ月程度かかります。
同時廃止で管財人面接が不要である場合には4ヵ月程度で終わるのですが、管財手続となる場合には管財人面接がある分1ヵ月~期間が伸びます。
財産があり換価・配当に時間がかかる場合や、免責不許可事由に関する調査に時間がかかるようなケースでは、さらに期間が長引くことになります。
なお、弁護士に依頼してから、自己破産の申立てをするまでに2ヵ月~3ヵ月はかかり、弁護士費用を分割で支払う場合にはさらに分割期間分の時間がかかります。
5.自己破産後に復権したかを確認する方法
自己破産後に復権したかをどうやって確認すれば良いでしょうか。
復権したことについては、裁判所から本人に通知されるわけではなく、官報に公告されるわけでもありません。
そこで、自己破産後に自分が復権したかを確認する方法として、次の2つが挙げられます。
5-1.免責許可確定証明書を取得する
破産法255条1項1号の免責許可が確定したことに基づく復権を確認するためには、免責許可確定証明書を取得しましょう。
免責許可が確定したことを証明する、免責許可確定証明書は、免責許可を出した裁判所によって発行してもらえます。
発行してもらえるのは免責許可が確定してから1ヵ月程度かかることが通常です。
5-2.市区町村役場で身分証明書を発行してもらう
市区町村役場で身分証明書を発行してもらい確認しましょう。
職業制限のところで述べた通り、破産手続開始決定を受けていないことを証明する書類として「登記されていないことの証明書」(身分証明書)という書類があります。
復権がされていれば、書類の中で破産手続開始決定を受けていないことを証明してもらえます。
身分証明書は戸籍のある市区町村役場で取得します。
6.職業制限や復権に関する注意点
職業制限や復権に関する注意点としては次の通りです。
6-1.資格に関係のない仕事をしている場合は関係がない
上述したように、様々な資格で登録をして仕事に従事している場合には、職業制限・復権は関係のあるものです。
しかし、資格に関係のない仕事をしている場合には関係はありません。
例えば、警備会社に勤務していても、実際に警備員として現場に立つのではなく、経理・人事といった仕事をしていて、登録をしていない場合があります。
警備員として就業することはできませんが、経理・人事の仕事はそのまま続けることが可能です。
自分の仕事に影響するかどうか、心配な場合には、弁護士に相談してみましょう。
6-2.信用情報が元に戻るわけではない
自己破産をする際の制限として他に大きなものとして、信用情報に異動情報(事故情報)が記録されることです。
信用情報に異動情報が記録されることで、信用情報を用いて与信の審査を行う行為ができなくなります。
代表的なものには次のようなものが挙げられます。
- 貸金業者から借金をする
- 住宅ローン・自動車ローン・医療ローン
- クレジットカードを作る・更新する
- 携帯電話を分割で購入する
このような状態のことを俗にブラックリストと呼んでいます。
復権という言葉から、信用情報に関するこのような状態も無くなって、借入やクレジットカードの利用ができるようにも思えます。
しかし、信用情報は自己破産・破産法に基づく制度ではありません。
そのため、復権となった場合でも、信用情報については信用情報のルールで運用されることになるので、異動情報が消えるわけではありません。
なお、自己破産の場合、5~7年で異動情報は消えることになっています。
6-3.社内ブラックも復権は影響しない
一度債務整理をした相手から借入やクレジットカードを作ることができなくなる状態のことを、社内ブラックといいます。
例えば、クレジットカードの残額があり、自己破産手続きによって免責してもらい、その後上記のブラックリストの期間の後にもクレジットカードを再度つくることができません。
このような状態についても、自己破産により復権した後でも、クレジットカードを作れることになるというわけではありません。
社内ブラックという状態は自己破産手続き・破産法に基づく制度ではなく、その会社の方針として取引をしないというものであるからです。
6-4.職業制限が困る場合には初めから任意整理・個人再生を利用
自己破産によって現在の職業追われることが困るような場合には、最初から任意整理・個人再生を利用することを検討しましょう。
職業制限は債務整理方法の中でも、自己破産に特有のものです。
そのため、任意整理・個人再生であれば職業制限はされません。
理念的には、職業制限がされている間は、資格を制限されていても行えることだけを行わせてもらって、復権したら資格に基づく仕事に復帰することも可能です。
しかし現実に、資格に基づく仕事で雇用されている人が、一時的にでも資格に基づかない部署に異動させてもらうなどすることは厳しく、事実上辞めざるをえない状況となることが多いです。
どうしても現在の職業を続けたい場合には、自己破産よりも任意整理・個人再生の利用をするようにしましょう。
7.自己破産手続きの悩みを弁護士に相談、依頼するメリット
