親権・養育費
養育費はいつまで?相場やトラブル対処法などを弁護士が解説!
子が居る夫婦が離婚する際に解決すべき金銭の問題の一つに養育費があります。
成人年齢が18歳に引き下げられる一方、大学を卒業するのが一般的となりつつある現在、養育費は一体いつまで支払うべきなのか?ということでトラブルになることがあります。
本記事では、養育費はいつまで支払うべきなのか、支払う場合の相場や、トラブルとなった場合の対処法について離婚・男女問題に強い弁護士が解説します。
目次
1.そもそも養育費とは
養育費とは、子ども(未成熟子)の監護や教育のために必要な費用のことをいいます。
子どもが社会的に独立して自立できるようにするためには、親による養育が欠かせません。
婚姻している場合には一緒に生活をしている父母がいるわけですが、離婚して別居をするようになると、子どもは一方の親と暮らすことになります。
離婚をして別々に暮らすようになっても親子であることは変わらないので、子どもを養育する義務として、子どもを監護している一方の親に対して支払うのが養育費です。
民法752条は家族の生活を保持する義務を定めており(生活保持義務)、養育費は、この生活保持義務の理念の下で、民法766条の「子の監護に要する費用」を根拠に認められるものです。
養育費の支払いをする側のことを養育費義務者、養育費の支払いを受ける一方の親のことを養育費権利者といいます。
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2.養育費はいつまでもらえるのか
養育費はいつまでもらえるのでしょうか。
2-1.養育費はいつまでもらえるのか
養育費をいつまでもらえるのかについて、法律では未成年者・18歳・20歳などの明確な数字を示していません。
養育費の支払いはいつまでもらえるのかについては、養育費支払いの趣旨から考えることになります。
養育費は上述したように、子どもが社会的に自立をするために必要とされるものです。
そのため、養育費をいつまでもらえるのかは、子どもの社会的な自立にいつまで養育費が必要なのかによって決められます。
2-2.20歳以上となるケース
20歳以上まで養育費の支払いが必要となるケースとして挙げられるのが、次の2つです。
- 大学に進学する
- 病気や怪我が原因で20歳を超えても社会的に自立ができない
それぞれのケースで養育費がどのようになるか確認しましょう。
(1)子が大学に進学するときの養育費
まず、大学に進学する場合、4年制大学を浪人・留年せずに卒業する場合には22歳となります。
離婚時に子どもの大学への進学を親が望んでいる場合や、両親の学歴・経済状況に照らして大学に進学する可能性が高いと認められる場合には、20歳を超えて養育費の支払いをもらえます。
なお、養育費の取り決めをする際には、大学に進学しなかった場合、浪人した場合、留年した場合には養育費の支払いをしないことを条件とすることもあります。
(2)子が病気や怪我が原因で20歳を超えても社会的に自立ができない
子が病気や怪我が原因で20歳を超えても社会的に自立ができないような場合に20歳を超えても養育費をもらえることがあります。
一時的に病気をしていたことが原因で進学が遅れたり、就職ができない場合のほか、障害を抱えていて自立できるほどの就業ができないなど、一般的、社会的に養育費をもらって暮らしていくことがが許容されている場合です。
2-3.20歳未満となるケース
以上のような事情がない限り、養育費は20歳未満までしかもらうことはできないでしょう。
- 高校を卒業して就職して自立できるようになった
- 18歳以降の養育費の支払いに合意していない場合
- 本人が大学進学をしない
- 養育費の支払いが不要となった
- 養育費を支払える状況ではなくなった
こちらもケース別に詳しく確認してみましょう。
(1)高校を卒業して就職して自立できるようになった
高校を卒業して就職して自立できるようになった場合には、その後に養育費の支払いは不要です。
そのため、高校を卒業して就職したような場合には、養育費は20歳未満でももらえません。
(2)18歳以降の養育費の支払いに合意していない場合
上述したように、18歳・20歳を超えて養育費の支払いをしてもらえるのは、基本的には子が病気や怪我で自立していないような場合や、大学に進学する場合です。
そのため、両親ともに経済的状況に恵まれておらず、高校までしか卒業をしていない場合、大学卒業するまでの養育費は認められないことがあります。
その結果、養育費は18歳までしかもらえず、20歳まで、20歳を超えてもらうことができないでしょう。
(3)本人が大学進学をしない
