親権・養育費

母親が親権争いで負ける理由とは?判断基準などを弁護士が解説!

母親が親権争いで負ける理由とは?判断基準などを弁護士が解説!
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「夫の不倫が原因で離婚を考えています。3歳の息子がいるのですが、親権は絶対私が取りたいと思っています。ただ、夫の方が収入が多いのと、男の子ということで親権争いになった場合に勝てるかどうか不安です。あと、息子は父親にもなついていたので、息子がお父さんと暮らしたいといったら私は不利でしょうか?」

このように、離婚を考える女性の方にとって、親権争いになった場合に母親を親権者に指定してもらえるか不安になることも少なくないのではないでしょうか。

本記事では、離婚に際して母親が親権争いで「負ける」理由は存在するか、親権者指定の判断基準や親権者を決める手続の流れなどを離婚・男女問題に強い弁護士が解説します。

目次

1. そもそも親権とは

本章では、「親権」について①どのような権利か、親権に関連してよく出てくる「監護権」や「養育権」という権利とはどのような違いがあるか、②親権があるとできることは何か、③親権がないとどうなるか、④親権はいつまで行使できるかなどを解説します。

1-1.親権とはどのような権利か

親権とは、未成年の実子または養子の監護及び教育を行う権利をいいます。

法律上、夫婦は婚姻中は共同で親権を行使すると定められています(民法第818条3項)。従って、婚姻中は父親・母親ともに未成年の子どもの親権者となっています。

しかし、離婚する場合は、協議または裁判所の職権により、父または母いずれかを親権者と定めることになります(民法第819条1項・2項)

本章では、親権があるとできること、及び親権がないとどのようなデメリットがあるかなどを解説します。

1-2.親権があるとできること

親権があるとできることは、「子どもの利益のために」子どもの監護・教育をすることです。

具体的には、以下の2つの権利を行使できます。

(1)身上監護権(民法第766条1項)

身上監護権は、以下のことを行う権利です。

  • 教育・食事提供・身の回りの世話などをする権利
  • 子どもの住む場所を決める権利
  • 職業を許可する権利

つまり、子どもと同居して教育を受けさせ、自立できるまで育てる権利です。

(2)財産管理権(民法第824条)

財産管理権は、子どもの法律行為の代理権を指します。具体的には、契約、不法行為の損害賠償請求権または損害賠償義務などの代理権です。

(1)(2)のうち、身上監護権を中心とする権利義務だけを切り離した権利は「監護権」です。

監護権という言葉は一般的にはあまり使われないため、より理解しやすい「養育権」と言いかえられることがあります。

1-3.親権がないとどうなるか

それでは、親権がない場合、子どもに対して親として何もできなくなってしまうでしょうか。

(1)親権がなくても監護権者になれば同居・養育は可能

この点、親権の中で、身上監護権と財産管理権とは切り離すことができると考えられています。

これにより、たとえば親権者を父親と定め、監護権者を母親と定めるということも可能です。この場合、母親は財産管理権の行使(契約の同意や取消など)はできなくなりますが、子どもと同居して養育することができます。

