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労働問題とは?種類や具体事例、解決方法などを弁護士が解説!

労働問題とは?種類や具体事例、解決方法などを弁護士が解説!
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「会社が残業代を払ってくれない」

「パワハラで鬱になって休職したら、退職勧奨された」

「有給休暇を取らせてもらえない」

これらは、すべて「労働問題」に属するトラブルです。

労働問題は、労働者の生活や人生に関わる問題です。また、企業側に立っても労働問題を放置したり、不誠実な対応をしていると裁判を起こされて事業遂行に支障が出たり、信用低下を招くことになります。

本記事では、労働問題の種類やそれぞれの具体事例、解決方法などを労働問題に強い弁護士が解説します。

1.労働問題とは

「労働問題」とは、広い意味ではなんらかの労働を提供することに関して発生するすべての問題を指します。ただし一般的には、労働契約の当事者、つまり使用者(会社)と被用者(従業員)との間で発生するトラブル及び、従業員間で起こるトラブルを指すことが多いです。

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2. 労働問題の種類と具体例

労働問題の種類には、大きく分けて①労働契約に関わるトラブル ②賃金に関わるトラブル ③労働条件に関わるトラブル ④労働環境に関わるトラブル ⑤従業員の問題行動に関わるトラブルがあります。また、それぞれの種類ごとに色々な問題が存在します。

本章では、労働問題の種類と、それぞれに該当するトラブルや具体例を解説します。

2-1. 労働契約に関わるトラブル

労働契約に関わる問題としては、(1)解雇・退職勧奨のトラブル (2)採用・内定取消のトラブル (3)人員整理のトラブルなどがあります。

(1)解雇・退職勧奨のトラブル

解雇とは、会社が一方的に労働契約を解除することです。また、退職勧奨とは会社側が、従業員の自発的な退職を促すことをいいます。

解雇は労働者に重大な不利益を与える行為であることから、労働法上厳しい規制がかけられています。これに対して退職勧奨については法的な規制が存在しないのですが、判例上、行き過ぎた退職勧奨行為に対しては違法な退職強要にあたるとして従業員の地位確認や会社に対する損害賠償請求などが認められています。

解雇・退職勧奨のトラブルの具体例としては以下のようなものがあります。

  • 突然、上司に「明日から来なくていい」といわれた
  • 精神疾患で休職していて、復職を希望しているのに繰り返し退職するようにいわれている

(2)採用・内定取消のトラブル

採用・内定取消のトラブルは、会社が労働者を雇い入れる旨の意思表示を取り消すことに対して労働者側がその撤回や損害賠償などを求めて会社と対立する問題です。

日本では多くの場合、新卒の学生に対する採用内定取消のトラブルが問題となっています。

判例上、採用内定は、法律的には「始期付解約権留保付労働契約」という労働契約にあたることが認められています(最高裁1979[S54]年7月20日付判決(大日本印刷事件)。つまり、採用内定であっても会社と労働者との間の労働契約が成立していることになります。

従って、会社が採用内定を取り消すことは、一方的に労働契約を解除する行為として、解雇に準じて労働法の規制を受けます。

採用内定取消のトラブルの例としては以下のようなものがあります。

  • 会社が、採用内定を出した学生のSNSでの「不謹慎な」投稿を問題視して内定を取り消し、学生側がこれを不服として内定取消の撤回を求めた

(3)人員整理のトラブル

人員整理とは、会社が業績回復や事業合理化の目的で従業員を減らすことです。人員整理を行う場合、正社員の整理解雇や退職勧奨、希望退職募集、契約社員・派遣社員の雇止めなどを同時期に行います。

人員整理によって多数の従業員を解雇・雇止めする場合、対象となった従業員が解雇や雇止めの撤回、損害賠償などを求めて労働審判や訴訟を起こす可能性があります。

また、希望退職を募集する場合には割増の退職金支払いが必要となりますが、その割増額を不服とする従業員が退職金の増額を求める可能性もあります。

人員整理のトラブルの例としては以下のようなものがあります。

  • 事業縮小の必要に迫られた会社が非正規雇用の従業員全員の雇止めを行ったところ、繰り返し契約更新していた従業員から労働契約法第19条違反を理由に契約更新を求めて訴訟提起した
  • 希望退職募集による割増退職金支払いと、有能な人材が退職するリスクを避けるために会社が特定の正社員に退職勧奨を行ったところ、対象となった従業員が「会社のやり方は退職強要にあたる」として従業員の地位確認や慰謝料支払いを求める訴訟を起こした