大学卒業までの養育費の支払いに合意していた場合で、本人が大学に進学せずにニートでいるような場合には、それでも養育費の支払いをする旨の合意がない限り養育費の支払いがされなくなる可能性があります。
(4)養育費の支払いが不要となった
養育費の支払いが不要となったような場合にも、養育費の支払いがされなくなります。
例えば、親権者が再婚をした場合、法律上は新しい配偶者は養育についての義務はありませが、家族として養育をしてくれることはあります。
このような場合、子の養育についての問題がなくなるので、養育費を減額してもらったり免除してもらうことができ、これによって養育費の支払いがされなくなることがあります。
(5)養育費を支払える状況ではなくなった
養育費を支払える状況ではなくなってしまった場合には養育費をもらえなくなります。
養育費も支払う人にある程度の収入があることが前提で、例えば義務者が怪我や病気・勤務先が倒産するなどして失職した場合で、十分な貯蓄もないような場合には、養育費の支払いができなくなります。
このような場合には、養育費の減額・免除を要求されることがあり、これによって養育費を支払ってもらえなくなる可能性があります。
(6)成人年齢18歳へ引き下げの影響
従来は養育費の支払いについて20歳までとすることが多かったのですが、これは民法に規定されている成人年齢が20歳であったことが原因です。
この成人年齢は2022年4月1日に施行された現在の民法から、18歳に引き下げられています。
そのため、従来成人年齢までとして、20歳を想定して養育費の支払いをしていたものが、18歳までで良いのかということが問題になりました。
この問題について法務省は、「成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について|法務省」において、次のように示しています。
平成30年6月13日に民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立したことに伴い,このような取決めがどうなるか心配になるかもしれませんが,取決めがされた時点では成年年齢が20歳であったことからしますと,成年年齢が引き下げられたとしても,従前どおり20歳まで養育費の支払義務を負うことになると考えられます。 また,養育費は,子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものなので,子が成年に達したとしても,経済的に未成熟である場合には,養育費を支払う義務を負うことになります。このため,成年年齢が引き下げられたからといって,養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。
成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について|法務省
つまり、法律が改正され、成人の年齢が18歳になっても、経済的に未成熟であれば従来の取り決め通り支払う義務があるとしています。
そのため、法改正による成人年齢の引き下げと、養育費の支払いには大きな関係は無いといえるでしょう。
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3.再婚した場合の養育費はいつまでなのか
上述したように、養育費の支払いをしているときに、夫婦が再婚することがあります。
これにより夫婦・子どもを巡る経済的事情に変化が生まれるので、養育費が変更することもあります。
3-1.支払う側が再婚した場合
養育費を支払う側が再婚した場合、再婚相手との間でも民法752条の生活保持義務を負います。
そのため、養育費として支払える額にも影響があり、具体的に支払える額が下がることになります。
3-2.受け取る側が再婚した場合
一方で受け取る側が再婚した場合にはどうなるのでしょうか。
再婚をしたとしても、新たな配偶者と子の間に当然の親子関係が生まれるわけではありません。
ただし、再婚相手と一緒に暮らすことで、生活に必要となる費用が少なくなる場合も多いでしょう。
また、再婚相手と養子縁組をすることで、再婚相手に養育する義務が発生するため、養育費の支払いを必要としなくなります。
そのため、養育費の減額や養育費の支払いが終了することとなる可能性があります。
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4.養育費の相場
養育費としてもらえる額の相場はいくらくらいなのでしょうか。
4-1.養育費の決め方
前提として、養育費の決め方について確認しましょう。
協議離婚をする場合、養育費についても当事者で合意ができれば当事者の合意した金額で支払うことになります。
