その他

退職金がもらえない?請求方法や注意点を弁護士が解説!

退職金がもらえない?請求方法や注意点を弁護士が解説!
この記事をSNSでシェア!

1.「退職金がもらえない」とはどういう状況なのか?

退職金がもらえない際に、まず最初にすべきこととして、以下4つのポイントを確認する必要があります。

  • 会社に退職金制度があること
  • 退職金の支払時期が来ていない
  • 退職金の請求期間を過ぎている
  • 退職金請求の条件を満たしていない

上記4つのポイントを確認することは、あなたが退職金をもらえる対象となるのかどうかを知るために必要となります。それでは4つのポイントについて、以下それぞれ順に説明します。

退職金制度があること

そもそも退職金は、法律上必ず存在するものではありません。会社によっては退職金制度を設けていない会社もあります。退職金制度を設けないことは違法ではありません。

会社が退職金制度を設ける場合には就業規則で定めてあることが一般的ですので、まずは会社の就業規則をしっかりと確認しましょう。会社によっては就業規則とは別に退職金規程を設けている場合もありますので、これらをしっかりと確認するようにしましょう。

また、会社によっては、会社には退職金がないが、中小企業退職金共済(いわゆる中退共)に加入している場合もあります。会社が中退共に加入している場合には、毎月の給与から共済金が引かれていますので、毎月の給与明細を見れば中退共から退職金をもらえるかどうかが分かります。

退職金の支払時期が来ていない

退職金の支払時期は、個々の会社により異なります。そのため、支払時期を明確に把握していない場合には、自社の退職金の支払時期をきちんと確認する必要があります。また、退職金の支払時期について特定の定めのない場合には、労働基準法第23条にもとづき、退職した労働者が請求を行ってから7日以内に支払うことを義務付けています。就業規則の中で、退職金の支払時期が明確に定められていない際には、労働基準法23条に基づいて請求を行うべきでしょう。以下労働基準法第23条の内容になります。

「○労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号) (金品の返還) 第 23 条 使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があ った場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金そ の他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければなら ない。 2 前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議の ない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。」(引用元)

退職金の請求期間を過ぎている

労働基準法115条では、退職金の請求期間は5年と定めています。そのため、退職してから5年以上過ぎている場合には、あとで退職金がもらえていないと気付いても、請求不可と考えたほうが良いでしょう。以下労働基準法115条の内容です。

「 (時効) 第 115 条 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求 権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合にお いては、時効によって消滅する。  」(引用元)

退職金請求の条件を満たしていない

退職金が請求できないケースとして、そもそも退職金を請求する条件を満たしていないというものがあります。厚生労働省の調査によると、勤続3年以上経過した時点から退職手当の支給対象となるとしている会社が多いとの調査結果があります。これは要するに、3年未満の勤続では、退職金がもらえない可能性が高いということになります。このケースが、意外ととても多いのです。また退職金がもらえる規定については、以下のような支給要件が存在します。

  • 年齢
  • 勤続年数
  • 地位、等級、役職
  • 雇用形態 等

上記の支給要件の中で特に注意すべき点として、年齢や勤続年数などの数字に関する項目になります。これには起算日などにより、支給要件が変わってくる可能性があることが該当します。そのため自己都合で企業を退職する際に退職金をもらいたい場合には、勤続10年などの数字よりも、何月何日に要件をクリアできるのかどうか確認をする必要があるのです。

これらの支給要件は、会社の就業規則、退職金規程で定められていますので、支給要件を満たすかどうかを確認しましょう。

1-1.退職金を受け取れない理由とは?

就業規則で退職金が定められているのに、もらえないケースもあります。この場合には、以下2つのポイントを確認する必要があります。

  • (1)会社の役員という立場にあった
  • (2)退職事由に何らかの問題がある

上記2つのポイントについて、以下それぞれ順に説明します。

(1)会社の役員という立場にあった

会社の役員であったという場合には、退職金を受け取れないこともあります。この理由として、契約形態の違いによります。社員(従業員)は雇用契約であり、就業規則に定めがあればその定めによることになりますが、役員は委任契約であり、労働基準法上の労働者ではありません。そのため、役員への退職金については、就業規則に拘束されず、会社が判断することになります。そのため会社役員の立場にあったケースでは、必ずしももらえないこともあると認識しておく必要があります。