(2)監護権者は養育費請求や手当受給もできる

また、たとえば親権者を父親に定めた上で監護権者を母親にした場合、母親は子どもと同居して養育している限り、父親に対して養育費を請求できます。

さらに、児童手当・児童扶養手当などの各種の子育て支援給付を受給できます(児童手当につき、児童手当法第4条)。

父親が親権者となり、子どもと同居して養育する場合には、身上監護権・財産管理権どちらも父親が持つことになります。

つまり、親権をどちらに定めるかにかかわらず、母親が子どもと同居して養育する場合には、身上監護権者として養育費や各種手当の受給ができます。

(3)子どもの利益にかなう範囲で面会交流が可能

親権が認められず、監護権者に指定されなかった場合でも、子どもの利益にかなう範囲で面会その他の交流を行うことができます。

面会交流については、子どもの利益を最も優先するという原則のもとに、協議または裁判所の職権によって必要事項を定めることになります(民法第768条1項・2項)。

1-4. 親権はいつまで行使できるか

それでは、親権はいつまで行使できるでしょうか。

(1)子どもが18歳になるまで行使できる

民法第818条1項は、「成年に達しない子は、父母の親権に服する」と定めています。

現在では成人年齢が18歳となったため、親権を行使できるのは子どもが18歳の誕生日を迎えるまでということになります。

(2)養育費は子どもが学生の間は請求できる

ここで、気になることとして「子どもが18歳になると親権を行使できなくなるから、養育費の請求もできなくなるのではないか」ということがあると思います。

養育費は、親権とは直接関係なく、法律上の親子関係から生じる扶養義務(民法第760条・第877条1項)に基づくものです。

従って、当事者の協議または裁判所の関与(調停・審判・裁判)によって、例えば子どもが大学を卒業する年齢に達するまで、または就職するまでを養育費支払期間と定めることができます。

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2. 母親が親権を取れないケースとその理由とは

親権についても、財産分与や養育費などと同様、夫婦間の協議によって定めることが可能です(民法第763条)。

当事者間の協議や調停手続で親権者を定められなかった場合は、審判手続や訴訟手続で家庭裁判所が親権者を定めます。

本章では、母親が「負ける」、つまり親権争いになったときに審判や裁判で父親側に親権が認められるケースについて解説します。

2-1.母親が子どもを虐待している場合

母親が「負ける」ケースとして一番多いのは、母親が子どもに対して加害行為(虐待)を行っている場合です。

ここでいう「虐待」には、身体的な暴力や暴言などに加えて、食事や衣服を与えない・入浴させない・排泄の世話をしないなどのネグレクト行為も含まれます。

ただし、父親側が親権を主張する上で、このことを理由の1つとするためには、母親側がこのような行為を行っていたことについて父親側が主張・立証する必要があります。

2-2.母親が実際に子どもの面倒を見ることが困難な場合

母親の子どもに対する加害行為が存在しない場合は、母親や子どもの意思を考慮しながら慎重に判断します。

加害行為以外では、母親が病気などで子どもの面倒を見ることが困難な場合があります。

この場合は母親を監護権者と定めることもできないので、身上監護権を含めた親権が父親側に認められる可能性が高くなります。

ただし、母親の回復状況によっては、親権者変更手続(民法第819条6項:後述7-2参照)、あるいは監護権者の変更協議/調停申立手続(同条)によって、母親が親権者または監護権者に指定される可能性があります。

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3. 親権を決める際に考慮されるポイントとは

家裁の審判や裁判では、民法第820条の趣旨に従い、以下のような原則に従いつつ、父親と母親のどちらを親権者に指定するのが子どもの利益にかなうかを慎重に判断しています。

3-1. 父母側の事情と子どもの側の事情が総合的に判断される

親権争いについて「父親側の経済力対母親側の養育意思」のような対立構造が思い浮かびやすいと思います。

しかし、裁判所は、「子どもの利益」を第一に考えた上で、父母側・子どもの側のそれぞれの事情を詳細に調べて、総合的に判断しています。

判断要素となるのは、以下のような事情です。

①父母側それぞれの事情

  • 生活歴、就労状況、経済状況、心身の状況、家庭状況
  • 親族などの援助を受けられる可能性
  • 養育環境、養育方針、別居親との面会交流に対する考え方など

②子どもの側の事情

  • 年齢、性別、兄弟姉妹関係
  • 生活歴
  • 過去の養育状況
  • 現在の生活状況
  • 心身の状況
  • 父母の離婚や争いごとに対する認識の程度
  • どちらの親と同居したいか、その理由など

3-2.子どもが複数いる場合は同一にする

未成年の子どもが2人以上いる場合は、きょうだいの間で重大なトラブルがあるなどの特段の事情がない限り、子どもの年齢にかかわらず同一の親権者を定めることになります(きょうだい不分離の原則)。