当事者で養育費の額に合意ができない場合には、家庭裁判所での調停によってまず合意を目指し、調停で合意ができない場合には家庭裁判所の審判によって決定することになります。
後述しますが養育費には相場があり、調停や審判では基本的に養育費の相場によって決まることになります。
なお、協議離婚において養育費を決めないで離婚だけをすることも可能です。
4-2.離婚調停・離婚審判・離婚裁判
協議離婚で離婚ができない場合には、離婚調停・離婚審判・離婚裁判によって離婚を行います。
これらの手続きで離婚を行う場合は、財産分与・慰謝料といった他の金銭問題と一緒に養育費の支払いについても解決することになります。
この際にも、養育費の相場に基づいて養育費の支払い額を決めることになります。
4-3.養育費の額の算定方法
養育費の額はどのように算定するのでしょうか。
養育費の根拠は、上述したように民法752条の生活保持義務にあります。
そのため、子どもにどのような生活をさせるのが適切かは、両親の生活水準によることになります。
いくら子どものためとはいえ、親の生活を犠牲にしてまで贅沢な暮らしをさせなければならないというわけではなく、双方が同じような生活水準で暮らせるように養育費の額を算定することになります。
そして、養育費の額として実務上は、東京及び大阪の家庭裁判所に所属している裁判官による司法研究の結果として、養育費・婚姻費用の算定表を公表しており、調停や審判・裁判ではこの算定表をもとに計算されます。
そのため、養育費の相場を知りたい場合には、養育費・婚姻費用算定表に基づいて計算します。
4-4.養育費・婚姻費用算定表の使い方
養育費・婚姻費用算定表は、裁判所の次のホームページで閲覧することができます。
平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所
いくつか表があり、養育費について表1から表9のどれかで計算を行います。
夫婦に子が何人いるか、子が何歳かによって利用する表が異なるので、自分に該当する表を探しましょう。
表では養育費義務者と養育費権利者の収入(自営業者・給与所得者)に応じていくらが養育費となるのかが表示されています。
例えば、子どもが1人で15歳以上の場合(表9)の場合、養育費義務者の給与所得が1,000万円、養育費権利者の給与所得が200万円であるとすると、月の養育費は12万円~15万円が相当であることになります。
この金額の中で個々の事情をさらに精査して、毎月の養育費を決めることになります。
4-5.全国ひとり親世帯等調査による結果
個々の養育費は上述したように養育費・婚姻費用速算表によって計算されますが、統計として、厚生労働省が行っている「全国ひとり親世帯等調査」で、養育費の平均額が発表されています。
最新の令和3年の全国ひとり親世帯等調査では、全国ひとり親世帯等調査による結果、養育費の平均は母子世帯の場合で50,485円、父子世帯の場合で26,992円となっています。
母子家庭である場合のほうが、養育費が毎月3万円以上も多くなるという調査結果となっています。
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5.一度決めた養育費の支払い期間や額の変更は可能か
養育費について一度決めた支払い期間や、毎月の額の変更は可能なのでしょうか。
5-1.養育費の支払い期間や額の変更は可能
一度養育費を決めた場合でも、長い期間が経過する中で当事者の収入や経済状況に変化が生まれることがあります。
仕事を退職したような場合には収入が無くなってしまいますし、転職などによって収入が増えることもあります。
また、上述したように、再婚によって当事者の経済的状況に変化が生じることも。
そのため一度決めた養育費の支払い期間や額について、変更することは可能です。家庭裁判所に養育費の減額、増額を求めて調停、審判の申立てを起こすこともできます。
5-2.養育費の支払い期間や額を変更する場合の手続き
養育費の支払い期間や額を変更する場合、一方的に変更するのではなく、まず当事者で協議を行います。
当事者の協議で養育費の変更に合意できない場合には、養育費の変更調停の申し立てを行い、調停でも合意できない場合には家庭裁判所で養育費の変更審判を行います。
一方的に変更を主張して減額・支払わないような場合には、養育費の支払い義務の未履行ということになりますので注意しましょう。
6.養育費の支払いを勝手に終了された際の対処法
養育費については途中で支払いを一方的に終了されるケースがあります。
このような場合にはどうすれば良いでしょうか。
6-1.明確に決まっていない場合には養育費請求調停を行う
まず、養育費について明確に支払いについて定められていない場合には、養育費として支払う内容を確定するために、養育費請求調停を行います。
