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任意整理でブラックリストに載るのはいつまで?弁護士が解説!
任意整理をするデメリットの一つにいわゆる「ブラックリスト」があります。
期間中、信用情報を用いて審査が行われる取引ができなくなるこのブラックリストですが、そのブラックリストはいつからいつまでなのでしょうか。
本記事では、ブラックリストに載るのはいつまでかを中心に、借金問題・債務整理に強い弁護士が解説します。
目次
1.任意整理をするとブラックリストにいつからいつまで登録されるのか
任意整理をするとブラックリストに載るとされるのですが、それはいつからいつまでなのでしょうか。
1-1.ブラックリストとは
そもそもブラックリストとはどのようなものなのでしょうか。
ブラックリストとは、信用情報に異動情報が掲載され、信用情報を使った審査に通りにくくなる状態をいいます。
個人の借り入れや返済などについての情報である信用情報ですが、61日以上の延滞や債務整理をしたことは、返済できない状態であることを示すもので、異動情報(事故情報)として登録がされます。
このような状態を「ブラックリスト」あるいは「ブラックリストに載る」という言い方がされますが、特別なリストなどで管理されているわけではなく、あくまで信用情報に異動情報がある状態に過ぎません。
1-2.任意整理をするとブラックリストに載る
任意整理をするとブラックリストに載ります。
債権者と交渉をして借金を減額してもらう任意整理を行うことは、従来の契約通りの支払いができなくなることを意味します。
そのため、債務者の返済能力を審査するための信用情報という観点からは、重大な状況であるといえます。
そのため、任意整理をしたことは異動情報として取り扱われ、これによってブラックリストに載ることになります。
1-3.任意整理をするといつからブラックリストに載るのか
任意整理をするといつからブラックリストに載るのでしょうか。
ブラックリストに載るのは、貸金業者が任意整理が始まったことを確認し、信用情報を管理している信用情報機関に通知をしたときです。
そして、貸金業者が任意整理が始まったことを確認するのは、弁護士・司法書士に任意整理を依頼した後に弁護士・司法書士から任意整理を依頼された旨を知らせる受任通知が送られてきた時です。
そのため、任意整理は、弁護士・司法書士に任意整理を依頼した後に、弁護士・司法書士が送った受任通知を貸金業者が受け取った時にブラックリストに載るといえます。
なお、この段階で既に61日以上の延滞をしていると、延滞していることを異動情報として登録されブラックリストとなっているので、任意整理前に延滞を理由にブラックリストとなっていることがあります。
1-4.ブラックリストに載るのはいつまで
ブラックリストに載るのはいつまででしょうか。
この点信用情報を取り扱っている3つの信用情報機関いずれも、任意整理の異動情報の掲載期間を、任意整理をした後借金を完済してから5年としています。
そのため、完済してから5年経つまでブラックリストに載っているといえます。
1-5.任意整理をしようとしたところ過払い金ががある場合にはブラックリストに載らない
なお、任意整理をしようとしたところ、過払い金がある場合にはブラックリストに載らないようになっています。
過払い金とは、貸金業者に返済をしすぎていたお金のことをいいます。
利息の上限を定める法律には、民事上の効力を規定する利息制限法と、高利貸しを刑事罰で処罰する出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)の2つがあります。
2010年6月18日に施行された現在の出資法の上限利率になるまでは、出資法の上限利率のほうが、民事上の効力を定める利息制限法よりも高い状態でした。
そのため、利息制限法よりも高い利息で、出資法の範囲に収まるような貸付をしている貸金業者が多くいました。
最高裁判所におけるいくつかの判決を経て、利息制限法を超える利息の受け取りについて無効とした上で、まず残っている元本に充当し、残っている元本よりも無効となる利息の受け取りのほうが多い場合には、過払い金として返還しなければならないとしました。
この返還するお金のことを過払い金と呼んでいます。
もしこの過払い金がある場合、法的には債務はすでに無いと評価されるので、任意整理を行ったとしてもブラックリストには載らないことになっています。