3-3.現在の監護状況を継続することを優先する

たとえば母親が子どもを連れて実家に帰っている場合のように、片方の親が主に子どもを監護している状況にある場合は、子どもが虐待されている・強い拒絶意思を示すなどの事情がない限り「現状を維持する方向」で親権者を定めます(現状維持の原則)。

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4. 子どもが親権者を選べる年齢はあるのか

親権者の定めを裁判所が行う場合、子どもの意思はどの程度考慮されるでしょうか。また、子どもの意思が優先的に考慮される年齢基準はあるでしょうか。

4-1. 10歳以下の場合は母親が親権者に指定されやすい

子どもが10歳以下である場合は、一般的に母親の方が監護に適しているという観点から、母親が親権者に定められる可能性が高くなります(母性優先の原則)。

これは、未成年の子どもが複数いて末子だけが10歳以下である場合も含まれます。

4-2. 10歳以上の場合は子どもの意思を尊重する

子どもが15歳以上の場合は、監護に関する手続に際して法律上子どもの意思を確認しなければなりません(家事事件手続法第152条2項)。

審判手続では、15歳以上の子どもの意向確認が義務づけられています。

また、調停を含めた裁判所の実務上では、10歳以上の子どもに対しては本人の意見を聞いてその意向を尊重することになっています。

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5. 親権者を決める手続きの流れ

親権者を決める手続きは、以下の流れで行われます。

5-1.離婚協議で親権について話し合う

まず、離婚協議の中で、親権について話し合いを行います。

親権者をどちらにするかの取り決めを含めて、財産分与・養育費・面会交流・慰謝料(不貞行為やDVなどがあった場合)など全ての協議事項について合意が成立した場合には、離婚協議書を作成した上で役所に離婚届を提出します。

離婚届が受理されれば、離婚が成立して親権者も確定します(民法第765条・第819条1項)。

5-2.調停で親権者指定の話し合いを行う

協議事項の一部または全てに合意が成立しなかった場合は、離婚を求める側が家裁に離婚調停を申立てます(家事事件手続法第255条1項)。

調停では、夫婦が(原則として)同じ期日の別々の時間帯に調停室に入り、調停委員に対して主張を行います。調停委員は、助言や提案を行いながら双方の主張を聞いた上で調停案を作成します。

親権についても、双方の主張を聞いて、それぞれの事情を考慮した上でどちらを親権者とするか、親権者と監護権者を分けるかなどの案を作成します。

調停案の内容について双方が合意した場合には、調停離婚が成立します。これにより親権者も確定します(家事事件手続法第268条1項)。なお、財産分与など一部の事項についてのみ合意が成立しなかった場合は、合意が成立したそれ以外の事項について調停が成立します(同条2項)。

ただし、離婚の際には親権者を定めることが必要であるため(民法766条、819条)、親権について合意が成立しない場合に離婚の調停を成立させることはできません。

5-3.審判または訴訟で家裁が親権者を指定する

調停が不成立になった場合は、原則として離婚訴訟(民法第770条1項)で裁判所が親権者を指定します。

また、調停での状況によって裁判官が職権で審判手続に移行する場合もあります。

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6. 親権争いを弁護士に相談、依頼するメリット

本章では、親権争いについて弁護士に相談したり、親権交渉の代理を弁護士に依頼するメリットを解説します。

6-1.協議での親権交渉を依頼できる

離婚時の夫婦間の話し合いで親権者を決めることができれば、調停や訴訟に移行する必要なく解決できます。

しかし、協議での交渉の時点で弁護士に依頼する方は多くありません。逆にいえば、弁護士に代理を依頼するだけで、交渉を有利に進めることができます。

協議での親権の話し合いでは「自分の方が親権者に適している」ことを説明するときに感情的になりがちです。相手の子どもへの関わり方について非難の応酬になることも少なくありません。