調停で合意できれば合意内容の履行を求め、調停で合意できない場合には審判で養育費の内容を確定してもらいます。
なお、養育費の支払いについて合意をしている場合で、養育費の請求について公正証書にしている場合には、公正証書で後述する強制執行が可能です。
6-2.相手の財産に対して強制執行を行う
養育費請求調停や養育費請求審判、公正証書を作成している場合には、養育費の支払いをしない相手の財産に対して強制執行をおこない、養育費の回収を行います。
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7.未払い養育費の請求期間について
未払い養育費を請求し、実際に受け取ることができるまでの期間はどのくらいかかるのでしょうか。
7-1.養育費請求調停が終わるまでには半年程度かかる
養育費請求調停が終わるまでには一般的には半年程度かかるといわれています。
養育費請求調停は、裁判所で期日が定められ、その期日に当事者が出頭します。
その期日に合意ができなければ1ヶ月~1ヶ月半くらいの期間をあけて次の期日が開かれ、合意ができるまで1ヶ月~1ヶ月半程度の期間を置いて期日が開かれます。
期日としては3回~6回程度が一般的で、養育費請求調停が終わるには半年程度かかるといわれています。
7-2.養育費請求審判は1ヶ月~2ヶ月程度で結論が出る
養育費請求調停で合意ができず、審判に移行した場合1ヶ月~2ヶ月程度の期間がかかります。
審判は家庭裁判所が一方的に判断を下すことになっており、調停で示された当事者の意見や証拠などをもとに裁判所が判断するため、調停と比較すれば早く終ります。
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8.養育費に関するトラブルを弁護士に相談、依頼するメリット
養育費に関するトラブルを弁護士に相談・依頼するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか
8-1.養育費をスムーズに回収することができる
養育費をスムーズに回収することができます。
養育費については、内容が決まっていない場合には調停や審判を起こして支払いを求めることになります。
また、調停・審判・公正証書を用いて相手の財産に強制執行するのですが、この場合に相手の財産を特定する必要があります。
相手の財産を特定できない場合、弁護士照会という制度を利用することによって、銀行口座等を知ることができる場合があります。
手続きを任せて、どのような財産があるかの調査がスムーズで、養育費を回収する時間を短縮することができます。
8-2.他の問題についても併せて検討できる
離婚をする場合には養育費のほかにも、親権・面会交流・慰謝料・財産分与など、様々な事項について問題となります。
養育費の他にもこれらが問題となっていることも多く、本来は慰謝料や財産分与を受けることができるにも関わらず、慰謝料の問題にこだわりすぎて請求をしていないということもあります。
弁護士に相談・依頼をすることで、養育費だけではなく、離婚においてトラブルになっているものをまとめて解決することが可能です。
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9.養育費の期間に関するよくあるQ&A
養育費の期間に関するよくあるQ&Aには次のようなものがあります。
9-1.浪人や留年した場合には養育費を減らせる?
大学卒業まで養育費を支払う合意をしているような場合に、浪人をしたり留年をした場合に養育費を減らせるのでしょうか。
大学に進学する気もないのに浪人しているとしたり、留年をして真面目に学校にいかないことで、養育費を受け取って楽をしようというような場合も発生しえます。
そのため、浪人や留年をした場合に養育費を減らす・支払いを止めることも可能です。
この場合、浪人や留年をした場合に、養育費をどうするかについてもきちんと書面に記載するようにしましょう。
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10.まとめ
本記事では養育費の期間や相場などについて解説しました。
親の生活水準や教育水準・収入に応じて、養育費を支払う期間や額は異なります。
ケースバイケースで考えることになるので、まずは弁護士に相談してみましょう。
私たち法律事務所リーガルスマートは、養育費に関するトラブルをはじめとする離婚・男女問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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