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解雇の場合、失業保険はどうなる?条件や手続きを弁護士が解説!

解雇の場合、失業保険はどうなる?条件や手続きを弁護士が解説!
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会社を解雇されると、収入が絶たれ生活が立ち行かなくなってしまうという方が多いのではないでしょうか。

そのため、解雇されても失業保険をもらえるのか、気になる方は多いでしょう。

そこで本記事では、解雇されても失業保険が受給できるか否かや、失業保険の受給額の計算方法、具体的な受給手続きの流れ等について弁護士が詳しく解説します。

また、解雇や失業保険に関するトラブルの相談先も合わせて紹介します。

1.解雇とは

解雇とは、会社が一方的な意思表示により、労働者との雇用関係を終了させることを意味します。

たとえば、勤務態度を理由に会社を辞めさせられてしまう事態が典型例です。

解雇されると、給料収入を失った労働者は生活に困ってしまうでしょう。

解雇は労働者の生活への影響が大きいため、労働基準法などで解雇は厳格に制限されており、具体的には、客観的合理的理由のない解雇は法律上無効とされています。

また、一口に解雇といっても様々な種類がありますので、どのような解雇があるのかを確認していきましょう。

1-1.普通解雇

普通解雇とは、懲罰による解雇等の特別な理由による解雇以外の解雇のことをいいます。

解雇理由は以下の通り様々です。

  • 能力不足
  • 勤務態度の不良
  • 無断欠勤等の勤怠不良
  • 病気や怪我による就労不能

1-2.懲戒解雇

懲戒解雇とは、職場の秩序を著しく乱した行為に対する懲罰として科される解雇のことをいいます。

例えば、重大な業務命令違反を重ねて行った場合や、業務に関する犯罪行為を行った場合に科されます。

懲戒解雇は、労働者の秩序違反行為に対して科される一番重い懲戒処分です。

1-3.諭旨解雇

諭旨解雇とは、会社が一定期間を設定して労働者に自主退職を促し、当該期間内に労働者が自主退職しない場合に懲戒解雇を行う懲戒処分のことをいいます。

一定期間内に労働者から退職届が提出されたら、会社は懲戒解雇を行わず自主退職として扱います。

諭旨解雇は、雇用関係の解消を前提とするため、懲戒解雇に次ぐ重い懲戒処分です。

1-4.整理解雇

整理解雇とは、会社の経営状況が悪化したことを理由として行われる解雇のことをいいます。経営を立て直すために、余剰人員を削減して人員整理を行うものであり、いわゆるリストラです。

懲戒解雇等のその他の解雇が、労働者側の事情を理由に行われるのに対して、整理解雇は会社側の事情により行われる点に大きな違いがあります。

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2.解雇されたら失業保険はもらえるのか

解雇された場合に失業保険(雇用保険における失業手当)をもらえるかどうかは、失業保険の受給要件を満たすかどうかで決まります。

失業保険の受給要件は退職理由によって異なりますので、どのような退職理由があるか確認しましょう。

2-1.会社都合退職

会社都合退職とは、一般的に雇用保険法23条2項の「特定受給資格者」の離職理由に当てはまる退職のことをいいます。

特定受給資格者とは、主に以下の2つの場合です。

  • 会社の倒産等(破産や民事再生、事業所の廃止等)により離職した者
  • 解雇等(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)により離職した者

いずれも、会社側の事情により、事前に退職の準備をする間もなく離職を迫られたような場合といえるでしょう。

参考:特定受給資格者の範囲

会社都合退職に当たる場合、自己都合退職に比べて受給要件が緩和されており、失業保険を受給しやすくなっています。詳しくは後述します。

2-2.自己都合退職

自己都合退職とは、会社都合退職以外の退職のことをいいます。

解雇等によらず、転職や起業のために自ら準備して離職した場合や、自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇されて離職する場合が典型例です。