2.信用情報を扱う信用情報機関について
信用情報を扱う信用情報機関とはどのようなものなのでしょうか。
2-1.信用情報機関とは
信用情報機関とは、上述した信用情報を取り扱っている機関のことをいいます。
信用情報機関には次の3つがあります。
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
2-2.株式会社シー・アイ・シー(CIC)
株式会社シー・アイ・シーは東京都新宿区に本社を置く信用情報機関の会社で、通称CICと記載されます。
CICは、クレジットカードや消費者金融からの借入を取り扱っている信用情報機関で、割賦販売法および貸金業法の唯一の指定信用情報機関です。
2-3.株式会社日本信用情報機構(JICC)
株式会社日本信用情報機構(JICC)は、東京都台東区に本社を置く信用情報機関の会社です。
JICCは、内閣総理大臣より、貸金業法に基づく指定信用情報機関として指定されており、主に消費者金融を中心とした貸金業者が加入しています。
2-4.全国銀行個人信用情報センター(KSC)
全国銀行個人信用センターは、一般社団法人全国銀行協会が設立した組織で、東京都千代田区に本部を置くもので、通称KSCと呼ばれています。
KSCは、銀行・信用組合・信用金庫・農協などが加盟する信用情報機関です。
2-5.信用情報機関は情報を共有している
貸金業者は自社が加盟している信用情報機関に対してのみ情報がやり取りされています。
もっとも、信用情報機関はこれらの信用情報機関は相互に「FINE」、「IDEA」、「CRIN」という情報交流ネットワークを利用して、情報を共有しています。
FINEでは、貸金業法に基づく指定信用情報機関の間に義務付けられた情報交流義務に基づいて、JICCとCICの2つの機関が貸付の残高などの情報を共有しています。
IDEAでは、上記3つの信用情報機関の間で、貸金業法が対象とする債務の情報を共有しています。
CRINでは、延滞や債務整理、本人が申告した本人確認書類の紛失や盗難に関する情報を共有しています。
3.信用情報機関が信用情報を登録する内容
信用情報機関が信用情報として登録する内容には次のものがあります。
3-1.本人に関する情報
本人に関する情報が登録されます。
本人に関する情報としては次のような情報が登録されます。
- 氏名
- 住所
- 電話番号
- 生年月日
- 勤務先
- 本人が提出した本人確認書類の内容
3-2.契約に関する情報
本人が行った契約に関する情報が登録されます。
- 契約の種類
- 契約日(申込日)
- 利用状況
- 貸付金額
- 返済状況
- 入金日
- ローン残高
- 延滞の有無
- 完済日
3-3.その他の情報
その他の情報として、次のような情報が登録されています。
- 貸金業者が信用情報を照会した日付
- 債務整理・自己破産や個人再生の申立て
- 貸付自粛制度の利用
4.信用情報機関が信用情報を登録するタイミング
信用情報機関が信用情報を登録するタイミングはいつなのでしょうか。
登録する内容にもよるのですが、例えば消費者金融などのへの借金の申し込みについては、早ければ10分程度で登録されます。
会社での取り扱いについてのルールや、取り扱いを担当している人の仕事のスピードにも左右されますが、基本的には信用情報として登録すべき事象については、発生すればすぐに登録されることになると考えておきましょう。
5.信用情報に異動情報が登録されたときの影響について
信用情報に任意整理などの異動情報が登録されたときにどのような影響がおきるのでしょうか。
5-1.信用情報を使った取引の審査に非常に通りにくくなる
信用情報を使った取引の審査が非常に通りにくくなります。
将来支払ってもらうことが前提となる取引をする際には、その人が本当に支払えるのか審査が行われます。
その審査にあたって、信用情報機関に加盟している会社は、信用情報を閲覧できるので、信用情報を元に審査を行います。
任意整理などの異動情報がある場合、この情報を閲覧することになります。
異動情報があるからといって取引してはならないわけではないのですが、正常な返済を期待できないと判断されるため、非常に審査に通りにくくなります。
信用情報を用いた審査がされる取引については次のものがあります。
(1)貸金業者からの借り入れ
貸金業者からの借り入れの審査には信用情報が使われます