どのような条件で復権となるのか、といった自己破産手続きの悩みについては、早めに弁護士に相談して、自己破産の依頼をすることが望ましいといえます。
そのメリットに次のようなものがあります。
7-1.適切な債務整理手続きを選ぶことができる
弁護士に相談することで適切な債務整理の方法を選ぶことができます。
そもそも債務整理は借金の額・返済能力・当事者の希望によって適切な手続きを検討する必要があります。
職業制限をされたくないような希望がある場合には自己破産手続きを選択することはできる限り避けるべきで、借金の額・返済能力によって任意整理・個人再生のいずれかを選択するのが望ましいです。
弁護士に相談することで、自分にあった手続きがどれなのかを選択することができます。
7-2.手続きについての疑問や不安を解消してくれる
手続きについての疑問や不安を解消してくれます。
適切な手続きがわかったとしても、その手続きを利用するにあたって様々な疑問や不安があるでしょう。
これらの疑問や不安を晴らすために、書籍やインターネットの情報を探すことがありますが、これらはあくまで一般的な情報にすぎず、個々の状況に合わせた情報の提供をすることができません。
例えば、自己破産のデメリットに職業制限がありますが、職業制限はあくまで資格に登録する人に関係があるもので、通常の会社員や資格に関係しない業務に就いている人には関係のないものです。
弁護士に相談することで、こういった疑問や不安を解消することが可能となります。
7-3.弁護士への相談自体は無料でできる
こういったメリットがある弁護士への相談ですが、通常は30分5,000円~の相談料がかかるのが一般的です。
自己破産を検討している場合には、目の前の数千円程度の返済ができなくなっているような場合があり、このような場合に相談料を出すのは厳しいといえます。
しかし、市区町村の無料弁護士相談や法テラスといった無料で相談できるものはたくさんありますし、債務整理に力をいれている弁護士であれば、このような窮状にあることへの理解があるので、無料で相談を行っています。
法律事務所リーガルスマートでも初回60分は無料で相談できますので、お気軽にご利用ください。
7-4.弁護士に依頼すれば督促を止められる
弁護士に依頼した場合のメリットとして、督促を止められることが挙げられます。
返済が遅れると、自宅や携帯電話、書面で督促を受けつづけることになり、これらは大変精神的負担を伴います。
弁護士に依頼した後は、貸金業者は正当な理由が無い限り、債務者本人に直接請求できないことになっています。
そのため、弁護士に依頼すれば督促を止められ、落ち着いて自己破産や債務整理の準備をすることができます。
7-5.司法書士に依頼するより自己破産を有利に進められる
司法書士に依頼するより自己破産を有利に進められます。
債務整理については弁護士のみならず司法書士も取り扱っています。
これは、司法書士に認められている、140万円以下の金銭の支払いに関する代理権と、裁判所に提出する書類の作成代行という権限に基づくものです。
ただ、自己破産をする場合には、弁護士が代理しての申立てによると、同時廃止や管財事件でも少額管財を利用できることになっている場合があります(東京地方裁判所など)。
この場合、司法書士に依頼して申立て書類を作成してもらっても、本人による申立てと同視されます。
その結果、同時廃止や少額管財が利用できず、通常管財(特定管財)となって、より多くの予納金が必要になります(東京地方裁判所の特定管財は50万円~)。
弁護士に依頼して申し立てを行ったほうが、有利に手続きを進められます。
8.職業制限や復権に関するよくあるQ&A
職業制限や復権に関するよくあるQ&Aには次のようなものがあります。
8-1職業制限や復権は家族にも影響を及ぼしますか
自己破産手続開始決定によって職業制限がかかり、復権によってその職業制限が解除されます。
この効果は、あくまで申立てをした本人のみであり、家族に職業制限は及びません。
ですので、例えば夫が自己破産をする場合で、妻が保険募集人として仕事をすることに何らの影響も与えません。
9.まとめ
本記事では、自己破産における復権についてを中心にお伝えしました。
自己破産における職業制限を消滅させる復権は、基本的には免責許可の確定が条件となります。
復権についてよくわからないことがある場合や、職業制限がある場合の債務整理にお悩みの場合には、まずは弁護士に相談してみることをお勧めします。
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- 弁護士が債権者との連絡窓口となるため、家族に知られることなく手続きを進めることができます。これにより、家族に心配をかけずに問題を解決することができます。
担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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