2-3.自己都合退職の例外

自己都合退職であっても、会社都合退職と同じ基準の受給要件で失業保険が受けられる場合があります。それは、雇用保険法13条3項の「特定理由離職者」に該当する場合です。

具体的には、病気や怪我で働けなくなり自ら退職した方や、契約更新を希望したものの更新されなかった契約社員の方等が該当します。

参考:特定理由離職者の範囲

特定理由離職者は、一般的な自己都合退職に比べて、その生活を保護する必要性が高いため、会社都合退職と同じく受給要件が緩和されているのです。

2-4.解雇された場合の取扱い

解雇された場合、自己の責めに帰すべき重大な理由によるものでなければ、会社都合退職に該当します。そのため、原則として、転職や起業のために離職する自己都合退職よりは失業保険を受給しやすいといえます。

自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇の場合、自己都合退職に該当し、会社都合退職よりは失業保険を受給しにくくなります。

もっとも、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇でも、自己都合退職における受給要件さえ満たせば失業保険を受給できます。

以下、先に述べた解雇の種類に応じて、どのような解雇が会社都合退職または自己都合退職に当たるか整理します。

(1)普通解雇

普通解雇は、会社側の事情による解雇であり、基本的に会社都合退職になります。

(2)懲戒解雇

懲戒解雇は、職場の秩序を著しく乱した行為に対する懲罰であるため、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇として、自己都合退職になります。

(3)諭旨解雇

諭旨解雇も、懲戒解雇と同様に職場秩序を大きく乱した場合に行われるため、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇として、自己都合退職になります。退職届を提出する等して懲戒解雇とならなかった場合も同様に自主都合退職となります。

(4)整理解雇

整理解雇は、普通解雇と同じく会社側の事情による解雇であるため、会社都合退職になります。

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3.失業保険の受給要件

失業保険の受給要件は、失業の状態にあること、および離職前の雇用保険の被保険者期間が一定期間あることです。

以下、それぞれについて詳しく解説します。

3-1.失業の状態とは

失業保険は、労働者の失業期間中の生活を支える保険です。

そのため、失業保険の給付を受けるには、失業の状態にあることが必要になります。

具体的には、以下のすべての条件を満たす場合です。

  • 健康状態・環境等において、いつでも就職可能な能力があること
  • 就職する積極的な意思があること
  • 就職活動を積極的にしているけれども、就職できていないこと

失業の状態といえるには上記すべての条件を満たす必要があるため、たとえば、怪我や病気で働けない人や、働く意思がない人は受給できません。

3-2.必要となる雇用保険の被保険者期間

失業保険のもう一つの受給要件が、離職前の雇用保険の被保険者期間が一定期間あることです。保険である以上、給付を受給するには離職前に一定の期間被保険者であったことが必要になるのです。

