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子なし夫婦が離婚するよくある理由や慰謝料などを弁護士が解説!
ライフスタイルの多様化とともに、夫婦の間に子どもがいないことも増えました。
夫婦に子どもがいない場合、離婚にあたっては、親権や養育費・面会交流についての取り決めが不要になるのですが、他になにか注意点はあるのでしょうか。
そこで本記事では、子なし夫婦の離婚については、どのような理由で離婚に至るのかその理由や、慰謝料などの問題について、離婚・男女問題に強い弁護士が解説いたします。
目次
1.子どもがいない夫婦が離婚を考える主な理由
子どもがいない夫婦が離婚を考えるのはどのような場合でしょうか。
1-1.子どもが欲しい
子どもがいない夫婦が離婚を考える理由の一つとしては、子どもが欲しいため離婚をして別の配偶者と結婚をしたい、ということが挙げられます。
不妊・セックスレスなどで、子どもができないことに不満を持つ人は多いです。
年齢があがるごとに出産や子どもの健康に影響する可能性があり、早めに離婚をしてやり直したいと考えることがあります。
1-2.性格の不一致
子どものいない夫婦では夫婦で過ごす時間がそれだけ増えます。
また、子どもがいる場合には、子どもを介した家族のコミュニケーションなども増えますが、子どもがいない場合コミュニケーションは夫婦のみになります。
子どもができない、子どもを作らないと決めてある、いずれの場合でも共に過ごす時間が増える中で性格の不一致があるような場合には、離婚を決断するきかっけになりやすいといえます。
1-3.DVやモラハラの被害にあっている
DVやモラハラの被害にあってる場合、子なし夫婦ではより離婚を考えるきっかけになるでしょう。
DVやモラハラの被害にあっている場合でも離婚しない夫婦の動機として非常に強いのが子どもの存在です。
子どもを抱えて母子家庭・父子家庭で生きていく自信がないことから、やむなく我慢をしていることが多いです。
子なしである場合DVやモラハラの被害にあっている場合には、子どものために我慢しようと我慢する必要がないため、離婚を考えやすいといえます。
1-4.結婚後の夫婦の変化
結婚後の当事者の変化が理由で離婚を考えることがあります。
結婚をして年を重ねていくと、夫婦もそれぞれ変化することになります。
体型が変わる、毛髪が薄くなるなどの変化をする中で、一緒にいる時間が長いと、従来のように二人でずっと暮らしていくという気持ちが薄れます。
子どもが居ない以上、その相手とずっといることに我慢できなくなってしまい、離婚に至ることがになります。
1-5.周りの干渉
子なし夫婦が離婚する理由に、双方の親など周りの干渉があることがあります。
例えば家が代々家業をしているような場合で、生まれてくる子どもにも家業を継いで欲しいという希望が夫婦本人たちだけではなく、夫婦双方の親にもあることがあります。
このような場合に、周囲が子どもをつくることに干渉してくることがあったり、中には子どもを作らないことに対して辛辣な態度をとる人もいます。
その結果、夫婦としての関係を保てず、離婚することがあります。
2.子なし夫婦が離婚するメリット
子なし夫婦の離婚のメリットには次のようなものがあります。
2-1.子どもが居るを理由に離婚を思いとどまる必要がない
子なし夫婦が離婚するメリットとして、子どもが居ることを理由に離婚を思いとどまる必要がないことが挙げられます。
子どもができてからの離婚では、子どもを養育するために必要な費用や、一人で育児をしなければならない、離婚によって子どもの成長に影響を与えてしまうのでは、というという不安から、離婚に踏み切れないことも多いです。
子なし夫婦であれば、このようなことに悩まずに離婚が可能です。
2-2.親権・養育費・面会交流などの問題が発生しない
子なし夫婦が離婚をする場合には、離婚をする際に親権・養育費・面会交流などの問題が発生しないというメリットもあります。
子どもがいる場合には、離婚の際に親権を必ず決めて離婚届に記載しなければなりません。
また養育費・面会交流が争いになることもあります。
子なしで離婚する場合には、親権・養育費・面会交流などの取り決めをする必要がないので、比較的スムーズに離婚をすることができます。
2-3.再婚の可能性が高くなる
子なし夫婦が離婚をする場合には、再婚の可能性が高くなるというメリットがあります。
子どもができてから離婚をした後は、子の養育をする側は子どもを養育しながら再婚をすることになり、一方は養育費の支払いをしながら再婚をすることになります。