2-2. 賃金に関わるトラブル

賃金に関わるトラブルには、給料そのものの未払いのトラブル、及び残業代未払いのトラブルなどがあります。

(1)給料未払いのトラブル

給料つまり賃金は、通貨で直接労働者に、その全額を毎月1回以上、一定期日を定めて支払われなければなりません(労働基準法第24条)。

給料未払いのトラブルは、1か月以上、給料日に給料が支払われていない場合に起こります。

(2)残業代未払いのトラブル

残業代とは、厳密には会社の所定時間を超える時間分の賃金をいいます。ただ、ほとんどの場合は、労働基準法第32条で定められた法定労働時間である「1日8時間・週40時間」を超える労働時間分に対して支払われるべき割増賃金(労働基準法第37条)を指します。

残業代未払いのトラブルの例としては以下のものが挙げられます。

  • 会社がタイムカードを定時に打刻させているため残業があっても残業時間がカウントされない
  • 表向きは残業がないことになっている会社で、実際には毎日定時に仕事が終わらず、従業員が家に持ち帰って仕事をせざるをえない。しかし持ち帰り分の仕事の作業時間は残業時間としてカウントされない

2-3. 労働条件に関わるトラブル

労働条件に関わるトラブルには、(1)残業(時間)のトラブル、(2)人事異動や出向のトラブル、(3)有給休暇のトラブル、及び(4)待遇格差のトラブルなどが挙げられます。

(1)残業のトラブル

会社が法定労働時間を超える時間労働させるには、労使間で協定を締結していることが必要です(労働基準法第36条1項)。この協定はいわゆる「36協定」といわれています。36協定がない会社では、そもそも時間外労働をさせること自体が違法となります。

また、36協定がある会社であっても、休日労働を別として、時間外労働時間については原則「1か月45時間・年360時間」の上限が定められています(労働基準法第36条4項)。

さらに、「臨時的な特別の事情がある場合」のみ、時間外労働と休日労働を合わせた残業時間が月100時間未満、2か月~6か月平均80時間以内、年720時間までの残業が認められます(同条第5項)。

残業のトラブルの例としては以下のものが挙げられます。

  • 労使協定なしで時間外労働させられた
  • 連続8か月以上にわたって、1か月あたり45時間を超える時間外労働をさせられた
  • 臨時的な特別の事情がないのに、連続して2か月以上にわたり、月100時間を超える時間外労働をさせられた

(2)人事異動や出向のトラブル

人事異動とは、会社が人事権を行使して従業員の配属部署を変更することです。また出向とは、現在の会社との労働契約を維持したまま子会社や系列会社に移籍することをいいます。

人事異動や出向のトラブルの例としては以下のものが挙げられます。

  • 就業規則に人事異動がありうる旨の規定が存在しないのに、遠隔地の支店への異動命令を受けた
  • 家庭の事情で、現在の自宅から通勤できない地域にある事業所には勤務できない旨を会社に伝えていたにもかかわらず、遠隔地に事業所のある子会社に出向させた

(3)有給休暇のトラブル

(年次)有給休暇とは、入社から6か月以上勤務し、その間の出勤率が8割以上の労働者が勤続年数に応じて10労働日以上取得できる休暇です(労働基準法第39条1項・2項)。有給休暇を取得した日や時間についても、その労働者の所定労働時間分の賃金が支払われます。

また、会社は労働者がその年次に取得できる有給休暇日数のうち5日間については、時季を定めて付与することが義務づけられています(同法第39条7項)。

有給休暇のトラブルとしては以下のものが挙げられます。

  • その部署では上司も有給休暇を取っていないからといって、有給休暇を全く取らせてくれない
  • 業務の引継ぎが終わっていないことを理由に、退職前の有給休暇消化を拒否された
  • 付与義務のある5日間の有給を年末年始に取らされた

(4)待遇格差のトラブル

待遇格差のトラブルとは、主に正社員と非正規従業員(契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなど)との間の賃金や福利厚生待遇などの格差をめぐって起こる問題のことです。