必要となる被保険者期間は、会社都合退職(特定理由離職者を含む。)か、一般的な自己都合退職かによって異なり、前者の方が短い期間となっています。

具体的な受給要件は、以下の通りです。

  • 会社都合退職(特定理由離職者を含む)の場合

離職日前の1年の間に、雇用保険の被保険者期間が、通算して6ヶ月以上あること

  • 自己都合退職者

離職日前の2年の間に、雇用保険の被保険者期間が、通算して12ヶ月以上あること

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4.失業保険はいつからもらえるのか

失業保険は、離職後直ちに受給できるわけではありません。

失業保険を受給できるようになるには、一定の待機期間の経過が必要です。

また、自己都合退職の場合は、待機期間からさらに給付制限期間が経過するまで待つ必要があります。

そこで、待機期間と給付制限期間について具体的に確認しましょう。

4-1.待機期間

失業保険は、雇用保険法21条1項において、離職後ハローワークに求職の申込みをした日以降で、失業期間が通算7日間に満たない場合は支給しないとされています。

つまり、ハローワークに離職票を提出して求職の申込みをした日から7日間は、待機期間として失業保険を受給できません。

待機期間に失業保険を受給できないのは、会社都合退職でも自己都合退職でも同じです。

4-2.給付制限期間

会社都合退職の場合、待機期間が経過すれば失業保険を受給できます。

しかし、自己都合退職の場合、待機期間の経過後さらに給付制限期間が経過しなければ、失業保険を受給できません。

安易な離職を防止し、また離職後の再就職意欲を喚起するための措置として、このような制限が設けられているのです。

給付制限期間は、雇用保険法33条1項では、1ヶ月から3ヶ月以内と定められています。

実務運用では、原則として待機期間満了後から2ヶ月間です。

ただし、以下のいずれかの場合は待機期間満了後から3ヶ月間になります。

  • 自己の責めに帰すべき重大な理由で離職した場合(懲戒解雇や諭旨解雇された場合等)
  • 令和2年10月1日以降の離職が5年間で3回以上になる場合
  • 令和2年9月30日以前の自己都合退職の場合

参考:失業等給付を受給される皆さまへ

なお、転職やキャリアアップを目的とした離職の場合には、給付制限期間を撤廃または短縮することが政府において現在検討されています。

そのため、政府の検討結果によっては、将来的により短い給付制限期間となることもあるでしょう。

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5.失業保険はいくらもらえるのか

失業保険の給付額は、離職前の給与の額や離職理由によって変わります。

具体的な計算方法を確認した上で、離職理由による違いや具体例を確認していきましょう。

5-1.具体的な計算方法

失業保険の給付額の計算方法は以下の通りです。

  • 総給付額=基本手当日額×所定給付日数
  • 基本手当日額=賃金日額×給付率
  • 賃金日額=退職前6ヶ月間の賃金総額÷180

基本手当日額と賃金日額は、上限と下限が以下の通り定められています(いずれも令和5年8月1日以降の認定分)。

【基本手当日額】

【賃金日額】

また、具体的な基本手当日額の算定方法は以下の表の通りです(令和5年8月1日以降の認定分)。

【具体的な基本手当日額の算定方法】

参考:雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ

5-2.所定給付日数

失業保険の所定給付日数は、下記の表の通り定められています。

【会社都合退職(一部の特定理由離職者を含む)の所定給付日数】

【その他の自己都合退職の所定給付日数】

離職理由によって適用する表に違いが生じます。

また、同じ離職理由であっても、年齢や雇用保険の被保険者期間によって所定給付日数は異なっています。

参考:基本手当の所定給付日数

5-3.具体例

以上の計算方法に基づいて、以下の事例の失業保険の給付額を具体的に計算してみましょう。

【具体例】

  • 離職時の年齢:40歳
  • 退職前6ヶ月間の賃金総額:270万円(月45万円×6ヶ月)
  • 離職理由:会社都合退職(普通解雇)
  • 雇用保険の被保険者期間:18年

【失業保険の給付額の計算】

  • 賃金日額:1万5,000円=270万円(退職前6ヶ月間の賃金総額)÷180
  • 基本手当日額:7,500円=1万5,000円(賃金日額)×50%(給付率)
  • 所定給付日数:240日

(普通解雇による離職のため会社都合退職の表を選択。

年齢は40歳のため35歳〜44歳の区分になり、雇用保険の被保険者期間は18年のため10年以上20年未満の区分になる。)

  • 総給付額:180万円=7,500円(基本手当日額)×240日(所定給付日数)

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6.失業保険をもらうための手続き

失業保険を受給するための具体的な手続きの流れは以下の通りです。

  • 退職
  • 会社からの離職票等の交付
  • ハローワークへの求職申込み手続き
  • 待機期間(7日間)
  • 雇用保険受給者説明会への参加
  • 求職活動の実施
  • 失業認定を受ける
  • 失業保険の受給(一般的な自己都合退職の場合は、給付制限期間満了の後)