いずれの場合でも再婚をするのに障害となることは避けられません。
子どもがいないときに離婚したほうが、再婚の可能性は高くなるといえます。
2-4.元配偶者の両親との関係を断つことができる
子なし夫婦が離婚をする場合には、元配偶者の両親との関係を断つことができます。
子ができてしまうと、子にとって祖父母という立場となる元配偶者の両親との関係を断つことができない場合があります。
元配偶者との両親との折り合いが悪いような場合には、子どもがいることで関係を継続せざるを得ないことになります。
子どもがいないときに離婚した場合には、元配偶者の両親と関係を継続する必要がありません。
3.子なし夫婦が離婚するデメリット
子なし夫婦が離婚するデメリットには次のようなものがあります。
3-1.離婚後に一人で暮らさなければならない
離婚後に一人で暮らさなければならないというデメリットがあります。
子どもがいることは負担になることもありますが、子どもの存在が励みになることもあります。
離婚して一人で暮らす場合には、一人で生活することになるので、子どももパートナーもおらず寂しいということがデメリットとなります。
3-2.老後も独り身で生活する必要がある
老後も独り身で生活する必要があるのもデメリットです。
もし再婚する・再婚して子どもを生むということがなければ、一人暮らしをする必要があります。
とくに熟年離婚といわれるような夫婦が離婚をする場合には、頼る子がいなければ老後も独り身で生活する必要があり、なにかあった場合に助けてくれる人がいないという事態に陥りかねません。
4.子なし夫婦が離婚を決めた際に確認すること
子なし夫婦が離婚を決めた際に、どのようなことを確認して、必要な行動を起こさなければならないのでしょうか。
4-1.離婚原因の有無
離婚原因の有無を確認しましょう。
離婚を求めても合意に至らない場合、離婚調停を経て最終的には離婚裁判の提起が必要です。
しかし、離婚裁判の提起には、離婚原因(民法770条1項)が必要です。
不貞行為(1号)や悪意の遺棄(2号)といった事情があるのか、これらの事情がない場合でも実質的な夫婦関係の破綻を意味する「婚姻を継続しがたい重大な事由」(5号)に該当する場合もあります。
相手が離婚に合意する見込みがない場合には離婚原因の有無を確認しましょう。
4-2.証拠の有無
離婚原因や慰謝料請求をするにあたって証拠がきちんと揃っているかどうかを確認しましょう。
相手が離婚に合意しない場合の離婚裁判においては、事実を主張してこれを証拠で証明する必要があります。
証拠は離婚の交渉をしはじめてからでは取得が難しいです。
例えば、不倫の場合には、相手が不倫相手とすぐに連絡をとり、離婚が成立するまで会わない、不倫を疑わせるような証拠を隠滅するなどが考えられます。
これによって不倫はなかったとして離婚原因や慰謝料を否定されることになりかねません。
証拠がきちんと揃っているか、どのような証拠を揃える必要があるのかをしっかり確認しましょう。
4-3.相手の財産について
相手の財産について確認をしておきましょう。
財産分与は、夫婦共有財産を分けるものですが、夫婦共有財産とされるべきものを、離婚するからと夫婦の一方が隠してしまうことがあります。
また、相手が慰謝料・財産分与の支払いをしない場合には、相手の財産を特定して強制執行を行う必要があります。
財産分与の基礎となる財産を隠匿していないか、支払いをしない場合に差し押さえが可能かなどを確認しておきましょう。
4-4.離婚後の生活に無理がないか
離婚した後は独力で生活をする必要があります。
離婚直後には転居などで費用がかかったり、一人で仕事を始めると食事を作る余裕がなくお弁当を購入するなどで出費が増えることもあります。
離婚後の生活に無理がないか、もし独力での生活が難しい場合には、行政などの援助を受けられないかを確認しておきましょう。
5.子なし夫婦が離婚する際のタイミングや切り出し方について
子なし夫婦が離婚をする際に適切なタイミングはどのような場合があるでしょうか。
また、その際の離婚の切り出し方はどうすれば良いでしょうか。
5-1.DVが日常的になっている場合には今すぐ離婚を検討
まず、DVが日常的になっている場合には今すぐにでも離婚を検討しましょう。
準備が十分に整っていない場合でも、役所や警察に相談をすれば、一次避難用のシェルターを用意してもらえます。