(2)退職事由に何らかの問題がある

退職金は、退職事由に何か問題のある場合、あるいは懲戒解雇などになった場合には、支給されないか、あるいは減額となることがあります。退職事由に問題があり退職金を支給しないケースについては就業規則、退職金規程に定められているはずですので、この点もしっかりと確認するようにしましょう。

1-2.法的に問題があるケース

退職金がもらえないことについて、法的に問題があるケースについて、以下順に説明を行います。

(1)支給要件を満たすのに支払ってもらえないケース

就業規則、退職金規程での退職金の支給要件を全て満たしているにもかかわらず、会社が退職金を支払ってくれないというケースもあります。

退職金の支払時期も到来しており、尚且つ請求期間も過ぎていないにもかかわらず、支払ってくれないケースにおいては、速やかに退職金の請求を行うようにしましょう。

(2)法的に問題があるか争いのあるケース

法的に問題があるか争いのあるケースとしては、以下のように企業の役員であった場合と懲戒解雇などの特殊な事由のある場合の2つのケースが挙げられます。

①会社の役員であった場合

先述のように、役職が会社の役員であったというケースでは、退職金を受け取れないこともあります。ただし、役員への退職金についても会社内で決まりがあったり、過去の慣行として役員退職金が支給されている会社では、役員に対しても退職金を支払う必要がある場合もあります。

これらの事情があるときには、退職金支払義務を巡って会社との間で争いとなります。

②懲戒解雇などの特殊な事由がある場合

退職の際に自主退職ではなく、懲戒解雇などの特別な事由のある際には、支給されないことがあります。ただし、懲戒解雇に相当するような具体的な事実があったかどうかというのは争いになることもあります。

「普通解雇であれば退職金を受け取れたはずであり、懲戒解雇として退職金を支給しないのは違法だ」という形で法的な争いになることもあります。

1-3.退職金の請求に必要となる主な手続き

会社から退職金を支給してもらえる場合には、就業規則に則って会社内での手続きを行ってください。

ここでは、中退共での退職金の請求手続きについて解説します。主に以下3つのステップを踏みます。

  • (1)退職金共済手帳を入手し退職金(解約手当金)請求書に記入する
  • (2)添付書類をチェックし退職金(解約手当金)を送付する
  • (3)中退共本部の請求書審査期間

上記3つのステップについて、以下それぞれ順に説明します。

(1)退職金共済手帳を入手し退職金(解約手当金)請求書に記入する

まずは会社(事業主)から、退職金共済手帳を入手します。その後退職金共済手帳3枚目の「退職金(解約手当金)請求書」に記入を行います。これには金融機関の窓口にて口座確認欄に押印を受けるか、あるいは普通預金通帳のコピー(金融機関・支店名・口座名義人・普通預金口座番号が分かる箇所を添付します。

(2)添付書類のチェックし退職金(解約手当金)を送付する

本人確認、マイナンバー制度の番号確認および身元確認のできる書類を添付します。身元確認書類には、運転免許証のコピーあるいはパスポートのコピー、健康保険証のコピーあるいは年金手帳のコピーを添付します。そして退職金(解約手当金)請求書と添付の書類を、中小企業退職金共済事業本部(以下:中退共)本部の給付業務部に送付します。

(3)中退共本部の請求書審査期間

中退共での請求書の受付後、支払いまでには、通常4週間ほどかかります。また書類の不備などがある場合には、さらにかかってしまいますので、注意しましょう。

さらに、会社により退職金に加えて、確定拠出年金の制度も導入されていることがあります。この場合に、退職金と確定拠出年金のどちらももらえますので、この点に関しては会社に確認をしておくと良いでしょう。

退職金の請求手続きについては、中退共の公式ウェブサイトで注意点に関する記述があります。以下参考にされてみてください。

「退職金を請求するときは、請求人の本人確認およびマイナンバー確認のできる書類として、「マイナンバー入り住民票(コピー不可)」と「身元確認書類のコピー」を「退職金(解約手当金)請求書(以下:請求書)」に添付して《中退共本部給付業務部》にお送りください。
◇マイナンバー入り住民票は、3か月以内に発行されたもので、コピー不可とさせていただいております。
◇請求人の住所が事業所等の住所と同一の方は、「マイナンバー入り住民票及び身元確認書類」ではなく、ご本人確認のため「印鑑証明書(コピー不可)」と「個人番号カードの両面のコピー(または通知カードのコピー及び身元確認書類)」を添付してください。なお、通知カードは表裏の記載事項が住民票と異なる場合、番号確認書類として使用できません。
◇従業員の死亡による退職で遺族の方が請求する場合は、上記の他に「戸籍謄本」が必要になります。
◇外国人の方が請求する場合は、日本人と同様にマイナンバー入り住民票を添付してください。なお、退職金額および振込予定日につきましては、電話でのお問い合わせはお受けしておりません。