弁護士に親権交渉を依頼することで、相手の主張もしっかり聞きながら、的確な根拠に基づいて冷静に主張を行うことができます。

6-2. 調停・訴訟での親権主張も任せられる

協議で親権について合意できなければ、離婚を求める側が調停申立てを行います。調停でも合意が成立しなければ、原則として訴訟に移行します。

調停や訴訟などの裁判所が関わる手続を行うためには、まず多くの書類を準備しなければなりません。

最初に行う調停の申立てにあたっても、申立書を始め、連絡先などの届出書、事情説明書、進行に関する照会書などを作成する必要があります。

仕事や住居確保・引越しなどの作業、子どもの世話などで忙しい中で、これを本人だけで行うのは困難です。

また、調停期日では、自分のほうが親権者に適していることを客観的な根拠や証拠に基づいて主張する必要があります。

弁護士に代理を依頼することで、書類作成もすべて任せることができます。また、依頼者の有利になる証拠や状況があるかを入念に調査して、裏づけを行った上で主張を行うことができます。

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7. 親権争いに関するよくあるQ&A

本章では、親権争いに関して頂くことが多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

7-1. 男性が親権を獲得する確率はどのくらいですか?

厚生労働省の「令和4年度『離婚に関する統計』の概況」p35 11-1表によると、2020[R2]年の国内の離婚件数(193,253件)のうち、親権に服する子どもがいる離婚件数(111,335件)の中での「夫が全児の親権を有する」割合は11.8%(13,126件)となっています。

また、未成年の子どもが複数いる場合で、夫・妻がそれぞれ1人以上の子どもの親権者になったケースが3.5%(3,918件)あります。

従って、このデータ上は、男性が親権を獲得した割合は15.3%となります。

参考:厚生労働省|「令和4年度『離婚に関する統計』の概況』(p35 11-1表より)

7-2. 離婚後に親権者の変更が認められることはありますか?

民法第819条6項は、「子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる」と定めています。

従って、別居親やその両親が家裁に調停又は審判を申し立てて、親権変更を認める旨の調停案が合意に達するか、審判事項が確定した場合には、親権者変更が認められます。

この規定は、子どもの利益に資することを目的とした強行法規であると解されています(東京高等裁判所1953[S28]年10月2日判決)。

このため、仮に離婚協議書に「別居親が親権者変更の申し立てをしない」旨の記載をして公正証書として作成したとしても、その記載は無効です。

7-3. 不倫が原因で離婚する場合、不倫していた側が親権者になれる可能性はありますか?

結論から申し上げれば、親権者になれる可能性はあります。

この問題について、特に男性の相談者様から「妻が不倫していたので離婚して子どもの親権も取りたい。しかし、子どもがまだ小さいことを理由に妻が親権を主張している。こちらが親権を取るにはどうすればよいか」というご相談を頂くことが時々あります。

不倫が原因で離婚する場合、不倫していた側は離婚を求める側に対して慰謝料支払義務を負い、その他の条件でも不利になりやすいです。

しかし、このような場合も、親権者については「子どもの利益」を最優先に考えることになります。

従って、子どもの母親が不倫していたことのみを理由として、父親が親権者になれるわけではありません。

特に、子どもが幼い場合は、母性優先の原則により母親に親権が認められやすいのが事実です。

母親の不倫が原因で離婚する場合も、父親が親権者になるためには、以下の事情が認められることが必要です。

  • 母親が子どもを虐待していた・不倫相手の男性が子どもを虐待するおそれがあるなど、母親が親権者になることが明らかに子どもの利益に反すると考えられる事情があること
  • 父親が十分な養育環境と、養育の意思を示していること

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8. まとめ

離婚に際しては、夫婦の双方が「離婚したいが、子どもは手放したくない」と思っていることが多いために、親権者についての協議がしばしば難航します。

自分が親権者に適していることを主張する上で、離婚問題に精通する弁護士に相談することによって有利な証拠や証言を得たり、調停で説得力のある主張を行うための助言を受けることができます。

「親権で揉めている」「不倫した配偶者に親権を取らせたくない」など、親権の問題についても、離婚を専門とする弁護士に相談することをおすすめします。

私たち法律事務所リーガルスマートは、離婚・男女問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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