退職代行

月200時間残業している方が検討すべきことを弁護士が解説!

月200時間残業している方が検討すべきことを弁護士が解説!

残業時間を計算すると月200時間にもわたる…という方もいるのではないでしょうか。

このような長時間の残業をしているような方の多くは、そうした状態が日常になってしまっていることが多いのですが、実は厚生労働省が定めている過労死ラインを大幅に超えるもので、健康被害や法的問題など様々な問題を抱えている状態なのはご存知でしょうか。

本記事では、月200時間以上残業している人が知っておくべきことや、解決に向けての方法について弁護士が解説します。

目次

1.月200時間の残業の異常性について

まず、月200時間の残業がどのくらい異常なのかを知っておきましょう。

1-1残業200時間を1日の残業時間へ換算

月200時間の残業は1日にどのくらいの残業をしていることになるのでしょうか。

完全週休2日制で月30日で働くとすると、1ヶ月の労働は22日となります。

この場合、毎日9時間以上は残業していることになり、所定労働時間が8時間の場合には17時間も労働していることになります。

1時間の休憩があれば拘束時間は18時間で、通勤に往復2時間かかるような場合には残った時間は4時間程度となり、食事・家事・睡眠などの時間も満足にとれません。

土日のうちどちらかの休日出勤をしているようなケースでは、1ヶ月26日となり、それでも7時間以上は残業・休日出勤をしていることになります。

1-2.残業200時間の人によくある異常な状態

残業200時間以上の人にありがちな次のような異常な状態を知っておきましょう。

  • 職場で寝泊まりや仮眠をとる
  • 1日の睡眠時間が3時間程度しか確保できない
  • 10連勤以上行っている

このような状態に慣れてしまうといつものことのように思えますが、次項でお伝えする過労死ラインを超える重大な健康被害の可能性があることを確認しましょう。

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2.月200時間の残業は過労死ラインを超えている

月200時間の残業は、いわゆる「過労死ライン」を超えていることをご存知でしょうか。

2-1.過労死ラインとは

過労死ラインとは、平成13年12月12日に発せられた、第1063号厚生労働省労働基準局長通達の「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」において、労働災害が業務と関連して生じたことを認定するにあたって強い関連性が認められる時間のことをいいます。

「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」は、労働災害の認定にあたって、仕事が脳血管疾患や虚血性心疾患等に与える影響の認定についての方針を示すものです。

この通達では次のようにされています。

  • 1ヶ月~6ヶ月間にわたっておおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合には、業務と病気の発症との関連性は弱い
  • 45時間を超える労働時間が長くなるほど、業務と病気の発症との関連性が強まる
  • 病気の発症1ヶ月前から100時間を超える時間外労働が認められる場合は業務と病気の発症との関連性が強い
  • 病気の発症前2ヶ月~6ヶ月間にわたって1ヶ月80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と病気の発症の関連性が強い

つまり、1ヶ月100時間の時間外労働・2ヶ月~6ヶ月の時間外労働の平均が80時間以上を超えるような長時間労働は、脳血管疾患及び虚血性心疾患等を発症する可能性が高まるといえるのです。

この1ヶ月100時間・2ヶ月~6ヶ月の時間外労働の平均80時間という数字が、いわゆる過労死ラインとされています。

2-2.月200時間の残業の危険性

月200時間を超えるような残業をしている場合の危険性はこの過労死ラインと関係があります。

月200時間もの残業をすることは、この過労死ラインを大きく上回わる労働時間であり、血管疾患及び虚血性心疾患等をいつ発症してもおかしくない状態であると言えるのです。