怪我をした場合にきちんと病院にかかって診断書を出してもらえるようにしておいたり、最低限の証拠収集が済めば、特に相手に断る必要なく用意してもらったシェルターに移るべきです。
5-2.何がなんでも子どもが欲しい場合にはなるべく早く
何がなんでも子どもが欲しい場合には、なるべく早く離婚を検討しましょう。
子どもを作る場合には、どうしても年齢を重ねると出産・生まれてくる子どもの健康に対するリスクが大きくなります。
早めに離婚をして、新しいパートナーを探すのが良いでしょう。
離婚の切り出し方としては素直に子どもが欲しいと伝えることも重要です。
5-3.相手に落ち度がある場合
相手が不倫をしている・モラハラをしている・相手が原因でセックスレスであるという場合には、しっかり証拠や相手の財産を把握するようにしましょう。
これらの場合、相手が離婚を拒否した場合でも、離婚原因があるとして離婚を請求し、かつ離婚にあたっては損害賠償の請求をすることができます。
ただし、離婚の請求・損害賠償請求がうまくいくかは、どれだけ証拠をもっているかによります。
また、財産分与の請求のために、夫婦共有財産を把握している必要がありますし、慰謝料・財産分与の支払いを拒む場合には、裁判を起こした上で強制執行をする必要があります。
証拠や相手の財産に関する情報が不可欠なので、これらがきちんと揃ってから離婚をするための具体的行動を起こすことになります。
離婚を切り出す場合には、落ち度に関する証拠を示して離婚をしたいことを切り出すと良いでしょう。
6.子なし夫婦の離婚の慰謝料相場
子なし夫婦の離婚の慰謝料の相場はどの程度でしょうか?
6-1.子どもができないことが原因で離婚する場合に慰謝料は発生しない
まず一方が原因の不妊で子どもができないことが原因で離婚する場合でも、基本的には慰謝料請求権は発生しません。
慰謝料は一方の故意・過失を原因とする他方の権利・法律上保護するに値する利益を侵害したことを理由として、その精神的苦痛に対して支払われるものです。
一方が不妊であるとしても、これをもとに他方の権利や法律上保護に値する利益を侵害するとまではいえず、慰謝料を請求することはできないと考えられるからです。
6-2.相手に落ち度がある場合には50万円~300万円程度
相手が浮気をした、セックスレスとなった、モラハラ・DVなど相手に落ち度があって離婚をする場合には慰謝料の請求が可能です。
慰謝料の請求については、どのような落ち度があるのか、夫婦の状況などの事情を総合考慮して決められ、その相場は50万円~300万円程度です。
ただ、具体的な金額はケースバイケースとなるので、慰謝料として請求できる額がどのくらいになるのかは、弁護士に相談してみることをお勧めします。
7.離婚するときに必要な書類や流れ
離婚する時に必要な書類を、離婚の流れとともに確認しましょう。
7-1.離婚の流れ
離婚する場合の流れは次の通りです。
(1)離婚協議
夫婦で離婚についての協議を行います。
離婚をすることについて合意ができた場合には、離婚届を市区町村役場に提出して離婚します。
この際に他の慰謝料・財産分与について決まっている必要はありません。
ただ、離婚後には連絡が取りづらくなってしまい、慰謝料・財産分与の交渉が難航することも考えられるので、できる限り慰謝料・財産分与についても協議の段階で決めておきましょう。
(2).離婚調停
当事者で合意ができない場合には、法的手段で離婚を行います。
法的手段としてよく知られる裁判を起こす前に、離婚調停によって当事者で離婚について話し合うことになっています。
離婚調停とは、離婚について取り扱う調停のことで、裁判官と民間人から選任される調停委員2名が夫婦の間に立って、双方の意見や主張を聞きながら、法的にも妥当な解決を目指します。
離婚調停で離婚に合意すれば、ただちに離婚したことになりますが、戸籍への届け出のために離婚届あるいは調停調書の提出を行います。
(3).離婚裁判
離婚調停でも離婚に合意できなかった場合には、離婚裁判を起こします。
離婚裁判では、裁判所が判決という形で離婚をするしない、慰謝料・財産分与といった問題について判断し、当事者はこれに拘束されます。
これによって離婚問題は最終的な解決となります。
裁判で離婚をすると判断された場合には、離婚をしたことになりますが、同じく戸籍の届け出のために判決書を役所に提出します。
7-2.離婚をするために必要な書類
離婚をするために必要な書類は次の通りです。
- 離婚届
- 持参した人本人の身分証明書
- (調停離婚の場合)調停調書
- (裁判離婚の場合)判決書・和解調書・認諾調書