働き方改革関連法の一環として改正されたパートタイム・有期雇用労働者法及び労働者派遣法では、「同じ会社の中で、業務内容や責任の範囲、負担などが同じであれば、雇用形態が違っても賃金その他の待遇を同じにしなければならない」旨が定められました(同一労働同一賃金)。

待遇格差のトラブルの例としては以下のようなものが挙げられます。

  • 派遣社員に対して退職金が支払われない
  • 同じ職場の正社員と同じ仕事をしている契約社員の給料が、正社員に比べて著しく低い

2-4. 労働環境に関わるトラブル

労働環境に関わるトラブルには、(1)労災や過労死などのトラブル、及び(2)ハラスメントのトラブルなどがあります。

(1)労災や過労死などのトラブル

労災とは、業務に関連して病気を発症すること、あるいは負傷することです。業務そのものが原因で起こった病気・傷害に加えて、通勤途中で事故に遭った場合の傷害(通勤災害)も労災に含まれます。

業務に関連して病気になったり負傷した場合は、労災補償保険法に基づき、労働基準監督署に労災申請を行い、認定されれば労災保険給付を受けられます。

また、労災の事故や病気の療養のための休業期間と復職後30日間の解雇は禁止されています(労働基準法第19条1項)。

過労死とは、過度な長時間労働や残業を強いられた結果、脳疾患や心不全などによる急激な体調の悪化に伴う突然死をいいます。過労死については、過労死等防止対策推進法第2条による「業務上における脳血管疾患・心臓疾患による死亡、精神障害を原因とする自殺、死亡には至らないが、脳血管疾患・心臓疾患、精神障害」と定義されています。

労災や過労死をめぐるトラブルの例としては以下のようなものが挙げられます。

  • 工場での勤務中の事故で負傷したが、会社に労災申請するなといわれた
  • 長時間残業が原因で重度のうつ病を発症し、自殺した従業員の遺族が会社を業務上過失致死傷罪で告発した

(2)ハラスメントのトラブル

ハラスメントとは、広い意味では他者に不快感を与え人格を傷つける行為・言動をいいます。

労働問題としてのハラスメントは、職場で他者に不快感を与え人格を傷つける行為で、パワーハラスメント・セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメントを総称したものです。

パワハラ・セクハラ・マタハラに対してはそれぞれ企業が防止措置を講じることが法律で義務づけられています。

ハラスメントのトラブルの例としては以下のものがあります。

  • 達成不可能なノルマを与えられ、達成できなかったので皆の前で激しく叱責された
  • 男性上司から執拗にデートに誘われていた女性部下が誘いを断り続けたら、事実無根の性的な噂を流された
  • 妊娠したことを理由に退職を促された

2-5. 従業員の問題行動に関わるトラブル

また、従業員による不正行為や、会社に損害を与える行為またはそれらの疑いが発生したことによるトラブルもあります。これに該当するものとして(1)懲戒処分のトラブル(懲戒解雇を除く)、(2)引き抜きや機密情報持ち出しのトラブルがあります。

(1)懲戒処分のトラブル

懲戒処分とは、非違行為を行った従業員に対して会社が行う制裁のことです。

懲戒処分には、軽いものから順に戒告・けん責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇があります。

このうち懲戒解雇については「解雇・退職勧奨のトラブル」の項目でご説明しました。

懲戒処分は、会社が従業員に課す刑罰ともいえる処分であることから、その有効性は厳しく判断されます。労働契約法第15条は、懲戒処分が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は(使用者の)懲戒権の濫用に当たり無効となると定めています。

会社が従業員に対して懲戒処分を科すことができるのは、就業規則に懲戒処分についての具体的な規定が存在する場合に限られます。

懲戒処分に関わるトラブルの例としては、以下のようなものがあります。

  • 就業規則に懲戒処分についての規定がないのに、勤務態度不良を理由に減給処分にされた
  • 就業規則に懲戒処分についての規定は存在するが、仕事のミスを理由に、全く釈明の機会を与えられずに降格処分にされた

(2)引き抜きや機密情報持ち出しのトラブル

「引き抜き」とは、会社の取締役などの役員または従業員が、他の役員や従業員を誘って一緒に退職するとともに別の会社に就職する、または新しい会社を設立することをいいます。

個々の役員や従業員は在職中は会社に対して労働契約法上の誠実義務を負っていますが、転職すること自体は違法ではありません。また、就業規則で定めた競業避止義務に反しない範囲で新会社を設立することも違法とはいえません。