また、このような長時間の残業をさせるために、パワハラなどのハラスメントを上司が行うこともよくあります。

血管疾患及び虚血性心疾患等以外にも、精神疾患や過労自殺の原因にもなり得るものであり、今すぐ適切な対策をすべきものであると言えるのです。

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3.長時間の残業が問題なった事例

長時間の残業が問題になった事例を確認しましょう。

3-1.電通社員過労自殺事件

広く報道もされ、記憶に新しいのが電通社員過労自殺事件ではないでしょうか。

4月に入社したばかりの女性社員が社員寮から飛び降り自殺をした事件で、1ヶ月130時間もの時間外労働のほかにパワハラ・セクハラも受けていたことが認定されました。

この事件では、法人として電通と女性の上司が刑事罰として罰金50万円に処せられたほか、東京・大阪・名古屋・京都の各支社に家宅捜索がされ、ブラック企業大賞に選ばれるなどで大々的に報道されるなどしました。

これ以前にも、入社2年目の男性が自殺をしており、その時間外労働時間は147時間にもわたり、パワハラも認定されています。

遺族が電通相手に損害賠償を求める民事裁判を起こし、1億6千800万円もの損害賠償の支払いを命じられています。

残業時間が月200時間を超えるのはこれ以上の激務となるので、今すぐ改善などが必要であるといえます。

3-2.JR西日本の190時間にわたる時間外労働

JR西日本は、電車のダイヤを作成する社員に対して、2020年4月から2023年1月まで、同社の社員8人に対して、月80時間を超える違法な時間外労働をさせていたことを明らかにしました。

最大で1ヶ月190時間もの時間外労働をさせていたことも明らかになっています。

そして、この部署を含む55人に対して計1,300万円の残業代の不払いが判明し、支払うことになりました。

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4.残業時間は法律で上限が決められている

残業時間についての法律の上限について確認しましょう。

4-1.労働基準法の法定労働時間

まず、労働基準法では労働時間が法定されています。

労働基準法32条は、労働時間について次のような上限を設けています。

  • 1日8時間
  • 1週40時間

後述する36協定を結ばずにこの法定労働時間を超える労働をさせると、労働基準法119条1号によって6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑事罰に処せられることになります。

4-2.36協定による時間外労働

労働基準法36条1項所定の協定(通称:36協定)を結ぶと、労働基準法32条の規定を超える時間外労働をさせることができます。

4-3.時間外労働の上限規制

36協定がある場合でも時間外労働には限度があり、次のような上限が定められています。

  • 1ヶ月45時間
  • 年360時間

また、特別条項付き36協定を結んだ場合には、次の上限が課せられます。

  • 1ヶ月100時間
  • 2ヶ月~6ヶ月の平均が80時間
  • 年720時間

1ヶ月45時間を超える労働をさせて良いのは年6回までとなっています。

先程過労死ラインについてご紹介しましたが、そこで示された労働時間はここで用いられていて、これ以上の労働をさせないようにしています。

そして、特別条項付き36協定を結んでいる場合の上限時間を超えた場合も、労働基準法119条1号によって6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑事罰に処せられることになります。

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5.月200時間以上の残業を改善してもらえないときの対応方法

月200時間以上の残業が常態化してしまっているような場合には、どのように改善していけば良いでしょうか。

5-1.会社に対する改善要求

会社に対して改善を要求しましょう。

上司が月200時間を超えるような時間外労働を強いていても、人事や代表者がこれを認識していないようなケースもあります。

会社の一部で月200時間を超えるような時間外労働を強いられているような場合には、会社の他の部署を巻き込みながら改善の要求をすることを検討しましょう。

5-2.労働組合に助力をしてもらう

労働者個人や、限られた数人で会社と交渉をするのは、会社との力関係上難しいことも多いでしょう。

このような場合には労働組合に助力をしてもらいましょう

労働組合とは、労働条件の改善などを目的とする労働者の集まりです。

ただ、会社が小規模であれば労働組合が存在しないこともありますし、そもそも労働組合が会社と馴れ合っていて、労働者の待遇改善に力を貸してくれないようなケースもあります。

このような場合には、地域や職域などを基準に団結をしている社外の労働組合に助力をしてもらうのが良いでしょう。

5-3.労働基準監督署への相談

労働基準監督署に相談してみましょう。

労働基準監督署は、労働基準法などの労働関係に関する法令を遵守させるための機関で、違法な長時間労働との関係では臨検などの行政処分を行ったり、刑事事件となる場合に警察の役割を行うことがあります。