(引用元)

1-4.法的に認められた請求方法

退職金を受け取れるはずの立場にあるのに、会社が支払ってくれないという場合には、以下のいずれかの手段を取ることを考える必要があります。

  • (1)直接請求を行う
  • (2)ADR(裁判外紛争解決手続)を行う
  • (3)退職金請求手続きを弁護士に依頼する

上記それぞれの手段について、以下順に説明します。

(1)直接請求を行う

退職した社員が自ら会社に対して、退職金を請求することもできます。この場合、請求したことを証拠として残すために、内容証明郵便を利用して請求内容を記載した書面を送付するようにしましょう。

(2)ADR(裁判外紛争解決手続)を行う

ADR(裁判外紛争解決手続)とは、第三者の介入により、法的トラブルを解決する方法のことをいいます。比較的安価な費用のため、解決に向けてスムーズに進みやすい傾向にあります。ADRを行いたいという場合には、例えば以下のような窓口に相談する必要があります。

・総合労働コーナー

(3)退職金請求手続きを弁護士に依頼する

弁護士は、退職金の請求などの法律的な手続きに精通しており、それに特化した専門弁護士も存在します。そのため退職金の請求における一連の手続きを、弁護士に依頼するのも効果的です。弁護士に依頼を行った場合に、具体的な手続きの方法や適切なアドバイスだけでなく、依頼内容や弁護士により事業主との交渉まで任せることもできます。

また、ケースによっては訴訟提起など、裁判所を通じた手続きも全て任せることもできます。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

2.退職金の請求におけるトラブルと解決方法

退職金の請求は、本来であればトラブルなく行われるはずです。しかし会社によっては、会社側の都合により支給が行われないこともあります。ここで、退職金の請求の請求におけるトラブル事例と、具体的な解決法をご紹介します。

2-1.退職金の請求における主なトラブル事例

社長との口論により退職金が支払われなかったケース

Aさん(仮名)は、10年間勤めた企業で、社長と口論になる出来事があり、退職を決意しました。退職にあたり、社長に対し退職金の規定に従い請求を行いました。けれども社長は、退職金の支払いに応じてくれませんでした。そこでAさんは、退職金の請求について弁護士に依頼を行うことにしました。弁護士は該当企業に対し、即座に内容証明郵便を送付し、Aさんへの退職金の支払いを求めました。しかし該当企業は、支払いを行う素振りを見せなかったため、弁護士は労働審判手続の申立てを行いました。労働審判手続では、Aさんに退職金を満額支払うことと、該当企業からAさんに損害賠償請求を行わないことに関する調停が成立。その後Aさんは、退職金を受け取ることができました。

2-2.トラブルを解決するためには?

上記のトラブル事例はほんの一例でしかなく、こうした退職金の請求にまつわるトラブル事例はこの1日だけでも、数多く生まれているのです。Aさんがどのように解決できたのかというと、そこには弁護士に依頼したことが大きかったということが言えます。弁護士は、まさにあらゆる訴訟問題のプロです。そのため、弁護士に依頼を行うことは、何より適切な解決法かもしれません。退職金の請求において、もし会社とトラブルを抱えてしまった際には、決してひとりで解決しようとせずに、まずは弁護士に相談を行うようにしましょう。

3.退職金の請求における注意点

退職金の請求にあたり、ただ請求すれば良いというわけではなく、注意すべきポイントもあります。ここからは、退職金の請求における落とし穴と、専門家への相談や助言の必要性について説明します。現段階で、専門家への相談をお考えの方は、ぜひご一読ください。