ただし、役員が多数の従業員を連れて退職し、同業種の新会社を設立する(在職中の引き抜き行為)など、引き抜き行為の態様によっては会社に損害を与える不法行為とみなされる場合があります。

また、引き抜きに伴って行われやすい機密情報の持ち出しは、不正競争防止法違反となります。

機密情報の持ち出しは、引き抜きの場合以外にも、テレワーク中に従業員個人のパソコンへの機密情報コピーなどが行われる可能性があります。この場合は不正アクセス防止法違反が問題となります。

引き抜きや機密情報持ち出しのトラブルの例としては、以下のようなものがあります。

  • IT企業の取締役が、技術職の従業員数人とともに退職して新会社を設立し、退職の際に元の会社の取引先リストを持ち出した
  • 退職にあたって引き抜き禁止の合意を行っていた従業員が、この合意に反して他の従業員数人を引き抜いて新会社を設立した

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3. 労働問題の解決方法

労働問題を解決するためには、労働者個人の独断で動くのは危険です。まず、労働問題に関わる専門機関に相談することをお勧めします。

本章では、労働問題の解決方法を解説します。

3-1. 労働基準監督署に申告する

会社が労働基準関係法令に違反する行為を行っている場合、労働基準監督署に申告を行うことができます。

たとえば「会社がどうしても辞めさせてくれない」という事案では、有給拒否や離職票交付拒否など法令違反の疑いがあれば、会社の事業所に立ち入り調査を行い、違法行為の停止や適法な状態への是正を指導・勧告してくれる可能性があります。

労基署が是正勧告を行っても違法状態が続く場合には、法令違反で送検手続を行います(労働基準法第102条)。

ただし、労基署あたりの管轄事業所の数が多いため、どうしても重大な法令違反の案件を優先せざるをえないという事情があります。

また、労基署は行政機関なので、指導・勧告を行ってくれたとしても、労働者個人を代理して権利行使してくれるわけではありません。

3-2. 労働組合に相談する

労働者個人や、代理人による交渉ではなく、労働者組織の一員として交渉に参加して職場環境を改善したい場合には、労働組合に相談することをお勧めします。

労働組合は団体交渉権を持つので、組合として会社側と対等に交渉することにより問題解決を図ることができます。

他方、労働組合には訴訟代理権がありません(弁護士法第72条により、少額訴訟等の一部の例外を除き、訴訟代理権を持つのは弁護士に限られます)。

そのため、交渉が成立しなかった場合の訴訟手続の代理については弁護士に依頼する必要があります。

会社に労働組合がなかったり、存在しても機能していない場合には、合同労組(ユニオン)に加入して、ユニオンに団体交渉を依頼することができます。

いずれの場合も、組合に加入した場合には加入金と毎月の組合費がかかるほか、団体交渉を依頼して問題が解決した場合には解決金の一部を組合に支払う必要があります。

3-3. 厚生労働省所轄の相談機関を利用する

厚生労働省の管轄下で無料で相談できる窓口として、総合労働相談コーナーや労働条件相談「ほっとライン」があります。いずれも予約不要で、相談者のプライバシーに配慮した対応を行っています。

(1)総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーは、都道府県の労働局や労働基準監督署に設置されている無料相談サービスです。労働者・事業主・学生など、すべての人の「労働問題」にかかわる相談を受け付けています。窓口での面談のほか、電話での相談も可能です。

相談内容の会社側の行為に労働関係法令違反の疑いがあれば、労働基準監督署に取次ぎも行っています。また、相談者の希望により裁判所、都道府県労働委員会、法テラスなどの専門機関を紹介してくれます。

「会社を辞めたいが、強引に引き留められたらどうすればよいか」など、まだ退職について会社とトラブルになっていない段階で気軽に相談できるメリットもあります。

(2)労働条件相談「ほっとライン」(電話労働相談サービス)

労働条件相談「ほっとライン」は、厚生労働省から運営を委託された事業者の相談員が、労働問題にかかわるあらゆる質問に対して、法令や裁判例をふまえた回答や専門機関の紹介などを行っています。

労働条件相談「ほっとライン」の開設時間は、総合労働相談コーナーの開設時間外である平日17時~22時と土日祝日の9時~21時です(12月29日~1月3日のみ閉設)。