労働基準法違反については、労働基準監督署に対して申告ができる旨が規定されています(104条1項)。

そして、労働基準監督署に労働基準法違反を申告したとしても、解雇を含む不利益な取り扱いをすることを禁止しています。

ここまでお伝えしているように、月200時間もの違法な長時間残業は、過労死・過労自殺に繋がりかねない深刻な事態であるといえるので、労働基準監督署の権限を使って会社に対して改善をしてもらうように働きかけてもらいましょう。

5-4.退職を検討

退職することも視野にいれましょう。

違法な長時間残業をさせるような会社は、経営者が違法であることを認識しながら、労働者に長時間労働を強いることが正しいという考え方であることが考えられます。

また、違法な長時間残業をさせないと、会社の運営がうまく行かなくなっており、改善を期待できないようなケースもあります。

体調を崩してしまうなど、大事に至る前に退職をすることを検討しましょう。

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6.月200時間以上の残業をしている方が検討すべきこと

月200時間以上の残業をしている人は、次のようなことを検討すべきです。

6-1.未払い残業代を請求すること

月200時間もの残業をしているような場合の多くで、残業代が一部しか支給されていない、全く支給されていないということも珍しくありません。

上述したJR西日本のケースでも、残業代の支払が適切にされておらず、多額の残業代の支払をすることになりました。

もし未払い残業代があるような場合には、未払い残業代の請求をすることを検討しましょう。

未払い残業代の請求をする場合には、証拠の取得が鍵となるので、なるべく早い段階から弁護士に相談をするようにしましょう。

6-2.他の労働問題についても併せて検討する

月200時間以上の残業を強いられているようなケースでは、会社側に、労働者に働きやすい環境を提供するという意識が希薄です。

そのため、違法な長時間残業が行われているほか、上述の電通の事件のように、パワハラ・セクハラも併せて行われていたり、残業代が支払われていなかったりするなど、他にも労働問題となるこことが発生していることがあります。

月200時間残業をしていること以外にも、どのような問題があるのかを併せて検討するようにしましょう。

6-3.自己都合退職でも会社都合としてすぐに失業手当がもらえることがある

退職をする場合に知っておいて欲しいのが、すぐに失業手当がもらえる可能性があることです。

自己都合退職をした場合7日のほかに2ヶ月の待期期間があり、すぐに失業手当の受給ができません。

しかし、自己都合退職をした場合でも、月200時間にも及ぶような長時間の時間外労働を強いられているような場合には、会社都合退職と同様に待期期間なく失業手当を受給することができます。

退職をすると、離職票を取得し、その離職票には自己都合退職である旨が記載されますが、ハローワークで手続きをする際に残業が200時間を超えていたような場合であることを告げるると、会社都合とできることがあります。

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7.退職代行や残業代請求を弁護士に相談、依頼するメリット

退職代行や残業代請求を弁護士に相談・依頼するメリットについて確認しましょう。

7-1.法的なサポートを得られる

退職をしたいような場合の退職に関する法律や、残業代請求をする場合の労働時間・賃金に関する法律などは、非常に規定が細かく難解です。

また、交渉・裁判・労働審判などに関する手続きの知識も必要です。

特に証拠に関する知識は、労働問題の有利な解決には不可欠といえ、大きく退職や残業代請求の行方を左右します。

弁護士に相談・依頼すれば、法的なサポートを受けることができます。

7-2.長時間労働以外の法的問題を一緒に解決することが可能

月200時間を超えるような残業をさせる会社は、上記の電通社員過労自殺事件におけるパワハラ・セクハラのように、様々な労働問題が同時に発生していることがあります。

弁護士に相談すれば、どのような労働問題が発生しているかを一緒に検討することが可能で、依頼をすればこれらの問題も一緒に解決をすることができます。

7-3.法的に問題なく退職代行の依頼ができる

退職代行については、法的な問題なく依頼することができます。

退職代行については、様々なサービスが展開されています。

しかし、退職は会社との労働契約・雇用契約を解除するもので、その代行をするには本来は弁護士法72条に基づいて弁護士しかできないことになっています。特に退職の条件などの交渉業務は弁護士しか行うことができません。