住宅ローンや自動車ローンといった多額の貸付だけではなく、消費者金融などの少額の借り入れについても信用情報による審査が行われます。
そのため、異動情報がある場合には、貸金業者から借り入れるのは非常に難しいといえるでしょう。
よく「任意整理をするとブラックリストとなり借金ができなくなる」といわれるのは、審査が通らないことに起因します。
そのため、親族や会社・生活福祉資金貸付制度・保険会社からの契約者貸付は信用情報を利用しない以上、利用ができます。
(2)クレジットカードの申し込み・更新
クレジットカードの申し込み・更新の審査には信用情報が使われます。
クレジットカードも利用後に毎月支払ってもらう以上、支払い能力の有無を確認する必要があります。
そのため、審査をする必要があり、その際に信用情報が使われます。
「任意整理をするとクレジットカードが使えなくなる」といわれるのは、このことに起因します。
なお、すでに申し込んで利用しているクレジットカードについては、更新の時に審査がされます。
ここでも信用情報が利用され、更新もできなくなります。
なお、銀行の残高と連動して利用できるデビットカードや、事前に入金をして利用するプリペイドカードについては、将来支払ってもらうことを前提としていないため、利用が可能です。
(3)ETCカードの申し込み・更新
高速道路や有料道路の支払いのために利用されるETCカードの申し込み・更新も同様に信用情報による審査が行われます。
そのため、新たにETCカードの発行・更新ができません。
なお、デポジット制のETCパーソナルカードの利用は可能なので、ETCを利用できないわけではありません。
(4)携帯電話・スマートフォンの分割購入
携帯電話・スマートフォンの機体の分割購入にあたっては、信用情報による審査が行われます。
そのため、携帯電話・スマートフォンの分割購入の審査に通らず、利用ができません。
なお、機体を一括で購入することや、携帯電話の回線の契約は制限されないので、携帯電話の利用ができなくなるとまではいえません。
(5)保証人(連帯保証人)になること
貸金業者からの借り入れについて、保証人(連帯保証人)になる場合にも、信用情報による審査が行われます。
そのため、他人の借り入れについて保証人となることができません。
よくある例としては、子が日本学生支援機構の奨学金を受ける場合に必要とされる、連帯保証人で、この場合他の親族に連帯保証人となることを依頼することになります。
(6)信用情報機関に登録している会社の家賃保証を受ける
信用情報機関に登録している会社の家賃保証を受ける場合、信用情報に基づく審査が行われます。
賃貸をする際に、保証人不要とする契約をする場合、連帯保証人を自分で用意する必要がない代わりに、家賃保証を行っている保証会社に家賃保証をしてもらう必要があります。
この家賃保証について、消費者金融や信販会社が家賃保証事業を行っていることがあり、この場合家賃保証を受ける審査をする際に信用情報を閲覧します。
そのため、家賃保証を受けられないことになり、不動産の賃貸ができません。
この場合でも、家賃保証の審査にあたって信用情報を確認できない独立系の家賃保証会社の審査の場合や、連帯保証人を立てて審査を受ける場合には賃貸は可能です。
5-2.異動情報の影響は本人のみ
異動情報の影響は本人のみです。
例えば、本人の信用情報に異動情報が掲載されたとしても、配偶者・親・子などの信用情報に影響はありません。
そのため、例えば夫が任意整理したからといって、妻がクレジットカードの更新ができない、ということはありません。
なお、家族に家族カードを使わせている場合には、契約者本人がブラックリストとなることで、家族カードも使えなくなります。
6.任意整理するメリット
任意整理によって5年間ブラックリストになるなどのデメリットはありますが、任意整理には次のメリットがあります。
6-1.債務が軽くなる
任意整理をすることで債務が軽くなります。
任意整理をすれば、借金の返済で負担となる、利息・遅延損害金をカットして、元本のみの支払いとすることが可能となっています。
利息・遅延損害金がカットされるため、従前の契約通り支払うよりも早いスピードで完済が可能となります。
6-2.債権者を選べる
債務整理には他にも、破産法に基づく自己破産・民事再生法に基づく個人再生がありますが、これらは法律にしたがって全ての債権者を対象に行います。