また、失業保険の受給手続きの際に、ハローワークへの提出が必要となる書類等は以下の通りです。

  • 離職票
  • マイナンバーカード

(ない場合は、マイナンバーが確認できる書類および運転免許証などの身分証明証)

  • 証明写真(縦3センチ×横2.5センチ)×2枚
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

参考:雇用保険の具体的な手続き

離職票は、会社がハローワークに離職証明書とともに雇用保険被保険者資格喪失届を提出することで発行されます。

会社への発行依頼後10日以上連絡がない場合は進捗状況を確認し、会社が手続きを行わない場合はハローワークへ相談しましょう。

また、失業認定は、4週間に1度の頻度で行われます。

そのため、一度失業認定を受けてから求職活動をしていないと、次回以降失業認定を受けられない可能性がありますので、注意しましょう。

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7.失業保険に関するよくあるQ&A

7-1.65歳以上でも解雇されたら失業保険を受給できるの?

A.65歳以上は失業保険の対象ではありません。

もっとも、65歳以上の方が失業した場合、受給要件を満たせば高年齢求職者給付金が受給できます。

受給要件は、離職日前の1年の間に雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること、および失業の状態にあることです。

失業保険と同様に7日間の待機期間があり、自己都合退職は給付制限期間も設けられています。

また、給付金の支給額は、被保険者期間が1年未満の場合は基本手当日額の30日分、1年以上の場合は基本手当日額の50日分です。

7-2.会社都合退職なのに自己都合退職とされたらどうすればよい?

A.まずは会社に訂正を求め会社が応じなければ、ハローワークに事情を説明した上で異議の申立てを行う必要があります。

会社都合退職なのに、離職票で自己都合退職とされているケースは少なくありません。

そのような場合でも会社の事務処理ミスであれば、会社に訂正を求めれば必要な対応をしてくるでしょう。

しかし、退職理由をめぐって会社との認識に齟齬が生じている場合、会社の対応は期待できません。

そのような場合は、ハローワークに、離職票の離職理由の記載と自身の認識が異なっていることを伝えましょう。そして、正式に離職票の記載を訂正してもらうためには、ハローワークに対して異議申立て手続きを行う必要があります。

異議申立て手続きでは、会社側と労働者側の主張を踏まえた上で、最終的にはハローワークが離職理由を判断します。

納得のいく判断を得るためには、解雇理由証明書等の自身の主張を裏付ける証拠を事前に収集し、ハローワークへ提出しておくことが重要です。

7-3.失業保険をもらえる期間はいつまでですか。

A.原則として離職日の翌日から1年間です。

一部の例外を除いて、失業保険の受給期間は離職日の翌日から1年間となっています。

受給期間内で失業の状態にある日についてのみ、それぞれの所定給付日数を上限として、失業保険を受給できます。

そのため、所定給付日数分の給付を受給できていない場合でも、受給期間の経過後は失業保険を受給できないので、注意が必要です。

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8.まとめ 解雇や失業保険のトラブルはご相談ください

解雇は、会社による一方的な雇用関係の解消であり、なぜ解雇されるのか納得できない場合も多々あるでしょう。

そのような場合は、早めに弁護士に相談しましょう。

すでに述べた通り、解雇は法律上厳格に制限されており、客観的合理的理由のない解雇は無効です。

簡単に認められるものではないので、弁護士に対応を依頼して会社と交渉したところ、解雇が撤回されたという事例も少なくありません。

また、会社との認識齟齬から離職票で自己都合退職とされた場合に、ハローワークに異議を申し立てる際も、弁護士に相談するのが効果的です。

弁護士であれば、ハローワークに対してどのような証拠に基づいてどのような主張をすればよいかについて有意義なアドバイスをしてくれます。

このように、解雇や失業保険をめぐる会社とのトラブルを解決するには、弁護士に相談することが有効です。後悔することがないように、早めに相談してみてはいかがでしょうか。

私たち法律事務所リーガルスマートは、解雇や失業保険のトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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