平日の夜間や土日祝日に、労働問題について気軽に相談することができます。

3-4. 弁護士に相談する

会社に対して損害賠償や慰謝料の請求、未払い賃金・残業代請求などの権利行使をしたい場合は、労働問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士と他の相談機関との一番の違いは、「依頼者の代理人として、依頼者の権利を行使できる」という点です。

労働者が一人で行うことが困難な、会社に対する請求や請求実現のための交渉、労働審判や訴訟などの法的手続も、弁護士に依頼すればすべて任せることができます。

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4. 労働問題を弁護士に相談、依頼するメリット

本章では、労働問題を弁護士に相談するメリットをご説明します。

4-1.会社に対しての請求の可否を教えてもらえる

たとえば未払い残業代を請求する場合、①残業代が発生する雇用形態か否か ②実際に残業代が発生しているか、消滅時効にかかっていないか、請求できる残業代の合計金額はいくらになるか等について詳細に教えてもらうことが可能です。

また、パワハラやセクハラの被害に遭った場合、①会社や加害者に対する慰謝料請求ができるか ②それが原因で精神疾患を発症して休職した場合の会社からの取扱いに対する対応など、ハラスメントが原因で起こりうる、あるいは既に起こっている事態に対して可能な請求の可否について教えてもらえます。

4-2.会社と交渉するのに必要な証拠収集方法を教えてもらえる

会社に対して未払い残業代や損害賠償・慰謝料等を請求する場合、雇用契約書や労働条件通知書など自身が保管していれば利用できるもの以外に、タイムカードや業務アカウントによるメールの送受信履歴など、会社側が保持しているデータもあります。

容易に入手できない証拠についても収集が必要なのか、必要であればどのように入手すればよいか等についても弁護士に教えてもらうことができます。

この点、会社は賃金台帳等の労働関係に関する重要な情報について、5年間保存する義務を負っています(労働基準法第109条)。

また、判例上、未払い残業代請求においては会社側がタイムカード等の証拠開示義務を負っていると解されています。

しかし、実際には会社が証拠開示に応じないこともあります。

会社に対する証拠開示請求が労働者本人では難しい場合証拠開示請求を弁護士に代理してもらうことができます。

4-3.会社との交渉を任せることができる

労働問題で会社に対して請求を行うにあたっては、最初に会社側と交渉する必要があります。

しかし、労働者本人が内容証明で請求通知を送っても無視される可能性があります。また、交渉に応じる場合は会社側が顧問弁護士を立ててくることもあります。

弁護士に依頼していれば、会社が交渉に応じてくれやすくなります。また、会社側の代理人とも交渉を対等に行うことができます。

4-4. 労働審判や民事訴訟などの法的手続を任せることができる

請求にあたり、証拠収集・交渉とともに労働者個人で行うことが困難なのが、労働審判や訴訟等の裁判所が関わる手続です。

労働審判は手続が比較的単純なので短期間で終結させることができます。しかし、申立てから審理まで全て一人でやることは容易ではありません。

また、労働審判は決定事項に対して当事者が異議申立てを行うと無効になってしまいます。そのため、交渉が成立しなかった場合、まず労働審判を申し立てるか、労働審判を経ずに訴訟提起するかを判断しなければなりません。

そして、訴訟提起するとなると、証拠収集に加えて期日に出廷して口頭弁論での陳述や証拠調べ等を行う必要があります。

少額訴訟や簡易裁判所への訴訟提起であっても、一人でやることには大きな負担が伴います。この点、弁護士に依頼していれば労働審判・民事訴訟ともすべて任せることができます。

請求手続代理・代行には費用がかかりますが、弁護士に依頼することで確実に未払い残業代の支払いを受けることができます。

また、多くの法律事務所では初回相談や初回相談の一定時間(30分~60分程度)を無料としているので、無料相談を利用して問題点を的確に整理することで費用を抑えることが可能です。