- 戸籍謄本(本籍地ではない市区町村役場に提出する場合)
これらの書類は離婚届を窓口に提出するときに必要となります。
8.子なし夫婦の離婚を弁護士に相談、依頼するメリット
子なし夫婦が離婚をする場合に離婚を弁護士に相談・依頼するメリットには次のようなものがあります。
8-1.法的問題についてのアドバイスを受けることができる
法的問題についてのアドバイスを受けることができます。
子なし夫婦が離婚をする場合、離婚原因はあるのか、慰謝料・財産分与として請求できる費用はいくらなのか、などの法的問題に直面します。
とくに慰謝料が発生する場合の慰謝料の相場については、離婚原因や夫婦の状況ごとにケースバイケースであり、類似の事案や過去の判例などの蓄積がなければ容易に判断ができません。
弁護士に相談・依頼すれば、法的問題についてのアドバイスを受けることができます。
8-2.相談をして気が楽になる
弁護士に相談することで気が楽になるというメリットもあります。
子どもができないため離婚をしたい、というような主張は、当事者の関係や周囲との関係次第では強い非難を浴びるようなこともあるでしょう。
また子どもができない状況で周囲から常に何か言われているような場合もあります。
離婚をするような場合に周りに相談できず、日々を送ることも珍しくありません。
弁護士に相談することだけでも気が楽になることが期待できます。
弁護士には守秘義務があるので、周りに知られることなく、相談をすることが可能です。
8-3.依頼をすれば相手との交渉や法的手続きを任せることができる
依頼をすれば相手との交渉や法的手続きを任せることができます。
例えばモラハラタイプの相手であるような場合には離婚の交渉を上手く進められないこともあったり、DVを行うようなタイプの場合には交渉自体で身に危険が迫ります。
離婚の交渉は、離婚についての法的知識を前提に、相手との交渉をすることになるので、知識とスキルが必要です。
弁護士に依頼まですれば、相手との交渉を任せることができます。
また、調停や裁判のような法的手続きを行う際には、調停委員とのやりとりや、裁判書類の提出など、手続きにおける難しいポイントがあります。
弁護士に依頼すれば、法的手続きも任せることができるので、こういった手続きの煩雑さから開放されます。
9.子なし夫婦の離婚に関するよくあるQ&A
子なし夫婦の離婚に関しては次のような質問があります。
9-1.子どもができないというだけで離婚を請求できますか
子どもができないことだけで離婚を請求できるのかを検討しましょう。
当事者が合意で離婚する場合や、離婚調停で合意をする場合には、子どもができないことを理由とすることは否定されていません。
問題は、相手が拒否している場合に、子どもができないことを理由に離婚の裁判を起こすことができるか、です。
離婚裁判を起こすためには民法770条1項に該当する離婚原因があることが必要で、子どもができないことは離婚原因として規定されていません。
しかし、民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する場合であれば離婚が可能です。
子どもができないことや、その他夫婦に関する事情一切を判断して、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるといえる場合には、離婚原因ありと判断され、離婚を請求できます。
9-2.弁護士には無料で相談が可能か
弁護士に相談する場合には通常30分5,000円程度の相談料が必要です。
しかし、法テラスや市区町村の法律相談を利用すれば、無料で相談をすることができます。
また、弁護士の中には相談を無料で受けている弁護士もいるので、相談をしてみましょう。
法律事務所リーガルスマートでは初回60分無料の法律相談を承っているので、お気軽に利用してみてください。
10.まとめ
本記事では子が居ない夫婦が離婚することについてその理由や離婚の慰謝料などの問題についてお伝えしました。
子がいないことで離婚する場合には、離婚しやすいというメリットがあるものの、相手が拒む場合には離婚ができないようなケースもあります。
不安な点がある場合には、弁護士に相談してみることをお勧めします。
私たち法律事務所リーガルスマートは、離婚・男女問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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