奨学金の借り入れをしていれば保証人である親・親族に請求されることになり、自動車ローンがあれば自動車を引き上げられ、不動産担保ローンがあれば不動産を競売されることになります。
任意整理は債権者と交渉を行う手続きなので、債務整理によって不都合が生じる場合には、その債権者は任意整理の対象としないことが可能です。
6-3.債務整理の中でも最も簡単で費用がかからない
主な方法として3つある債務整理の中でも、最も簡単で費用がかかりません。
任意整理は貸金業者と交渉する手続きで、自己破産・個人再生のように、申立書を作成・添付書類を収集して申立てをして、裁判所での手続きを行うものではありません。
そのため、手続きが自己破産・個人再生に比べて簡単で、その分手続き費用・弁護士費用もかからないというメリットがあります。
7.借金問題や任意整理を弁護士に相談、依頼するメリット
借金問題や任意整理については弁護士に相談・依頼することに、次のようなメリットがあります。
7-1.任意整理についての不安を解消することができる
任意整理をするとブラックリストはどうなるのか?など、債務整理・任意整理について様々な不安があることは珍しくありません。
個別にインターネットや書籍で情報を収集することはできても、これらの情報は一般的なものにとどまり、個人の状況にどう影響するかまでは伝えられないです。
弁護士に相談することで、不安となっていることについて、個人の状況にあわせて解消することが可能です。
7-2.適切な手続きを知ることができる
債務整理は、個人の借り入れや返済能力に応じて、その人がとるべき手続きが異なります。
任意整理の希望があったとしても、借金の額次第では任意整理をすることで不利益となることもあります。
弁護士に相談することで、相談した人に応じてどの手続きが適切なのかを知ることができます。
7-3.弁護士に依頼すれば督促を止めることができる
すでに貸金業者から督促を受けている場合、弁護士に依頼すればこれを止めることができます。
貸金業者は、貸金業法21条1項9号によって、弁護士に依頼した後は、正当な理由がない限り、本人に請求できないとしているためです。
7-4.弁護士に依頼すれば有利に交渉ができる
弁護士に依頼すれば、任意整理の交渉にあたって有利に行うことができます。
貸金業者との交渉を個人が行うのは困難で、遅延損害金をつけられたり、長期の分割を認めてもらえないようなことがあります。
弁護士に依頼すれば、利息・遅延損害金をカットして、長期の分割を認めてもらえます。
8.ブラックリストの登録に関するよくあるQ&A
ブラックリストに関するよくあるQ&Aには次のものがあります。
8-1.ブラックリストを解除する方法はありますか?
任意整理によってブラックリストとして異動情報が載った場合、これが無くなるためには完済してから5年が経過するしかありません。
「ブラックリストの削除を代行します」といった業者を見ることがあるのですが、現実にその方法は無く、詐欺であるといえるでしょう。
8-2.ブラックリストになりたくないので債務整理ができない
ブラックリストになりたくない、といった理由で任意整理・債務整理に躊躇する方も多いです。
しかし、返済ができなくなっている場合、いずれ滞納することになり、61日以上の滞納で異動情報が掲載され、ブラックリストとなることは避けられません。
ブラックリストとなると上述したようにできなくなることが増えますが、クレジットカードのかわりにデビットカードやコンビニ払いで決済ができるなど、代わりになる手段はあり、生活できなくなることはありません。
早く任意整理を終わらせて完済し、信用情報を回復するほうが良いといえます。
9.まとめ
本記事では、任意整理でブラックリストに載るのはいつからいつまでか、を中心にお伝えしました。
任意整理によるブラックリストは、弁護士・司法書士が送る受任通知を貸金業者が受け取ることにはじまり、完済から5年で終了します。
その間できないことは増えますが、デビットカードなど代わりの手段の利用も可能です。
心配なことがあるのであれば、なるべく早く弁護士に相談してみるようにしましょう。
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担当者
-
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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