3-1.退職金の請求における落とし穴

退職金の請求にあたり、以下の点において気を付ける必要があります。

個人での請求では支払われないことが多い

これは、個人で請求を行うことを検討されている際に、致命的となる落とし穴かもしれません。しかし、実際にどこかの機関に依頼をして請求するケースと比較をすると、個人で請求するケースのほうがデメリットも多いことは確かです。この理由として、第三者の介入があるか否かにより、会社が動く可能性が変化することも背景にあります。そのため、この点において個人での退職金請求には気を付ける必要があると言えるわけです。

3-2.専門家への相談や助言が必要

上記のような退職金の請求における落とし穴にはまらないためには、専門家への相談が必要になります。ここで言う専門家というのは、主に弁護士のことを指します。弁護士は、退職金などのトラブルに強く、高い解決能力をもつ専門家です。そのため退職金請求の際には、弁護士に相談を行うようにしましょう。これまでの経験と実績から、一人ひとりのお客様に対してベストな助言を行ってくれるはずです。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

4.弁護士に相談をするメリットとは?

ここまで、退職金の請求に関して、網羅的な解説を行いました。さまざまなトラブルを解決するのに重要となるのが、弁護士という専門家の存在です。退職金が支払われないことに対し、ひとりきりで闘う場合と弁護士と共に闘う場合では、大きな違いがあります。また実際に得られる結果についても異なるケースが多くあります。少しでも良い結果を得たい場合に、弁護士への相談は欠かせないといえるでしょう。

最後に、弁護士に相談を行うメリットに関して、説明を行います。

4-1.請求手続きをサポートしてくれる

退職金の手続きをサポートしてくれるのは、弁護士に相談を行うことの大きなメリットになります。ひとりでは難しいように感じる手続きも、専門家である弁護士からの適切なアドバイスをもらうことにより、戸惑うことなく進められます。また勤めていた会社と揉めることなく受け取りたい場合や、受け取りまで短時間で進めたい場合にも、弁護士への相談を行うことが効果的です。

4-2.弁護士に相談するメリットと退職金請求の成功事例

弁護士は、退職金の請求において豊富な知識を備えています。幅広い相談内容に対応しているという点においても、弁護士に相談を行うメリットになります。退職金の請求は、会社によっては一筋縄ではいかないことも多くあります。このようなときに頼りになるのが、専門家である弁護士の存在です。

最後に、退職金の請求における成功事例をご紹介します。この事例においても、弁護士が解決まで導いたと言える結果になっています。

Bさん(仮名)は勤めてきた企業で、定年退職をすることになりました。そして後日、企業より退職金が振り込まれましたが、その金額は規定額よりも低い額でした。そのためBさんは企業に、差額を支払うよう問い合わせましたが、企業は差額の支払いに応じるような姿勢を見せることはありませんでした。そこでBさんは、弁護士に依頼を行うことにしました。弁護士は、即座に内容証明郵便を送付し、算出した規定額と、支払われた退職金との差額(50万円)を支払うよう、企業に求めました。すると企業は後日、Bさんの銀行口座に差額(50万円)を振り込みました。

本記事内の「退職金の請求において主なトラブル事例」でもご紹介した事例に加え、上記の成功事例においても、弁護士への依頼を行ったことで事態が好転したことが分かります。もしこうした退職金にまつわる問題をひとりで解決しようと動いてしまうと、場合により多くの時間と手間を要する結果となる可能性もあります。またそれだけに留まらず最終的に退職金を支給してもらえなかったという結果に終わってしまった事例も多々あるのです。最悪の結果に陥ることのないよう、早期の段階から対策を打つ必要があります。さまざまな対策の中でも特に有益な方法が、弁護士への相談です。退職金問題でお悩みの方は、ぜひ一度弁護士にご相談してみてください。

5.まとめ

今回は、退職金がもらえない場合のトラブル事例や請求方法について解説を行いました。今回ご紹介した実際のトラブル事例にもあるように、退職金を支給してもらえるようになるには、弁護士に相談をすることが何よりの解決法であるということが、よくお分かりいただけたのではないでしょうか。退職金にまつわるトラブルに関しては、まずは弁護士事務所に一度ご相談されることを、おすすめします。

私たち法律事務所リーガルスマートは、退職金のトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

この記事をSNSでシェア!

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
ホーム お役立ちコラム 労働問題 その他 退職金がもらえない?請求方法や注意点を弁護士が解説!

電話受付時間 10:00〜17:30 (土日祝・年末年始を除く)