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5. 労働問題に強い弁護士の探し方

労働問題に強い弁護士の探し方としては、以下の方法があります。

なお、労働問題に強い弁護士(または、その弁護士が在籍する法律事務所)は、主に企業からの依頼を受ける弁護士と、主に労働者からの依頼を受ける弁護士に分かれます。

労働者の方が弁護士を探す場合、主に労働者からの依頼を受ける弁護士を探すことをお勧めします。

5-1. インターネットで検索する

インターネットでキーワード検索する方法では、労働問題に強い弁護士が在籍する法律事務所を探し出すことができます。

検索の仕方としては、「残業代 弁護士 成功報酬」「パワハラ 相談 弁護士」など、自分に関係する労働問題+弁護士関係のキーワードを入れることをお勧めします。

5-2. 弁護士検索サイトで検索する

弁護士検索サイトによって、労働問題に精通する弁護士を探すこともできます。

弁護士検索サイトの中には、労働問題に精通する弁護士のみを掲載しているサイトもあります。

地域や相談内容によって対象を絞ることができるので、具体的な悩みや条件に適合する弁護士が見つかります。

5-3. 知人や友人に紹介してもらう

弁護士に問題解決を依頼したことのある知人や友人に紹介してもらうという方法もあります。

知人や友人の紹介で弁護士を探すメリットは、弁護士に依頼した人の実体験や感想を聞けることです。

ただし、その依頼案件が労働問題とは関係ないものである可能性もあるので、労働問題に強い弁護士を紹介してもらえるかどうかわからないという問題があります。

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6. 労働問題に関するよくあるQ&A

本章では、労働問題に関して頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

6-1. 労働問題について、労働基準監督署に相談するのと、弁護士の無料相談を利用するのではどのような違いがありますか?

労働者との関係での労働基準監督署の役割は「企業に労働関係法令を守らせ、違反行為を取り締まること」で、弁護士の役割は「労働者個人を代理して労働者の権利行使を実現すること」です。

たとえば、未払いの残業代を支払ってほしい労働者が、労働基準監督署に相談した場合、残業代未払いは労働基準法第37条違反なので、会社に立入り調査を行ってくれる可能性があります。そして会社に対して「いつまでに残業代を支払うように」と勧告してくれることが期待できます。また、相談から勧告まで費用はかかりません。

しかし、労働基準監督署はその労働者を代理して会社に対して残業代を請求することはできません。また、他の案件を優先して、立入り調査を行ってくれない可能性もあります。

これに対して、弁護士に残業代請求の交渉代理を依頼すれば、結果的に高い確率で残業代の支払いを受けることができます。

もっとも、それは交渉代理という「有料の法律事務を依頼した場合」に期待できる成果です。無料相談の段階では、残業代発生の有無や請求の可否、請求可能な金額、証拠収集方法などを教えてもらうことができます。しかし、会社との交渉や訴訟などの「実際の請求手続」を無料で行うことはできません。

両者の役割にこのような違いがあることを理解したうえで、単純に「無料で得られる成果」を比較すれば、労働基準監督署に相談したほうが大きな成果が得られる可能性はあります。

6-2. 労働問題で会社を訴えると、逆に会社から訴えられたりしないでしょうか?

「入った会社がブラック企業で、パワハラ・長時間残業など違法行為三昧なので訴えたいが、会社からの報復が怖くて躊躇している」という方は少なくないと思います。

たとえば、「会社を解雇された労働者が不当解雇を主張して会社に対して慰謝料を請求したら、会社から逆に損害賠償された」などです。

しかし、会社に対する正当な権利行使に対して、報復として訴えることはそれ自体が当該労働者に対する権利侵害、つまり不法行為になります。

従って、会社に対して訴訟で権利行使した場合に、報復として会社から訴えられることは通常ありません。

判例も、「訴訟提起した側が敗訴した場合にこれが相手方に対する不法行為となるのは、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限る」としています(最高裁1988[S63]年1月26日付判決)。

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7. まとめ

最近では働き方改革関連法など労働関係の法改正が進み、企業にコンプライアンスが強く求められています。

従って、以前よりも労働者の権利を行使しやすくなっているといえます。

他方、労働問題のトラブルで悩む労働者が、単独で会社と交渉して請求を実現することは容易ではありません。会社との交渉までは労働組合の団体交渉権行使という選択肢もありますが、労働組合は交渉が成立しなかった場合の訴訟代理を行うことができません。

この点、弁護士に依頼することで、会社に対する請求通知や交渉から、裁判での和解交渉または判決に至るまで、すべての法的な手続きについて労働者を代理することが可能です。

労働問題でお困りの方は、ぜひ労働問題に精通する弁護士にご相談ください。

私たち法律事務所リーガルスマートは、労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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