そのため、民間で行う場合、弁護士が関与しなければ、代行する内容に制限があったり、違法に代行を行っていることがあります。

弁護士に依頼すれば、法的に問題なく退職代行の依頼が可能です。

7-4.相手との交渉を任せてしまえる

相手との交渉を任せてしまえるメリットがあります。

月200時間もの残業をさせて、残業代をきちんと支払っていないような会社と、長時間残業の是正や、未払い残業代の支払いを求める交渉をすることになります。

法律では認められないような反論をしてくることもあれば、そもそも誠実に対応をしない、かえって請求する方がおかしい、などで強い態度を向けてくることもあり、非常にハードになることが予想されます。

弁護士に依頼すれば、このような交渉を任せてしまうことができ、これによってトラブルがスムーズに解決することもあります。

7-5.弁護士に無料で相談が可能

月200時間を超えるような残業をしている場合には、上記のように様々な法律問題が発生することもあり、早めに弁護士に相談すべきです。

しかし、弁護士に相談する場合、通常は法律相談料が必要となることが多いです。

市区町村では無料で弁護士に相談できる制度を設けており、事前に予約をすれば利用が可能です。

また、一定の収入以下である場合には、法テラスで弁護士に無料相談をすることができます。

これらのほかに、弁護士の中には無料で相談をすることができるケースがあるので、積極的に利用してみましょう。

また、法律事務所リーガルスマートでは、初回60分無料の相談を実施しています。退職代行についてもご相談いただけるので、是非ご利用ください。

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8.長時間の残業に関するよくあるQ&A

長時間の残業に関するよくあるQ&Aを確認しましょう。

8-1.36協定がないのに残業した場合には残業代はもらえないのか

法定労働時間を超える残業をさせるためには、36協定が必要であることをお伝えしました。

では、36協定がないにも関わらず、残業をさせていた場合その行為は違法となるのですが、残業代の支払を受けることはできるのでしょうか。

この点について、36協定を必要とするのは、残業をさせるための手続きを定めるものにすぎず、これがないからといって労働をしたものに対して、賃金の支払をしなくて良いということにはなりません。

そのため、残業代の支払いを求めることは可能です。

8-2.月200時間残業しても病気でなければ慰謝料は発生しないのか

月200時間もの残業をしても、病気になってなければ慰謝料は発生しないのでしょうか。

この点について、長時間労働をさせたこと自体が不法行為であるとして、損害賠償請求を認めた事例があります。

長崎地裁令和元年9月26日判決では、2015年6月頃から2年間90時間以上の時間外労働をさせていた会社に対して、「心身に不調をきたすおそれがある長時間労働をさせることで、労働者の人格的利益を侵害した」として、30万円の支払いを認めました。

上記の判決よりも多い、月200時間もの残業をさせている場合には、慰謝料請求をしても認容される可能性は非常に高いといえます。

残業代請求や不当解雇を争うような場合に、長時間労働をさせたこと自体の慰謝料請求もするのが良いでしょう。

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9.まとめ

本記事では、月200時間もの残業をしている人が検討すべきことについてお伝えしました。

月200時間もの残業はニュースで報道されるような違法な長時間労働すら超える異常な状態で、厚生労働省が定める過労死ラインも大幅に超えるもので、ただちに改善が必要です。

労働基準監督署への申告が現実的ですが、改善の兆しがないような場合には退職を考えましょう。

退職させてくれないような場合には、退職代行サービスの利用を検討しましょう。

私たち法律事務所リーガルスマートは、退職代行や未払いの残業代請求をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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